2021年11月26日 公開

「質問力」を鍛え、子どもの「思考力・判断力・表現力」を育てよう

『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第5回は、子どもの思考力・判断力・表現力を育てることのできる、「質問力」の鍛え方をお届けします。

           
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新・家庭教育論質問力

子どもの言葉の習得には、周囲の大人が大きな影響を与えています。豊かな表現活動のモデルであり、表現したいという意欲のきっかけづくりも担っています。

中でも、「質問」の効果は絶大です。

子どもの気持ちを引き出す他、思考力・判断力・表現力等の育成にも効果を発揮します。子どもの発想を楽しむという感覚で、まずは「質問」を意識して使ってみましょう。

子ども理解が深まるとともに、子どもの意外な一面を発見することができるかもしれません。親子会話の質が高まることで、親子の関係の質も高まっていくはずです。

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幼少期に意識したい「言葉への注目」

新・家庭教育論質問力

幼少期の子どもは驚くほどのスピードで言葉を覚えていきます。自分に投げかけられる言葉を真似て、ものの名前などを話し始め、やがて二語文に、そして三語文に…。自分の感覚や気持ちなどの表現もできるようになり、言葉で相手と心を通わせることができるようになります。
「自分はこう思う」、「こうして欲しい」と自己表現をする中で、他者との違いを認識したり、自己規制したりし、行動をコントロールする力も養っていきます。チャレンジする気持ちも湧いてきます。

もちろん、言葉の発達には個人差が大きく、意味が伝わってこない言葉が長く続くこともありますが、焦らずに「言葉に触れ、言葉でやり取りする経験」を、子どもにたくさんさせてあげましょう。
そのためには、「子どもが話したくなるような体験」をさせること、子どもと一緒に何かをするのがおすすめです。

そして、子どもが自分なりに表現した時には、バーバル(言語)、ノンバーバル(非言語)双方で応答します。例えば、「それは楽しかったね!」と言葉で応答する際に、思いっきり笑顔で、楽しそうな手振り身振りもつけるということです。
周囲からの応答を得ることで子どもは楽しくなり、もっと表現したくなります。自分の気持ちが相手に伝わったと感じることで、もっと伝えたいという気持ちが増してくるのです。

周囲の大人は子どもの豊かな表現活動のモデルであり、表現したいという意欲のきっかけづくりも担っている…。子どもの言葉の習得の背景には、周囲の大人の影響が大きくあることがわかります。

質問により高められる力

新・家庭教育論質問力

私たちは、自分の思っていることのどれ程を言葉にしているでしょうか。氷山の一角という言葉がありますが、私たちが実際に発話する言葉は、心の中にあるたくさんの気持ちのほんの一部です。
まだ語彙の少ない子どもでは、なおさらのこと…。氷山が見えている水面下には巨大な氷の塊があるのと同様、言葉にならない部分に子どものたくさんの気持ちが隠れています。

子どもに言葉を覚えさせるだけではなく、子どもの心の中にある気持ちを引き出す関わり方も意識してみましょう。子どもの気持ちを引き出すためには、「質問」が大いに役立ちます。
「あなたはどう思う?」と問われることで、自分の気持ちに気づき、そして表現するに至ります。質問をされて初めて自分の本当の気持ちに気づいた…、このような経験は大人にもよくあることです。

相手の気持ちを引き出す効果の他、「質問―考える―表現する」の一連の流れを通して育まれる力も多々あります。

ここでは、教育において重視されている思考力・判断力・表現力の3つの力についてみていきます。学習指導要領でも明示されている力であり、背景には、我が国の子どもたちにはこれらの力等に課題がみられることが挙げられています。学校のみならず家庭においても、これらの力の育成に力を入れていくことが重要です。
質問の力を利用し、これらの力を育んでいきましょう。

以下に、各々の力を育むために有効な質問の一例を示します。面白そうだな、と思う質問があれば、子ども相手に使ってみてください。大人には思いつかないような楽しい答えが返ってくるかもしれません。子どもの発想を楽しむ気持ちで、気軽に質問をしてみましょう。

じっくり考える力(思考力)

* 不思議だね、なぜだろう?
* あれあれ、どうしてかな?
* う〜ん…、何があったらいいだろうね?

幼少期の子どもの考えを聞く際には、まずこちらに意識を向けてもらうための工夫が必要です。

質問文の前に、子どもの気持ちをこちらに向けさせるような一言があると効果的。「不思議だね」「あれ…?」等を前に置き、大人も考えている空気感を出してから子どもの自由な発想を聞いてみると、たくさん話してくれそうです。

自分で決める力(判断力)

* 〇〇ちゃんだったらどうする?
* 今日は何食べたい?
* (選択肢を与えて)どっちがいいかな?

自分で決める力を育むためには、子どもから答えが返ってきたら、「なるほどね」と受け止めてあげることが大切です。親の価値観や考えと異なる意見が返ってきたとしても、「〇〇ちゃんは、そう思うんだね」と、まずは一旦受け入れてあげましょう。

ただ、子どもの意見が、例えば道徳的に正さなければならない意見だった場合には、「ママの意見を言ってもいいかな」と切り出し、「ママはこう思うよ、理由はね…」とわかりやすく伝えてあげるのが良いでしょう。

自分の言葉で相手に伝える力(表現力)

* 面白そうだね、ママにも教えてくれるかな?
* 今日一番楽しかったことは何かな?
* その時どんな気持ちだった?

子どもは楽しかったことも、悲しかったことも、頑張ったことも、何でも親に伝えたいと思っています。しかし、伝えるための語彙が揃っておらず、なかなか思うようには伝えられません。聞く側の大人には、子どもを理解しようとする姿勢が求められます。

言葉につまったり、話がそれてしまっても指摘せず、「あなたの話は面白いよ」という気持ちを込めて聞いてあげると良いでしょう。子どもの話を聞きながら、「へえ」「そうなんだ」とあいづちをうち、「それは楽しかったね」「悲しかったのか…」等、子どもの気持ちを代弁してあげることも効果的。

表現力が身につくとともに、「わかってもらった」ことから、自己受容感も増すでしょう。

今日からあなたも質問上手―初心者編

質問は大変便利なツールですが、自在に質問を使えるようになるには、ある程度の慣れが必要です。難しく考える必要はありません。簡単な質問のフレームに当てはめ、日常生活で質問を使っていきましょう。
質問は知っていても意味がありません。使ってみてこそ、質問の効果が発揮されます。初心者に取り組みやすい、2つの質問のフレームをご紹介しましょう。

クローズド・クエスチョン

「はい」か「いいえ」で答えられる質問です。

● お風呂にそろそろ入る?
● 今日はお外で遊ぶ?
● 明日の準備はできたかな?

時間がない時、考えを表現するに十分な語彙がない時に有用です。自分で選ぶわけですから、自分で決めた(自己決定)したことにつながります。正解が一つだけの単純な質問をする時、事実の確認をする時、選択が必要な時に有効です。

オープン・クエスチョン

開かれた質問、英語で言うところの5W1H(when,where,who,what,which,how)の質問のことをいいます。深く考え、自分の言葉で表現することが求められる質問です。

● 今日は何をして遊びたい?
● 日曜日はどこに行こうか?
● お誕生会には誰を呼ぶ?

正解が複数あり熟考を要する時、アイディアを引き出す時、相手にもっと考えさせたい時に有効な質問です。考えがまとまらず「わからない」と返してきても、「そうか、今はわからないのね」と、そのまま受け入れてあげましょう。

子どもから正しい答えを聞くことが目的なのではなく、子どもに考えるきっかけを与えることが目的だからです。

もっと質問上手になる―中級者編

もっと質問上手になりたい方に、更に2つのフレームを紹介します。質問を使うことで親子の対話が活性化され、子どもの新たな一面を発見することができるかもしれません。楽しみながら試してみてください。

チャンクダウン

チャンクとは塊のこと。チャンクダウンとは、塊を小分けに、小さくすることです。課題(やりたいこと)がある場合に、その課題を小さくすることで、何をすれば良いのかがわかるようになります。

● 夜テレビを見たいのね、そのために何をしたらいいかな?
● 週末は楽しく過ごしたいね、具体的に何をしようか?
● それをするためには、何が必要かな?

スライドアウト

広く情報を得るために有効な質問です。相手の本当の気持ちを引き出したり、内容を深めたりする質問とは異なり、話している内容以外にも視点を広げていくことを目的とします。子どもの頭の中にあることを、どんどん引き出していくために有効です。

● 他には何かあるかな?
● それから?それから?

日常の親子の対話に、「他には?」「それから?」とスライドアウトを入れ、子どものワクワクのアイディアをたくさん引き出してあげてください。問われることで、今までは意識したこともないような考えが、浮かびあがってくるかもしれません。

会話の質を高めて親子の関係の質を高める

新・家庭教育論質問力

質問には慣れも必要ですし、使う際には注意も要します。しかし、質問を使うことで、親子の会話の質は圧倒的に高まります。

例えば、指示命令だけの会話が、子どもの気持ちを引き出す会話に変わります。自分の気持ちを発話できること、そしてその気持を受け入れられることで、子どもの自己肯定感は高まるでしょう。親の子ども理解も増すはずです。

親と言えども、子どものことは実はあまりわかっていないかもしれません。また、親から子どもへと、一方向説得的だった会話が、相互に理解しあえる会話に変わります。
ついつい聞き流していた子どもの声がもっと聞こえるようになり、互いに「伝わる言葉」を使えるようになるでしょう。

質問を取り入れ会話の質を高めることで、親子の相互理解が深まり、親子の「関係の質」が高まるということです。質の高い会話は親子の信頼関係も強化していくことでしょう。
是非とも今日から質問上手になり、日常生活にたくさんの質問を埋め込んでみてください。今という大切な時期に、最高の親子の関係性を築いて頂きたいと思います。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
株式会社サイタコーディネーション

■新・家庭教育論連載記事はこちら↓
新・家庭教育論Vol.1 子育てサポーターになるきっかけとこれからの家庭教育
新・家庭教育論Vol.2 コーチングとは 〜親子対話で育む社会情動的スキル〜
新・家庭教育論Vol.3 親の「聴く力」が家庭教育をパワフルにする
新・家庭教育論Vol.4 「自分で!」自己決定力は家庭で身につけられる
新・家庭教育論Vol.5 「質問力」を鍛え、子どもの「思考力・判断力・表現力」を育てよう

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

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WRITER

江藤真規 江藤真規 サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://saita-coordination.com/