ようやく決まった我が子の保育所。なかには、信頼関係がつくりにくい、子育ての悩みを相談しづらい等、保育所との付き合い方には難しさもあるかもしれません。とはいえ、保育者は保護者の次に子どものことをわかってくれている大人の一人。また、子どもは保育所と家庭、両方に身をおき、幼児期という大切な次期を過ごしているのです。
保育所と上手に付き合い、子育てのパートナーとなれる関係性をつくっていくことは、子どものためにも、自分のためにも最重要と言えるでしょう。
専門家である保育者に何でも相談できる関係性を構築し、子育てしやすい環境を作っていきましょう。子育ては、一人で行ういとなみではありません。
時代とともに変化する保育所
働く女性の増加とともに、保育所の量は増え続けています。保育所不足が深刻だった頃と比べると、未だ待機児童が多い自治体もあるものの、少しは入園しやすい状況が整ってきている様子です。背景には、保育所への給付制度が変わり、0歳児から2歳児の受け入れ数が大きく増えたこと、企業主導型保育園が増えたことなどが挙げられます。認定こども園も誕生し、保育の「量」の拡充に向かって、様々な取り組みがなされているということです。
平成27年にスタートした、子ども・子育て支援新制度では、「量」のみならず、「質」の側面からも、子育てを社会全体で支えることが目指されたため、「保育の質」についての現場の意識も高まってきています。「保育の質向上」を目指した園内研修を活発に開催する園も増え、保育者が自己研鑽を積むための、外部の研修も充実してきています。
保育者不足は、未だかなり深刻ですが、潜在保育者の発掘や民間の力の導入も検討され、日本における保育所事情は、「子ども達のために」日々変化し続けている様子です。
保育所選びの前にすること
保育所選びに関しては、口コミが気になり、どうしてもネットにある情報を頼ってしまいがちかもしれません。しかし、多すぎる情報は、時として決定を難しくしてしまいます。個人の価値観で書かれた情報には偏りがあること、強い口調に引っ張られてしまうこと等もあり、ネットサーフィンが始まってしまうと、本当に大切なことが見えなくなってしまいます。まずは自分たちが必要とするものを整理してから、保育所選びをすることをおすすめします。
思考の整理をする際には、「書き出すこと」。保育所に求めることを、ありったけ書き出してみると、我が家にあった保育所のイメージがつきやすくなるでしょう。
子どもと保育者の関係を重視するのか、子ども同士の関わりを重視するのか。子ども主体の保育を求めるのか、体力や知育重視の保育を求めるのか。できるだけ自分のストレスを減らすために、親に優しい環境を選ぶのか、多少の無理をしてでも、子どもの経験を重視するのか。誰が預け、誰が迎えにいくのか、病気等で登園できないときにはどうするのかも含めて、シュミレーションをしてみるとよいでしょう。
保育所との付き合い方のコツ
さて、このような長い道のりを経て、親子でお世話になる保育所が決まったら、今度は人と人との関わりのスタートです。人間同士の関わりとなると、苦手意識を持ってしまうこともあるかもしれませんが、保育者は保護者の次に子どものことをわかってくれている大人の一人です。良好な関係に向かうための、保育所との上手付き合い方についてご紹介します。
送迎時はコミュニケーションのチャンス
子どもの送迎時は、保育者とのコミュニケーションが取れる貴重な機会です。まずは、この時間を生かして、子どもの先生との「話しやすい関係」をつくりましょう。朝の登園時は、園児の受け入れに忙しい先生が多いため、雑談はなかなかできませんが、それでも笑顔で挨拶、昨晩の家庭の様子の報告は忘れずに。家庭からの報告は、一日の保育をすすめる上でも重要ですので、先生方は好意的に聞いてくれるはずです。「元気でした」だけでも、OKです。
降園時はゆっくり話すチャンスです(園によっては、担任が玄関対応をしていない、シフト制になっている等で、対面のコミュニケーションが取れないところもあり)。園での子どもの様子を聞いてみるとよいでしょう。相談したいことがある場合には、他の保護者とバッティングしないよう、少し時間をずらしてお迎えにいく、事前に相談したいことを連絡帳に記入しておくこともおすすめです。
子どもの先生と「話しやすい関係」を作っておくことは大切です。日々のコミュニケーションが、関係構築の土台となります。
保育参加は可能なら参加しよう
保育参加(保護者が保育に参加するイベント)は、保護者が園の中に入る貴重な機会です。子どもの様子の把握、園の方針の理解、保育内容の確認、更には保育者の子どもへの対応から子どもとの関わり方を学ぶ等、保育参加から得られることは数多くあります。他の児童を見ることも、我が子への客観的視点につながります。
また、園への参加を通して、子どもとの対話に「園の話題」を入れることも可能となります。自分の「昼間の世界」を親に見てもらえることは、子どもにとっての喜びかもしれません。そして、保育参加を通して、保育者との距離が縮まることも間違いなしです。
困った時には担任の先生に相談を
子育ての困りごとは、なかなか他人には相談しづらいもの。そこで頼りになるのが園の先生です。子どもの保育をする他、保護者の子育てを支援することも、保育者の業務として制度上で位置づけられています。つまり保育者は、保護者の子育てを支援する専門家でもあるということ。小さなことでも、気がかりがあれば、相談にのってもらうとよいでしょう。
担任の先生では判断がつかない場合には、上の先生にあげて、園全体としての考えをいただけますし、守秘義務もしっかり保たれているので安心です。ネットに書かれている信憑性のない回答を見るより、「我が子」を中心においた専門家からの回答のほうが、ずっと納得する結果に近づきそうです。
相談を通して、家庭の子育て観を保育所に知ってもらうこともできるでしょう。お互いに深く知りあうことで、良好な関係性構築にむかえるはずです。
保育所は子育てのパートナー
大切な子どもを預け、共に成長を見守る保育所との間には、信頼関係が必要です。そして、上手に付き合っていこうとアプローチをしていくことが、信頼関係の土台となります。信頼関係とは、「片方がもう片方に何かをやってあげる」という、一方向の関係ではありません。両者が相互に補完しあい、相互に尊重しあってこそできるものです。
保育所との関係を「パートナー」と思ってみてはどうでしょう?子どもは家庭だけで育つわけではありません。もちろん、保育所だけで育つわけでもありません。子どもは保育所と家庭、両方に身を置き、幼少期という人生の土台ができる時期を過ごしていくのです。
両者が同じ方向を向き、子どもを育てていく姿勢が重要であることは言うまでもありません。そして、両者の間に「パートナー関係」があれば、それが実現できそうです。子どものために、そしてご自身のために、保育所と上手に付き合っていってくださいね。
■ライタープロフィール
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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