
子どもが大会や受験などの目標に届かなかったとき、悔しそうな姿を見るのは親にとってもつらいものです。そんなとき大切なのは、結果を評価することよりも、悔しさや悲しさといった子どもの気持ちを受け止めること。安心して感情を吐き出すことで、子どもは少しずつ心の中を整理していきます。
また、目標の種類によって関わり方は異なります。スポーツや習い事のように再挑戦できる目標では、今回の経験を振り返り、次につながる課題を見つけていくことが大切です。一方、中学受験のように一度きりの挑戦では、結果よりも努力の過程に目を向け、その頑張りを言葉にして認めることが重要です。目標に届かなかった経験も、立ち直る力や努力を続ける力など、人生に役立つ多くの力を育てます。親がその経験の意味を一緒に見つめることで、子どもは新しい一歩へと進んでいくことができるでしょう。
1. 親もつらい 子どもが目標に届かなかったとき
子どもが悔しそうにしている姿を見るのは、自分のこと以上につらいもの。特に、たくさんの我慢を重ねて努力してきた過程を知っているからこそ、「なんとか報われてほしかった」と思いますし、何かしてあげたくなるのが親心です。
しかし、励ましたつもりの言葉がかえって落ち込ませてしまったり、気晴らしに誘ったつもりが「わかってくれない」と悲しませてしまったりすることも。「判定がおかしかった」などと他人の責任にしてしまうと、子どもの人間関係に悪影響を及ぼすこともあるかもしれません。
何もできない自分に、親としての無力さを感じてしまうこともあるでしょう。しかし、人の感情が回復するには時間が必要です。焦らず、子どもの回復力を信じて見守ることも大切な関わり方の一つです。

2. 大切なのは「感情の受け止め」
今、子どもに必要なのは感情を吐き出すこと。そのためには、それを受け止めてくれる人の存在が欠かせません。「もっと〇〇しておけばよかったね」といった助言は必要ありません。「かわいそうに」という慰めも不要です。もちろん評価も控えましょう。
悔しさ、悲しさ、恥ずかしさ、そして怒り。あれだけ頑張ってきたのに…と、子どもの心にはさまざまな感情が生まれます。そういった感情を、「ただ、受け止める人」になる。それだけで十分です。子どもは心の中にある思いを言葉にし、それを受け止めてもらうことで、少しずつ気持ちを落ち着かせていきます。
3. 励ましすぎは逆効果? 親の役割を考える
親は子どもの応援団。このような気持ちが強いと、「次はきっと大丈夫」「気にしなくていいよ」と励ましたくなることもあるでしょう。しかし、ちょっとした失敗なら、「ドンマイ」も役立ちますが、長期にわたる努力の末の結果だったり、まだ気持ちが整理できていない場合には、「元気を出して」という励ましが、かえって子どもを凹ませてしまうことも…。
子どもへの関わり方は、相手の状況次第です。子どもが、前を向こうとしている段階なのか、まだまだ時間が必要な段階なのか。子どもの状況を鑑み、自分の役割を考えてみてください。安心して気持ちを出せる「味方」でいることは大前提であり、その先に、子どもの相談相手になるのか、ストレス発散の手伝いをするのか、次の目標を決めるサポートをするのか。自分の役割を決めると、自ずと適切な関わり方ができるようになります。
4. 目標の種類で変わる「次への向かわせ方」
結果は結果。時間の長短はあっても、苦しくつらい時期はいつか乗り越えていかなければなりません。いつまでも一つの結果にとらわれるのではなく、次のステージへと目を向けていくために、親にはどのような関わりができるのでしょうか。
ここでは、再び同じ挑戦ができる目標と、中学受験のように同じ挑戦が難しい目標に分けて考えてみます。「もう一度がんばろう」が通用するかどうかで、かける言葉も変わってくるからです。
① 再チャレンジができる目標
スポーツの大会や習い事の発表会、検定などは、次なる挑戦の可能性があるかもしれません。その場合は、今回の経験から課題を見つけ、次に繋げていくこともできるでしょう。結果だけを見るのではなく、「今回の経験から何を学べるか」という視点を持つことが、気持ちを前向きにさせます。
「今回うまくいかなかった理由は何だろう?」
「次はどこに注意をする?」
「今までやらなかったことで、この先やっていきたいことは?」
こうした問いかけは、経験を振り返るサポートになります。
また、「あのときよりここが良くなっているね」
「これだけ練習を続けてきたね」
これまでの成長に目を向ける声かけも、子どもにとって励みになります。努力の積み重ねに気づくことができれば、「もう一度やってみよう」という気持ちが自然と生まれてくることもあるはずです。
② 中学受験など、再チャレンジの機会が難しい目標
一方、中学受験のように、一度きりの挑戦もあります。同じ目標にもう一度挑戦することが難しいということです。
このような場合には、「次の挑戦」を考えるよりも、まずはこれまでの努力をしっかり認めること、言語化してみることが大切です。
「受験勉強を通して、どんな力が身についた?」
「一番頑張ったことって何だろう?」
「自分が得意になったことは?」
プロセスを振り返る質問で、自分の頑張りを認めることができることもあるでしょう。そして、自分の挑戦を肯定することができた先には、これからの可能性に目を向けていくことができるようになるはずです。もちろん、こういった声かけは、子どもの気持ちが少し落ち着いてから…。
一度きりの挑戦だったとしても、その過程で積み重ねてきた努力や経験が消えることはありません。子どもが自分の頑張りを受け入れられたとき、その経験は次の一歩へとつながる力になります。
6. すべての経験は子どもを育てる
悔しさを抱えた経験が、次の努力の原動力になることも少なくありません。どのような経験であっても、人の成長につながる可能性を持っています。目標に届かなかった経験も、子どもにとって決して無意味なものではありません。
特に、悲しさや悔しさを乗り越えた経験は、この先の人生に大きな力となります。立ち直ろうとする力、自分を見つめ直す力、努力を続ける力、他者の気持ちを理解する力、自分なりの目標を見つける力、そして経験を意味づける力。どれも、これからの人生を生きていくうえで大切な力です。
目標に届かなかった自分はだめだと、子どもが自己肯定感を下げてしまわないようにするためにも、焦らないことが大切です。まずは自分の気持ちを整理し、経験の意味を見つめ直したうえで、次の一歩へと進んでいく。その過程を支える存在として、親の関わりは大きな意味を持っているのでしょう。
■ライタープロフィール

江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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