
水泳にサッカー、ダンスに体操教室。運動系の習い事が人気です。体力をつけて欲しい、早くから始めた方が上手になりそう…等、親の願いを起点に始めることが多いように思います。一応、「やってみようか」と子どもには確認をとってから。
しかし、運動系の習い事は、成果が目に見えてわかるため、「うちの子には向いてない」と、早期に打ち切りの判断が下されてしまうこともよくあります。もちろん、「辞める」という選択は否定すべきものではありませんが、子どもに「自分は運動が苦手だ」「自分には才能がない」と思わせてしまわぬよう、配慮が必要です。
そもそも、運動系の習い事の効果は、目に見えやすい成果だけにとどまりません。体力や技術だけでなく、挑戦する気持ち、失敗から立ち直る力、人と関わる力といった、子どもの将来を支える土台が、運動を通して育まれます。
多様な運動系習い事の効果
運動系の習い事には、水泳、体操、サッカー、ダンス、武道など、さまざまな種類があります。それぞれに特徴はありますが、共通して期待できる効果も少なくありません。まずは、体力や運動技術の向上。時間的にも、住環境的にも、なかなか経験させてあげられないことが、運動系習い事によって実現できます。
また、上達といった目に見える力以外に、様々な見えない力も築き上げられます。練習を通して集中力が養われたり、できなかったことができるようになる経験から自己肯定感が育まれたり、悔しい気持ちから挑戦心が育まれたり…。さらに、集団での活動を通して、自分を知る力や人と関わる力、そして社会性も身につきます。
その種目そのものの上達を超えて、多様な効果が期待できるのが、運動系習い事です。
才能がないと思ってしまう時はどうする?
運動系の習い事は、学習塾とは異なります。閉じられた教室ではなく、オープンなスペースで行われるため、親には上達の度合いや成果がそのまま見えてしまいます。他児の様子も見えるため、否が応でも比較が始まってしまいます。「才能がないみたい」「このまま続けるのはどうかな」と感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、もしも子どもが楽しんでいるなら、もう少し待ってあげませんか。子どもにとっては、上手下手など関係ないのです。たとえ親の目には劣って見えたとしても、本人はプロ選手のような心持ちで楽しんでいるかもしれません。そして、「楽しむ」こそが学びであり、見えない力がぐんぐん育まれているのです。
そこで役立つのが「プロセスを見る」眼差し。他児と水平線で比較をするのではなく、我が子の成長を垂直線でとらえます。始めた当初と比較して、何ができるようになりましたか?うまくいかない自分と向き合って、どのような感情体験をしているのでしょう。仲間やコーチとの関係は?プロセスで子どもの成長を見ると、きっと新しい発見があるはずです。

運動がもたらす学習面への好影響
運動は学習とも深く関係しています。勉強と運動は対極にあるわけではなく、むしろ、体を動かすことで脳が活性化し、集中力が高まります。
また、運動にはコツコツと練習を重ねることが求められます。何度もなんども練習して、やっとシュートが決まった、という具合です。この経験は、「やればできる」という自己効力感を育てます。「自分ならできる」というマインドは、もちろん学習面にも好影響。上達すればするほど練習も難しくなる世界、そこから培われる挑戦心や責任感、最後までやり遂げる力も、勉強の場面で生きてきます。
また、超少子化時代の今は、仲間とともに何かを成し遂げる経験が不足しがちですが、チームスポーツならば、そういった経験もできるはず。学習上でも協働が求められる社会においては、仲間と関わる経験は、きっと将来役立ちます。
運動系習い事を嫌いにさせてしまう親の一言
勝負が絡む運動系の習い事。もっと成果を出せるようにと、ついつい親側にも熱が入ってしまいます。しかし、ちょっとした一言が、子どもの心を傷つけてしまうことも少なからず…。ついつい言ってしまいがちな、「習い事を嫌いにさせてしまう親の一言」を紹介します。
「もっと頑張って」
「頑張ればできるのに」
→こう言われた子どもは、「今の私ではダメなんだ」と思ってしまうかもしれません。
「〇〇ちゃんはもっと頑張っているよ」
「〇〇ちゃんは上手になったね〜」
→友達との比較は百害あって一利なし。親に言われなくても、子どもはわかっています。
「こうやってみたらどう?」
「コーチが〇〇と言っていたよ」
→知ったかぶりをして助言をされても、子どもは混乱するだけです。
「ちゃんと練習しないからよ」
「ゲームばかりやっているから、上達しないのよ」
→勝手な決めつけは、「わかっていないくせに」と、子どもの反発心を招きます。
また、結果だけを過度に褒めることも、知らず知らずのうちに子どもを追い込んでしまいます。
「今日も一番上手だったね」
「〇〇ちゃんのお母さんもすごいって誉めていたよ」
→「成果を出さないと誉めてもらえない」と思わせてしまうかもしれません。そして、うまくいかなかった時に、「成果を出せない自分はダメだ」と激しく落ち込ませてしまうかもしれません。
子どもの「やりたくない」にどう対応する?
最後に、子ども自身が、「やりたくない」という場合について考えてみましょう。例えば、水泳教室に連れ出してみたのに、「面白くなかった」という反応。親としては、「この子、運動が苦手なのかしら」と悩んでしまいます。
まず、子どもによって「好き」は異なりますので、「面白くなかった」とう反応を気にしすぎる必要はありません。もちろん、「嫌いでもやりなさい」と、無理やりやらせるのもタブーです。「面白くなかったのね」と、まずは子どもの気持ちを受け止め、どんなところが「面白くなかったのか」を聞いてみます。
ロッカーの使い方がわからなかった、知っている友達がいなかった等、運動とは全く異なるところで、「不安」を感じていただけかもしれません。それなら、しっかり説明した上で、もう一度試してみるのもありでしょう。
あるいは、泳ぐこと自体が「楽しくなかった」という場合。しかし、これだけで、「運動嫌い」と紐づけるのは危険です。異なる教室や種目を試してみてはいかがでしょう。水泳は面白くなかったけど、走ることは好きだった等、子どもの「好き」はどこにあるかわかりません。
さらに、幼児の場合は語彙力の不足から、「面白くなかった」と返してくることもよくあります。子どもの言葉を鵜呑みにせず、対話を繰り返してみると、単にお腹が空いている時間だったので、楽しめなかった…など、意外な気持ちが聞こえてくるかもしれません。その習い事に親として魅力を感じているのなら、少し時間をかけて対話をしてみるとよいでしょう。その上で、どうしてもやめたいということなら、気持ちよく子どもの気持ちを尊重しましょう。
大切なのは、運動系習い事を通して、子どもが体を動かす楽しさを知り、挑戦心や達成感を味わう経験です。この経験は、形を変えながら子どもの将来を支える力となっていくはずです。
■ライタープロフィール

江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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