子どもを教育する際に、具体的に何をすれば良いのか分からないという不安を抱えている方が多いのではないでしょうか?そもそも幼児教育とは何を育てることなのか。文部科学省や厚生労働省が定める幼児教育とは具体的にどんな内容なのか。保育・幼児教育を研究している白梅学園大学名誉教授の無藤隆先生にご寄稿いただきました。
小学校入学以降の学びを支える土台を幼児期に育むために、知りたいこと
お茶の水女子大学生活科学部教授、白梅学園大学学長、白梅学園大学大学院子ども学研究科長を経て、現在、白梅学園大学名誉教授。2017年告示の3法令の文部科学省、内閣府の検討会議に携わり、「幼稚園教育要領」、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」の改訂を行う。改訂時の文部科学省中央教育審議会委員・初等中等教育分科会教育課程部会会長、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂に関する検討会座長。
幼児教育において育みたい資質・能力とは
無藤先生:まず、幼児教育とは何を育てることなのでしょうか。
幼児教育を担う施設には主に幼稚園・保育所・認定こども園がありますが、それぞれどういう教育を行うかを幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領で示してあります。それぞれの施設は目的に異なるところがありますが、幼児期にふさわしい教育を行うということでは共通しているのです。
特に、幼児期にふさわしいという点では小学校以上と違い、大きく2つの特徴があります。
1つは幼児が園で出会うすべてのものそして人がいわば教材であるということです。小学校では教科書そして教師が子どもに教えることが中心ですが、幼児は砂場でも積み木でも絵本でもごっこ遊びでも、いろいろなところから学ぶのです。まだ1つのことにずっと集中できないのですが、その代わり好奇心旺盛で、はじめて出会うことに何でも興味を持ち、吸収していくのです。
もう1つは幼児はさまざまなことを学ぶのですが、その根本に資質・能力の育ちがあり、その進展の中で個々の学びが意味を持つということです。その資質・能力とは以下の3つの柱から成り立っています。
①「知識・技能の基礎」
主に、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりすることを指しています。知識などの完成形ではなく、そこに至る感じることや気付くという働きを強調しています。子どもが砂場や積み木や滑り台や絵本でいわば発見することの大切さを述べています。
②「思考力などの基礎」
こちらは、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりするという働きを指しています。考える力なのですが、それを実際の遊びにおいて試して工夫することの中で発揮できるようにしてさらに伸ばしていこうというのです。
③「学びに向かう力など」
「心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする」こととしてあります。何かに出会い、面白い、不思議、かっこいい、などと心情が動きます。するとそのことをやってみたくなり、調べたり、追求したりしたくなります。そういう気持ちが強くあれば、工夫や完成や解決に向けて粘り強く取り組み、自分を励ましたり、友達と協力したりもすることでしょう。そのような、楽しくて充実した活動から生まれる働きがまさに幼児教育の中心になるのです。
数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
無藤先生:前述した3つの資質・能力の育ちが具体的なさまざまな内容の中で幼児期の終わりに向けて伸びていきます。その様子を「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として10個にまとめていますが、その1つが数量・図形・文字などに関わるところです。
しかし、それは小学校教育のやり方を前倒しで早くやることではありません。幼児期にふさわしいやり方があるのです。
その中の1つのポイントとしては特定の算数活動や文字活動に限らず、数量や図形や文字などに出会う機会は園の中の至る所にあるということです。おやつを食べるときにクッキーを3個ずつ分けるとか、サッカー遊びで5人ずつのチームしたいけれど一人足りないとか、いろいろなところで数を数えたり、足したり、引いたりしています。
ただ、幼児ですので筆算を使わずに指やおはじきや暗算で少ない数なら計算しているのです。図形も正確な定義はまだ分かりませんが、丸や四角や三角などはボールや積み木の形でもあり、感覚的にとっくに把握しています。
文字にしても、すでに自分の名前や友達の名前を読める子どもは多いでしょう。書く方は書き順が難しいので、時間がかかるでしょうけれど。
この育ちにおいて大事なことは「関心・感覚」が育つのだということです。小学校のように正確な手順を間違えなく覚えることの前に、まず興味を持って、それをたくさんの実物に応用して、多様な活動で使ってみて、面白い、かっこいい、すてき、と感じながら、楽しんで関わるから、いくらでも数なり文字なりを使っていこうとするのです。
お皿も鉛筆も人間も自動車も数えられるということは初めは分からないのですが、次第に試していく内に納得していきます。積み木の四角ならその上に積めますが、三角だと乗せられず、屋根になります。ボールは転がります。
文字は身の回りの環境にあふれています。園の部屋には自分や友達の名前がひらがなで書かれていて、歌の歌詞もあり、絵本もたくさんあります。何度も接している内に、かなについて、一字の読み方を覚えますし、その字を含めた単語についても「さくら」とか「うめ」とか出会いながら学んでいきます。
そして、いくらでも間違えても良いのです。その内、だいたいこんな感じかなというセンスが育っていきます。腑に落ちる学びと言って良いでしょう。それを「感覚」の育ちと呼んでいます。そういう感覚が十分にできるからこそ、小学校の算数や国語の授業が成り立ち、そこでの学習がしっかりと進むようになるのです。
主体的・対話的で深い学びとは
無藤先生:今、単に言われたことを覚えるという学びではなく、子どもが自ら進んで能動的に学ぶことの大切さが強調されています。そうであってこそ学びが身に付き、そしてその1つの学びが他の多くと関連付けられ、いろいろな課題解決に使えるものになります。そのような互いに繋がりがあって、応用が利く知識が形成され、その知識に基づいて問題解決をして、さらに知識がつながり合って広がることを「深い学び」と呼んでいます。
それを実現するためには、主体的な学びと対話的な学びが特に求められます。
主体的とは、子どもが自ら進んでやってみたくなることを言っています。最初は与えられたとしても、それを続ける内にのめり込んで楽しく熱中することもあるでしょう。もっとやりたくなる。次にはこんなことができそうだ。もうこのことも分かっている、と自己確認できると、いっそう主体的な学びが進んでいきます。
それを補い、支え、広げるのが対話的な学びと呼ばれるものです。何より他の人とやり取りする中で多くのことに気付き、面白さを発見し、もっとやりたいと憧れ、またそのやり方をモデルとして自分に取り入れるようになります。
一方的に受け入れるだけでなく、自分はこう思う、こう考えた、こうかもしれない、と意見を出し、考えを表明できることが大事です。それを大人が受け止め、「そういう考えもあるね、ここのところはいいね、もっと一緒に考えてみようか。」と励まします。大人が正答を知って、当たり外れを言う管理者になるのではなく、一緒になって考えていこうとすることで対話が成り立ち、学びが深まるのです。
「できるーと」はくり返し、楽しく、やり取りの中で
無藤先生:幼児向けの教材は先ほどに述べたような原則を踏まえて作られます。何より楽しいことが一番大切です。つまらなくても練習して覚えるという時期にはまだ早いのです。
クイズみたいな遊びであること。
見ているとそのキャラクターや絵が面白いこと。
間違いということではなく、やり直しが利いて、どこかで当たること。
画面が動いて、それを目でフォローできて、確認し、納得がいくこと。
少しずつ問題が変わりながら、いくつもやれて、いつの間にか習熟するようになっていること。
そしてさらに、絵本、動きを伴うアプリ、親(大人)とのやり取りができる、という設定が分かりやすさと楽しさを高めます。
絵本だけでは飽きるところを動きのあるアプリにより、正解を見つけようと何度でも試せます。理屈が分かることも大事です。単にクイズに当たったということではなく、なぜそれが正答で他のものは違うのかがくり返しやり直すことで納得できるようになっています。
難しさの段階を追って少しずつ進む仕組みです。いきなり高いところに挑戦するよりも、すぐにできるところから始めて、くり返しやる楽しさを覚えて、そこから徐々に難度の高いところに進んでください。どうしても分からないときには前に戻ります。時に大人が教えることがあっても良いのですが、「どうしてだろうね」と一緒に考える姿勢が大事です。
ーーありがとうございました。
(構成/Chiik!編集部)
「学力の経済学」中室牧子教授に聞く幼児期の【かずの学びの重要性】
「できるーと」とは?
『できるーと』 は絵本(アナログ教材)とアプリ(デジタル教材)のそれぞれの特長を活かしつつ、思考力・発想力を育てられる家庭学習教材です。
ワークえほん×ワークアプリ×おうえんアプリの3つの教材からなり、デジタル教育コンテンツに力を入れる凸版印刷と、絵本や保育教材の出版社のフレーベル館がタッグを組んだサービスです。
「ワークえほん」はストーリーを楽しみながら、鉛筆で書いたり貼ったり切ったりする体験を通して、数や量、図形について学んでいきます。
「ワークアプリ」では、ワークえほんで身につけた基礎を活用して、自分なりの考え方や解き方で工夫しながら問題に取り組みます。理解度に合わせて徐々に難易度を上げながら、繰り返しチャレンジできる問題をたくさん収録しています。自分でオリジナルの問題を作ることもでき、理解がぐんと深まります。
「おうえんアプリ」は保護者用のアプリです。子どもの学習状況がリアルタイムにスマホに届き、教え方やほめ方など適切な指導の仕方がわかります。一日の学習の振り返りとして、子どもができたことを具体的に褒めることができ、自尊心と自己効力感を高めることに役立ちます。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
考える力を絵本×アプリで楽しく育む新教材「できるーと」【体験取材】
【体験談】「できるーと」使用レポート
5歳(年中)の男の子に「かず1」を購入しました。
ワークえほんは1週間くらいで解き終わりましたが、ストーリーはくり返し楽しみ、アプリは遊び感覚で何度も遊んでいます。一度で終わりではないので、コスパがよいと感じました。
現在、かずを30くらいまで言える・書けるくらいのレベルですが、難易度については少し難しいくらいで、前半の問題はほとんど親の助けなしでもすらすら解いていました。
つまずいた問題・分野は「おうえんアプリ」で確認、課題を見つけられてよかったです。
保護者が子どもの苦手な分野に気づけるところは、ほかの知育アプリにはない特徴だと思いました。
「なかまわけ」や「なんばんめ」が苦手だということに気づいたので、克服したら「かず2」にも進んでみたいです。
できるーと「かず1」 集合/順序 | 無籐 隆
■監修:無藤隆/白川佳子
■指導:和田美香/吉永安里
■企画/編集:凸版印刷 教育事業推進本部
■対象年齢:4・5・6歳
■66ページ/全面カラー
■算数力の基礎となる、物の特徴を正しく捉える力、物の数や順序を数字で表す力を育めます。
できるーと「かず2」 <たし算・ひき算/いろいろな数> | 無藤 隆
■監修:無藤隆/白川佳子
■指導:和田美香/吉永安里
■企画/編集:凸版印刷 教育事業推進本部
■対象年齢:4・5・6歳
■66ページ/全面カラー
■身近な物や生活体験をもとに、たし算・ひき算の基礎力や、お金や時計などの概念を理解する力を育めます。
できるーと「かず3」 <比較/図形> | 無藤 隆
■監修:無藤隆/白川佳子
■指導:和田美香/吉永安里
■企画/編集:凸版印刷 教育事業推進本部
■対象年齢:4・5・6歳
■70ページ/全面カラー
■比較や図形の学びを通じて、多様な視点から物事を捉える力や論理的思考力を育みます。
アプリのダウンロード | えほん×アプリで、親子で考える力を育てる【できるーと】
※ワークアプリのおためしコンテンツ以外の問題やおうえんアプリは、ワークえほんをご購入いただいた方のみ、利用できます。
※ワークアプリはタブレットでの利用、おうえんアプリはスマートフォンの利用をお勧めします。タブレット・スマートフォンはご家庭でご用意ください。
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