2019年10月11日 公開

【話題の育児書】『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書』

モンテッソーリ教育からシュタイナー教育、レッジョ・エミリア教育など、世界の代表的な子育て法や教育法を1冊でまとめて学べる本『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書』を紹介します。育児や教育関連本をレビューする連載【話題の育児書】9回目です。

世界7大教育法とは

Monkey Business Images / Shutterstock.com

幼児教育で注目の世界2大教育法といえば……モンテッソーリ教育とシュタイナー教育!と言える人はいらっしゃるかもしれません。でも7大教育法は知っているでしょうか。

著名な教育ジャーナリストである、おおたとしまささんの本では「世界7大教育法」として以下の7つを挙げています。

  • モンテッソーリ教育
  • シュタイナー教育
  • レッジョ・エミリア教育
  • ドルトンプラン教育
  • サドベリー教育
  • フレネ教育
  • イエナプラン教育

この7つの教育は、全て、欧米ではオルタナティブ教育(別の選択肢の意味)、またはプログレッシブ教育(進歩的教育)とも呼ばれています。

日本でも、いずれかを取り入れている幼稚園や保育園、子ども園や学校、インターナショナルスクールやプリスクールもあるので、これらを知っておくと選ぶ際の大きな参考になります。

ただし、中学校受験で有利になるとか、学力を上げることに結びつくような学習法や秘訣がわかるわけではありません。正解のない時代に、今後どんな世の中になっても生きていける子どもを育てるためにできること。そして、持って生まれた個性や才能を伸ばしつつ、生きる力を学ぶ方法のヒントは得られます。

世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書

タイトル:世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書
著者:おおたとしまさ
出版社:大和書房
2019年6月に発売されたばかりのこちらの本では、教育ジャーナリストである、おおたとしまささんがそれぞれの教育法を実行している日本での教育現場を取材。詳細な教育現場のレポートのほか、先生のインタビューも掲載されているのでとても読みごたえがあります。

また、7つの教育法のポイントや特徴がそれぞれとてもわかりやすくまとめられています。さらに、各章の最後に「子育てに役立つヒント」があり、とても参考になります。

世界で話題になっている教育の多様性を知り、多くの人に支持されている教育法の視点を取り入れることも、子育てをする上で役に立つこともあるので、オススメです。

著者:おおたとしまささん

著者プロフィール

育児・教育ジャーナリスト。 麻布中学・高校出身で、東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。中学・高校の英語の教員免許、小学校英語指導者資格も取得。 リクルートから独立後、教育関連記事を幅広いメディアで発表し、講演活動も多数で、著書は50冊以上。 近著は『21世紀の「男の子」の親たちへ 男子校の先生たちからのアドバイス』(祥伝社)、 『いま、ここで輝く。 超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』(エッセンシャル出版社)、 『ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『中学受験「必笑法」』(中央公論新社)など。

【1】モンテッソーリ教育(イタリア):集中現象で強みが伸びる

世界的リーダーなど多くの著名人がモンテッソーリ教育を受けていたことから、最近日本でも注目度が非常に高い教育法です。ただし、おおたさんは「表面的なノウハウをマネても無意味」とし、短絡的な成果を求めてはモンテッソーリ教育の本質から離れてしまうのではと警告もしています。

【創始者】イタリアの女性医師マリア・モンテッソーリが1907年にローマの貧民街で「子どもの家」を開設したのがはじまり。
【理念】自立し、有能で、責任感と思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢のある人を育てる。
【特徴】異年齢混合クラスで、子ども達が自ら選んだモンテッソーリ教具を使って「おしごと」を行う。子どもの「敏感期」を感じ、時期に応じた「おしごと」に集中できる環境が必要。子どもは自らを育てる力が元々備わっているので、大人の基準で評価や指導をしない。
【キーワード】敏感期、集中現象
【著名人】藤井聡太棋士、オバマ元アメリカ大統領、ウィリアム王子・ヘンリー王子(イギリス王室)、ビル・ゲイツなど。

本書では東京大田区にある日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」を取材しています。

【2】シュタイナー教育(ドイツ):環境設定で感性が高まる

ドイツではヴァルドルフ教育と呼ばれ、学校数も多く、次いでアメリカでも学校数が多いようです。日本でも1970年代から注目され、自然派のスローライフ系のライフスタイルを好む人に特に支持される教育法です。

【創始者】オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが、1919年ドイツに「自由ヴァルドルフ学校」を開校。
【理念】自分で考え、感じ、意思と行動を結び付けられることを目指す「自由への教育」。
【特徴】人間は「7年周期」で成長。身体と心、精神の3要素からできているとする。自然の素材をそのままおもちゃとする。「オイリュトミー」や「にじみ絵」など独特の芸術活動を行う。
【キーワード】エポック、オイリュトミー、にじみ絵、自由遊び、ウォルドルフ人形
【著名人】斎藤工、サンドラ・ブロック、ミヒャエル・エンデなど。

本書では東京・三鷹の「ヴァルドルフの森 キンダーガルテン なのはな園」を取材しています。

【3】レッジョ・エミリア教育(イタリア):知的好奇心を引き出す

第二次世界大戦後にイタリア北部の小さな街から市民自らはじめた幼児教育で、アートの要素を取り入れているのが特徴です。1991年にニューズウィーク誌が世界の最も先進的な幼児学校の一つとして紹介したことで大きく注目されました。「レッジョ・エミリア・アプローチ」とも呼ばれ、日本では都心部を中心にプリスクールや保育園、幼稚園などで多く取り入れられています。

【創始者】元小学校教師のローリス・マラグッツイが発展。
【理念】子どもは100の言葉を持っている。
【特徴】広場やアトリエを備えた空間でペタゴジスタ(教育の専門家)とアトリエスタ(芸術の専門家)のサポートの元に、探究活動をする。その様子を観察し、写真や文章で記録に残し、毎日掲示する。
【キーワード】プロジェッタツィオーネ(探究活動)、ドキュメンテーション(記録化)

認可外幼児教育施設(インターナショナルスクール)の東京都品川区の「東京チルドレンズガーデン」を取材し、紹介しています。

【4】ドルトンプラン教育(アメリカ):自己管理能力が身に付く

1919年にニューヨークで創設された「ドルトン・スクール」は全米屈指の進学校として知られています。オランダやオーストラリア、イギリスや韓国などの学校でも採用され、日本でも、2019年にドルトンプランに基づく中高一貫校が創立されるなど、注目されています。

【創始者】ヘレン・パーカーストが提案した学校授業の効率化案がアメリカ・マサチューセッツ州のドルトンという都市の中等教育学校で実践されたことから「ドルトン実験校プラン」と呼ばれるように。
【理念】自分の考えを持てる自由な環境を整え、問題に立ち向かう力をつける。ゴール達成のために「自由」と「共同」を利用する。
【特徴】自由と協同が二大原理。学習内容を生徒と教師で「アサインメント」(契約)し、子どもが自分の裁量で課題をこなす。協同で課題に取り組むことも推奨される。
【キーワード】アサインメント、ラボラトリー

本では、東京都渋谷区の「河合塾学園ドルトンスクール東京校」が紹介されています。

【5】サドベリー教育(アメリカ):好きにするを徹底、自立心が育つ

アメリカ・ボストンの「サドベリー・バレー・スクール」の理念に共感している学校の総称で、別名は「デモクラティックスクール」(民主主義の学校)。世界に50校ほどありますが、日本にも17校ほどあります。フリー・スクールと似ていますが、不登校になってしまった子ども達をケアするような場所では無く、あくまでも学びの場です。

【創始者】ダニエル・グリーンバーグが1968年に「サドベリー・バレー・スクール」を開校。
【理念】最善の学習は自己の動機で自己管理することで実現する。学校はコミュティとして創設・維持される。
【特徴】人は生まれつき好奇心を持つものとして、子どもに対する一切の強制が無く、授業やカリキュラム、宿題、学年、クラスも無い。卒業のタイミングも自由。学校のルール制定、予算、スタッフの採用など学校運営全てに生徒も参加する。
【キーワード】スクール・ミーティング、協定(ディール)、デモクラティックスクール(民主主義の学校)

東京都世田谷区の「東京サドベリースクール」を紹介しています。

【6】フレネ教育(フランス):自分の頭で考える力を養う

フランスの公立学校の約1割の教員がフレネ教育に準じた指導を行い、スペインやドイツ、ブラジルなど世界38カ国で実践されています。フレネ教育は、教育法というより、さまざまな状況で教師個人が誰でも部分的に取り入れられる「教育技術」です。

【創始者】フランスの片田舎の教師、セレスタン・フレネが、1935年に学校をヴァンスに設立。
【理念】格好良い頭となんでもできる器用な手。子どもは自分が役立ち、自分に役立ってくれる共同体で人格を最大限に発揮できる。
【特徴】学習計画表に沿って個別学習を進める。授業は仕事と呼ばれ、自由作文や手仕事にも取り組む。
【キーワード】個別学習、手仕事、自由作文、自由研究、イニシアチブ(奉仕活動)

大阪・箕面市の「箕面こどもの森学園」を取材しています。

【7】イエナプラン教育(ドイツ):探求力を磨く

ドイツで生まれ、1960年代にオランダで発展。2019年4月に長野県佐久穂町に日本初のイエナプラン教育を取り入れた小学校が開設されたことでも注目されています。今後、広島県福島市のイエナプランの公立小学校もできる予定です。

【創始者】イエナ大学の教育学部教授のペーター・ペーテゼンが大学付属の実験校で校長のハンス・ウォルフと共に開始。
【理念】子どもの主体性の尊重、異なる他者の受容、学校共同体。
【特徴】個別の学びと共同の学びの両立を基本。3学年からなる異年齢の「ファミリーグループ」で対話、遊び、仕事、催しの4つの基本活動が中心、教室を「リビングルーム」と呼び、必ず「サークル対話」の時間を設定。
【キーワード】ファミリーグループ、ブロックアワー、ワールドオリエンテーション、サークル対話

日本初のイエナプラン教育プランの実践校、佐野県佐久穂町の大日向小学校を取材、紹介しています。

親ができること、知っておいた方がいいことは

Gustavo Frazao / Shutterstock.com
私も、自分の子どもの幼稚園やプリスクールを選ぶ際に、モンテッソーリ園やシュタイナー園を最初に興味を持って調べ、結果的にレッジョ・エミリア・アプローチを軸にしているプリスクールに出会いました。今のところ、子どもにはとても合っているようで、伸び伸びと活動し、独創的でイキイキした作品を見るとホッとします。

それぞれの特徴を知らずにいて、知識が無かったら、適切な居場所選びができていなかったかもしれません。また、いくらメソッドの優れた教育施設に入れたとしても、効果があるかどうかは本人に合っているかどうかが大きいと思います。

また、著者のおおたさんも主張しておられるように、「生きるためのスキル」を詰め込んだところで、子どもの自ら育つ力を無視して、存分に活かせていなければ意味がありません。

この本はまさに親にとっての教科書。自分が受けてきた教育を「当たり前」と思わずにまずはマインドリセットし、他の選択肢や可能性を知ることも重要です。未就学児の親が学んでおくべきエッセンスがたくさん詰まっているので、どこかしらヒントになり、視野を広げてくれると思いますよ。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

志田実恵 志田実恵  エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。