2016年10月27日 公開

海外で働いて今思う:知っておくべき宗教のこと

英国で暮らし始めて5年。 異文化に囲まれる毎日で感じているのは、乳幼児・学童期に受けた英語教育や、世界で通用する生活習慣の大切さです。「海外で働いて今思う」シリーズ、今回の記事では、宗教についてお子さんと考える機会、そして宗教から学べることについてお話ししたいと思います。

英国で暮らし始めて5年。 異文化に囲まれる毎日で感じているのは、乳幼児・学童期に受けた英語教育や、世界で通用する生活習慣の大切さです。「海外で働いて今思う」シリーズ、今回の記事では、宗教についてお子さんと考える機会、そして宗教から学べることについてお話ししたいと思います。

宗教って難しい?よく分からない?

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日本人は「無宗教」とよく言われますが、筆者は 「多宗教なのでは?」と思っています。もともと八百万の神様がいる国ですし、仏教のように新しい教えを受け入れることにも慣れています。一方、外国に比べ、神道と仏教以外の宗教に触れる機会が極端に少ないのも日本の特徴。よく知らない宗教については、 ついついイメージだけで語ってしまいがちです。

一方、前回の記事でもご紹介しましたが、筆者の住むロンドンは多様性の街。世界中からさまざまな人がやって来て暮らしているため、街のあちこちで宗教を目にします。教えにのっとった衣服を着ている人が沢山いますし、異なる宗教の建物が並んで建っている場所もあります。宗教は得体の知れないものではなく、人々の暮らしの一部なのだということを日々感じています。

世界の人々とコミュニケーションする時、宗教は避けては通れない話題。 お子さんたちにもぜひ興味を持っていただきたいトピックです。でも、堅苦しい勉強や議論が必要なわけではありません。 筆者の体験談も交えつつ、宗教について知るきっかけとなるトピックをご紹介します。

宗教の根底には思いやりの心がある

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筆者が幼稚園から通っていた雙葉学園はキリスト教系で、校訓や授業、学校行事にいたるまでキリスト教の教えが浸透していました。その中で繰り返し教えられたのが「弱い人を助けなさい」ということでした。幼少期の、宗教に触れる最初の機会にこうした良い面を知ることができたことは、さまざまな文化が入り混じるロンドンで暮らすのにとても役立っています。

このような教えはあらゆる宗教に存在します。仏教徒が守るべきとされる「五戒」には不殺生のほか、不偸盗(盗みをしない)、不妄語(嘘をつかない)といったことが述べられています。また、厳しい戒律で知られるイスラム教の教典クルアーンにも、「孤児や貧しい人に親切にしなさい」という一節があります。

このように、宗教の中心には道徳の教えがあります。宗教を通じて、人間が長い歴史の中で育ててきた思いやりの形や実践方法を知ることができるのです。それぞれの宗教に目を向ける前に、思いやりの心を持ってもらうきっかけとして、宗教に触れてみてはいかがでしょうか。

物語を通じて思いやりの心を学ぼう

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宗教に根ざした思いやりの精神は、物語として人々の間に語り継がれています。たとえばアイルランド の作家オスカー・ワイルドの名作「幸福な王子」。金銀宝石で飾られた王子の銅像がツバメの力を借りて貧しい人々に施しをし、最後には共に天国に旅立っていきます。弱者を助ける精神とそれを神様が見ていてくださるというあらすじは、キリスト教にのっとったもの。 多くのキリスト教系出版社が子供向けの教えの本として出版しています。

また、仏教の要素が入っているお話としては、宮沢賢治の「竜のはなし」や、バングラデシュの昔話「きんいろのしか」などが有名です。いずれも宗教そのもののために書かれたお話ではありませんが、それぞれの宗教が考える、暮らしに根ざした道徳の心が刻まれています。

一方、宗教そのものを題材にした物語もあります。たとえば「ノアの箱舟」や海を割ったモーセの物語はどちらもユダヤ教の聖書に出てくるお話。道徳的要素は薄いものの、世界中で何千年も親しまれてきた物語です。文化を知る、世界を知るといった観点からも、こうした絵本をお子さんの本棚に加えてみてはいかがでしょうか。

ちなみに筆者は小学校高学年のころ、手塚治虫の「旧約聖書物語」というフィルムコミックでノアやモーセのお話を知りました。その名の通り旧約聖書を漫画にした異色作で、同名のアニメ映画を本に直したものです。「あの頃読んでよかった!」と思える作品の一つです。

幸せな王子 | オスカー・ワイルド, 清川 あさみ, 今井 智己, 金原 瑞人 | 本 | Amazon.co.jp

書名:幸せな王子
著者:オスカー・ワイルド(原作)/清川あさみ(絵)/金原瑞人(翻訳)
出版:リトルモア

竜のはなし | 宮沢 賢治, 戸田 幸四郎 |本 | 通販 | Amazon

書名:竜のはなし
著者:宮沢賢治(作)/戸田幸四郎(画)
出版:戸田デザイン研究室

きんいろのしか―バングラデシュの昔話 (日本傑作絵本シリーズ) | アーメド ジャラール, 秋野 不矩, Sheikh Ahmed Jalal, 石井 桃子 | 本 | Amazon.co.jp

書名:きんいろのしか―バングラデシュの昔話 (日本傑作絵本シリーズ)
著者:Sheikh Ahmed Jalal (原著)/秋野 不矩(イラスト)/石井 桃子(翻訳)
出版:福音館書店

手塚治虫の旧約聖書物語 (1) (集英社文庫) | 手塚 治虫 |本 | 通販 | Amazon

書名:手塚治虫の旧約聖書物語1 天地創造
著者:手塚プロダクション(アニメーション制作)/:手塚治虫(制作総指揮)
出版:集英社

イベントに参加してみよう

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宗教を知るもう一つの機会として、行事に参加してみるのも面白いのではないかと思います。日本で最も身近なのはやはり仏教。お盆や法事はお子さんにとっては退屈な行事かもしれませんが、もしお寺の道具や飾ってある絵などに興味を示したら、是非そこから体験を広げてあげてください。筆者はお寺にあった「絵心経」という、字が読めない人のために文言を絵で表した経典が大好きでした。もちろん内容などは分からないのですが、絵を追いながらお経が読めるため、あれも立派な宗教の経験だったと感じています。

神道の拠点である神社も、初詣や七五三、お祭りなどで赴く機会も多いでしょう。また、日本ではすっかり商業化したクリスマスは、キリスト教を知る絶好のチャンスです。教会ではクリスマスバザーや聖歌隊のコンサートなどが開かれており、信者でなくても参加が可能です。普段行かない場所を訪れるだけでも、お子さんには素敵な体験になるはずです。

一方、キリスト教と並び三大宗教に数えられるイスラム教やユダヤ教、ヒンドゥー教などは日本に拠点が少なく、信者でない人が直接体験する機会はあまりありません。また絵本やお子さん向けの映像作品も少ないのが現状です。そうした時にオススメなのは、前回「世界を知る」でご紹介した地図絵本。これらの宗教は地域文化に密接したものが多いため、食事や衣服といった側面から知ることができるでしょう。

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宗教を知ることは世界を知ること

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宗教に「争いの元」「怪しげ」「自分たちには関係ないもの」というイメージを持っている方は少なくないと思います。実際、事件性のあることだけがニュースとして取り上げられるのですから、「宗教って何だろう」「世の中にはどのような宗教があるのだろう」と興味を持たない限り、ネガティブな印象に偏ってしまいがちです 。

しかし、信者でなくても宗教の教えから学べることはたくさんありますし、 単に「世界には色々な宗教があるんだ」と知ることで、他人を尊重する心を養うことができます。「無宗教」で「多宗教」な日本人だからこそ、柔軟に取り入れることができるのです。学校ではなかなか教えてくれない宗教のこと。お子さんが世の中に興味を持ち、自分の世界を広げていくきっかけとして、今一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

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この記事のライター