2018年3月29日 公開

【2018年施行】新「保育所保育指針」の改定ポイントとは

平成29年3月31日に告示、改定された保育園の新「保育所保育指針」は平成30年の4月1日から施行。どんな背景と目的で何がどう変わるのか、保育園に通わせる保護者の目線で知っておきたいことをご紹介します。0~3歳児を家庭で保育する場合に参考になる情報も多々盛り込まれています。

保育所保育指針の改定で知っておきたいこと

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「保育所保育指針」とは

「保育所保育指針」は、保育とは何か、保育で大切にすべきことは何かという基本方針が示されたもので、すべての保育園が全体的な計画や指導計画を作成するうえで指針とするものです。

1965(昭和40)年に最初に制定され、前回の改定は平成20年。今回は10年ぶりの大きな改定となります。

改定の大きな特徴2つ

今回の改定で大きなポイントは以下の2つです。
【1】乳児保育と1歳以上3歳未満児の保育の狙いと内容の記載が充実
乳児保育、3歳未満児保育を行う際のポイントが、さらに丁寧に解説されています。

【2】保育所が日本の「幼児教育施設」として位置付けられたこと
保育所も「幼児教育」を行う施設として設定され、幼稚園や幼保連携型認定こども園とともに「幼児教育のあり方」を明確にしています。

幼稚園やこども園と共通する大きな改訂2つ

【1】幼児教育の目的を明確にし、共通化する
【2】小学校就学後のつながりを明確にし、共通化する

そもそも今回の改訂の大きな狙いは、幼稚園やこども園と幼児教育の内容を統一し、共通化させることでした。2020年の教育改革につながる動きでもあります。

2020年度には「新学習指導要領」が小学校で全面実施、2021年度には「新学習指導要領」が中学校で全面実施、2022年度「新学習指導要領」高校で実施されます。今回の改訂は、2018年の年中の子どもたちが小学校に上がる時に実施される「新学習指導要領」との繋がりが強く意識されています。

このため、幼児教育において育みたい資質・能力の3本柱(1:知識及び技能の基礎、2:思考力、判断力、表現力等の基礎、3:学びに向かう力、人間性等)と「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」を明確にしています。そしてその意識が小学校入学後にも引き継がれるように設定されています。

改定のポイント5

その他のポイントは大きく5つに集約できそうです。

1.養護の重要性の強調「養護と教育を一体的に行う」
2.大きな災害への備えと健康及び安全への配慮
3.子育て支援の必要性の強調と工夫
4.職員の専門性向上を目指す職場づくりと研修計画、キャリアパスの大切さ
5.小規模保育と家庭的保育での配慮

では、それぞれおさえておきたいことを紹介します。

乳児保育と1歳以上3歳未満児の保育で大切なこと

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今回の改定では、保育の内容が「乳児保育」「1歳以上3歳未満児の保育」「3歳以上児の保育」の3つに区分されました。

近年の待機児童問題もあり、0〜2歳児の需要も10年前に比べて増えています。認可・認可外問わず、0~2歳児の保育の質を上げ、保証するための事項がより盛り込まれています。

0〜2歳児は、食事や睡眠、排泄のケアはもちろん重要ですが、非認知能力の基礎が育つ時期でもあり、「学びの芽生え」が見られる時期です。人との関わりの質も重要であることから、よりいっそうの配慮が望まれているのです。

生活はすべて学び・教育的側面につながっているということに、従来以上の意識を向けることが求められています。

また、基本的信頼感を形成するために、保育者とのアタッチメント(愛着)が重要であることも強調されています。

保育所で行われる幼児教育とは?

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ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマンが2013年に行った提言をきっかけに、今また幼児教育の重要性が世界中で注目されています。その内容は、1960年代に開始された幼児教育研究を追跡調査した結果、優れた幼児教育は社会全体の利益につながるというものでした。

今回の改定では、保育所も幼児教育機関としての役割を持ち、計画的で独自性を持つという特徴がさらに明確になりました。

では、保育所の「幼児教育」として読み書き計算の授業でも義務付けられるのかというと、そういうことではありません。重要なのは「非認知能力」であり、これまでまったく意識されてこなかったものではないはずです。ただ、園でも遊びが学びにつながっているか、改めて意識的に取り組むことが求められています。

養護と保育・教育の違いとおさえておきたいこと

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保育における「養護」は、子どもの生命の保持と情緒の安定です。すべての年齢の保育において、健康で安全、快適であり、生理的要求が満たされて保護されていることが大事です。特に0〜2歳児はより養護性を意識した保育が求められています。

きちんと「養護」されることで、子どもが自分の気持ちを安心して表し、それを周囲の人が受け止め、自分を肯定できるようになり、はじめて「学び」が成り立ちます。

つまり養護がベースにあり、その上に知識などの認知能力や非認知能力を育てる「教育」があるため、保育園では「養護と教育の一体的展開」が求められているのです。これは子どもが幼いほど重要だとされています。

健康と災害・安全の意識

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新しく第3章に「健康及び安全」に関する事項がまとめられています。

免疫力の弱い乳幼児の感染症対策のほか、食育の一層の推進として「保育所の特性を生かした食育」や食物アレルギーのある子どもへの対応なども付け加えられています。

東日本大震災など、大規模自然災害が続くなか、緊急時の対策やいざというときの「引き渡し」方法を保護者とよく確認しておくことなども求められています。

その他知っておきたいこと

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子育て支援の必要性の強調と工夫

これまでは「保護者に対する支援」という記述でしたが、今回の改定では「子育て支援」となりました。保育園を利用している子どもの保護者だけではなく、子育て中の親のための包括的な支援の必要性が求められているためです。

災害時などに地域の人々と連携することの重要性もあり、各関係機関と協力し、地域の状況に応じて支援活動のレベルアップを図ることが望まれています。

保育士の専門性向上のために

保育士の研修や職場づくりについての内容が記載されていますが、これは幼稚園教育要領や幼保連携型認定こども園教育・保育要領にはない記述です。幼稚園教諭や認定こども園の保育教諭は文部科学省管轄下の教育職なので、研修が義務と権利であることは明確かつ、初任者研修などの研修制度が確立されていました。ですが、厚生労働省の管轄下にある保育士にはこれまで充分ではなかったようで、今回改めて記述が加えられたようです。

新しく加わった「幼児教育」についてなど、職員がその専門性をさらに向上させるための機会と職場環境を整えること、キャリアアップのシステムを作っていくことの大切さも強調されました。

小規模保育と家庭的保育での配慮

今回の改定では、主に0〜2歳児を保育する事業全般も想定されています。定員6〜19人の「小規模保育」、保育ママなどの「家庭的保育」、企業主導の「事業所内保育」。障害・疾患などのある子どものための「居宅訪問型保育」も含まれます。

0〜2歳児については年齢によらず、個々の子どもの発達に応じて柔軟な保育を行うことの重要さなどがより意識されています。

最後に

今回の改定がどれだけ意識・実行されるかは、保育園・保育所次第というところもあるかもしれません。保育士不足に悩む園など、ただでさえ普段の業務に忙しい保育士さんたちには、そもそも「保育所保育指針」を読む時間がない、という声もあるようです。

しかし、親が知って意識するだけでも違うでしょうし、なにより勉強になります。特に、乳児や3歳未満児の保育において何を重要視すべきなのかなど、家庭でも意識しておきたいことがたくさんあります。「保育所保育指針」の全文も無料でweb公開されていますので是非読んでみてください。興味がある方は是非詳しいガイドにも目を通してみてください。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

志田実恵 志田実恵  エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。