教育が多様化する中、学校を選ぶ尺度も複雑化してきています。今や、自分達が持っていたイメージとは様変わりしている学校も多く、なかなか決められないという声も…。また、進路やカリキュラム等、言うなら「良い点」については、各学校のホームページ等でも確認できるものの、例えば問題が起きたときの対応など、親が本当に知りたい情報は、なかなか手にすることができません。SNSには興味深い内容が示されていることもありますが、それらの情報に引っ張られるのは要注意。あくまで、どなたか個人の主観であり、参考程度にしかなりません。
3年、6年と過ごす、「子どもに合った学校」をどう選ぶか。まずは、候補となりうる学校を見つけ、その後受験する学校を選んでいく。各々の段階で意識したいポイントをまとめました。
学校選びは誰がするの?
「受験をする!」たくさん悩み、何日も考え、さんざん議論を交わしてこの決定に至った後に始まるのが、学校選びです。「受験をする!」の背景には、ぼんやりと「この学校に子どもを通わせたい」という願いがあるのは皆共通。しかし、いざ受験をするとなると、単なる憧れだけで進むことはできず、親にとっては悩ましい「学校選び」始まります。
学校は誰が選ぶのか。この問いへの答えは、校種によって異なります。例えば小学校受験なら、ほぼ100%親が決めるでしょう。中学校受験の場合、最終的には子ども本人が選ぶにせよ、親が選んだ複数校の中から、子どもが選択するというのがほとんどかと。家庭によって状況は異なるものの、高校受験、大学受験と、徐々に本人が選ぶ受験へと移行していきます。
「いい学校」の基準
「いい学校」とは、どのような学校でしょう。偏差値という数字は、確かに一つの基準になるでしょう。しかし、教育が大きく変わる中、学校の取り組みは実に多様になり、重点を置いているカリキュラムや方針にも、学校のカラーが色濃く出てきています。
そもそも、大学入試自体が圧倒的に推薦入試へと移行する中、進路実績等の見方にも、新しい観点が必要です。偏差値という数値化された基準だけで「学校」の価値を測ることはできません。
「いい学校」の定義は「子どもにとってのいい学校」です。子どもが過ごす6年、3年間に目を向けて、「この子」にとっての「いい学校」を見極めていく。「受験をする!」と決めたのなら、全力で子どもにとっての「いい学校」を探していく。親の関与が大きい受験であるなら、このような心持ちが必要です。
学校の選び方① 候補となりうる学校を見つける
星の数ほどある学校です。新設校もたくさん出てきていますし、学校の特色も、過去とは様変わりしています。学校を選ぶ際には、自分の持っているイメージを横におき、先入観なく、一つひとつの学校に目を向けていくことが大切です。伝統校であっても、進学校であっても、自分たちが見てきた学校とは異なる学校になっていることを、くれぐれも意識していきましょう。
その上で、複数の学校の中から「子どもにあっているかもしれない学校」を「見つける」ポイントをまとめます。
教育方針・理念
言うまでもなく、学校の方針や理念はとても重要です。ここが合っていないと、入学した後、親も子も困ることに。学校のHPやパンフレットに書かれている文章を深く読み取り、家庭の教育方針と合っているか、確認をしましょう。
カリキュラムと学習環境
教科学習に留まらず、今や学校はさまざまな学習機会を提供しています。学校が提供しているカリキュラムや特別プログラムは、是非チェックしましょう。学校が、どういった生徒を育てたいのか、卒業後にはどうなってもらいたいのかが見えてくるはずです。
また、学習環境として、どのような環境を整えているのかも参考に。理想だけを追求しているのか、実際に取り組んでいるかがわかります。
校風・文化
ここは、実際に足を運ばないとわからない部分ですが、生徒の雰囲気や学校の文化が、子どもに合っているかどうかも大切なポイント。数値化も言語化もできませんが、その環境に身を置けば、何かを感じるかもしれません。
アクセス
もちろん、学校までのアクセスも重要です。時間帯によって、電車やバスの所要時間、混雑具合は異なります。放課後の塾や習い事、部活動との兼ね合いも鑑み、通えるかどうかは、しっかりチェックしておきましょう。
保護者の関わり
小学校の場合、学校によっては保護者の力が大きく期待されていることも。それをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは、家庭によって異なります。また、何かあった時に、保護者へのサポート体制ができているかどうかも要チェックです。
学校の選び方② 受験する学校を選ぶ
さて、上記のようなプロセスを経て、「いいな」と思う学校が複数見つかったとしましょう。難しいのは、その先です。志望校となる学校を「選ぶ」という段階です。入学してから「あっちの学校の方がよかった」と思うことがなきよう、納得することがとても重要。そのための視点を3点紹介します。
学校側の姿勢をみる
学校説明会には、当然足を運ぶ必要がありますが、その際に「いい話を聞けた」で終わってしまっては、学校選びにはつながりません。説明会は学校側の姿勢をみるための、絶好の機会です。
例えば、良い点ばかりをアピールしているのか、難しい点もきちん伝え、その上で、どのような対処をしているかまで語ってくれているのか。子どもが集団で過ごす場には、いろいろあって当然です。学校がその問題をどう捉え、どう対応しているか。そこにはどのような体制が整っているか。そんなことまで聞いてみることができれば、選ぶための判断材料になりそうです。
ハード部分にも目を向ける
説明会では、学校内を見学できます。特別教室を始めとした新しい学習環境や広い講堂、体育館など、魅力的な部分に目が向くことでしょうが、あえて言葉が添えられていない部分にも、目を向けてみてください。
例えばトイレの清潔さや、飾られている草花。生徒の作品の展示の仕方や、下駄箱の様子など。子どもが育つ場としての違和感はないか、先に聞いた学校側の説明とにギャップがないかなど、細かく見てみると良いでしょう。
日常の学校を見る
説明会は特別な場。生徒もよそ行きの顔をしていることが、多々あります。説明会以外の「日常の学校」も、余裕があれば是非見てみましょう。最寄り駅から学校までの道のりでは、いつもの生徒の様子がつかめます。
ご自分の好き、嫌いではなく、生徒達が醸し出す雰囲気が、子どもに合っているかどうか、楽しく前向きに伸びていきそうかなど、想像力を働かせてみてください。
子どもも学校選びの参加者にする
小学校、中学校の場合は、学校選びに親の関与、判断は不可欠です。しかし、子ども不在で学校を決めてしまうのは考えもの。たとえ、「この学校がいい」という意見がまだ子どもになくても、そもそも学校という概念がなくとも、「どの学校に行くのか知らなかった」というのは避けたいものです。
一緒に学校に足を運んでみる。そして、その日が楽しかったか、その学校が素敵だと思えたか、そんな質問を、子どもにも投げかけてみてはいかがでしょう。それは、決して「あなたが決めたのよ」と、責任を子どもに追わせるという意味ではありません。学校に入ってからの日々を楽しく過ごすためにも、受験という営みを楽しみに感じ取ってもらうためにも、子どもも参加者にすることは大切だと感じます。
■ライタープロフィール
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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