2021年08月04日 公開

非認知能力を育む1歳児の遊び

世界で注目を集め日本でも広まりつつある非認知能力は、IQやテストなどの認知能力のように数値化できない力です。人間力だったり、生きる力とも言われています。0-3歳は、非認知能力の土台を築く上でとても重要な時期です。今回は1歳児の非認知能力を高める遊びをご紹介します。


「生きていくために必要な力」として最近日本で注目を集めている非認知能力。IQや偏差値など数値化できる認知能力ももちろん大事ですが、認知能力とは真逆とも言える自己肯定感や協調性、やり抜く力、自制心などの非認知能力も、子どもたちが将来自立して生きていく上で欠かせないものです。

非認知能力は子どもの頃はもちろんのこと、大人になってからも役立つ力で、非認知能力の高さが将来の学歴や所得にも影響することが研究結果でも明らかになっています。学習指導要領では、非認知能力のことを“生きる力”と称して、子ども自らが学ぶ力や思考力の形成の大切さを見直しています。(2020年3月改定)。

非認知能力の形成は言い換えるなら「人間の土台作り」です。この連載では、さまざまな視点から子どもの非認知能力の伸ばし方について考えていきます。今回は、1歳児の非認知能力を高める遊びをご紹介をします。

1歳児の発達の発育特徴のポイント

1歳児は自分の足で歩き始める時期で、0歳児時代と比べると行動範囲がぐんと広くなります。今まで知らなかった世界を目にすることで、好奇心も旺盛に。また、興味があるものに近づいてみたり触れてみたりと、好奇心とともに自我が芽生え始める時期です。

“自分でやってみたい”という気持ちが急速に育っていく時期とも言えるでしょう。

食事ができるようになったり、日常生活でも自分でできることがどんどん増えていきます。歩く、押す、つまむ、引っ張る、めくる、などの運動機能も発達していき、今まで見ることのなかったお子さんの姿がたくさん見られるようになります。

しかし、子どもの発達や個性は差が大きいものです。子どもの発達、成長、性格は十人十色なので、“まだ〜ができない”などと焦ることなく、子どもの成長のペースを理解して、ありのままの子どもの姿を受け止める姿勢も大事です。

子どもは、お父さんやお母さん、保育者に見守られているという安心感の中ですくすくと育っていきます。家庭では、お子さんの姿を見て今はこの遊びがいいかもしれないとピンときたものを取り入れてみてください。

1歳児に育みたい力とは

気になるものに近づき、触れたり観察したりする子どもながらの探究活動は、驚いたり感動したりする心へつながっていきます。感動する心(センス・オブ・ワンダー)とは、神秘さや不思議さに目を見はる感性。

気に入ったことは、何度も繰り返して遊んで喜ぶ姿も見られるでしょう。子どもは遊びながらに試行錯誤を繰り返し、これはどうしてこうなるのかなと学んでいるのです。

遊びという子どもながらの探究は、好奇心、行動力、感動する心など、非認知能力の基礎を育んでいきます。非認知能力を一本の木に例えるなら、0〜3歳児は土壌づくりの時期とも言えるでしょう。

非認知能力は3歳までの時期が特に重要と言われていて、1歳児は非認知能力のベースを築くのに適した時期です。この時期は、子どもが満足するまで遊ぶことを可能な限り大切にしてあげたいですね。また、子どもにとって良い遊びとは、子どもが興味を持って自発的に何度も行う遊びのこと。もちろん大人からこんな遊びがあるよと誘ってあげることも大事です。

そして日々の生活の中に、これからご紹介する非認知能力を育むのに大切な遊びを取り入れてみてはいかがでしょうか。これをやれば必ず非認知能力が育つ! というほど非認知能力は簡単なものではありませんが、どれもあらゆる可能性を育んでいく大事な遊びです。ぜひ毎日の遊びの中にそのエッセンスを取り入れてみてください。

1歳児にぴったりな非認知能力を育む遊び

①物を運ぶ遊び

おもちゃの車やバケツ、ビニール袋や紙袋などに物を入れて運ぶ遊びです。子どもにとってこの運ぶという動きは、いろんな世界へとつながるきっかけ。

もし何かを運んで来てくれたら「ありがとう」と伝えてみましょう。子どもは喜びや達成感でいっぱいになり、やりがいも感じます。大好きな人の嬉しいリアクションがあることで、子どもは、またやってみようという意欲になり、挑戦する力、共感力、行動力を育みます。

②散歩遊び

家の外は子どもにとって遊びの宝庫で、砂、土、植物、など目に映るもの全てが新鮮で刺激的。空を眺めたり、アリの行列を見たり、花が咲いているのを見たり、子どもは自然と観察力や想像力を身に付けていきます。

子どもが驚いていたり何かをずっと眺めていたりする時には、「きれいだね」、「不思議だね」などと、共感する言葉をかけてあげましょう。

③ままごと遊び

子どもは思っている以上に大人のことをよく見ています。大人の動きを真似するままごとは子どもは大好き! エプロンや三角筋を付けてお掃除ごっこ、お客さんとやりとりをするお店屋さんごっこ、おもちゃの包丁でトントンと野菜を切るお料理ごっこなど、ままごと遊びは色々な遊びにつながります。

子どもはままごと遊びの中で、マネジメント能力やコミュニケーション能力、役割意識などが芽生えます。

④箱・ダンボール遊び

箱やダンボールは子どもにとって格好のおもちゃ。ぜひ子どもにどうぞと渡してみてくだい。中におもちゃを入れたり、自分がその中に入ってみたり、ダンボールにお絵かきしたりと、子どもなりにやりたいことがあるでしょう。

子どもが見つけた遊びは、子どもの自主性や想像力を育みます。大人は子どもの様子を見守り、やりたいことが決まったらそれを一緒にやってみる姿勢がいいでしょう。

⑤生き物と触れ合う遊び

子どもにとって色々な生き物との出会いは、多様性を知る格好の機会です。バッタやダンゴムシを捕まえたり、犬を撫でたり、その体験は生き物を慈しむ心をも育みます。

また、自然との関わりは体の諸機能を発達させ、知的好奇心を旺盛にして、思考力、表現力、感受性を育むといいことづくめです。

 

⑥水遊び

水は子どもにとって身近にありながらとても魅力的な存在です。夏の暑い日であれば、公園のじゃぶじゃぶ池へ行ったり、水てっぽうや水風船で遊んだり、家のビニールプールで遊んだり……。

自由自在に変化する水は、子どもにとってアイデアが生かされるチャンスであり、発想する力や想像力にもつながります。昔ながらの色水遊びも子どもの探究心が刺激されておすすめです。

⑦ものを作る遊び

身の回りの廃材を使ったり、ブロックや粘土を使ったり、何かを創り出す遊びは子どもの意欲を掻き立てる遊びです。お父さんやお母さんに「すごいね」、「上手だね」と声をかけてもらうと、さらに自信をつけてもっとやってみようという意欲につながります。

ものを作る遊びを通して子どもは、自分を表現する力や創造する力を身につけていきます。子どもが作った作品を家に飾ると子どもはもっとやる気になりますよ。

⑧お絵かき遊び

画用紙にはもちろんのこと、折り紙や紙袋などいろいろなものにお絵かきをして遊んでみましょう。子どもが夢中になって絵を描く体験は、集中力やひらめき力につながります。

また子どもが苦手意識を持たないためにも、絵を描くことにとらわれすぎず、手に絵の具をつけてペタペタと紙に色をつけてみたり、和紙を絵の具で色付けするなど、大きな枠で考えることも大事です。

子どもからもらった絵は、「ありがとう」という言葉と気持ちで、少しオーバーなくらいに喜びを伝えてみましょう。

⑨絵本を一緒に読む遊び

絵本は子どもの世界を広げる遊びとしてとても大事な遊びです。子どもにページをめくってもらったり、好きなところだけ読んだりと、絵本を読むことにきちんとしたルールは必要ありません。

絵本の良さは、この世界には自分の好きなものがあって、いつもその場面を開いて体験できるということ。そのことが、世界は自分の欲しい必要なものを含んでいるという確信につながっていくのです。

そして、絵本を読むことで、子どもは気持ちが晴れやかになるのを感じたり、前向きな心や知的好奇心を育んだりしていきます。子どもが絵本を読んでとせがんでくるのも長い目でみたらほんのわずか。絵本を読むこという良質な遊びは年齢を問わずおすすめです。

1歳児の非認知能力を引き出すための親の心構え

1歳児は自分の足で立って歩き出す時期で、子どもはたくさんの新しい表情や行動を見せてくれます。その反面、お父さんお母さんは子どもの変化に戸惑うこともあるかもしれません。視界も行動も広くなるので、危険が増えることも事実です。

子どもにダメと繰り返さないためにも、お互いにストレスをためないためにも、子どもの身の回りの環境を整えることが大切。危ないものや触ってほしくないものは、隠したり手の届かないところへとしまって、子どもの視界に入らない工夫をしましょう。

もちろん危険な行為や他人に迷惑をかけることは、真剣な表情で良くないこととして伝えましょう。そのときにおすすめなのが、「こっちならいいよ」「こんな遊びはどう」、などと具体的に別のことを提案することです。そして、安全で望ましい判断を子どもができた時には、褒めることが子どもの自信につながっていきます。

子どもにとって良い遊びとは夢中になってやり続けるような遊び。親は、子どもに思いっきり遊ばせられるよう環境を整えて、安全に配慮しながら、子どもが好きなことを引き出す心構えでいたいもの。子どもが何かに興味を持っていきいきと遊んで目を輝かせているときには、そっと見守る姿勢も大事です。

1歳の心はスポンジのようになんでも吸収していく

非認知能力を育む上で、1歳はとても貴重な時期です。子どもは遊びを通して色々なことを学んでいくので、そのことを理解しながら親もマインドチェンジが必要な時期かもしれません。

毎日何か特別なことをするのではなく、昔からやってきたような遊びの中に、子どもの非認知能力を育む鍵はあります。繰り返しになりますが、子どもが夢中になって目をキラキラと輝かせているような遊びが非認知能力を育みます。遊びを通して親子で一緒に楽しみや喜びを共感し合いながら、子どもの非認知能力の土壌を育んでいけたらいいですね。

《参考文献》
『0~5歳児の非認知的能力(佐々木 晃)』チャイルド本社
『非認知能力を育てるあそびのレシピ(大豆生田 啓友・大豆生田 千夏)』講談社

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

大曽根 桃子
大曽根 桃子

ちょうどいい働き方を模索し続けている、フリーランスライター&エディターです。子どもの何気ない遊びの中に無限の可能性があると信じていて、非認知能力について勉強中。また、お母さんが笑顔でいることを大切に、積極的に自分のご機嫌を取る日々を送っています。趣味は、テニス、銭湯、サウナ、キャンプ、旅行、美味しいものを食べることなど。10歳男子、6歳女子とふたりの子どもがいます。