2016年12月5日 公開

海外で働いて今思う:海外文学を読もう

英国で暮らし始めて5年。 異文化に囲まれる毎日で感じているのは、乳幼児・学童期に受けた英語教育や、世界で通用する生活習慣の大切さです。「海外で働いて今思う」シリーズ、今回の記事では、お子さんにこそ親しんでほしい、海外の名作文学をご紹介します。

読書は想像力と好奇心の源

知育・教育に本は欠かせないもの。実際には経験できない冒険をしたり、行ったことのない場所へ行ったり、想像力と好奇心を培う読書という体験は、お父さんお母さんにも素敵な思い出として残っていると思います。

筆者は小学校に上がった時、お祝いとして子供向けの文学全集をもらいました。分厚い本にはあまり挿絵がなく、ぱっと見はとてもつまらなそうだったのを覚えています。でもひとたびページをめくれば、そこに待っていたのはワクワクとドキドキの詰まった冒険の世界でした。

小学生の頃にむさぼるように読んだ知らない国の物語は、筆者の外国への興味や親しみも育んでくれました。初めて挑戦した英語の本には、大好きだった「巌窟王」を選びました。また、「秘密の花園」などイギリスのお話に親しんでいたことが、筆者がイギリスへ渡った動機の一つになっていることも確かです。

お子さんの興味が絵本から文字主体の本に移るとき、ご家庭の本棚に海外の名作を加えてみてはいかがでしょうか。日本には挿絵の入った抄訳版から、ルビ付きの本格的な完訳版まで、素晴らしい訳本が数多くそろっています。次章からは、筆者おすすめの名作をご紹介します。

子供が主人公の作品

秘密の花園

タイトル:秘密の花園(上) (偕成社文庫)
著者  :バーネット(作)/茅野美ど里(訳)
出版社 :偕成社

孤児になったメアリは、 変わり者の叔父の屋敷に引き取られ、広い屋敷に一人ぼっち。最初は気難し屋のメアリですが、秘密の花園を発見したことをきっかけに、イギリスの自然や動物、地元の男の子ディコン、いとこのコリンと触れ合い、大切なものに気づいていきます。

冒険や悪者は出てこない代わりに、イギリス花や動物、季節の描写がとても美しく、想像力をかき立てられる作品。メアリは最初「可愛くない子」ですが、彼女の成長とともに、自然や家族の大切さに温かい気持ちになります。アメリカ人のバーネットですが、彼女の著作には他にも「小公女」「小公子」と、イギリスの子供たちを扱ったものばかり。いずれも思いやりや愛情を題材にしていて、情操教育の一環としてもぜひ読んでいただきたい作家です。

タイトル:小公女(上) (偕成社文庫)
著者  :バーネット(作)/谷村まち子(訳)
出版社 :偕成社

タイトル:小公子 (偕成社文庫)
著者  :バーネット(作)/坂崎麻子(訳)
出版社 :偕成社

エルマーのぼうけん

タイトル:エルマーのぼうけん
著者  :ルース・スタイルス・ガネット(作)/ルース・クリスマン・ガネット(絵)/渡辺茂男(訳)
出版社 :福音館書店

動物島に囚われている竜の子どもの話を聞いたエルマーは、彼を助けるために冒険に出かけます。リュックに詰めた様々な道具で、島の動物たちと知恵比べをしていくエルマー。 竜と共に島を抜け出せるのでしょうか。

小学校低学年向けにやさしく書かれているこの作品。冒険とドラゴンというワクワク要素ももちろんですが、輪ゴムやチューインガム、歯ブラシといった日常のものを使って問題を解決していくエルマーに、自然と感情移入してしまいます。 クランベリーなど日本では馴染みのない言葉が出てくるのも、子ども心には面白いと感じていました。続編の「エルマーとりゅう」「エルマーと16ぴきのりゅう」と共に、何度も何度も読み返したシリーズです。

大どろぼうホッツェンプロッツ

タイトル:大どろぼうホッツェンプロッツ
著者  :オトフリート・プロイスラー(作)/中村浩三(訳)
出版社 :偕成社

舞台はドイツの田舎町。お婆さんの大切なコーヒーミルを盗んだ大泥棒ホッツェンプロッツを追って、カスパールとゼッペルが大活躍! 罠を掛けたり掛けられたり、最後には意外な結末が待っています。

この作品は何と言っても、ホッツェンプロッツをはじめとする、魔法使いや妖精といった個性的なキャラクターが魅力です。悪役にスポットが当たっているのも特徴ですが、泥棒なのに使うのはコショウピストル……といったユーモアも忘れていません。普段なかなか触れる機会のないドイツ文化を身近に感じるきっかけにもなるかもしれません。こちらも2編の続編があります。

旅と冒険の物語

ガリヴァー旅行記

タイトル:ガリヴァー旅行記 (福音館古典童話シリーズ)
著者  :ジョナサン・スウィフト(作)/チャールズ・E・ブロック(画)/坂井晴彦(訳)
出版社 :福音館書店

医師のガリヴァーは世界を夢見て航海に出ますが、その度に遭難しては不思議な国にたどり着きます。小人の国では体の大きさを生かして大活躍し、巨人の国では王様に仕える小人として知恵を絞ります。ファンタジーとリアリティーの混ざり方が絶妙な、冒険小説の代表作です。

イギリス社会に向けた風刺文学として生まれた「ガリヴァー旅行記」。児童向けの絵本では小人の国と巨人の国の前半2篇だけが取り上げられることが多いですが、筆者がオススメしたいのは後半の2篇です。空中都市ラピュータや馬の国フウイヌム、さらには日本にもやってきて、幕府の将軍に謁見します。福音館書店の「古典童話シリーズ」では、ルビ付きで完訳に近い形で全編を読むことができますよ。

十五少年漂流記(原題:二年間の休暇)

タイトル:二年間の休暇 (福音館古典童話シリーズ)
著者  :ジュール・ベルヌ(作)/太田大八(画)/朝倉剛(訳)
出版社 :福音館書店

ニュージーランドの寄宿舎に通う15人の少年たちは、夏休みに乗り込んだ船で遭難し無人島にたどり着きます。船から道具を運んだり大統領を選んだり、少年たちは知恵を出しあって島での生活を始めます。そんなある日、大きな船が難破し、大人たちが島にやって来ます……。

ジュール・ヴェルヌは「海底二万マイル」「地底旅行」など数々の名作を残していますが、子どもたちが主人公の本作はやさしい訳がたくさん出ています。大人の世界を模倣しながらたくましく生きていく少年たちの姿は、他の冒険物語とはひと味違った視点をお子さんに与えてくれるでしょう。原題は「二年間の休暇」と言い、ここでは完訳版をご紹介しています。

2大童話集

グリム兄弟の童話

タイトル:グリムの昔話1 (福音館の愛蔵版シリーズ)
著者  :フェリクス・ホフマン(編・絵)/大塚勇三(訳)
出版社 :福音館書店

グリム兄弟の童話集は、19世紀に彼らが収集したドイツのメルヘン(民間童話)が元になっています。童話は全部で210篇にも及び、「おおかみと7匹の子やぎ」「ヘンゼルとグレーテル」「シンデレラ」「赤ずきん」「白雪姫」など、日本でも古くから親しまれている作品がたくさんあります。

日本では厚紙絵本から完訳版まで、さまざまな翻訳が出ています。お子さんに読み聞かせするなら福音館書店の「グリムの昔話」シリーズがぴったり。 スイスの画家フェリクス・ホフマンによる美しい挿絵も魅力ですし、文庫版も出ています。

アンデルセンの童話

タイトル:絵のない絵本 (少年少女 世界名作の森)
著者  :ハンス・クリスチャン・アンデルセン(原作)/ 鈴木 徹郎(訳)/牧野 鈴子(絵)
出版社 :集英社

アンデルセンの童話は、彼の創作によるものがほとんどです。そのため、キリスト教的な道徳や彼の人生観が表れていると言われています。「人魚姫」「はだかの王様」「マッチ売りの少女」などが有名ですね。また、ディズニーの「アナと雪の女王」は、アンデルセンの「雪の女王」という作品をヒントに作られています。

筆者のお勧めは「絵のない絵本」。貧しい画家の青年が屋根裏の窓から見える月に教えてもらったお話——という設定で、月が見たさまざまな国の人々の物語が30篇ほど収録されています。生涯、旅を続けたアンデルセンならではの作品です。

未来のための作品

モモ:時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

タイトル:モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語
著者  :ミヒャエル・エンデ(作)/大島 かおり(訳)
出版社 :岩波書店

時間とは何か。幸せとは何か。誰もが向き合う難しい問いを、やさしく感動的なお話で教えてくれます。小学校の学芸会で劇をやったこともあり、個人的にとても印象に残っています。こつこつと道路掃除をするベッポや、時の番人マイスター・ホラの話からは、大人になった今でも教えられることがたくさんあります。

同じ作家の「はてしない物語」も、子供の頃に読んでいてよかった!と思える作品。こちらはぜひ、岩波書店版を買うことをお勧めします。物語と本のデザインが一体となった素晴らしい1冊です。

タイトル:はてしない物語
著者  :ミヒャエル・エンデ(作)/上田真而子・佐藤真理子(訳)/ロスヴィタ・クヴァートフリーク(装画)
出版社 :岩波書店

偉大なワンドゥードル最後の一匹

タイトル:偉大なワンドゥードル最後の一匹
著者  :ジュリー・アンドリュース(作)/青柳祐美子(著)
出版社 :小学館
※現在、在庫無し

ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」で主役のマリアを演じたジュリー・アンドリュースの作品。想像力が豊かな人にしか行けない世界で暮らす不思議な生きものワンドゥードルに、兄妹3人と博士が会いに行こうと冒険するお話です。

想像力をテーマにし、挿絵をいっさい入れていないという野心的な1冊。 ワンドゥードルやその世界は、まさしく読んだ人の想像で作られていきます。ただ、筆者が読んでいたTBSブリタニカ版、2008年発行の小学館版、どちらも絶版となってしまったそうですが、もし何処かで見かけた際にはぜひお手に取ってみてください。

親御さんもぜひ、読んでみてください

いかがでしたでしょうか。小さい頃に読んだ記憶のある作品も多かったのではないでしょうか。そういう方は、大人の視線で読み直してみるのがおすすめです。 また、原作が児童書の場合は原語も難しくないので、英語版に挑戦してみるのも面白いですよ。

また、もし読んだことのない作品があったら、ぜひお子さんと一緒に読んでみてください。例えば「ガリヴァー旅行記」の後編2編は、お子さん向けの本にはなかなか収録されていませんので、初めて知られた方もいるのではと思います。

お子さん向けの本は、簡単な言葉で面白く書いてあるだけが特徴ではありません。幼少期に知っておいてほしい、生きるために大切なことがギュッと詰まっています。初めて読んでも、大人になってから読み直しても、必ず新しい発見があります。家族で読んで一緒に楽しめる、海外の名作文学にはそんな魅力が詰まっています。

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この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

Sakiko Sakiko  在英5年目の経済・教育ライター。東京都港区育ち。幼稚園より雙葉学園に通い、慶應義塾大学法学部に進学。大学卒業後は出版関連企業に3年従事した後、渡英。ロンドンの大学院にて出版ビジネスを学び、現在もロンドンで暮らしています。紅茶とバラの国から、お子さんの明日につながる記事をお届けします!