
「僕、頑張るよ」と言ったのに、なかなか勉強が進まない息子。
「毎朝6時に起きる」と決めたのに、「今日は無理、明日から」と先延ばしにしてしまう娘。
それでも、「親は口を出さず、子ども自身に学習計画を立てさせるべき」と考えていませんか。主体性を育てたい気持ちは大切ですが、いきなり理想通りには進みません。理由は、子どもの意志の弱さではなく、「計画の立て方」にあるようです。
子どもが、計画を立て実行していくには、ある程度の「強制力」が必要です。ただし、それが恐怖や支配によるものでは、子どもの自立を遠ざけてしまいます。逆に、プレッシャーが強すぎても動けなくなります。子どもに必要なのは、「管理者」ではなく「伴走者」の存在。そして、意欲が自然と引き出される計画です。
「面倒だな」「やりたくないな」を少し超えて、自分の意志で前に進める。そんな学習計画の立て方を考えてみましょう。
計画を立てることのメリット
計画があると、「どこに向かえばいいのか」が見えてきます。そして、「何をすればいいのか」、行動に落とし込むことができます。ですから、計画はできるだけ具体的であることが大切です。
たとえば、「勉強を頑張る」と言っても、「何を」「どのように」頑張るかが明確でなければ、最初の一歩を踏み出すことは難しくなります。さらに、「いつまでに」というゴールが決まっていなければ、継続する意欲が薄れてしまいます。
「今日はここまでやったら終わり」
「今週はここまでできればOK」
計画があれば、行動の見通しが立ち、人は頑張る力を持ちやすくなります。そして、計画通りにできた後には、「頑張ったらできた」「やり切れた」と、自己肯定感が高まります。計画とは、人を縛るものではなく、前向きに動くための「道しるべ」とも言えるでしょう。
未就学児〜小学生に必要なのは「共同作業」
この時期の子どもは、まだ完全な自己管理が難しい段階。計画を立てること自体も、まだまだ練習中と言えるでしょう。計画を立てた以降は自走できるとして、計画づくりそのものには、親のサポートが必要です。しかし、だからといって、親がすべてを決めてしまうのはおすすめできません。
「まず宿題をして、そのあと漢字練習ね」
「6時から30分を朝学習にしよう」
このように親主導で決めてしまうと、「計画通りに進めたい」という親の気持ちの高まりとともに、次第に「監視」が始まってしまうからです。その結果、せっかくの子どもの取り組みから楽しさが消え、「自分で考える機会」まで失われてしまいます。次第に、「ママ、次は何をするの?」と、「親の指示待ち」にまで発展してしまうことも…。「自分のため」ではなく、「親のため」に頑張る構図ができてしまっては大変です。
そこで大切になるのが、「一緒に考える」という姿勢です。
親:「来週までに何をやる必要があるかな?」
子:「プリントと音読」
親:「じゃあ、どの日にやると良さそう?」
このように共同作業の形にしていくことで、子どもは「やらされている」のではなく、「自分も参加している」と感じやすくなります。
子どもが前向きになれる計画づくりの7つのコツ
計画は、子どもの前向きな行動を支える大切なツールです。子どもが上手に計画を立てられるようになるために、親はどう関わればいいのでしょう。7つのコツをご紹介します。
1.「選択肢」を与えて選ばせる
「宿題やりなさい!」よりも、「先に計算にする? それとも音読からにする?」に。
選択肢があれば、圧倒的に決めやすくなります。そして、たとえ小さな選択であっても、「選ぶこと」の積み重ねが、「自分で決めて自分で責任を取る」という感覚を育てていきます。
2. 余白を作っておく
大人だって、気分が乗らない日もあれば、疲れて動けない日もあるものです。それが、リアルな日常です。
そんな時に、「計画通りにできない自分」を感じるより、「追いつけた自分」を感じる方が、ポジティブな気持ちになれるはず。計画を立てる段階で、ちょっとした余白を作っておくと良いでしょう。「少しズレたけれども、戻ってこられた自分」を感じることができれば、次なる行動につながります。
3. 欲張りすぎず、実現可能な大きさにする
三日坊主という言葉がありますが、新しいことを継続するのは、なかなか難しいことなのです。特に、相当な頑張りを要する行動は、持続させるのが難しく、そのうち「苦しさ」を生み出してしまいかねません。
「毎日1時間勉強する」よりも、「毎日10分だけ読む」「1ページだけ進める」にする方が、持続可能性が高まります。
4. 「結果目標」に「行動目標」を加える
「100点を取る」「問題集を終える」
これらはよく見かける目標ですが、ゴールを「結果」に置いた目標だけでは、子どもは途中で苦しくなってしまうことがあります。結果までの道のりは長く、気持ちが続きにくいからです。
「結果目標」に加えて、「行動目標」も作ってみましょう。「毎日机に向かう」「まず5分だけやる」「分からないところに印をつける」。「今日できる行動」に落とし込むことで、子どもは前に進みやすくなります。
5. ゴールの先を見る
目標のその先をイメージすることで、目標に到達する意欲が高まります。
「終わったら何をして遊ぼうか?」
「今週計画通りにできたら、来週はどんなことをしたい?」
ゴールの先にある楽しい時間を想像できると、前向きな気持ちが高まりやすくなるのです。
6. 目標(ゴール)から逆算する
計画を立てる時は、ゴールから逆算すると考えやすくなります。
たとえば、「今月中に漢字を50個覚える」というゴールを設定したなら、「1週間で10個」「1日2個ずつ」と、ゴールから逆算して、小さな計画を立てていきます。ゴールまでの道筋が見えることで、動きやすくなります。さらに、小さな計画なら「やってみよう」という」意欲が湧きます。
7. 詰め込みすぎには要注意
今日は時間がある。今日は調子が良い。そんな時、ついつい親は、「せっかくだから、これもやろう」「今のうちに、ここまで進めよう」と詰め込みたくなってしまいます。
しかし、子ども側からすると、「早く終えて遊ぶためにとせっかく頑張ったのに…」と、自分の頑張りが否定された気分に。欲張って詰め込むのはやめておきましょう。

徐々に「自分でできる」を増やしていく

子育ての基本は、「少しずつ自分でできることを増やしていく」こと。計画づくりも同じです。「少し頑張ったらできた」という経験を積み重ねながら、子どもは徐々に、自分で計画を立てられるようになっていきます。そのためには、「全部やってあげない」「先回りしすぎない」ことが大切です。
たとえば、子どもが忘れ物をしそうな時。
「○○入れた?」と即座に確認するのではなく、
「今日必要なもの、一緒に確認してみる?」
と、考える機会を作ります。
また、結果だけではなく、小さな成長に目を向けることも重要です。
「自分から机に向かったね」
「声をかけたら気持ちを切り替えられたね」
「昨日より早く始められたね」
こうした「小さな前進」を見つけて伝えてもらうことで、子どもは「自分ならできる」という感覚を膨らませていきます。
学習計画というと、「効率よく進めるためのもの」と考えがちです。しかし、一人ひとりが、自分に合った学習計画を立てられるようになるまでには、極めて個別性の高い、ある意味とても非効率な関わりが必要です。
自分で考えて、計画を立てて、やってみて、うまくいかなくて…、そしてまた調整する。
そのプロセスを繰り返しながら、子どもは少しずつ、「自分で計画を立てる力」を身につけていきます。
親が支える中で、子どもが少しずつ参加していく。親の伴走を励みに、子どもが少しずつ挑戦していく。計画づくりを、楽しく踏み出してください。
■ライタープロフィール

江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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