
親の言葉は、子どもを「変える」ために発動されてしまいます。「すぐに投げ出す」状態には、「投げ出さないで続けなさい!」と。しかし、これではうまくいかないどころか、子ども自身が「自分は続けられないダメな子だ」と思い込んでしまう、二次的被害につながる可能性も。続かない背景には、なんらかの理由があるものです。子どもを直接変えようとせず、環境づくりに意識を向けるのが効果的です。周囲には、ぐっと集中している他児の存在があるかもしれませんが、子どもの個性や発達の過程は一人ひとり異なります。共感的に寄り添うこと、焦らず子どものペースに合わせることを意識しましょう。子どもの気持ちは環境次第。子どもの行動は気持ち次第です。
「面倒くさい」の裏にある本当の気持ち
親子の会話はスピード感あるキャッチボール。子どもからの答えは瞬時に返ってきます。
「やりなさい」「後で〜」
「頑張ろうよ」「やだ、疲れた」
「自分でやるって決めたんじゃない?」「もう、嫌いになった」
複雑な心の内を丁寧に説明なんてすることなく、「面倒くさい!」という一言にまとめて、返してくることもあるでしょう。そんな一言を、親は「怠けている」と捉えがちですが、実際には様々な思いが隠れているかもしれません。
「今は他のことをやりたいんだ」
「どんなに頑張っても〇〇ちゃんみたいに上手にできないよ…」
こういった気持ちを、「怠けている」と決めつけてしまうと、子どもは心を閉ざしてしまいかねません。まずは、「面倒くさい」の裏側にある本心を探ってみる。相手理解が、繋がるための第一歩です。
心と体のブレーキを見つけよう
面倒と感じるのは、動きたくないから。どこかでブレーキがかかっている可能性があります。心と体の両軸から、「面倒くさい」を引き起こすブレーキについて考えてみます。
心のブレーキ
・自信がない
・興味がわかない
・頑張った先が見えない
・心が疲れている
・情報が多すぎて混乱している
・失敗ばかりが気になる
これらは、行動を阻む心理的なブレーキです。こういったブレーキがかかっている際には、「やりなさい」と、無理に背中を押すのは逆効果。もっと強くブレーキを踏んでしまいます。
体のブレーキ
・成長による体の変化
・睡眠不足や体調不良
・栄養バランスの乱れや疲れ
体がしんどいと、気持ちまで沈みます。エネルギーが不足していると、せっかくはじめても、すぐに疲れてしまいます。大人だって、体調が悪い時には、全てが「面倒」になりませんか。「やりなさい」と背中を押す前に、休ませる、食べさせる等、体の回復が必須です。
5つの工夫で、「頑張らせる」より、「頑張れる環境」をつくる
行動は、誰かに言われたら始まるわけではなく、気持ちが動いた後に始まります。頑張らせるためには、子どもの心を動かすこと。子どもが「頑張ろう」と思える環境づくりについて、5つの工夫をご紹介します。

1.捉え方で前向きな気持ちをつくる
出来事が感情を作るのではなく、捉え方が感情を作るそう(アルバートエリス)。同じ事実であっても、その事実をどう捉えるかで、その後の感情が変わってくるということです。そして、感情が変われば、その後の行動にも変化が表れます。
「失敗した→お母さんが悪い・自分には能力がない→もうやりたくない→やらない」
「失敗した→残念だった・次はどうしよう→課題が見つかった→動いてみる」
まずは、「面倒」の背景にあるブレーキを探り、前向きな捉え方に変わるような言葉かけをしてみませんか。例えば「自信のなさ」がありそうだったら、
「だれでも始めてのことは不安だよね」
「この部分は、とても上手くいっていると思うよ」など。
「自分にもできるかもしれない」と思うことができれば、前向きな行動が始まりそうです。
2.他者との関わりをつくる
親ができることは、子どもの成長とともに減ってきます。安心、安全な居場所作りは、家庭にこそできることですが、視野を広げたり、挑戦心を掻き立てたり、こういったことは、親以外の誰かに頼ることも必要です。親に褒められるより、第三者に褒められた方が、嬉しい気持ちが増しますし、自分の知らない世界を見せてくれる第三者には、憧れの気持ちを感じたりします。
子育てに他者との関わりを意識してみませんか。興味がありそうなセミナーやイベントに連れ出してみる。泊まりのキャンプなど、自分でなんとかしなければならない環境に出してみる。頑張った経験は必ず子どもの中に残り、次なる頑張りにつながります。
3.行動しやすい環境をつくる
宿題に取りかかるまでに相当な時間がかかるAちゃん。毎日親子のバトルです。しかし、事前に宿題のページを開いて、鉛筆とともにセットしておくようにしたところ、宿題に取り掛かることができるようになったそう。始めるまでのハードルをできる限り下げてみたところ、取り掛かりやすくなったということなのでしょう。
「親がそこまでやる必要があるの?」という声も聞こえてきそうですが、ハードルが高過ぎて躊躇している子どもの場合、下げてみるのはおすすめです。
「自分で宿題に取り掛かることができた!」「宿題が終わった!」こういった達成感が、次なる頑張りを引き起こします。
4.動けない時には共感から入る
「やろうと思っているのに動けない」「やらなければいけないのはわかっているけど、続かない」。こんな子どもが欲しいのは、助言や説教ではありません。ただ、自分のことをわかってもらいたいのです。共感的に寄り添ってあげましょう。感情への共感、状況への共感が効果的です。
「難しいよね、わかるよ」(気持ちの代弁)
「楽しく遊んでいたから、気持ちを切り替えるの大変だよね」(置かれた状況を言語化する)
わかってあげることが、頑張ることができる環境を整えるための入り口です。
5.自分で動き出すのを待つ
大人は「その次」ばかりが気になります。ですから、ついつい先回りをしては子どもを急かしてしまいます。しかし、子どもにとっては、「これから」より「今」。今を十分に味わうことが、豊かな発達につながります。
「そのうち動き出すだろう」「自分で気付けば始めるだろう」と、時には「待つ」を意識することも必要です。「早くやりなさい」と言われれば言われるほど、その行為は、楽しくないものになってしまいます。片目をつむって子どものペースに任せてみると、「あ、ここで動き出すんだ」と、新たな発見があるかもしれません。
子育ては長期にわたる営みです。そして、子どもは成長とともに、どんどん変化していきます。「すぐに投げ出す子」も、いつかは「大好きなこと」を見つけ、その世界の面白さに引き込まれていくようになるでしょう。今の状況に、ネガティブなレッテルを貼ることなく、「子どもの没頭タイミング」がどこに隠れているのか、楽しく探してみてください。
■ライタープロフィール

江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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