2026年03月05日 公開

子どものやる気はどこから? 「待つ」より「つくる」!

「自分からやる気を出してほしい」「でも親が言わないと動かない」。子育ての日常でそんなジレンマを感じる場面はありませんか。子どものやる気は、心が動いた時に出てくるもの。やる気を「つくる」という発想で、子どもに働きかけていきましょう。今回の『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』第52回では子どもの心が動く言葉かけをご紹介します。

子どものやる気は、心が動いた時に出てくるもの。特に楽しい気持ちになった時に、「もっとやってみたい」と出てきます。ですから、周囲が単に「待っている」だけでは、いつまでたっても出てこないことも。やる気を「つくる」という発想で、子どもに働きかけていきましょう。子どもの気持ちを共感的に受け止めることがスタートです。その上で、子どもに考えさせたり、選ばせたり。子ども目線になって、どうしたら楽しく取り組めるかを考えます。楽しさを感じる文脈は、子どもの発達段階に応じても変化します。子どもの「いまここ」に合わせて、子どもの心が動く言葉かけを探してみてください。

環境によって変わる「気持ち」

人は、安心して過ごせる環境では前向きに動き出せますが、プレッシャーや不安の中ではエネルギーを出しにくくなります。親の心を敏感に察知するのが、子どもの心。親にストレスや不安がある状況では、「やってみよう!」「面白そう!」という前向きな気持ちは、なかなか出てきません。

それどころか、周囲の大人が子どもの「やる気」にこだわり過ぎると、かえって子どもは窮屈に感じ、後ろ向きになってしまいます。「ありのままの子ども」を受け入れる。ダラダラしていてもいいし、失敗しても大丈夫。そんな気持ちで関わっていくと、子どもは安心感を持つことができそうです。

家庭とは、そもそも羽を伸ばしてくつろぐ場所。
・親が優しく見守ってくれる環境
・親が笑顔で接してくれる環境
・好きなことをなんでもやっていい環境
このような「安心できる環境」が、「やる気づくり」の土台です。

やる気の源は自己効力感

やる気と大きく関係しているのが、「自己効力感」。「自分ならできる」「やってみれば何とかなる」という、自分に対する肯定的な捉えのことを言います。「自分はOK」という自己肯定感とは少し異なり、例えば「私は挑戦することができるから」や、「それが私の強みだから」等、自分なりに根拠があって、「やればできる」と思える気持ちです。

この自己効力感が育っていれば、子どもは「できるかどうかわからないけどやってみよう!」とチャレンジすることができるように。トライアンドエラーを繰り返し、多様な経験を積むことができます。

そして、やる気と密接な関係にある自己効力感は、周りの人に認めてもらったり、小さな成功を積み重ねたりする中で育つそう。「もっと頑張れ!」という励ましよりも、「頑張っているね」とプロセスをほめたり、「失敗しても大丈夫」「少しずつでいいよ」と子どもを受け止めることが大切です。うまくいかなかった時には「残念だったね」と共感し、「でも、この部分はとてもよかったね」と、良い部分を言葉にして伝えます。

やる気を「つくる」3つのステップ

もう少し具体的に、やる気を「つくる」方法を考えてみましょう。やる気を「待つ」のではなく「つくる」。そのための方法を3つのステップで解説します。大切なのは、子どもの心を動かすこと。順を追って進めてみてください。

1. 共感する:まずは気持ちを受け止める

「やりたくないんだね」「今は気分がのらないんだね」と、まずは子どもの気持ちを受け止めます。気持ちの代弁(相手の気持ちを想像して言葉にする)が効果的。「そんなこと言ったって仕方ないでしょう」「いつまでグズグズしているの」と、気持ちを否定したり、評価するのはNGです。「今日は疲れちゃったね」と、自分の気持ちをわかってもらえたことが安心感につながります。これがスタート地点です。「次はどうしようか」と、前向きな気持ちが出てくるのはその先です。

2. 質問する:行動を引き出すために働きかける

気持ちが落ち着いたら、次は子どもが考える段階に入ります。「じゃあ、この後どうしようか」「明日までの宿題、いつ着手しようか」と、子どもに質問を投げかけます。「目標を作ろうか!いつまでに終わらせる?」と目標を作らせるのもよし。質問づくりのポイントは、「楽しい気持ち」になるようにすること。心が動く背景には、楽しさが必要です。
質問をされても、「考えて答える」ことが、まだ難しい段階なら、親からの働きかけも必要です。その際に意識したいことが、「大きな塊ではなく、小さな塊にすること」。「これを全部終えよう」ではなく「まずは1枚だけやってみようか」に。「30分プリントやろう」ではなく「砂時計が落ちるまで5分頑張ってみようか」等。小さな塊の方が、始めることへのハードルが下がります。そして、楽しく取り組めます。

3. 承認する:結果よりも「やろうとしたこと」を認める

忘れてはならないのが、「行動後のフォロー」です。「頑張ったね」「とても集中していたね」と、結果ではなくプロセスを認めるようにしましょう。一つの行動が「楽しかった」「できた」と子どもの中で意味付けられます。
もしも、やろうとしたものの、行動までは至らなかった場合。例えば、プリントをやろうとしたけれども、広げただけで手をつけることができなかった等。こんな時にも、「やろうとしたこと」は承認します。「頑張ってやろうと努力したね」と、できた部分に光を当てます。いいところを見つけて肯定されることで、「次はやってみよう」という前向きな気持ちが生まれます。やろうとしたけど、できなかった理由は、その次に考えましょう。

今日から使える言葉の言い換え

子どものやる気は、何気ない日常の言葉かけで大きく変わります。しかし、言葉とはとっさに出てくるもの。いい言葉かけをしようと思っていても、「いつもの言葉」がふと出てきてしまいます。

回避するために役立つのが「言い換え」です。場面別、おすすめ言い換え言葉をご紹介します。

・“やらなければならないこと”をなかなか始めない場面
「早くやりなさい!」
 →「それを始めるまでに何分必要?」

・途中で諦めてやめてしまう時
「最後までやらないとダメでしょう」
 →「今日はここまで頑張れたね。続きは明日にする?今日やってしまう?」

・やりたくないと、子どもが訴えてくる時
「そんなこと言ってたらダメでしょう」
 →「心の中にある気持ちを話してくれるかな。一つだけ頑張れるとしたら何だろう?」

やる気をつくるための関わり方は子どもの年齢によっても変わってきます。子どもが3歳児なら、「みてみて、これ面白そう!一緒にやってみない?」と、親の方からの提案もいいでしょう。もっと考えられるようになった4歳児なら、「どうしたら、うまくできそうかな?」と。また、ルールがわかり出してくるころの5歳児なら、「かっこいい予定表を作ってみるのはどうかな?」と、自分をコントロールする経験を積ませるのもよいかもしれません。いずれの年齢も、楽しさが根底にくるように工夫しましょう。子どもたちの未来は、大人たちのあり方で決まってくるのかもしれません。

■ライタープロフィール
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江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。一般社団法人 小学校受験協会理事。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/