今、日本ではテストや偏差値、IQなど数値化できる認知能力とは真逆の、目には見えない力「非認知能力」が注目を集めています。
非認知能力は“生きる力の基礎”とも呼ばれ、自己肯定感、やり抜く力、自制心、協調性などといった目には見えない力の総称です。これ以外にもさまざまな力が非認知能力に数えられ、人が豊かな人生を送る上で欠かせない力とも言われています。
2020年3月の学習指導要綱では、非認知能力のことを“生きる力”と称し、子ども自らが学ぶ力や思考力の形成の大切さを大きく打ち出しています。
もちろん認知能力も大事な力です。認知能力は、非認知能力が高まることで一緒に上がっていくという性質があります。そして非認知能力の高さが、将来の学歴や所得にまで影響してくるという研究結果もあるほどです。
非認知能力の形成とは言い換えるなら、人間としての土台作り。この連載では、さまざまな視点から子どもの非認知能力の伸ばし方について考えていきます。0~3歳児は非認知能力の土壌づくりとなる重要な時期。
今回は、2歳児の非認知能力を高める遊びについてご紹介します。
非認知能力とは? 子どもの「生きる力」を伸ばすためにできること
2歳児の発達の発育特徴ポイント
2歳児頃は、子どもの自我が芽生え始める時期です。第一反抗期と呼ばれ、イヤイヤ期、魔の2歳児、などと言った言葉も有名ですね。お父さんお母さんの中にはお子さんの変化に驚いたり困ったりしている方もいらっしゃるかもしれません。
重要なことは、子ども「いや!」「自分で!」などと主張することは、決してわがままではなく、正常な自我の育ちということです。自我の育ちとは、非認知能力の育ちとも言えます。お子さんと同じ土俵に立って目くじらをたてるのではなく、一歩引いた目線でお子さんと接することをおすすめします。
そして、2歳児は自分の体を上手に動かせるようになり、行動範囲もさらに広がっていきます。それと同時に好奇心も高まっていき、「なぜ?」「なに?」「どうして?」という言葉も多く聞かれるように。
また、他者の存在が気になってくる時期で、積極的に友達と関わりを持とうとする姿も見られるようになってきます。
ただ、発達や成長には個人差が大きいもの。「イヤ!」の表現の仕方も、友達との関わり方も子どもによってそれぞれ。比べるのではなく、この子はこの子と大らかに受け止める親の姿勢も重要です。子どもは、自分のことを受け止めてくれる存在がいる安心感の中ですくすくと育っていきますから、あたたかい目でお子さんを見守れるといいですね。
2歳児に育みたい力とは
2歳代に育みたい力とは、やる気、挑戦する気持ち、やり抜く力、自信、などです。この力に大きく関わってくるのが、大人が子どもの自我の芽生えをどう受け止めるかです。
まず、子どもの自我が育っていると肯定的に受け止めることが大事。子どもの「イヤ」の表現の中には、いろんな気持ちをが込められています。何が良くて何がダメなのか知りたい気持ちだったり、自分ができることを認めてもらいたいだったり、子どもながらに複雑な気持ちでいます。心のもやもやを感じて、それが何か、またどう表現すればいいかわからずに葛藤をしているのです。
大人がイヤイヤに隠れた気持ちを汲み取り接することで、子どもは自信や、やる気、挑戦する力などを身につけていきます。
とはいえ、イヤと言えば全てが許される訳ではありませんから、危険なことやしてはいけないことは、シンプルに理由を添えて教えてあげましょう。そして、なるべく親が「ダメ!」と言わなくていいような環境を整えることがおすすめ。この時期は、親のゆとりもとても大切です。
これからご紹介する非認知能力を高める遊びを、ぜひ心のゆとりがあるときに取り入れてみませんか? この遊びをすれば必ずこの力が育めて非認知能力が高まるというほど、非認知能力は簡単なものではありません。ですが、どれもあらゆる可能性を秘めている大事な遊びです。
また、非認知能力を高めるのは、子どもが夢中になったり繰り返している遊びです。遊びに偏りがあるとか、またやっていると思わずに、可能な限り子どもが好きなことに挑戦させてみてはいかがでしょうか。もちろん子どもと一緒にやってみたい遊びがあれば、誘ってみることも子どもの可能性を広げるという意味でも大切です。遊びの中に、これからご紹介する遊びのエッセンスを少しでも加えてみてください。
2歳児にオススメの非認知能力を高める遊びとは
①泥んこ遊び
子どもはぐちゃぐちゃしたもの、そして泥んこ遊びが大好き。服が汚れる、不衛生、などと苦手意識を持っているお父さんお母さんもいらっしゃるかもしれません。それでも少し取り入れてみようかなと思ったら、今日は泥んこの日だよと曜日を決めて遊ぶのはいかがでしょうか。そして、泥んこ用の服を着て、長靴を履き、プレイパークなどへ。子どもはきっと、いきいきと泥んこと戯れることでしょう。泥んこ遊びは、科学する力や探求する力、前向きな力を育みます。
②自然集め
自然は遊びの宝庫です。ぜひお子さんが幼いうちにたくさん外遊びを取り入れて、自然に触れる機会をプレゼントしてみてはいかがでしょうか。ビニールの袋や虫かごなどを渡して、木の葉や植物の実、お花、昆虫などを採取する自然集めは、子供が喜ぶ遊びのひとつ。自然のいいところは、季節によって違う姿を見せてくれて、飽きることがないことです。採取したものは子どもにとっては宝物なので慎重に。瓶に入れて飾ったり、花瓶に花を飾ったりして喜びを共有しましょう。自然に触れる遊びは、知的好奇心を刺激して、思考力、感受性、表現力を育みます。
③水遊び
変幻自在に姿を変える水は子どもの興味を引き、頭も心も育みます。成長段階に合わせて色々な水遊びを楽しんでください。ビニールプールやたらいなどで遊ぶのはもちろん、水風船で遊んだり、ペットボトルの底に穴を開けてシャワーをしたり、色水遊びはいかがでしょうか。バケツやたらいに水を張り、牛乳パックや食品トレイで作った魚や船を浮かべてみるのも夢中になる遊びです。水遊びを通して、試行錯誤する力、挑戦する力、想像力が育まれます。
④積み木やブロック遊び
積む気やブロックなどで造形する遊びをしてみましょう。子どもの作ったものは子どもの心を表現した作品です。子どもがブロックを高く積んでいるのは、もっと大きくなるぞという気持ちの表れ。お父さんお母さんに「すごいね!」と褒められることで、さらにやる気を感じてチャレンジし続けます。この遊びを通して、自信や、挑戦しようとする力、表現する力などを育むことができます。
⑤友達と遊ぶ
2歳くらいになると個人差はありますが、お友達と関わりたいという気持ちが大きくなってきます。同年代のお友達と遊んだり、お父さんお母さんの友達家族と遊んでみてはいかがでしょうか。色々な価値観の人々と出会う体験は、子どもにとってとても貴重なもの。多様性を知る機会にもなり、協調性やコミュニケーション能力が育まれます。
⑥お手伝い遊び
ままごと遊びから少しバージョンアップ! 机を拭いたり、ハタキでパタパタしたり、タマネギやトウモロコシの皮を剥いたり、石鹸でお風呂を洗ったりと、家事のお手伝いを遊びに取り入れてみましょう。子どもは親の姿を見ているもので、大人がやっていることを自分ができることに喜びを感じます。家の中で自分に役割があると実感できることがとても重要で、そこから自己肯定感やポジティブな心を育んでいきます。
⑦絵本を読む遊び
いくつになってもおすすめなのが絵本での親子時間。子どもにとって絵本は、いつもひらけば同じ世界があることに安心して、色々な世界につながることができる良質な遊びです。お気に入りの絵本があったり、何度も読みたいページがあったり、お子さんによってそれぞれでしょう。ルールは設けずに柔軟に子どもに寄り添うことが大事です。2歳になれば図書館に一緒に行って子どもに選んでもらうこともおすすめ。絵本を通して子どもは、心の安定を保ち、言語力や想像力を育んでいきます。
2歳児の親の心構えとは
自我の芽生えの時期、イライラしてしまったり叱ったことに自己嫌悪になったりすることも多いかもしれません。そんなときは、親も気分転換する方法を見つけておくことが大事です。親も子どもの遊び同様に、何もかも忘れて夢中になれる時間がとれるといいですね。
また、子どものことを一歩引いて見ることや、目線を変えることも大切。同じ土俵に乗ってしまったら相手は宇宙人、気持ちが乱れるのは目に見えています。
この時期をうまく乗り越えることで、きっと子どもは一歩大きな成長をとげます。そんな姿をイメージするのも励みになるかもしれません。
子どもは家庭という安全基地があることで安心して成長します。そのためにも、親はなるべくゆったりと構えて、思いっきり子どもを遊ばせてあげられるといいですね。
親子で無茶はしても無理はしないで
ちょっとした好奇心冒険心を持って親子でいろんなことにチャレンジングして楽しめるのが理想です。少しの無茶はいいかもしれませんが、無理しすぎることにいいことはありません。遊びが大事だからと一日中遊ぶことは現実的には不可能ですし、そんなことを毎日していたら親が消耗してしまうことも。
何よりも大事なのは、子どものありのままを受け止める親の姿勢。だからこそ、親が自分の余白を考えて行動するのも大事だと思います。
とっておきのお茶を飲む、子どもが寝ているときはお気に入りのお菓子をつまむ、予約していたドラマを見るなど、息抜きして自分が満たされる時間も大切にしてくださいね。
《参考文献》
『0~5歳児の非認知的能力(佐々木 晃)』チャイルド本社
『非認知能力を育てるあそびのレシピ(大豆生田 啓友・大豆生田 千夏)』講談社
『非認知能力の育て方(ボーク茂子)』小学館