2021年06月20日 公開
未来へ

非認知能力とは? 子どもの「生きる力」を伸ばすためにできること

人の心の土台ともなり“人間力”とも呼ばれている非認知能力。世界の教育現場で注目を集めている非認知能力について、その概要をお伝えします。

ニコニコの男の子

“非認知能力”という言葉を聞いたことはありますか? 昨今、世界の教育現場で注目を集めていて、日本でも浸透しつつある“非認知能力”。ひと言で表すなら、人の心の土台となる力のことです。“人間力”と呼ばれることもあります。

なぜ今、非認知能力が子どもにとって大切な力であると注目を集めているのでしょうか。今回は、その定義をご紹介します。

非認知能力とは数値では測れない「社会的スキル」

“非認知能力”の反対は、“認知能力”です。認知能力は、テストや学校の成績、IQなどの数値で測れる力こと。それに対し、非認知能力は数値で測ることのできない「社会情動的スキル」のことを言います。

OECD(経済協力開発機構)によると、

・何かに熱中・集中して取り組む姿勢
・自分の気持ちをコントロールできること
・他者とうまくコミュニケーションできること
・自分を大事に思えること

といった力の総称とされています。
(引用:『非認知能力を育てるあそびのレシピ(大豆生田 啓友・大豆生田 千夏)』講談社)

非認知能力も認知能力もどちらも必要!その相互関係は?

知識

非認知能力とは、学力や運動スキルなど数値で結果が出るものではなく、数値で表せないけれど、生きていく上で必要なスキルのこと。類似の概念に“EQ”があります。
「非認知能力が大切なのはわかっているけれど、子どもには適切な学力も身につけて欲しい」そう思っているママパパも多いでしょう。

非認知能力と認知能力は、どちらが優位という訳ではなく、これからの社会を生きていく中でどちらもとても大切な力です。お互いは真逆の力ですが、非認知能力を高めることで認知能力が上がることがわかっています。

逆に、認知能力を向上させることでは非認知能力を高めることはできないと言われています。非認知能力を高めるには、就学前の子どもは、さまざまな遊びを思い切り体験する積み重ねが非認知能力を育んでいきます。

「ペリー就学前計画」でわかった非認知能力の大切さ

非認知能力が注目されるようになったきっかけは、2000年にアメリカのノーベル経済賞を受賞した経済学者のロバート・ヘックマン氏の幼児教育の研究でした。
ヘックマン氏が調査した「ペリー就学前計画」では、就学前の幼児教育を行った子どもと、何もしなかった子どもを比べたところ、高校卒業率や平均所得、生活保護支給率、犯罪率に関係することがわかりました。


(出典:内閣官房人生100年時代構想推進室

さらに、追跡調査の結果では、40歳時点での比較の結果、就学前教育を受けた人は、受けなかった子どもより、以下のような違いが生じたのです。
・高校の卒業資格を持つ人の割合が20%高い
・5回以上の逮捕歴を持つ人の割合が19%低い
・月収が約200万を超える人の割合は約4倍
・マイホームを購入した人の割合は約3倍
ペリー就学前計画のもっとも重要なのはこの先で、乳幼児期などの早期教育では、学習面だけを強化してもIQなどを短期的に高めるだけで、長期的に高めることには繋がらないこともわかりました。
ヘックマン氏は、幼児期には認知教育よりも、根気強さや自制心、粘り強さなどの非認知能力を高めることの方が大事ではないかと提言しています。

あと伸びする力=非認知能力には200以上もの力がある!

あと伸びする力

非認知能力にあてはまる力は200以上もあると言われています。その中から代表的なスキルについて詳しく説明します。どれも、人が豊かな人生を送るために大切な力と言えるものばかり。一体どんなスキルがあるのでしょうか。

①自己肯定感

自分自身を価値のある人間であると認められること。日本人は世界で見ても自己肯定感が低い傾向にあります。自己肯定感があれば、どんな状況下においても、自信を持って物事に取り組むことができます。

②やり抜く力(GRIT)

最後までやり遂げられる力のことで、アメリカの心理学者のアンジェラー・リー・ダックワース教授が「GRIT」という言葉で提唱したことでも有名です。諦めずに何度でも挑戦する力は、才能や持って生まれた力よりも大切とさえ言われています。

③自制心

いろいろな状況でも自分の感情をコントロールできる心で、今とても注目を集めている力です。自分の感情をコントロールする力は、人間関係を築いていく上でも、他者と力を合わせて何かをやるときにも大切な力です。

④柔軟性

周りの環境の変化に応じて対応して行く力のことで、これからの予測不能な時代を生きる子どもにとって重要な力です。新型コロナウィルス蔓延で世界は様変わりしましたが、柔軟性があれば予測不可能な事態が起きても冷静に振る舞えることができます。

⑤回復力

傷ついたり落ち込んだときにそこから立ち直る力のことで、レジリエンスとも呼ばれ注目を集めてもいます。何かの問題に直面しても、そこから元の状態に這い上がる力のことです。

⑥社会性

他者と上手に関わってコミュニケーションを取ることです。友人、家族、職場の仲間など、さまざまな人々と関わっていく上で大切なことです。

⑦好奇心

知らないことに興味を持ち探求する心で、何かの行動を取るときの原動力となる力です。好奇心があれば勉強などの認知能力にも関係しますし、色々なことに興味を持って生きることは豊かな人生を送る上でも必要なことです。

⑧自分を信じる力

自分の考えや価値観を信頼できることです。自分を信じる基盤があることで、色々なことに挑戦をしていくことができます。VUCA時代を生きる子どもにぜひ身につけて欲しい力です。

※VUCA:先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態のこと

 

非認知能力はこれからの時代を生きる子どもに大切な力

未来へ

「これからを生きるために大切な力」と言われると、どんな取り組みをしたらいいのか焦ってしまう方も多いのではないでしょうか。でも、心配ありません!実は、保育の現場で普通に行われていることが「非認知能力を高める方法」に繋がっているのです。

お家で特別大変な何かをする必要はありません。ただ、ちょっとしたエッセンスを知っているのと知らないとでは、家庭での過ごし方にも少し違いが出てくるかもしれません。

何よりも大切なのは、幼児期に親子でのびのびと楽しく遊ぶこと。日常の中でできることから、お外遊びまでさまざまな遊びが非認知能力向上に繋がります。

人生100年時代と呼ばれる現代。不安定で予測不可能な時代を生きる子どもたちに、どんな時代が訪れても柔軟に対応して、周りの人々と力を合わせてたくましく生きていく力は、これからもっともっと求められることだと思います。
これからの連載では、家庭でできる子どもの非認知能力を高めるコツなどをお伝えしていきます。

〈参考文献〉
『0〜5歳児の非認知的能力(佐々木 晃)』チャイルド本社
『非認知能力を育てるあそびのレシピ(大豆生田 啓友・大豆生田 千夏)』講談社
『「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育(ボーク茂子)』小学館



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この記事のライター

大曽根 桃子
大曽根 桃子

ちょうどいい働き方を模索し続けている、フリーランスライター&エディターです。子どもの何気ない遊びの中に無限の可能性があると信じていて、非認知能力について勉強中。また、お母さんが笑顔でいることを大切に、積極的に自分のご機嫌を取る日々を送っています。趣味は、テニス、銭湯、サウナ、キャンプ、旅行、美味しいものを食べることなど。10歳男子、6歳女子とふたりの子どもがいます。