2026年06月01日 公開

「できるようにする」より大切な苦手教科との付き合い方

「うちの子は算数が苦手」と、子どもの苦手教科を決めつけていませんか。苦手と言われれば、苦手な気持ちが膨らみます。そして、「克服しなければ」という重たい気持ちが発動してしまいます。しかし、苦手教科ばかりをやらせようとしてしまうのは逆効果。「新・家庭教育論 忙しい毎日に取り入れたい子育てコーチング連載第54回」では親ができる、毎日の習慣づけや、取り掛かりやすくするための環境設定など苦手教科との付き合い方をご紹介します。

音楽が苦手、スポーツが苦手。こういった苦手に対しては、「無理にやらなくてもいいか」と、親は肩の力を抜いて見守ることができるのでしょう。しかし、これが「苦手な教科」となると、話は別。学校では避けて通れませんし、テストや成績にも影響を与えます。
「このままでは大変なことになりそう」
「なんとか今のうちに克服させないと…」
しかし、ここで勇み足になってしまうと、さらに苦手意識が膨らんでしまいます。そもそも、苦手な教科は本当に「できるようにする」ことだけがゴールなのでしょうか。本ブログでは、苦手教科とどう付き合えばよいのか、親の心の内を推測しながら、子どもへの援助の工夫を考えてみます。

苦手な食べ物と苦手な教科の決定的な違い

幼少期の子どもの「苦手な食べ物」には、「克服法」がいくつもあります。小さく刻んでカレーに入れたり、りんごと合わせてジュースにしてみたり。そして、食べた後に「人参入っていたんだよ!食べられたね〜」と成功体験を積ませることもできるでしょう。もちろん、「人参は苦手」で終わってしまうこともありますが、人参の栄養素を代替する食べ物はいくらでもありますので、「どうしても無理」な場合には、「仕方ないね」と受け入れることもできます。
しかし、これが「算数」となるとどうでしょう。別なものに置き換えることもできず、「ここでつまづいては大変!」と、看過することができません。ゆえに「頑張って苦手を克服しよう」というアプローチになってしまいます。

親の焦りを分析する

苦手な教科に直面したとき、親が感じる焦りは、子ども以上に大きいことがあります。それは「今」だけでなく、「この先ずっと」を想像してしまうから。例えば、算数のテストの点数を見た時。目の前にいるのは小学生のわが子なのに、頭の中では「高校受験」「進学」「将来の仕事」まで一気に想像してしまい、不安は大きく膨らんでしまいます。
さらには、自身の過去の苦い体験を思い出し、焦りを呼び起こしてしまうこともよくあります。「私は数学が苦手だったから志望大学に行けなかった」等、自分の過去の経験を子どもにそのまま当てはめ、「今のうちになんとかしないと」という気持ちになってしまいます。

「苦手=能力がない」とは限らない

しかし、大人が子どもの「苦手」を深刻視しすぎると、あまりいいことはありません。親の過度な不安が、「苦手=できない」「苦手=難しい」という意識を子どもの中に植え付けてしまうと、「後回しにしよう」とか「今は嫌」程度だった気持ちを、深刻な苦手意識に至らしめてしまうからです。
例えば、「算数が苦手」と言っている子でも、ゲームで獲得したポイントの計算はとても速かったり、買い物のときのおつりの計算はスムーズにできたり。学校のやり方や「そのドリル」には合っていなかったとしても、考える力そのものが足りないわけではない、ということもあるわけです。それを大人が「あなたは算数が苦手」と言ってしまったら…。子どもの「苦手」は、決して「能力がない」ではないことを理解しておいた方がいいでしょう。

苦手教科との付き合い方

それでも、苦手教科は置き去りにせず、早めになんとか対応もしたいところ。ここでは、苦手教科との上手な付き合い方を考えてみましょう。

「苦手」をリフレーミングする

投げかけられる言葉によって、人の心は変わります。「苦手」と言われれば、苦手なような気持ちになるし、「得意だね〜」と言われればそんな気持ちになることも。「苦手」という言葉を使わない工夫をしてみませんか。言い換え(リフレーミング)が役立ちます。
「やりたくない」と子どもが後回しにしていたら→「後からゆっくり取り組みたいんだね」
「難しいからできない」とアピールしていたら→「しっかり考えることが必要なんだね」
「苦手教科は克服しなければ!」と義務感で迫られてしまうと、モチベーションが下がってしまいます。

先生ではなくコーチになる

勉強の基本は楽しく取り組むこと。特に親が教える場合には、言葉がきつくなってしまったり、感情的になってしまうことが多いため、子どもの「やりたくない勉強」を教えるには、心の筋力が必要です。
できるようになることを目的とするのではなく、まずは取り組んでみること、挑戦してみること、そういったプロセスに焦点を当ててみてはいかがでしょう。「気乗りしなかったけど頑張って解いてみたね」。このような褒め方ができるのは、様子を観察できる親だけかもしれません。先生役ではなく、頑張りを見守るコーチ役になるのがおすすめです。

「困りごと」に目を向ける

「算数が苦手」「国語が苦手」という言葉の中には、実はたくさんの困りごとが隠れています。そして、具体的な困りごとに目を向けることで、解決策が見えてきます。
例えば、「国語が苦手」と言う子のノートを見ると、漢字は合っているのに、とめ・はね・はらいが不十分ということがよくあります。急いで書かなければいけないと本人が思い込んでいたことが、間違いを生み出していた可能性も。また、文章の書き出しが消しゴムだらけになっているノート。話を聞いてみると、「何から書けばいいかが分からない」という困りごとが聞こえてくるケースもあったりします。
「国語が苦手」と片付けてしまうのは、あまりにも乱暴です。子どもが何に困っているのか、その困りごとに目を向けてみる姿勢が重要です。

異なる比較軸を持ってくる

そもそも、子どもが苦手と感じる背景には、誰かと比較して自分は不得意だと感じていることがよくあります。そんな時には、異なる比較軸を持ってくると、見え方が変わります。
少し簡単な問題にする。優しめのテストを受けさせる。勇気をもって、1学年前の教材から始めてみたっていいですよね。日本で算数が苦手と思っていた子どもが、海外の学校に転校したら、算数が大の得意教科になっていた、こんな経験だってあるはずです。

毎日触れる努力は怠らない

もしも、本当にその教科が「苦手教科」ならば、距離を置かず毎日触れる努力も必要です。何もやらずに放っておくと、とりかかるためのハードルがどんどん高くなってしまいます。毎日少しでも触れておきましょう。親が行うべきは、つきっきりで指導をすることではなく、子どもが苦手に向き合うためのきっかけづくりです。
例えば、塊を小さくする。「国語の宿題を全部やりなさい」改め、「夕食前に、このページだけやってしまおう」等の声かけをします。もちろんできた際には「できたね」「頑張ったね」というフォローの声かけも忘れずに。
子どもが低学年のうちは、「お母さんにも教えてくれる」と、先生役をやらせることも効果的。学びを最も多く定着させる方法は、誰かに教えること。教える機会を通して、理解が深まります。
また、教科の好き嫌いは、意外と先生(人)の好き嫌いによるものだったりすることも。勉強をサポートしてくれる人を見つけるのはいかがでしょう。大好きな先生が得意な教科なら、自分も好きになるかもしれません。
その他、今はたくさんの教材がありますので、子どもが好きなキャラクターがあったり、ゲーム性があったり。子どもが取り組みやすい仕掛けがある教材を見つけてみてください。

苦手教科は誰にでもあるものです。しかし、子どもの得意苦手はまだまだこれから変わります。早期に「苦手」と決めつけすぎず、習慣づくりの工夫を模索していけるといいですね。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。一般社団法人 小学校受験協会理事。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/