数年間に及ぶ受験勉強を経て、進学先が決まった時、お子さまはもちろん、親御さんもホッとしたのではないでしょうか。
ご家庭によっては、家族一丸で戦った中学受験だったと思います。たとえ第一志望ではなかったとしても、努力して勝ち取った合格。今まで受験勉強を続けてきたことと共に、成功体験としてお子さまの自己肯定感を高めたはずです。
気を張り、頑張ってきたからこそ、受験後、一気に脱力してしまうケースは多いです。
筆者の娘も受験勉強期間は短かったものの、彼女なりに精一杯頑張った結果、受験終了後は自由人となり、遊びとゲームの世界に没頭するように。(学校の宿題以外、一切勉強をしない日が続きました。)
もちろん受験勉強をやり切ったのですから、思う存分好きなことをするのは大賛成です。中学受験で心身ともに疲弊しているお子さまも多いかと思うので、受験終了後は十分休ませましょう。
ただ、私立・国公立中学受験したからこそ、入学に備えた勉強はしておいた方が良いでしょう。
というのも入学直後に「新入生テスト」、「学力推移調査対策」など、新入生の中での自分の順位や偏差値が明らかになる学力テストがあるからです。
また小学校に比べて格段にハイレベル&ハイスピードな学習内容に、心折れないためにウォーミングアップが必要です。
【実録・中高一貫校】入学前に対策?「学力推移調査・中1」の難易度
中学受験終了後、いつから勉強をスタートさせるか
十分休息をとったら、小学校の勉強の復習をスタートさせましょう。勉強の再開はなるべく早くが良いですが、あまり焦らず、お子さまの様子を見ながら声がけしましょう。
できれば2月下旬くらいまでには入学準備の勉強をはじめたいところ。
入学直後に行われる「新入生テスト」、「学力推移調査対策(中高一貫校で実施することが多い)」などは、小学校6年生で学んだ内容が出ます。
娘の進学先は私立中高一貫校。全国・校内の順位、偏差値と、大学入試に対応した学力が明らかとなる「学力推移調査」を受けました。
試験科目は国語・算数・英語の3教科。マークシート方式でした。
どの教科も小6の勉強が理解できていること+応用力(思考力)が問われるもの。
国語は長文読解の大問がメイン、算数は小6の復習問題、英語は小学校の教科書の内容+リスニング能力が必要なもの。
難易度は、「小学校のカラーテストよりは明らかに難しいが、入試問題よりも平易」でした。
また学力推移調査以外の4教科の学力テストがある中学校の場合は理科と社会の小6単元の復習も必要です。
入学テストと入学準備のためにどんな勉強をすればよい?
先にも述べたように、入学直後のテスト範囲は「小学6年生で学んだこと」。
教科書で学ぶ内容を超えた勉強をしてきた受験生ですので、新たに参考書や問題集を購入する必要はないでしょう。
受験で使った過去問を解き直しする、参考書を読み返す、などに取り組んでおけばOK。
入学テスト対策を行い、「学習習慣」を絶やさないことが入学準備になります。
私立、国公立中学は、大学受験を見越して、先取り学習をすることが多く、授業進行が非常に早いです。加えて、小テスト、課外授業が多く、綿密な予習復習が必須。必然的に毎日、数時間の勉強をしなくてはなりません。
入学後に勉強をハードに感じてしまわないためにも、受験終了後も学習習慣は絶やさないようにしましょう。
中学入学前、娘の春休みを振り返る
受験後にすっかり気が抜けた娘が、受験前のような勉強を再開したのは入学直前。まったくのノー勉ではなかったのですが、受験勉強と比べると本気度が違いましたね。
学力推移調査を意識して勉強したのも2日間程度。
かなり自由気ままに過ごした春休みだったと思います。
しかし、今となっては「少し娘と衝突しても、もう少し勉強をするように言うべきだったかも・・・」と後悔しています。
というのも、進学先は思った以上に勉強がハードだったからです。
のんびりし過ぎた分、入学後の授業スピードの速さと、勉強量の多さにつぶれないか心配でしたね。
本人は意外とすぐに慣れたようですが、それでももう少し早く、学習習慣を取り戻しておけばスタートがよりスムーズだったと思います。
受験で使った参考書・問題集を見直そう
小学校6年間の学習を発展させた、難易度の高い問題に取り組むことが、入学テストと入学準備になります。
受験勉強で使った過去問・参考書・問題集を見直しましょう。何度も解いた問題でも大丈夫です。
特に算数は、解き直しをして、再度解法を確認することで理解が深まります。
この章では教科ごとに、娘の経験を踏まえて「やっておいた方が良い」と思う学習を提案させていただきます。
国語
小学校で習った漢字の確認をしておくと良いでしょう。中学校では、「解答を正しい漢字で書く」ことが求められます。(漢字で書けない場合は不正解にされることもあります。)
また入学テストに備えて、長文読解問題を繰り返し解いておきましょう。
娘は入学後、国語の授業で
「物語文の要約を○○文字以内で書く」
「主人公の気持ちを表している情景描写を見つける」
ような、中学受験国語のような学習をしています。短時間で自分の意見を文章にすることに苦労していました。
長文を速く、正確に読む、長文を要約する練習が他教科も学びやすくします。
算数 数学
中学受験の過去問に再度取り組みます。
受験後、勉強を長時間怠けていた場合、受験勉強ではできていた問題が難しく感じたり、面倒に感じたりするかもしれません。
まずは計算問題からで良いので取り組み、算数センスを取り戻しましょう。中学受験の計算問題は法則や工夫を組み合わせて解くため、ワーキングメモリと論理的思考を高めるトレーニングにもなります。
解くときは面倒でも、計算式や、文言を書き、解く過程が他人から見てわかるようにします。中学校以降では、問題を解く過程をしっかり書かなくてはなりません。入学前に慣れておくことをおすすめいたします。
英語
小学校の教科書に出ていた単語は完璧に覚えます。特に月、曜日、日付、数の数え方は、読み書きできるようにしておきましょう。
入学テストでリスニングが出ることもあります。(娘の学校では出ました。小学校のリスニングテストより難しいです。)リスニングに慣れておくと良いでしょう。
おすすめは英検のホームページで4級のリスニング試験に挑戦することです。(もちろん、3級、2級でも!)
理科
参考書を見直します。受験勉強で暗記した知識を、再度確認しましょう。受験で蓄えた知識は、入学後に生物・化学でも使います。
写真・イラストなどの資料を見て、イメージしながら覚えると、定着しやすいです。
社会
小学校5,6年で習う範囲をおさらいします。
受験で使った参考書には、マーカーや書き込みがあって、要点がつかみやすいはず。抜けている知識がないかチェックしましょう。
中学校では地理・日本史・世界史・政治経済をより深く学習します。
都道府県名、世界の国名、日本と世界の気候、日本の歴史と重要人物・・・受験で覚えた知識が、当然あるものとして授業が進められます。小学校の学習があやふやだと、授業についていけません。
理科同様、写真・イラストなどの資料を見ながら、用語を書いたり、音読したりすると頭に残ります。
中学入学後の勉強量に疲れないために「春休みにできること」
娘の通う私立中高一貫校は、課外授業(朝・放課後)、資格試験対策講座、土曜日授業などがあります。授業数が多く、小テストも毎日あるため、1日の家庭学習は3~4時間となりました。
中学校の授業は、国語・数学・化学・生物・地理・英語・体育・美術・家庭科・保険・音楽の11教科からスタート。どの授業も、自分の意見を発表する、考えを文でまとめる、クラスで話し合う、など生徒主体の授業です。先生の講義を聞いて、ノートをとるだけではなく、論理的思考力、文章力、プレゼンテーション能力が求められます。
受験終了後から春休みにかけて、勉強量を急激に減らして、のんびりしていた娘。
入学後最初の1週間は、手に疲労感を感じる、夜なかなか眠れないなどの「勉強疲れ」が表れていました。
朝、起きるのも辛そうでした。
春休みの間に、「頭と体の準備」をきちんとやっておくべきだった、と痛感しました。
娘の様子を見ていて、入学前にしておけば良かったと思うことは3つあります。
読書をして読解力・語彙力・ワーキングメモリを高める
授業進度が速く、学習量も多い中学では、先生の話、板書、教科書、資料の内容を速く、正確に読み取る力が求められます。
この力を養うのは読書。本はお子さまに選んでもらいましょう。
興味のある、面白いと感じる本であれば、どんどん読み進めたくなります。想像力や推理力を使いながら、文章を素早く読むことで読解力・語彙力・ワーキングメモリをアップさせます。
おすすめは対象年齢小学校高学年以上、300ページ前後のもの。時間に余裕のない場合でも、すきま時間を利用して、春休み中に読み切れる長さのものが良いでしょう。
早起きに慣れておく
進学先が遠い、部活の早朝練習がある、課外授業がある・・・入学後は、小学校よりも早く起きなくてはならないお子さまが多いかと思います。
娘も部活や課外授業のある日は、7時に家を出発します。クラスメイトの中には、朝6時に出発する子も数人いるそうです。
新学期を心身ともに安定したスタートを切るために、春休み中も早起きする習慣をつけておきましょう。
少なくとも入学式の1週間前までには、登校日と同じ時間に起床するようにしましょう。体内時計、睡眠サイクルが整うまでには時間がかかります。
春休み中は、生活リズムが狂いがち。
受験終わった開放感から、
「深夜までゲームやスマートフォンで遊んでしまう」
「夕方に昼寝をしてしまう」
「朝9時まで寝てしまう」・・・
のような、遅寝遅起き習慣がつかないようにしましょう。
早起きが辛いお子さまは、朝一番にカーテンを開けて日光を浴びることからはじめましょう。人の体内時計は25時間で、1日24時間よりも1時間長いため、起床・睡眠のリズムは簡単に崩れます。起きてすぐに日光を浴びることで、体内時計のずれが修正されます。
運動習慣をつけて通学・部活に備えよう
中学校から電車やバス、自転車で通学をはじめるなら、春休み中に体力づくりをしておくことをおすすめいたします。
ジョギング、水泳、バドミントン、サイクリング、軽登山・・・無理のない範囲で、心肺機能と筋力を鍛える運動をしましょう。
我が家では受験期から、親子でジョギング、バドミントンをしていました。
運動をすると心身をリラックスさせる脳内ホルモン「セロトニン」が分泌されます。新生活を安定した状態で迎えるためにも運動習慣をつけましょう。
ラッシュ時の電車やバスは、慣れていないと、体力と精神を削ります。一定の時間、立ち続けることは筋力とバランス感覚が必要とします。
また30分以上かかる自転車通学も、体力をつけておかないときつく感じるでしょう。
中学校の部活動は、小学校のクラブ活動よりも活動時間が長く、目標意識も高いです。「高い熱量と、技術を求められる」本格的な部活動が多いかもしれません。
6,7時間授業の後、部活動に参加するのですから、運動部はもちろん、文化部であっても体力は必要です。
入学テストの結果を活かそう
中学校のテストでは、自分の学年順位・偏差値などを知らされることもあります。自分の学力を客観的に見ることは、結果によっては落ち込むこともあるでしょう。しかし、その結果が全力を出し切ったものであれば、恥ずべきことではありません。目標に向けて努力できる力がある時点で、学力向上は可能です。苦手・弱点に気づき、学習法を見直すことで、次回の成績は良くなるはずです。
小学校よりも周囲の生徒たちの意識や学力が高く、圧倒されるかもしれません。テストに対して、これまで以上にお子さまは緊張感を感じることでしょう。
テストの結果に関わらず、親御さんは、まず日々の頑張りを認めてあげられると良いですね。
中学受験 合格はゴールではなく、スタート
進学先が決まったことは「中学受験」のゴールであり、これから先の高校受験(内部進学)、大学受験に向けてのスタートです。
同じ入学試験を突破したライバルでもある仲間たちと、競い合い高め合うためには、日々学習を続けるモチベーションを持つことが必要です。
このモチベーションを上げるには、入学直後のテスト、1学期の中間テスト・期末テストの成績を、自分が納得できるものにすることです。
納得できるとは、良い点数・順位だけを指すのではなく、できる限りの勉強をした上での結果(それが相対的に良くなかったとしても)を指します。
1学期のテストを悔いのない結果にするために、入学前に学習習慣を長期間やめることは避けましょう。
中学受験で培った「コツコツ毎日頑張り続ける」精神力は身についています。受験終了後の約2カ月間を、有意義に過ごせば、入学後の勉強量に圧倒されることはないでしょう。