2024年01月03日 公開
アート・造形

アート・造形遊びで非認知能力アップ!子どもの「好き」を育てよう

STEAM教育でも注目されているアート・造形は子どもの非認知能力を育てるためにどんどん取り入れたい遊びです。粘土や折り紙、お絵描き、自由な遊びは子どもの心の土台を確実に築いていきます。

人の心の土台となり“人間力”とも呼ばれている非認知能力。世界の教育現場でも注目を集めている非認知能力は、Arts(芸術)と親和性が高いことが知られています。今回は、非認知能力を高める「アート・造形×遊び」をご紹介します。

人の心の土台ともなり人間力とも称される非認知能力。聞きなれない言葉かもしれませんが、世界の教育現場でとても注目を集めている力のことです。

非認知能力とは具体的に、①自己肯定感、②やり抜く力(GRIT)、③自制心、④柔軟性、⑤回復力、⑥社会性、⑦好奇心、⑧自分を信じる力、などの力の総称。目には見えませんが、人が豊かな人生を送るために欠かせない力で、非認知能力に当てはまる力は200以上もあることが研究で明らかになっています。

この非認知能力の真逆の力が、テストの成績やIQなど数値化して可視化できる認知能力。もちろん認知能力も非認知能力と同様に大切な力です。

非認知能力と認知能力には不思議な関係性があり、非認知能力を高めることが認知能力を向上させるということがわかっています。勉強に対しても興味を持ち、最後まで諦めずに取り組むことができるからです。逆に、認知能力の向上で非認知能力が上がることはありません。

非認知能力を高めるために大事なことは、幼児期に思い切り遊ぶ体験。また、Arts(芸術)や運動も非認知能力向上に親和性が高いと言われています。

今回はArtsに注目し、お子さんと一緒に気軽に楽しめる「アート・造形遊び」をご紹介します。

子どもがワクワクしている瞬間に非認知能力が伸びる!

非認知能力を伸ばすには幼児期に遊びこむ体験がとても大事であることが、世界の研究データでも既に明らかになっています。遊びのポイントは大きく2つあり、①親が子どもの性格を受け止める遊びであること(無理強いをしないこと)、②子どもがいきいきと目を輝かせながら夢中になって遊ぶこと、にあります。

例えば、昆虫が大好きな子どもであれば、虫捕りや飼育、イラストを描くなど、子どもが興味を持っている好きなことを存分にすることが大切です。偏りすぎでは? と心配することはありません。夢中になってワクワク遊んでいる瞬間にこそ、子どもの心の土台が着実にできているのです。「非認知能力の根っこが育っている時間なんだ」とパパママも大らかに受け止められるといいですね。

幼児期の子どもの習い事で悩む方も多いかもしれませんが、子どもが興味のない習い事を無理にさせることは、あまり意味がないことかもしれません。子どもが真剣でないことにパパママがイライラしてしまう可能性があったり、それを受けてお子さんも落ち込んでしまったり・・・。

どうか、幼児期は特に目の前にいるお子さんの「好き」を一緒に見つける気持ちで接してみてください。心の土台である非認知能力が育つのは、お子さんが目を輝かせながら熱中している時間があってこそ。お子さんが大人になったときに自立して不確実な世界を生き抜いていける力を、幼児期から着実に養っていけるといいですね。

STEAM教育でも取り入れられているArts(芸術)

理工系の教育に力を注ぐことで、現代社会に対応できる人材を育てることを目的としたSTEAM教育。現在は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4教科にArts(芸術)が加わり、さらに総合的なSTEAM教育として世界各国で取り入れられています。

世界では特にアメリカと中国で取り入れられているSTEAM教育ですが、単に知識を身につけることを目的としている訳ではありません。科学やIT技術といった世界共通の言語を身に付ける過程で、子どもが自分自身の興味の方向性を知り、自由な発想力や想像力を育むことが狙いなのです。

STEM教育に、Arts(芸術)が加わってSTEAM教育になった意味にも、STEAM教育の真の目的が伺えます。STEAM教育は子どもの非認知能力を育むことを目指しているのです。

ここで注目したいことが、指示されて行動をするだけでは「作りたい」、「表現したい」という能動的な気持ちが育たないということ。あくまで子どもの自主性が大切なのです。

約束やルールを守ることも人間社会で生きる上では大事なこと。それでも、幼児期に“心を踊らせる経験をすること=自主性を育むこと”は、とても重要なのです。美術館や動物館に行くこと、自然に触れて観察すること、幼児期に夢中になって遊びこんだ体験は、子どもたちの脳内に刻まれて、将来の宝となるでしょう。

非認知能力を高める具体的なアート・造形×遊びの紹介

それでは、お子さんが気軽に楽しめて主体性を引き出すアート・造形遊びの具体例をご紹介します。遊ぶときにはこのスタイルやルールでと形にこだわりすぎずに、あくまで基本のものとして、お子さんが夢中になる遊びを引き出してみてください。

パパママからのやる気を引き出す声かけも大事。子どもは夢中になって取り組んだことが大好きなパパママから褒められる経験から、もっとやりたいという意欲が湧いて自己肯定感を育んでいきます。ときに子どもの発想力の素晴らしさに、パパママが驚かされることもあることでしょう。

ぜひお子さんと一緒に楽しんでみてください!

想像力を育てる粘土遊び

何かを手で作りたいというプリミティブな欲求を表現できる粘土遊び。形の変化する粘土を使って素直に表現できる粘土遊びは、子どもにとって魅力的な遊びです。ポイントはたくさんの色や量の粘土を用意すること。きっと自然と手が伸びて何かを作り始めることでしょう。

粘土遊びを通して子どもは想像力を育むことができます。出来上がった作品は家に飾ってたくさん褒めてあげてくださいね。きっとお子さんのさらなる創作意欲をかき立てることでしょう。小さなお子さんの場合、万が一口に入れても安全な小麦粘土がおすすめです。

▼小麦粉粘土の作り方をご紹介!

創造力を育てる折り紙遊び

日本が誇る文化のひとつでもある折り紙遊びは、一枚の紙から自由で無限の創造力が広がっていきます。何かモチーフを決めて折紙遊びをするのはもちろんのこと、ハサミを使って切ったり、画用紙に貼ったり、ごっこ遊びに取り入れたりするのもおすすめ。100円均一などでリーズナブルに手がはいる折紙は、いつでも遊べるように家に常備しておくと安心ですね。

▼折り紙の可能性は無限大!

表現力を育てるお絵描き遊び

色鉛筆、クレヨン、絵の具、クーピー、水彩ペン、マジック、様々なもので、紙だけでなく色々なものにお絵描きを楽しんでみましょう。折紙同様に、子どもがやりたい! と思ったときのためにいつでも用意しておくことがおすすめ。画用紙だけにとどまらず、新聞紙やダンボール、子どもの制作物など、ありとあらゆるものに自由に描く発想を大事にしてください。

お絵描き遊びに正解はありません。子どものやりたいように心行くまでに遊びきる体験を通して表現力が育まれます。

▼子どもの絵の発達について知っておきたい大事なこと

コミュニケーション力をや自己肯定感を育む布遊び

自由自在に変化する布を使った遊びは、子どもたちの心を鷲掴みにすること間違いなし。布を使った親子遊びの具体例としてお伝えしたいのが、大きな布で一緒にくるまって遊んだり、輪っかを作って車掌さんごっこをしたりする一緒になって楽しむ遊びです。ぜひ肌を密着させながらお子さんと一緒に遊んでみてください。パパママとの遊びを通じた交流からコミュニケーションする力が芽生えていきます。

▼布を使った遊びはシュタイナー教育でも取り入れられています

感受性を育てるネイチャークラフト

木の実、葉っぱ、小枝、綺麗な石、貝殻、など、子どもが外で遊んで見つけてきた素材で楽しむネイチャークラフト。自分で見つけたどんぐりや松ぼっくり、貝殻や石などは、子どもにとっては大事な大事な宝物。

集める過程も楽しみつつ、とっておきの素材を使った工作に、子どもは目をキラキラさせながら夢中になって取り組むことでしょう。材料の組み合わせは無限大。粘土や折り紙、お絵描きなどと組み合わせるとより豊かな遊びになります。ネイチャークラフトを通して、子どもは感受性を高めていきます。

▼思い出にしてとっておきたいですね

自己肯定感を高める触れ合い遊び

子どもはパパママと肌が触れることで安心感を覚え、自分は愛されている存在であると自信を覚え、それが自己肯定感の根っこになります。何も難しいことはないので、積極的に子どもと肌が触れ合う遊びを取り入れてみてください。おすすめは、着古した大人サイズの洋服を一緒に着るごっこ遊び。親子で動物になりきったりお化けになったりなど、色々な遊びが生まれていくことでしょう。

▼ふれあい遊びは一番手軽で一番大事♬

「あるがままを大事に」。現代美術家のしゅんさくさんからのメッセージ

岡山県で生まれアメリカの大学で学び、現在は東京都港区を拠点に、幼稚園や保育園での出張授業やアートのイベントで活躍する現代美術家のしゅんさくさん。たくさんの親子と接してきて「抽象こそすべて」と語るしゅんさくさんに、子どもと接する上で大切にしている言葉を聞きました。

「すきないろがじぶんのいろ」

自分の好きなものを大切に、それはその子の色であり個性であるということ。別の色で塗ったり染めたりすることなく、その子の持っているそのものの色を大事にしていけたらいいですね。

「きみはきらめくたね」

子どものしたいやりたい気持ちは無限大で、あらゆる可能性を秘めています。どんな花が咲くのだろうと、子どもが夢中になって遊ぶ姿を見守って受け止められるパパママでいたいものですね。

「いいじゃんいいじゃん!」

常にフラットに子どもと接するしゅんさくさん。先生でもなくちょっと歳上のお兄さんでありお友達のような存在のしゅんさくさんに褒められたくて、子ども達はこぞって絵や作品を「見て」と持ってきます。その度に「この色使い素敵だね、いいじゃんいいじゃん!」としゅんさくさん。ありのままを褒めてもらった子ども達は満面の笑みになり、ますます嬉しそうに遊びに没頭するのです。

最後に、しゅんさくさんが「アートは子どもがあるがままにいられてそれを表現できる自由な場」と話をしていたのが印象的でした。

Artsは居心地の良い場所であり子どもの心を育てる良い刺激でもある

目まぐるしく変化していくこの世界ですが、Arts(芸術)の世界の本質は変わりません。現代を生きる子どもにとって、心の中を表現できるArts遊びはとての大事な時間。目をキラキラさせながら遊んでいるお子さんの姿を、どうかパパママは寄り添って見守ってください。Arts遊びは、お子さんのたくさんの非認知能力を育てる力も、どんなときにも自分らしくいられる安全基地にもなり得ます。遊びの形にとらわれることなく、自由な発想でそれぞれの遊びを楽しんでもらえたら幸いです。

🔸参考文献

・非認知能力を育てるあそびのレシピ

・FQ Kids 伸ばす・育む非認知能力

・FQ Kids STEAM教育で非認知能力を育てる!

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この記事のライター

大曽根 桃子
大曽根 桃子

ちょうどいい働き方を模索し続けている、フリーランスライター&エディターです。子どもの何気ない遊びの中に無限の可能性があると信じていて、非認知能力について勉強中。また、お母さんが笑顔でいることを大切に、積極的に自分のご機嫌を取る日々を送っています。趣味は、テニス、銭湯、サウナ、キャンプ、旅行、美味しいものを食べることなど。10歳男子、6歳女子とふたりの子どもがいます。