2021年08月16日 公開

コーチングとは 〜親子対話で育む社会情動的スキル〜

『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第2回は、子育てにおけるコーチングと社会情動的スキルの重要性をお届けします。

           
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新・家庭教育論社会情動的スキル

幼児期の家庭教育の意義は、親子の関わりを通して子どもを尊重し、人生の基盤を作ることにあります。日々、子どもにどのような言葉を投げかけるかが問われます。
子育てにコーチング的な関わりを取り入れていくことで、考える力や表現力の育成とともに、子どもの自己肯定感が育つ可能性も。親子の対話を通して、その後の学びの土台が形成されます。

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子育ての前提

ピクニック親子

子どもの成長を考える時、どうしても同年齢のお子さんが基準になってしまいませんか?この子はこの子。頭ではよく分かっているはずなのに、◯◯を上手にやってのけるお友達を見ては、心がざわついてしまいます。我が子の幸せを願うからこその、親の生理反応の一つと言ってもいいかもしれません。

親の学びは、子どもの発達を知ることとともに、親の不安を軽減することにも、その意味合いがあります。少子化に伴い、小さい子どもと接する経験もなく、ある日突然親となるのが、今という時代の特徴。
頑張り過ぎは持続しません。「子育ては一人でする時代ではない」ということを意識し、悩んだら学ぶ。困ったら誰か(地域社会)とつながる。このような考え方を備えることが、子育ての質を高めます。

2015年に、子ども・子育て支援新制度という制度がスタートしました。幼児期の教育や保育、地域の子育て支援の「量」の拡充や「質」の向上を進めていくためにつくられた制度です。子どもたちがより豊かに育っていくための支援を目指し、社会全体と保護者とが協力しながら子どもを育てていくこと、子育てしやすい地域づくりを行うことなどに、重点がおかれています。

親の子育てを尊重し、社会全体で「子育ち」を支援していく時代に…。子育て中の保護者がより安心して、安全な環境で子育てができるような取り組みが、国をあげて進められているということです。子育てとは、一人で取り組むいとなみではありません。このような意識を持つと、少しは子育てがラクになるかもしれません。

家庭だからこそできる幼児期の教育

家庭だからこそできる幼児期の教育を考えてみましょう。文部科学省のHPには、家庭教育に関し以下の記載があります。

家庭教育は、すべての教育の出発点。家族のふれ合いを通して、子供が、基本的な生活習慣や生活能力、人に対する信頼感、豊かな情操、他人に対する思いやり、基本的倫理観、自尊心や自立心、社会的なマナーなどを身につけていく上で重要な役割を果たしています。
(子どもたちの未来を育む家庭教育| 文部科学省HP https://katei.mext.go.jp/contents1/index.html)

保育園や幼稚園とは異なり、基本的生活習慣やしつけ、人として生きていくための基本的な姿勢を学ぶことが家庭教育の役割と定義されています。「家族のふれ合いを通して」とある通り、親子の関わり合いが土台となり、人としてのあり方を身に付け、心を育てていくということです。

幼少期の家庭教育に必要なのは、子どもの成長を急ぐことではありません。子どもの「今-ここ」をしっかり見て、人としてのあり方を育てていく。親子の関わりを通して子どもを尊重し、これから始まる人生のしっかりとした基盤を作ることこそ、家庭で取り組める最高の教育です。

・今の子どもにしか見えない世界があります。
・まだ言葉を完璧に話さない子どもだからこその、豊かな感情があります。
・今しか見られない子どもの表情があります。
・今しか聞こえない子どもの声があります。
・今しか触れ合えない親子時間があります。

どれだけテクノロジーが進化しても、時間を逆戻りさせることはできません。完璧を手放し、今という時期にある子育ての喜びを感じていくことが、家庭だからこそできる幼児期の教育とも言えるでしょう。

コーチングとは

新・家庭教育論コーチング

子どもは環境に応じて育ちます。その環境には「人的環境」「物的環境」がありますが、幼少期の子どもは「人的環境」、つまり親の影響を大きく受けて育ちます。毎日子どもにどのような言葉を投げかけるかによって、子どもの心は変わっていきます。

ここでは、コーチングというコミュニケーションスキルを示しながら、「子どもの力を引き出すコミュニケーション」について考えていきたいと思います。

ビジネスの世界から始まったコーチング

コーチングの語源は馬車(コーチ)。馬車に乗せた人を目的地まで運んでいくという意味合いで、コーチングという名前がつけられています。
具体的には、会話を通して相手の本当の気持ちを引き出し、相手の自発的な行動を促すことを目的としたコミュニケーションスキルのこと。

ビジネス界では、やる気や自発性を引き出すマネジメント手法として利用されています。現場の声を尊重するボトムアップ的なリーダーシップを組織に取り入れるにも有用であり、多くの企業が人材育成や組織活性化を目的として、コーチングを導入しています。
スポーツ界で言うなら、技術面をサポートするフィジカルコーチに対して、メンタル面のサポートにて、コーチングスキルが活用されています。

子育てにも取り入れられるコーチング

子ども達に求められる力は大きく変わりました。正しい知識をどれだけ持っているか、つまり、教えたれたことをどれだけ記憶しているかという、かつて重視された力は影を潜めてきました。
これからは、人間がAIやロボットと共生していく時代、正解さえない時代です。新たな社会(Society5.0)においては、学校教育もVer.3.0の時代に突入、そこでは「能動的な学び手(アクティブラーナー)」を育てることに主眼がおかれています(文部科学省資料)。

能動的な学び手を育てるために必要なのは、文部科学省の言うところの「主体的・対話的で深い学び」。この学びを実現する上で、実はコーチングはとても有効なのです。ティーチング、つまり教員が正解を教えるだけの授業は限界をむかえ、コーチング(引き出す)ことを取り入れた授業が実践されるようになりました。

親子のコミュニケーションにコーチングを取り入れる、子育てコーチングの人気も高まっています。子育てにコーチングを取り入れると、どのようなことが起きるのでしょう。
以下に、子育てにコーチングを取り入れることによる成果と、それを導き出すための問いの例を示します。

・子どもの思考力を高めることができる問い
「どうしてだろう?」

・子どもの思考の整理を助けることができる問い
「一番今やってみたいことって何?」

・子どもの表現力を高めることができる問い
「それってどういうことか、お母さんに教えてくれる?」

・子どもの自己肯定感を高めることができる問い
「あなたならできるよ!何があったらできるかな?」

・子どもの主体性を促すことができる問い
「どっちがいい?どうしたい?」

見通しのたたない時代にある子育てでは、親が子どもに道筋を示してあげることはできません。価値観が多様化した現在、親の古き価値観を子どもに押し付けること自体が、子どもの可能性に制限をかける行為となってしまいます。

今、親にできることは、子どもと共に未来を創造すること。そのために、コーチング的な関わりはとても有用です。
コーチングを基準とした親子対話は、家庭だからこそできるいとなみであり、子どもを尊重した関わり合いです。子どもの心が逞しく育っていくことでしょう。

これからの時代に必要な社会情動的スキル

近年注目されている「社会情動的スキル」というスキルがあります。このスキルには多くの定義がありますが、例えば感情のコントロール、他者との協働、目標の達成といった力を指しています。

社会情動的スキルについての記事はこちら↓
非認知能力とは? 子どもの「生きる力」を伸ばすためにできること

これらの「見えない力」の重要性が明らかになると共に、先にも述べた通り、教育には大きな変化が起きています。従来の暗記型の教育から自ら考える力の重視へ…。それに伴い、大学入試はもとより、中学入試問題でも、「思考力」「表現力」「分析力」等が問われるようになりました。

文部科学省が2019年から実施している教育改革においては、すべての子どもに育成すべき「資質・能力の3つの柱」として、「知識・技能の習得」「思考力、判断力、表現力等の育成」「学びに向かう力、人間性」が定義されています。
3つ目の「学びに向かう力、人間性」は、1つ目と2つ目の柱を用いて、学んだことを社会や人生に生かそうとする資質・能力で、社会情動的スキルに近い力と捉えられています。戦後最も大きな教育改革と言われる今、従来の知識偏重型の教育は、徐々に姿を消しつつあるようです。

社会情動的スキルは親子対話で育まれる

笑顔の家族

これからの教育はどうなっていくのでしょうか。個人が他者と協働しながら、主体的に自分の道を切り開いていく、このような力を幼少期から育てていくことに重点が置かれていくことは間違いないでしょう。そして、協働の原点も、主体性の原点も、家庭にあると筆者は考えます。

家庭教育はすべての教育の出発点。親が子どもと日常的にどう関わっていくかが、子どもの将来を決めていくということです。子どもの気持ちを尊重したり、意欲を高めたり、悲しい気持ちを共有したり、様々な場面で、親子対話は展開されます。その対話を通して、子どもの社会情動的スキルが育成され、その後の学びへとつながっていくということ。

子どもの良い聞き手となり、子どもが考えたり表現したりすることをサポートしながら、親子対話を展開していくことが、「今」という時期に展開できる最高の家庭教育と言えるでしょう。コーチングスキルを習得することは、良質な親子対話の一助となるはずです。

子育てにおいて「言葉」に着目することは、とても重要です。特に幼少期という時期に対話を行うことからは無限の可能性が広がりそうです。もちろんそれは子どものためだけではなく、親のためにも…。

親子の関係は相互行為。子どもに何かをしてあげることは、実は自分が何かをしてもらっているということでもあるのです。親子対話で子どもの人生の土台となる力を育むとともに、皆さんご自身も未来も創造していかれてみてはどうでしょう。

言葉は心を作ります。
言葉は行動を導き出します。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
株式会社サイタコーディネーション

■新・家庭教育論連載記事はこちら↓
新・家庭教育論Vol.1 子育てサポーターになるきっかけとこれからの家庭教育
新・家庭教育論Vol.2 コーチングとは 〜親子対話で育む社会情動的スキル〜

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

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WRITER

江藤真規 江藤真規 サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://saita-coordination.com/