
「これ、やってみる?」
「うん、やる!」
一応本人の意思を確認してから始めた通信学習(ここでは、ドリルと言います)。しかし、楽しみに封を開いたのは最初の数ヶ月。その後は徐々に消化不良を起こし、最近では、届くたびに「また届いてしまった」と、心がどんよりしてしまいます。
そんなことならやめればいいのでしょうが、「嫌ならやめる」というやめグセをつけたくないし、何しろ毎日の家庭学習習慣は重要。山積みになったドリルにどう向き合っていったらいいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。溜まったドリルを親子関係の悪化にまでつなげないよう、日々のドリル習慣をスムースに展開させるための「仕組み」について考えてみましょう。
「怠けている?」って決めつけないで
やると言ったことをやらない。今までやっていたのに、やらなくなる。こういった状況を、大人はとかく「怠け」と紐づけて考えます。そして、そんな思い込みを子どもにぶつけてしまいます。「怠けていないでやりなさい」と。
しかし、ここで考えなければいけないのは、「本当に子どもは怠けているのか」ということ。決して怠けているわけではないけれども、何かできない要因があるとしたなら、「怠けている」という勝手な決めつけは、「もう、やらない」「どうせ自分には無理だ」というネガティブな感情を引き起こしてしまいます。勝手な決めつけによる言動には、注意が必要です。
ドリルが溜まってしまう原因
現状をできるだけ客観的に見てみましょう。「せっかく購入しているのに…」という感情論は横に置き、なぜやらないのか、なぜ溜まってしまうのか、原因を冷静に見極めてみると、例えば、以下のような原因は思い当たりませんか?
・学習習慣がまだ定着していない
・量や難易度が子どもに合っていない
・やっても達成感を感じられていない
・他の習い事や遊びで時間が取れていない
こういった原因が思い当たる場合には、対処が必要です。量や難易度の見直し、達成感を持てる工夫、時間の確保等が、それに当たります。
もう一点、
・やっているが、飽きてしまう
こんな理由もあるかもしれません。しかし、「子どもが飽きてしまう」ことへの対処はなかなか難しく、まずは「飽きる」現象を深掘りするところから始めましょう。
「飽きる」の背景を推測する
人間、飽きるのは当然です。もちろん、大人だって飽きることは多々あります。そんな「飽きる」の背景を考えてみると、以下のような理由が見えてきます。
・難しすぎ/簡単すぎからくる飽き
・ゴールが見えないことによる飽き
・やる気低下による飽き
例えば、「漢字練習」。「見開きのノート両面に、一つの漢字を練習する!」と決めても、子どもは飽きてしまいます。他者の目のある「学校の宿題」なら、嫌いやでもやるのかもしれませんが、自分との約束だけだと継続は難しそう。できることを、延々と行なっていくのは難しいのです。他方、難しすぎる問題も、集中力が長続きせずに飽きてしまいます。
「ゴールが見えないいとなみ」も、途中で継続が難しくなってきます。当初は新鮮だった教材や、教材に出てくるキャラクターがマンネリ化してきたころ、「飽き」がよく起こります。「出会い」の楽しさがなくなってきた頃には、ゴールや達成感が必要になってきます。
始めたころは、「頑張ったね」「もう、できちゃったの」と言われていた環境も、時間の経過とともに変化しがちです。「できる」が当たり前になってくると、「いちいち褒めなくなる」「できていないところばかりを突っ込む」という関わりも起きやすいもの。子どものやる気は低下し、飽きてしまいます。
飽きても続けられる5つの仕組み

出会ってからの時間が経てばたつほど、飽きるという現象は起きるもの。「なぜ、やらないの」と叱ったところで、飽きてしまう気持ちは変えられません。それなら「飽きないように」と頑張るのではなく、たとえ飽きたとしても、続けられる仕組みを考えてみませんか。5つの仕組みをご紹介します。
構造化
構造化とは、相手が目標に向かって行動しやすくなるように、環境やプロセスを整えること。やる気に頼らず、思わず行動できてしまうような仕組みを作ることを言います。
例えば、朝ごはんを並べる前に、ドリルを1枚机の上に置いておく。ドリルを始める時間にアラームをかけておく等、親の言葉を介さずにできる仕組みを作ってみてはどうでしょう。
マイクロゴール(小さな達成目標)で進む
親には、「ここまで行ってほしい」という期待がありますが、「続けること」を考えた場合、小さな目標で進んでいく方が効果的。自分で「達成できた!」と思えることに焦点を当てましょう。例えば、「今学期は〇〇を頑張る」では、進み具合を実感できませんが、「一週間で○ページ」なら、進捗を客観視しながら、自分で調整できそうです。「自分にはできた」という達成感は、次なる力になります。
行動のトリガーを作る
「朝のコーヒーをいれたら、心のスイッチをオンする」
「この横断歩道を渡ったら、仕事のことを忘れる」
気持ちのオン・オフを作るために、何か工夫をしていることはありませんか?気持ちを切り替えるためには、トリガーとなる行動を作っておくことがおすすめです。ドリルについても、四六時中、溜まっていることが気になる状態は不健康。
朝起きて、好きな飲み物を冷蔵庫から出してきたらドリル時間。寝る30分前に音楽が始まったらドリル時間。お気に入りのトリガーとなる行動を作ってみてはいかがでしょう。
1日分のハードルは低くする
ついついやってしまうのが、「今日は暇なら全部片付けてしまいなさい」という声かけ。しかし、疲れすぎてしまうと、翌日のやる気が落ちてしまいます。むしろ、「まだできるんだけど」という気持ちで終えた方が、持続力が続きそうです。1日分のハードルは低くすること。そして、時間が余ったからと、余分な学習はさせないこと。続けるために大切なのは、「できた」「簡単だった」と思える環境を作ることです。
「主体的」を意識
親であっても、子どものことを100%理解することは不可能です。子どもには子どもの社会があり、日常があるのです。ドリルの進め具合に関しても、子どもに任せてみてはどうでしょう。「月曜日は疲れているから休みたい」等、子どもなりの理由があるなら、受け入れていきます。主体的に決めることで、子どもの責任感も増すことでしょう。

ドリル学習を継続させるためには、親の関わりも大切です。しかし、溜まってしまったドリルを前に、子どもだって「やらなければならないこと」はわかっているはず。
「わかっているけどできない」状態から脱するためには、褒めたり、励ましたりでは不足かもしれません。基礎学習、反復学習でもあるドリル学習を進めるためには、やる気や意欲といった感情面ではなく、行動に焦点を当ててみましょう。まずは、あまり考えずともできるような、飽きていたとしても「とりあえずやっておこう」と思えるような、そんな環境作りを工夫してみてくださいね。
■ライタープロフィール

江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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