2017年8月10日に玄光社より、『絵本作家61人のアトリエと道具』が発売されました。馴染み深いあの絵本が生まれた場所や画材道具、影響を受けた絵本や資料が並ぶ本棚など、絵本好きならたまらない美しい写真が満載です。作家インタビューもあり、制作への熱い思いなどもわかりますよ。
登場する絵本作家61人は……
出版社:玄光社
『絵本作家61人のアトリエと道具』は、今のパパママが子どもの頃からあるロングセラー絵本や、今話題の絵本を世に送り出している絵本作家59組のアトリエを訪問して紹介しているとあって、絵本ファンや絵本好きの間でSNSなどでも話題の本です。
14組のアトリエをインタビュー付きでじっくり、さらに、人気絵本作家43組のアトリエや道具の写真と、さらに最近亡くなった作家さんのお宅も2軒伺って、貴重な資料を公開いただいています。
アトリエや道具、影響を受けた本やオススメの絵本などを見ることができるのは、以下の方々です。
『絵本作家61人のアトリエと道具』掲載作家
加古里子/西巻茅子/tupera tupera/どいかや/ヨシタケシンスケ/いせひでこ/長谷川義史/ささめやゆき/100%ORANGE/きくちちき/せなけいこ
■海外作家のアトリエ
トーベン・クールマン
■亡き作家のアトリエ
かがくいひろし/安西水丸
■アトリエと道具
伊藤秀男/かわかみたかこ/立本倫子/はまのゆか/シゲタサヤカ/北村裕花/新井洋行/山村浩二/はやしますみ/堀川理万子/みやこしあきこ/かとうまふみ/平澤一平/鈴木まもる/えがしらみちこ/市居みか/出久根 育/広瀬克也/たごもりのりこ/降矢なな/たしろちさと/高畠 純/加藤休ミ/岡田千晶/吉田尚令/寺門孝之/とりごえまり/accototo/山口マオ/きたじまごうき/山田詩子/つつみあれい/コマヤスカン/早川純子/ザ・キャビンカンパニー/コヨセ・ジュンジ/あずみ虫/まるやまあやこ/田中六大/秋山あゆ子/加藤晶子/石黒亜矢子/陣崎草子
では、特に気になった作家さん5人をピックアップしてご紹介します。
600冊を超える作品を発表!加古里子さん
著者 :加古 里子(さく・え)
出版社 :福音館書店
91歳の今も現役の絵本作家であり、足りなくなったらすぐ手に入れられる日本製の画材を好み、身近な道具を使って描かれているそうです。
科学や歴史、伝承遊びなど幅広い内容を取り扱う加古さんですが、驚いたのは、その背景にある経験と研究。加古さんは、東京大学を卒業(工学博士、化学技術士)であり、母校の東京大学で、児童文化教育論や児童行動論の講義も行っていたそう。その本棚にはずらりと資料が並んでいます。
子どもたちが興味を追求する努力やそこで得た満足感や達成感というのは、成長の力になる。だから、彼らの興味に応えてやりたい。
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『わたしのワンピース』などの名作を届ける西巻茅子さん
著者 : にしまきかやこ(作)
出版社 : こぐま社
一番眺めているのが、パウル・クレーの画集とあって、納得。同時代のマチスやピカソなどにも影響を受けているそうです。
西巻さんにとっていい絵とは?の質問に
私は、子どもの描く絵が素晴らしいと思っているんです。子どもは自分の心にあるものを迷いなく絵にすることができるでしょう?その結果、絵そのものがその子からのメッセージになっている。絵を描くテクニックではなく、伝えたい、表現したいという人間の心に備わっている本能そのもので描いていると思うんです。
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貼り絵の絵本作家、せなけいこさん
著者 :せな けいこ (作・絵)
出版社 :福音館書店
『いやだいやだ』などは、ご自身のお子さんのために作った本だとか。他にも、息子さんや娘さんがモデルになったシリーズがたくさんあり、目の前に子どもがいると絵が描きたくなるそうです。編集者の方曰く、読み聞かせをするように描かれているのでは、とのこと。
『絵本作家61人のアトリエと道具』では、貼り絵に使った後、大切に保管しているという包装紙のコレクションの一部が見られて、とても興味深いです。
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4年で愛される絵本16冊を生み出した、かがくいひろしさん
著者 :かがくい ひろし
出版社 :ブロンズ新社
50歳で絵本作家デビューし、わずか4年間で急逝されましたが、その間に16冊もの名作を世に送り出しています。
絵本作家になってからも、家族が集まるダイニングの片隅を仕事場にし、創作に励まれていたとか。こちらの『絵本作家61人のアトリエと道具』では、貴重なアイディアスケッチや、娘さんを描いたデッサンなども見られます。今はちょうど年頃のお孫さん達が、かがくいさんの本に夢中だとか。
ぬくもりとあたたかさが感じられるかがくいさんの絵本には、家族に見守られ、一緒に過ごしていた空間で作りあげていた背景があるようです。
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絵本以外にも多様なジャンルで活躍した安西水丸さん
著者 :安西 水丸(作)
出版社 :福音館書店
さまざまな画材を題材やテイストによって使い分けられていたそうで、その使い込まれた道具やコレクション、アトリエの写真は、安西さんの気配が色濃く残り、今にも息遣いが聞こえてきそうです。
直感を大切にし、先にあらすじを決めて描くのではなく、描きながらアイディアを展開していくことが多かったそうで、『がたん ごとん がたん ごとん』もそうして生まれたのだとか。
そういう背景を知ってから絵本を眺めるとまた違った味わいや思いで見ることができます。