大人と子の「面白い」「興味関心」には、実は大きなギャップがある!?共感し、体験を会話で整理するのが大事なのですが……。ではどうやって?家庭内での親子時間が増えてきている今、親子のコミュニケーションについて、東京家政学院大学の和田美香先生に教えていただきました。
親子間のギャップの埋め方や関わり方を知りたい!
コロナ禍に夏休みで巣ごもり生活が長引き、家でできることはやりつくした!もう限界!!という悩みを抱える親も増えている昨今。親子関係や関わり方に新しい視点やヒントがほしい時期かもしれません。
実は、親と子がすれ違う時は、お互いの認識に大きな差があることも。
こちらは、幼児教育の研究者の方々に、幼児期に大切にしたい家庭での学びや関わりについて語っていただく連載「小学校入学以降の学びを支える土台を幼児期に育むために、知りたいこと」。
4回目は、家庭内での親子時間が増えてきている今、親子のギャップの埋め方や関わり方、姿勢、会話の重要性などについて、東京家政学院大学の和田美香先生に教えていただきました。
東京家政学院大学現代生活学部児童学科准教授。保育園保育士や幼稚園教諭を経て、近畿大学豊岡短期大学・国際学院埼玉短期大学・東洋大学で非常勤講師などを務めたのち、現職に。専門分野は保育学。共著に『子どもの姿ベースの新しい指導計画の考え方』(フレーベル館)、『保育・子育て支援演習』(萌文書林)、『指導計画の書き方』(チャイルド社)など。
親と子では、そもそもの「興味関心」に大きな違いがある!
——コロナ禍で、保育園や幼稚園もお休みや自粛が続きました。家庭で過ごす時間が増えた中、小学校入学前にいろいろ取り組まないといけないのでは、と焦る親も増えているようです。親が導きたいことと、子どものやりたいことがなかなか一致せず、苦労する声も多く聞くのですが……。
和田先生:子どもの「興味関心」を引き出そう!とよく言いますけれど、実は親の思う「興味関心」と子どもの「興味関心」は大きく違うことも多いのです。
大人の興味関心は、何かをできるようになるためのもの。子どもの興味関心は、やりたいからやるもの。
親は何かを「できるようにする」ために、子どもの興味関心を引き出そうとしてしまいがちです。でも、そういう意図で提示すると、子どもは興味を示さないし、すぐにはできないので、親はイライラしてしまうのです。
共感が重要!一緒にいると面白い・楽しい親になれば子も伸びる
——では親はどういう役割をすればいいのでしょうか?
和田先生:親の方が、子どもの興味関心に寄っていくことが大事です。
そして、子どもの興味関心ごとを一緒に喜んだり不思議がったりすると、子どもは「また何か楽しいことを伝えたい!」と思います。そこから新しい「興味関心」が始まり、「学び」の土台になっていくのです。
自分がどう感じているかを親がわかってくれていると、子どもはとても安心します。子どもに共感し、信頼される存在になることがとても大事なのですね。
一緒に楽しみたいと思っても、忙しくて寄り添えない時があると思います。「○○があったー」と言われたら、「○○があったね」と、子どもの発見をただ繰り返すだけでもいいので、心がけてみてください。
「これ面白いよ」とダイレクトに言ってもダメ!?子どもが学びを面白いと思う導き方
——子どもの興味に寄るばかりでは、偏りがあるのではと心配してしまいますが……。
和田先生:確かに好き放題だけではだめかもしれません。「好きなように遊びなさい」と言ってもできない子だっています。「信頼」という土台ができたら、「学び」への入口を作ってあげることが必要です。
——子どもに「学び」を面白いと思わせるにはどうすればいいでしょうか?
和田先生:子どもにヒットしそうなものを、いろいろ試してみましょう。けれども、「面白いから、やってみたらどう?」は子どもに響きません。大人だって、「面白いよ」といきなり趣味や勉強を薦められても、すぐには興味を持てませんよね。
そもそも、子どもは大人と言葉の受け取り方が違い、「面白い」「楽しい」などという抽象的な言葉にはピンとこないことが多いのです。「将来困るからやりなさい」なんて言われても「困るって何?」と思うだけです。
「わー!これピカピカ光っているね~!」とか「これ、なんだろう?お魚かな?」など、わかりやすい具体的な言葉でアプローチしてみてくださいね。「これパパ(ママ)が好きな色だなあ」のように、親が興味を持っていることに共感したり、自分の意見を言ったりしやすい声かけも良さそうです。
幼児期は「すっきり」する感覚を体験させることが大事
——具体的には、どういう声かけや体験をすればいいのでしょうか?
和田先生:生活の中で触れる機会を増やしましょう。例えば数への体験に誘いたいのであれば…「お箸とお茶碗を1人分ずつ並べる(1対1対応)」や、「洗濯物をたたみ、種類別に分類する」「洗濯物をタンスの引き出しの○番目に入れる」など、有用なシーンは日常にたくさんあります。
買い物なら、「一皿ください(単位)」「1個のパックに6個入っているね」「これとあれは違うものだけど、同じ値段だね」「100円玉1枚と10円玉10枚で買えるものは一緒だね」など、数を意識して会話するのも効果があります。
子どもが感覚で理解しているものを言葉にすることが大切です。子どもの体験は、そのままだと、ごちゃごちゃしたりぼんやりしたりしているもの。感覚を言語化して概念にして整理するのが重要なのです。
お片づけもそうですが、ごちゃごちゃと散らかっていたものを、秩序に従って片づけ、引き出しにきちんと収まると「すっきり!」して気持ちいいのです。感覚や概念も同じです。
少しずつ身の回りのものの「秩序」や「基準」を発見することで、どんどん物事がすっきりクリアに見えていきます。そんな体験を積み重ねていくと、自然に数の感覚や概念が身についていくはずです。
伸びる時期もタイミングも違う!環境と経験を子に合わせて整える
——数に興味を示さない子はどうしたらいいでしょうか?不得意はどこまでそのままにしていいのでしょう?
和田先生:机に向かって数のワークを解くのが苦手とか、数に興味を持てない場合は、その子が興味のあることからアプローチしましょう。運動が好きな子なら「縄跳び1000回飛ぶ!」とか、料理に興味があるなら「カレーを何回混ぜる?」など、それぞれの体験に数を寄せていくといいです。「1000回ってどのくらい?」「混ぜる、って目に見える物じゃないけど数えられる!」と、体験が膨らみます。
体験不足で数や算数が不得意になってしまうのは、とても残念です。
そして、数の体験でも、ワークでも、間違えること自体は気にすることはありませんし、正解が早く多く出せれば良いというわけでもありません。子どもによって、伸びる時期もタイミングも違うので、環境や経験をその子に合わせて整えてあげられると良いですね。
子どもが親や周りを気にせず堂々と間違えられることが大事
——ついつい「全部間違えなかったね!」「すごい!全部正解!」などと正しく解答できることをほめてしまいがちですが、間違うのもいいことなのですね。
和田先生:子どもには子どもの理屈や事情があって、間違えたりできなかったりします。
子どもの説明を聞いて「こんな風にみえていたんだ」と親子で発見や経験を一緒に刻んでいくのが重要なのです。
「ほら、間違えた!」と指摘をするのでは、信頼の土台を崩してしまいます。「間違えたり、できなかったりする方が面白い」くらいに考えましょう。子どもが臆せず間違えられることって、とても大切なことなんですよ。
「こんな風に試行錯誤して数を覚えていったんだ」と、記憶に残る時間を作ってあげる方が、子どもの生きる力に繋がっていきます。成長の過程を一緒に楽しんでくださいね。
自由度が高い「おやこワーク」は「共感」を生みやすいツール
——和田先生は、家庭学習教材「できるーと」の中で子どもが繰り返しチャレンジできるワークアプリの中の「おやこワーク」を指導されているのですね。
ワークは、放っておいても子どもひとりで楽しそうに解いてくれるのが親としては助かる……ことも多いのが正直なところ。親子で一緒に取り組むメリットやコツを教えてください。
和田先生:「できるーと」は、絵がかわいくて、子どもが夢中になれる仕掛けがいっぱいあります。「おやこワーク」は子どもが出題者になって、オリジナルの問題を作ることができるワークがありますが、私はその中の、親子のコミュニケーションのヒントになるコメントを考えました。
子どもに出題意図や過程など、問題について説明してもらいましょう。説明するということは、まさに言語化するということです。説明しているうちに、数や他の概念もしっかりしてきます。思考力が育ちますし、コミュニケーション力も養われます。
コツは、その問題を親がワザと間違えたり、「わからない~」と言ったりすることですね。演技力が必要です!そうすると、子どもは一生懸命教えてくれます。説明がもどかしいからと「わかったわかった」と遮るのはもったいないですよ。
「何番目?」などの日常経験を「できるーと」ですっきり整理!
和田先生:例えば「車のおもちゃを3つカバンに入れた後に、もう2つ入れたら、カバンに車のおもちゃがいっぱいになっちゃった!」という経験は、小学校に入ると算数で3+2=5という式に整理されます。
未就学児の時に、小学校で式を習う前のワンクッションとしてとても効果的なのが、「できるーと」のようなワークを利用することです。感覚的な経験をよく整理でき「あー、そういうことだったのか」とすっきりできます。 親も何が課題なのか、何に困っているのかがわかります。
和田先生:親子で池や水族館に行ったら、泳いでいる魚を数えてみてください。自由に動き回っているので、順番も入れ替わり、何匹いるのか数えにくいという体験ができます。その後にワークえほんで取り組めば、イラストなら、同じ向きで動かないから数えやすいことを実感できます。「魚は泳いでいると数えにくいけど、並べてみると何匹いるか数えやすいね」と、実際の体験をワークで整理するとすっきりするのです。
そんな風に生活の中の体験と、ワークえほんやアプリを行き来しているうちに、「こういうことか」と頭の整理がつき「すっきりする」という感覚がぐんぐん育ちます。さらに「おやこワーク」で言葉にして説明することで、思考の道筋をつける力がつくのです。
アプリが好きな子はアプリからやればいいし、えほんからアプリで試行錯誤の経験をするのも◯。「できるーと」は刺激のあるいい教材だと思いますよ。
--ありがとうございました!
(取材・文/小栗素子)
↓過去の連載「小学校入学以降の学びを支える土台を幼児期に育むために、知りたいこと」記事は↓から
白川佳子教授に聞く【幼児期に育みたい非認知能力】学びに向かい、やり抜く力
幼児期に育てたい数量・図形・文字等への関心・感覚とは|無藤隆名誉教授
「学力の経済学」中室牧子教授に聞く幼児期の【かずの学びの重要性】
「できるーと」とは?
『できるーと』 は絵本(アナログ教材)とアプリ(デジタル教材)のそれぞれの特長を活かしつつ、思考力・発想力を育てられる家庭学習教材です。
ワークえほん×ワークアプリ×おうえんアプリの3つの教材からなり、デジタル教育コンテンツに力を入れる凸版印刷と、絵本や保育教材の出版社のフレーベル館がタッグを組んだサービスです。
「ワークえほん」はストーリーを楽しみながら、鉛筆で書いたり貼ったり切ったりする体験を通して、数や量、図形について学んでいきます。
「ワークアプリ」では、ワークえほんで身につけた基礎を活用して、自分なりの考え方や解き方で工夫しながら問題に取り組みます。理解度に合わせて徐々に難易度を上げながら、繰り返しチャレンジできる問題をたくさん収録しています。自分でオリジナルの問題を作ることもでき、理解がぐんと深まります。
「おうえんアプリ」は保護者用のアプリです。子どもの学習状況がリアルタイムにスマホに届き、教え方やほめ方など適切な指導の仕方がわかります。一日の学習の振り返りとして、子どもができたことを具体的にほめることができ、自尊心と自己効力感を高めることに役立ちます。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
考える力を絵本×アプリで楽しく育む新教材「できるーと」【体験取材】
【体験談】「できるーと」使用レポート
絵がカラフルで可愛いので、すっかりお気に入りに。下の子(2歳半)も一緒になって楽しんでみています。
ワークえほんをやってからワークアプリでもやってと、反復学習をすることで、理解度が早くなってきています。
ワークアプリだと、正解も間違いも自分ですぐにわかるので、子どものペースで好きなように進められるのも良いですね。
今までは、「今日はここまで一緒にやろう」と、親もついつい口出ししてしまうのが、アプリだと自ら進んで前に進みたい気持ちが高まっていました。
間違った場合も、なんで違っていたのか、自分でヒントを見ることで、親に聞くのではなく自分で進めていこうという意欲にもつながっているようです。
そして、親も子どもが間違えやすいポイントがわかるようになってきたのも嬉しいポイントです。
(5歳・年長・女子)
■監修:無藤隆/白川佳子
■指導:和田美香/吉永安里
■企画/編集:凸版印刷 教育事業推進本部
■対象年齢:4・5・6歳
■66ページ/全面カラー
■算数力の基礎となる、物の特徴を正しく捉える力、物の数や順序を数字で表す力を育めます。
※アプリ利用料を含む
■出版社:フレーベル館
■監修:無藤隆/白川佳子
■指導:和田美香/吉永安里
■企画/編集:凸版印刷 教育事業推進本部
■対象年齢:4・5・6歳
■66ページ/全面カラー
■身近な物や生活体験をもとに、たし算・ひき算の基礎力や、お金や時計などの概念を理解する力を育めます。
※アプリ利用料を含む
■出版社:フレーベル館
■監修:無藤隆/白川佳子
■指導:和田美香/吉永安里
■企画/編集:凸版印刷 教育事業推進本部
■対象年齢:4・5・6歳
■70ページ/全面カラー
■比較や図形の学びを通じて、多様な視点から物事を捉える力や論理的思考力を育みます。
できるーとが気になった方はこちら
アプリのダウンロードはこちらからどうぞ。一部、おためしコンテンツを無料で利用可能です。
※ワークアプリのおためしコンテンツ以外の問題やおうえんアプリは、ワークえほんをご購入いただいた方のみ、利用できます。
※ワークアプリはタブレットでの利用、おうえんアプリはスマートフォンの利用をお勧めします。タブレット・スマートフォンはご家庭でご用意ください。