平成29年3月31日に告示・改訂された新「幼稚園教育要領」。平成30年の4月1日から施行されます。改訂のポイントは何か、幼稚園で何がどう変わるのか、保護者目線で知っておきたいことをご紹介します。
「幼稚園教育要領」とは
昭和23年に「保育要領」としてはじめて刊行され、それが改訂されるかたちで昭和31年に幼稚園教育要領になって以来、昭和39年、平成元年、平成10年と、最近はほぼ10年に一度改訂が行われてきました。前回の改訂は平成20年です。
今回は保育園の「保育所保育指針」、認定こども園の「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」、さらに小・中学校学習指導要領も一度に改訂されました。幼稚園と保育園、認定こども園は2018年4月から全面実施されますが、小中学校は移行期間(教科書検定など)があり、小学校は2020年4月から、中学校は2021年4月から全面実施されます。
幼稚園の段階のみではなく、小中高の教育へつながる18歳までを見通して「育むべき力」は何か、それを踏まえて幼稚園の教育活動はどうあるべきかについて検討され、改訂が行われました。
主に3〜6歳児に共通する、幼稚園と保育園、認定こども園で同時になされた大きな変更とポイントは、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が明確化されたことです。
こちらの記事にまとめているのでご参照ください。
【2018年施行】幼稚園・保育園・こども園の法令改訂のポイント
幼稚園ならではの配慮とは
しかし、保育園や認定こども園と幼児教育が共通するのであれば、幼稚園はどうあるべきか、幼稚園ならではの幼児教育のあり方を考えていくことも問われています。3歳で入園するまでの家庭での育ち方を受け止めて、家庭との連携を図ること、また充分な時間をかけて行事や教材を準備することなどでしょうか。
満3歳児を学年の途中から受け入れている園については、安心して過ごせるよう充分に配慮することなどの記述も追加されています。
幼児教育と小学校以降の教育の違い:見方と考え方
幼児教育は「環境を通して行うもの」を基本とすることは変わらないのですが、幼稚園教育要領でははじめて、「見方・考え方」という言葉が使われました。
小学校では教科書などの教材を使いますが、幼稚園では、積み木や絵本、砂場などのほか、自然とのふれあいすべてが教材となります。
幼児教育は、その身近な”環境”を通して、子どもが主体的に関わり、学んでいくなかで「見方・考え方」を働かせ、それが小学校以降での各教科における「見方・考え方」の基礎になっていくそうです。
完成や正解を目指して保育者が子どもたちに手順を示してやるのではなく、子どもたちが自分でやってみること、失敗を恐れずに試行錯誤させることが重要になります。
また、「見方・考え方」の正確はひとつではないので、年齢やその子の発達に応じた対応が求められています。
「遊び」は幼児にとって重要な「学習」であることも明記され、遊びを通しての指導を中心とすることも意識されています。
そして、今回の改訂では、はじめて「評価」も明記されました。ですが、個人個人がいかに成長しているかという過程や伸びを記録し把握することであり、園児同士を一定基準で比較して評価するわけではないようです。
預かり保育と子育ての支援の工夫
4時間を標準とする幼稚園の教育時間の前後や長期休業期間中に、保護者の希望に応じて教育活動を行うものです。
教育課程だけでなく、登園から降園までの生活全体を捉えた「全体的な計画」のもと、配慮ある環境において行われることが求められています。預かり保育の頻度・時間は子どもによって差がありますが、一人ひとりに配慮され、また少人数ならではの違う活動ができることも必要です。
現在は、預かり保育の内容も園によってばらつきがあり、職員室でDVDを見せるだけ、という園もあるそうですが、この時間も教育時間と同じように配慮事項を共通化しておくことが明確にされています。
また、新たに追加されたのは「地域の人々との連携」です。心理や保健の専門家、地域の子育て経験者たちと連携・協働しながら、地域における教育のセンターとして取り組むことも付け加えられています。
ニーズに応じて、家庭や地域との連携を深めていくことが大切ということでしょう。
特別な配慮を必要とする幼児への指導の充実
すべての子どもたちに対して、幼児期の言語活動を重要視し、言葉のリズムや響きを楽しむことや、語彙を増やし、周囲の子どもたちや先生とのやり取りを通じて、自分なりに表現することが大切としています。
障害のある子どもへの指導としては、家庭、医療機関や福祉施設などの機関とも連携し、個別の教育支援計画の作成・活用が求められています。
また、転勤・引越しなどで、海外から帰国したばかりの子どもたちや、保護者が外国籍などで生活に必要な日本語の習得に困難のある子どもたちも、安心して自己を発揮できるよう配慮し、個々の実態に応じて、指導内容や方法の工夫を計画的に行うよう定められました。
小学校との交流とともに、障害のある子どもたちとの交流や共同学習の機会も積極的に設けるように、とも触れられています。
最後に
幼児期にふさわしい教育が改めて定義され、この時期に伸ばしたい力、発達させたい力、配慮したいことが明確になったということです。
ちなみに、幼稚園は義務教育ではなく、また、私立の割合が63.2%(平成29年度:文部科学省発表)とかなり高いです。各園の方針によって個性や特徴が大きく異なりますので、今回の改訂がどこまで反映されるかも園によるところが大きいかもしれない、ということは考慮しておいたほうがよさそうです。
また、文部科学省のサイトから、幼稚園指導要領、比較対照表、解説がPDFでダウンロードして読めます。興味がある方は是非詳しいガイドにも目を通してみてくださいね。