2021年08月16日 公開
現代の親

子育てサポーターになるきっかけとこれからの家庭教育

『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第1回目。現代の親の抱える問題を解き明かし、これからの家庭教育へのヒントをお届けします。

新・家庭教育論親子

ここ数年で子育てを取り巻く環境は激変、子育て観にも大きな変化が起きてきています。教育と実社会が近づく中、幼少期にこそ育てたい力にも注目が集まっていますが、理想論に振り回されてしまっては、大切な我が子が見えなくなってしまいます。見通しの立たない社会だからこそ、「子どもの今」「家庭という日常」に目を向け、子どもの土台となる力を育んでいきましょう。

江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。

はじめまして:家庭教育への願い

はじめまして。幼児教室、子育てコーチングスクールを運営しながら、子育てに頑張る方々のエンパワメントを行っております江藤真規と申します。

子どもを持つとともに始まる「親としての人生」。驚くほど興味関心も価値観も、そして見える世界も変わりますよね。自分よりも子ども、子どもの笑顔を引き出すために、子どもが幸せに生きていくためにと、時は流れ始めます。

しかし、そこには難しさがつきものです。特に今は社会の大きな転換期。働き方はもとより、子どもたちの教育にも未だかつてない勢いで変化が起きています。教育指導要領も変われば、入試問題も変化、民間教育は多様化し、オンラインの進展に伴い家庭教育も大きく変わりつつあります。社会の過渡期にある子育てには、見通しの立たなさからくる悩みも多いのです。

経験則だけでは語れなくなってきた近年の子育て。加えて、地域社会の希薄化に伴う子育ての孤立化。乱立する情報の中、限定されたリアルな繋がりの中で、よりよい子育てに向かうためには、「どういう子育てをしたいのか」という「子育ての軸」が大切です。そのために、自分自身と向き合う時間、自分の思考の整理をする時間も、日常に少しだけ組み込んでいきたいものです。

不透明な時代には、家庭教育にも新しい視点が求められます。情報に振り回される生き方から、情報をうまく利活用する生き方へ…。そこに大きく役立つのがコーチングという考え方。本コラムでは、熱心に子育てをされる皆さんの家庭教育の質向上を目指し、子育てに関する情報をお届けするとともに、コーチングというコミュニケーションスキル(考え方)をお伝えしてまいります!

筆者のこと:「子育て」を契機とした2度の転機

筆者には二人の娘がいます。といっても、もう二人とも大人です。当時、専業主婦であった筆者は、母となったその日から子育ての道にまっしぐら。気づけば、自他ともに認める教育ママと化していました…。

1度目の転機

子育てには、決して綺麗ごとだけではない日々があり、幾多の苦難を超えながら親としての成長ストーリーがあります。そんな子育ての現実を示したいと思っていた矢先にご縁あり、一人の無名の主婦が本を出版するに至ります。『勉強ができる子の育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、2009年に出させて頂いた書籍です。

「子どもにやってもらいたいこと」と「子どもがやりたいこと」のズレからくる葛藤、勉強に興味をもたせたいが、「これって過干渉?」という心の揺らぎ等、親としての複雑な心境や試行錯誤の末の取り組みを書かせて頂いたところ、共感が共感を生み、一人の母親は「著者」としての人生を歩ませて頂くことになりました。

その後、子育てコーチングスクールをスタート、幼児教室もスタート。お陰様で、多くの子育て奮闘中の皆さんとのつながりを持たせて頂き、自分の子育ては終わったものの、サポート役という立場で「子育ち」に関わらせてもらっています。自身の子育てを契機に、人生が180度変わった経験です。

2度目の転機

更にもう一つの転機が訪れます。偶然が重なり、子育て領域で仕事を始めるようになった筆者ですが、教育に関わる様々なジャンルの方々と議論を重ねるにつれ、「家庭教育」の重要性を改めて認識するに至ります。当たり前に流れていく子育ての日々は、その後の人生の基盤づくり。家庭教育は、公教育、民間教育を支える最重要な教育です。

「子育ち」は社会全体で考えていくいとなみであること、故に子育てを社会に開いていくことの必要性をひしひしと感じ、それでも歯止めがかからない子育ての孤立化。「今どきの子育ての背景には何が潜んでいるのか」、そんな世界を見てみたくなり、2013年から大学院(教育学研究科)に進学することに…。

それ以降、子育ての世界に「研究」という立場でも足を踏み入れることになりました。子育て中には想像すらしなかったこと。人生、いつ何が起きるかわかりません。

振り返り思うことは、一つの経験は次の経験につながっていくということ。一つの興味が次なる興味を引き出します。皆さんの子育て経験は、きっと今は予想もしない未来につながっていくはずです。偶然も、実は必然なのだと思います。

今どきの子育て3つの傾向

現代の親

10年以上に渡り、子育てサポートの仕事をしてきた筆者ですが、ここ数年は「子育てのが大きく変化してきた」と実感します。3つのポイントで、今どきの子育ての傾向をまとめます。

1. 多忙感

働く母親の急増に伴い、子育てには大きな変化が起きています。
保育所に子どもを預ける「標準時間」は現在11時間。かつての標準時間だった8時間は「短時間」と言われています。保育の長時間化には様々な議論もありますが、両親共に働く家庭では、家で過ごす子どもとの時間がたったの数時間という短さ…。その間にご飯、お風呂、明日の準備、子どもの教育がぎゅっとつまり、週末はそんな平日の穴埋めをするかの如く、「習い事」を重んじる生活。
今しか見られない子どもの可愛らしい姿を見過ごしてしまうほど、今どきの子育てには多忙感がつきものです。

2. 「子どもを尊重したい」が故のジレンマ

・子どもの「好き」を大切にしたい。
・ガミガミ叱りたくない。
・主体的に生きていってもらいたい。
・自分で夢を見つけ、人生を切り開いていってもらいたい。

近年、よく聞く言葉です。かつてあった「優秀な子に育てば幸せになる」「いい学校に入れば、いい就職が叶い幸せになる」、このような一元的な見方が急激に減少してきたのは、幸せな人生への道標が多様化してきたからでしょう。数値化された力(学力)のみならず、数値化されない力(非認知能力等)の重要性が一般的に認識されるようになってきたことも背景にあります。
更に、母親も社会で働く時代、実際に社会で要される力を目の当たりにすれば、子どもに求めることが勉強だけではないことは明らかです。

「子どもの人生を尊重しなければ…」。しかし、子どもを信じ手離す子育てには、常に「これでいいのか」というジレンマが伴います。「つべこべ言わずにお母さんの言う通りにしなさい!」と怒鳴りまくることが許されていたかつての子育てより難易度が高く、親の人間力が問われます。

3. 気になる「親としての見られ方」

「親としての自分の見られ方」が気になる親御さんが急増中。
ママタレを始めとした「ママ業を生き生きと楽しんでいる素敵な女性」の存在、SNSの広がりに伴う身近な「仕事もできる美しいママ」の出現は、「自分磨きも怠ってはならない」という、新たな使命感を生み出しています。

しかし、子育てには感情むき出しにならなければならない場面も多々ありますし、親も人間、いつも優等生でいられないのは当然です。実際に、なりふりかまわず子育てをしてきた(せざるを得なかった)筆者としては、いかにこれらの世界がリアルな「子育ての日常」とかけ離れたものであるかを実感します。
「自分の見られ方」という、ある意味他者からの評価まで気になる今どきの子育てには、より多重化、複雑化した難しさがあると感じます。

新しい時代に求められる家庭教育

現代の親

このような時代における子育てには、何が必要なのでしょうか。抱えきれないほどの情報を集めることではありません。集めた情報を自分なりの知恵としていくこと、つまり「子育ての軸を持つこと」が、今どきの子育てに必要なことです。

・前に進みながら、たまに立ち止まり内省する。
・情報を集めながらも、我が子にはどうかという視点は外さない。
・常に「自分はどうしたいか」と自問自答する。

これこそが、良質な家庭教育の基盤と言えるでしょう。

情報過多の時代、先行きが見通せない時代においては、情報編集力とも言える「自分軸で考える習慣」が子育てには必要です。新しい時代における家庭教育…、そこには親としての主体性が求められるということです。

親子の関係性が学びの土台となるわけ

新・家庭教育論親子関係

幼少期は人生の土台ができる、とても重要な時期です。近年は、様々な書籍により幼少期の教育の重要性が紹介されるようになってきました。では、具体的には何をすればいいのでしょうか。「親子で楽しく関わること」。このシンプルないとなみこそが、学びの土台を形成していきます。

赤ちゃんが特定の人と心の絆を作ることを「愛着」と言います。身近にいるお父さんやお母さんとのやり取りを通して、愛着が形成されます。安心した赤ちゃんはその後「愛着」を基盤として、周囲の人々と人間関係を結ぶことを学び、自分の世界づくりをはじめます。少しずつ親と離れ、外の世界に向かっていきます。
大丈夫と思えるから、外へと向かっていくことができるのです。親子の関わりを通して形成される「愛着」こそが、将来の対人関係を築く基礎となるということです。

子どもに何かをやらせる以前に、まずはしっかりと親子の関係性を構築し、子どもが「自分で向かっていける」基盤を作ることが大切です。「自分では関わっているつもり」でも、子どもは「もっと関わって欲しい」と思っていることも多々あります。「つもりの自分」を排除するためにも、一度立ち止まり、「子どもはどう感じているのかな」という視点を持つことも大切です。

これから始まるお子さんの幸せな人生です。今こそできる「親子の関わり」で、しっかりとした土台を作っていきましょう。

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

クロワール幼児教室

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。一般社団法人 小学校受験協会理事。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/