2022年03月25日 公開

小学校低学年までに作りたい言葉の習慣―学力の基盤は言葉

『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第9回は、幼児期から小学生低学年まで作りたい言葉の習慣をお届けします。語彙力向上に欠かせない、言葉の「質」と「量」を増やす家庭での工夫と3つのポイントを解説します。

           
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新・家庭教育論言葉

学びの土台となる言葉。話し言葉も読み言葉(読書)も、習慣は家庭で作られます。特にデジタル社会における子育てでは、子どもとの意識共有に言葉は欠かせません。言葉を使えるか否かで、伝達力にも格差が生まれつつあるように感じます。

ところが実際には、子どもの読解力は危機的状況にあり、読書習慣も学年が上がるごとに減少傾向にあるとのこと。言葉からまだ遠ざかっていない今、是非とも家庭で言葉の習慣づくりを意識しましょう。言葉の量を増やし、質を高めるためには、親の声掛けにちょっとした工夫を入れ込むことが鍵となります。

「もうすぐ小学生!」子ども達のワクワク感とは裏腹に、もしも皆さんに「勉強についていけるかしら」と不安があるなら、是非とも取り組んで頂きたいのが、言葉への着目です。
これから始まる学習の土台となるのは、まさに言葉。最も重要な家庭教育は言葉の教育と言っても過言ではありません。話し言葉も読み言葉(読書)も、習慣は家庭で作られます。

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広がる小学生からの「言葉」

新・家庭教育論言葉

小学生になれば、子どもの世界は大きく変わります。遊びの世界から学び(勉強)の世界へ。より主体的に、能動的に、自分で考え、自ら動くことが求められるようになります。学びの土台は言葉です。小学生になれば、言葉を使う機会が圧倒的に膨らみます。

また、子どもが属する社会は広がり、家族以外との人間関係がたくさんできます。決まった人と小さな社会で収められていた人間関係が、広い世界で他者とともに、となるわけです。
多様な価値観の中で生き抜くためには、相互に理解し合う姿勢が必要です。自分を表現し、他者を理解する…。そこでも言葉は重要な役割を果たします。

デジタル時代に重視される「言葉」

新・家庭教育論言葉

今や小学生もタブレットで学ぶ時代です。そのことの是非はさておき、親が子どもの行動を管理していくことには限界が出てきました。学習をしているのか、ゲームをしているのか…、親の見えない部分が多くなってきたのがデジタル社会の子育てです。

家庭のルールを決めておくことはとても重要でありつつ、子ども自身が納得できないルールに、無理やり従わせることはできません。デジタルと付き合うためのルールを、「駄目なものは駄目!」と言葉少なに一方的に押し付けてしまっては、子どもは自分ごととして受け入れることができません。すぐに破られてしまいます。

子どもが納得するよう、説明することが必要です。もちろん、子どもの意見を聞くことも大切です。親子の意識共有に、言葉の存在は欠かせません。

また、コロナ禍も相まって、オンラインによるコミュニケーションが急増しましたが、画面上で相手の表情を読み取るのはとても難しいもの。自分の伝えたいことを伝えるためには、的確に表現するための言葉が必要です。今の時代、言葉を使える人とそうでない人では、伝える力に大きな差ができてしまうように思います。

ますます加速するAI社会においては、人間だからこそできることへの期待が高まります。相互に繋がり新たな価値を創造していくことが人間だからできることだとするなら、言葉を利用できるということが、人間の価値とも言えるでしょう。

危機的状況にある子どもの読解力/読書習慣

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ところが、ある程度の言葉が使えるようになり、日常生活に不便さがなくなってきたころ、私たちは言葉に対する意識を低下させてしまっているようです。
新井紀子氏による『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新聞社)では、中学生の約5割は教科書の内容を読み取れていないとの調査結果が示されています。

2018年に実施された国際学習到達度調査(PISA)では、日本の子どもの読解力は、その前の調査の8位から15位へと大幅に転落。
PISAにおける読解力の定義は、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」とあるため、文脈を理解しながら読めるという力とは多少異なりますが、日本の子どもたちの読解力の低下が深刻化し、看過できない状況であることはつかめます。

一方で、読書時間には個人差が大きくあること、言うなら読書時間には格差が広がっているデータも示されています。子どもたちの読書活動の実態に関する調査(ベネッセ教育総合研究所)では、1日の読書時間が0時間の子どもたちが学年を追うごとに増えており、小3で30%近く、高校生では過半数を超えているのに対し、1日1時間以上読むという熱心な学生はどの学年であっても10%前後の一定程度存在する状況が示されています。(参照URL:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/040/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/09/21/1395532_001_1.pdf)
習慣さえあれば、読書時間は確保できるということでしょう。

まずは親から言葉を意識しよう

小学生までに是非とも始め、低学年までにはしっかり身につけてもらいたいこ
と、それが言葉の習慣です。

子どもが言葉を聞く機会を作りましょう。親の言葉もよし、オンライン等を利用した他者の言葉も新鮮です。

子どもが言葉を話す機会も作りましょう。ご家族が良き聞き役になってあげれば、子どもは楽しんで話すようになるはずです。

言葉を読む習慣も作りましょう。読むことへの興味は家庭で育てられます。たくさん読んであげましょう。
そして、たくさん読ませてあげましょう。手に取れるところに本を置いておくのはおすすめです。子どもの年齢に合わせて本を選ぶ必要はありません。大切なのは、そこに読むものがある環境です。

低学年までに作りたい言葉の習慣

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親子ともども忙しい日常、どのようにしたら言葉の習慣を作ることができるのでしょう。学習として言葉を習得する段階にまだない子どもたちは、一人で言葉を身に付けることは出来ません。

親子の対話が一番の近道です。「量」と「質」を意識すれば、ぐんと習慣づくりは楽になります。

言葉の「量」を増やすための工夫

言葉の総量を増やすためには、子どもへの質問が効果的です。

「今日幼稚園で一番楽しかったことを教えてくれる?」

対話が長続きすれば、それだけ言葉の量は増えるはず。子どもから返ってきた答えに、更に質問をしていきましょう。

「そうなんだ、今日は寒かったけど、外で遊んで楽しかったんだね。寒い日のお外ではどんなことができるのかな?」

という具合です。

きちんと出来ているか否かを確認するための質問ではありませんので、子どもの意見を受け止め、楽しく次につなげていくのがポイントです。ご自分の意見も言いたいところでしょうが、目的は言葉の量を増やすこと。子どもにたくさん話しをさせてあげましょう。

また、言葉の量を増やすためには、知らない言葉が出てきた時がチャンスです。面倒がらずに、知らない言葉が出てきたらその場で説明。言葉に多く触れることは脳の活性化にもつながり、更に多くの量を覚えられるようになるはずです。

言葉の「質」にこだわるための工夫

対話の質を高めるためには親の関わり方が鍵となります。3つのポイントをお伝えしましょう。

•具体的に話をさせる
子どもの話が分かりづらい時、内容をつかみにくい時には、「もう少し具体的に教えてくれる?」と聞きましょう。自分の発言に興味を持ってくれたことも嬉しく、子どもは知っている言葉を探しながら、つなげながら、説明をするはずです。たった一言加えるだけで、子どもの表現力が高まります。

•要約してみる
子どもの話は、往々にしてスライドしていきます。ある程度が終わったところで、「こういう理解でいいかな?」と内容を要約し、確認してみましょう。自分の伝えたかったことを振り返るとともに、端的にまとめるための語彙力が身につきます。

•良質な文章にふれる
子どもだからまだ早い、このような考え方は是非捨てて頂きたいと思います。好きな世界、読んでみたい文章は、年齢によって決まっているわけではありません。読ませてあげたい本、知ってもらいたいと願う文章等は、触れる機会を作ってみましょう。もちろん子どもが興味を示さなければ無理強いはしません。

親御さんの思い出がたくさんつまった本もおすすめです。本を読みながら、お父さん、お母さんが子どもだったころの話ができれば、とても温かな空気が流れるはずです。

ポジティブ言葉でマインドアップ

新・家庭教育論言葉

子育てには悩みや迷いがつきものですが、納得感ある子育てに向かうためには、親も語彙力をつけることがおすすめです。モヤモヤした気持ちを言語化できれば、解決に向かうことができるはず。気持ちが落ちてしまった時には、ポジティブ言葉で自分を励ましてあげましょう。

学びは子どもだけのものではありません。親も学びの主体となれれば、これからの人生をより一層楽しむことができるはずです。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
株式会社サイタコーディネーション

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WRITER

江藤真規 江藤真規 サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://saita-coordination.com/