2016年10月31日 公開

ロンドンで出逢ったシュタイナースクールの子どもたち ―現地インタビュー

お子さんの心と体の成長にフォーカスした「シュタイナー教育」。多くの有名人がお子さんを通わせており、メディアでも取り上げられる機会が多くなりました。そんなシュタイナースクールに実際に通っているお子さんに、シュタイナーの魅力をたっぷりと語っていただきました。

お子さんの心と体の成長にフォーカスした「シュタイナー教育」。多くの有名人がお子さんを通わせており、メディアでも取り上げられる機会が多くなりました。そんなシュタイナースクールに実際に通っているお子さんに、シュタイナーの魅力をたっぷりと語っていただきました。

シュタイナースクールとは?

シュタイナー教育は、オーストリア生まれの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育。子供の感覚を尊重し、自然のリズムを取り入れているのが特徴です。

現在、世界には1,000以上のシュタイナースクールがあります。特に多いのは発祥の地であるヨーロッパですが、アメリカやアジアにも広がって来ています。『果てしない物語』や『モモ』などの作品で有名なドイツの児童文学作家のミヒャエル・エンデや日本では芸能人の黒柳徹子さん、斎藤工さんが通っていたことでも知られています。

木村さんファミリーにお話を伺いました

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お話を聞かせて頂いたのは、ロンドンに住む木村さんのご家族。13歳のサラちゃんと5歳のユウタくんは、一緒にセイント・ミカエル・シュタイナースクールに通っています。

シュタイナースクールにお子さんを入れた理由を、お父さんは「木を大事にする教育に惹かれた」と教えてくれました。ご自分が子供の頃に遊んだ山や森での楽しい体験を、お子さんにも教えてあげたかったそうです。お母さんの章鼓さんの答えは「感覚を大事にするところ」。特に、シュタイナー教育には曲線や円の概念が多く取り入れられており、そうした有機的な教育方法が決め手となったそうです。

次章からは、ユウタくんとサラちゃんのお話を元に、シュタイナースクールでの日常を紹介します。

シュタイナースクールの日常:幼稚園編

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ユウタくんに「学校で何をしているの?」と聞くと、「剣と盾を作ったよ!」と、厚紙で作った作品を見せてくれました。シュタイナースクールでは手を使うことをとても重視していて、工作やお絵かきが中心。毎日が創造の連続のようです。

また、ユウタくんはごっこ遊びや見立てがとても得意。後ほど詳しくご紹介しますが、シュタイナースクールには遊具がほとんどありません。これは、お子さんの想像力が最大限に発揮されるようにとの配慮。お話を聞いている間も、リビングルームの扉を竜の洞窟に見立てて遊んでいました。

幼稚園は体を作る大事な時期

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シュタイナーの考えでは、7歳までは体を作る時期。遊具がないのも周囲の影響に着目するからですし、毎日の生活リズムも大事にします。そのため、学校ではテーブルセッティングや使ったものの片付けを重視するほか、朝やランチの前などに目をつむり、それぞれに合った詩をみんなで暗唱するそうです。この暗唱は 学年が上がっても続くそうで、心を落ち着けるきっかけになるとサラちゃんが教えてくれました。

シュタイナースクールの日常:小学校〜中学校

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サラちゃんは2016年9月に、日本の中学校に当たる7年生に進級したばかり。その前の小学校での体験も交えて、シュタイナースクールの1日を教えてくれました。

メインレッスンと通常授業

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シュタイナースクールの時間割は、メインレッスンと通常授業に分かれています。メインレッスンは毎日あるもので、2〜3週間ごとに科目が変わっていきます。科目は歴史、天文学、代数、植物学など、日本の小学校ではお目にかかれないものばかり。低学年では歌唱や詩の朗読、ゲームなどを通じて、高学年ではより体系的に授業が進められます。

一方、通常授業は日本の小学校と同じように、曜日ごとに科目が決まっています。こちらの科目はドイツ語、フランス語、古代ギリシャ語、木工、音楽、オイリュトミー(体育芸術)など。一見とても難しそうですが、こちらも体を使うことや創造力を伸ばすことに主眼が置かれています。

たとえばドイツ語の授業では、手を叩いてリズムを取りながらゲーテの詩を暗誦します。こうすることで、内容が分からなくても自然に口が回るようになったり、語学ではリズムが大事だということが分かったりするそうです。

教科書のない授業

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シュタイナースクールの最大の特徴は、教科書がないこと。代わりに使われるのが「エポックノート」と呼ばれるスケッチブックです。ここには、先生が教えてくれたことや、友達の意見、みんなで考えたことなどを元に、一人一人が自由に絵や文章をしたためていきます。

サラちゃんが見せてくれた6年生のエポックノートは、1年でこれだけの厚さがありました。中は色とりどりのクレヨンで描いた絵に、綺麗な筆記体で文字が綴られています。写真は、アレキサンダー大王の経歴をまとめたもの。シュタイナースクールには成績がありません。自分の考えを、自分だけの絵や文章にすることが重視されているのです。

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ディベートで人を尊重することを学ぶ

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サラちゃんが「一番面白い!」と言っていたのが、レリジョン(宗教)の授業。その内容はディベートで、毎回 トピックを決めて意見を交換します。二手に分かれて討論することもあれば、一人ずつ意見を言うこともあるそうです。

ここでも、自分の考えを持つことが重視されています。でも、事前の勉強や、正解にたどりつくことが必要な訳ではありません。 たとえば疑問を口にするのも立派な発言の一つです。 一方、他の人の発言をさえぎると先生に注意されるそう。自分の意見と同じように、相手を尊重することが求められます。こうしたやり方はレリジョンに限らず、あらゆる授業で行われているそうです。

なお、ディベートのトピックは、生徒がアイデアを出した中から先生が決めます。サラちゃんのクラスが最近扱ったものは、イスラム国、アメリカ大統領選、食品の消費期限表記など、とても高度なラインアップ。こうした話題に小学校のうちから興味を持ち、話し合えるのも、シュタイナー教育ならではといえるでしょう。

シュタイナースクールの授業から見えてくること

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シュタイナースクールの授業形態で見えてくるのは、 集中力を育む大切さです。サラちゃんによると、絵や文章にするにせよ、意見を述べるにせよ、あらかじめ自分の意見をまとめておかないと、授業の流れについていけません。また、木工で工具を使ったり、友達が言ったことを後で調べたりするので、授業中はとても集中しているそうです。

もう一つは、一般的な学校とシュタイナースクールにおける先生の役割の違いです。シュタイナースクールでは、先生は生徒の意見をまとめたり、補足したりすることがほとんど。決まった答えを教えたり、どっちが正しいと判断したりすることはしません。子どもの想像力を信じ、助けてあげるのが役割といえるでしょう。

休み時間は3歳から18歳までが一緒に遊びます!

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サラちゃんとユウタくんの通うセント・マイケル・ シュタイナースクールは、幼稚園から高校までの一貫校。しかも広い森が校庭として解放されていて、遊具はほとんどありません。そんな中、子どもたちは休み時間をどのように過ごしているのでしょうか。

木と遊ぶ!

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自然を重視するシュタイナー教育にとって、木はなくてはならない存在。子どもたちも積極的に森に入り、木を使った遊びをします。一番人気はやはり木登りで、小さい子から10代の生徒まで、それぞれに木登りをして遊んでいます。

サラちゃんに木から落ちたことがあるかと聞いてみると、答えは「イエス」。でもけがや痛い思いをしても、もう登りたくないとは思わなかったそうです。どうやれば落ちないか、どうすれば効率よく登れるかを考え、前の経験を乗り越えようと思ったと話してくれました。

また、木の上や周りに作る「木の家」も大切な遊び場。自然や自分たちで作ったもので十分に休み時間を満喫していることがうかがえるエピソードです。

ちなみに、こうした遊びで先生に怒られることはまずないそうです。「危ないからやめなさい」ではなく、木と触れ合うことで学べることの方を重視しているようです。

想像力が一番の遊具

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もう一つ、シュタイナースクールの子供たちが熱中するのが「ごっこ遊び」。遊具がないので、ユウタくんのような幼稚園生だけでなく、小学校高学年でも想像力が一番の遊び道具なのです。

想像力の世界では、わずかな道具があらゆるものに変化します。サラちゃんが語ってくれた話では、たとえばお芝居で家の扉が必要な時、生徒たちは先生に借りた布を広げ、手で持って扉にします。その布は扉の役割が終われば、すぐに別のものに変化します。もちろん、たくさん使うので布は汚れてしまいますが、洗って返せば怒られることもありません。

なおシュタイナーでは、こうした道具もすべて木や綿布、羊毛といった天然由来のもので作られています。子どもたちも道具も、自然に一番近い形というのを大事にしているのです。

家族の協力も不可欠

自然のリズムを大切にするシュタイナー教育では、家庭での取り組みも重要視されています。教育書を見るとさまざまなことが指摘されていますが、木村さんファミリーが実践していることを教えてもらいました。

食はオーガニックを推奨

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森で遊び、天然素材の遊具を使うシュタイナースクールでは、給食もアレルギ〜に配慮したベジタリアンメニューが出ます。木村さんも有機野菜をとり、化学物質はできるだけ避けるようにされているそうです。現在はイギリスにお住いですが、 食卓には地元の食材を使ったやさしい日本食が並びます。

テレビをだらだら見せない

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デジタル機器をできるだけ避けるのがシュタイナー教育の特徴の1つですが、日常で特に注意されるのがテレビ。付けっ放しのだらだら見は特に良くないとされています。木村さんのお宅では、テレビは公共放送のドキュメンタリーや、自然を題材にした映画など、お父さんお母さんが選んだものしか見ないようにしています。

ちなみに、サラちゃんに「教室での話題についていくためにテレビを観たくなったりしない?」と聞いたところ、同級生もテレビを観ないし、テレビやゲームがなくても遊ぶ方法を知っているから、そういうことは起きないそうです。

睡眠とベッドタイムストーリー

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お子さんの生活リズムで最も大切なのは睡眠時間。シュタイナースクールの子どもたちは9時には寝てしまうのが当たり前です。また、就寝に関する指導の一つに、寝る前にベッドタイムストーリー(物語)を聞かせてあげて下さいというのがあるそうです。木村家ではお父さんの役割で、 ユウタくんにはできるだけ毎日、即興で物語を作って聞かせてあげています。

サラちゃんが語る、シュタイナーの良いところ

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最後にサラちゃんに、シュタイナースクールに通って良かったと思うことを教えてもらいました。サラちゃんは 一般的な小学校に通ったこともあり、対比もしてくれました。

良いことと悪いことが決められていた一般校

「一般校は檻の中にいるみたいに感じられる時があった。それは、やって良いことと悪いことがあらかじめ決まっていたからだと思う。たとえば、私は図工の時間に赤と緑の絵の具を混ぜたかったのに、先生に汚い色になるからやめなさいといわれた。木登りも禁止されていた」

「シュタイナースクールでは自由だと感じる。疑問はどんどんぶつけられるし、何かを成し遂げたという達成感を覚えることが多い。シュタイナーでは、3次元でものごとを考えている感じがする。ドイツ語の詩を覚えるのにリズムを取るように、色々なことを組み合せて教えてくれる」

シュタイナーでは根っこから育ててくれる

「一般校では自分たちが苗から育ててられているように感じた。育つのは早いかもしれないけど、その下にある根っこのことは教えてくれないし、聞いても無視しろと言われてしまうことがある。シュタイナーでは、根っこからゆっくり育ててもらっている感じがする」

もっとシュタイナーを知りたい人へのオススメ書籍

実際にスクールに通っているお子さんとその親御さんに聞いたシュタイナー教育、いかがでしたでしょうか。初めて見聞きすることや、日本ではお目にかかれない手法が沢山あったのではないでしょうか。反対に、日本の教育と似ているところ、既に実践していることを見つけた方もいらっしゃるかもしれません。

もっとシュタイナー教育を知りたいという方のために、お母さんの章鼓さんオススメのシュタイナー関連書籍を紹介して頂きました。また、シュタイナースクールに通った経験のある映像作家Stewart Sugg氏に行ったインタビューの記事も教えてくださいました。まだまだ日本には少ないシュタイナースクールですが、是非そのエッセンスを日々の生活に取り入れてみてください。

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書名:虹の彼方からきた子どもたち―7歳までのシュタイナー教育
著者: Barbara J. Patterson (原著), Pamela Bradley (原著), 渡部 まり子 (翻訳)
出版:学陽書房

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書名:シュタイナー教育を考える (朝日カルチャーセンター講座)
著者:子安 美知子
出版:学陽書房

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書名:シュタイナー教育の方法―子どもに則した教育 (角川選書)
著者:高橋 巌
出版:KADOKAWA

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