
「今日はどうだった?」「楽しかった?」子どもに質問をしても、答えがかえってこない時。大人はイライラしたり不安になったりしてしまいます。続いて出てくるのは「ねえ、聞こえている?」「聞いているのだったら答えなさい!」。不本意に喧嘩が始まってしまいます。
「私の言い方が悪かった?」「怒られたと感じた?」と、言葉を取り下げてしまうこともあるかもしれません。子どもの気持ちを深読みしすぎて、心がヘトヘトになってしまいます。
答えない相手に、無理やり答えさせることはできません。大切なのは、相手の心情を推測した上での適切な対応。コミュニケーションはキャッチボール。ですから、こちらが投げたボール(質問)は、必ず返ってくると、私たちは思い込んでいるのでしょう。ゆえに、「質問に答えてくれない」状況を、「無視された」と捉えてしまいます。しかし、本当にそうなのでしょうか。子どもの「質問に答えない」には、何か理由がありそうです。子どもの心を受け止める方法と、思わず答えたくなる環境づくりについて考えてみましょう。
「聞かれたことには必ず答えなければならない」という思い込みを一旦脇に置き、「子どもが質問に答えない」理由を考えてみると、対応の仕方が見えてきそうです。
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子どもが「質問に答えない」4つの理由
相手が子どもだからといって、無理やり答えさせるわけにはいきません。だからと言って諦めてしまえば、関わりの放棄に繋がってしまいそう。まずは、子どもの「質問に答えない」理由を探ってみましょう。
理由① 何かに夢中で気づいていない
何かに集中している時、没頭して取り組んでいる時、周囲の音は聞こえなくなります。例えば、大人でも、スマホに集中していて呼びかけに気づかないことがありますよね。駅のアナウンスを聞き逃して、乗り越してしまったことはありませんか?子どもにも、何かに夢中になるがあまり、音として聞こえていないことがあるのです。
理由② 聞こえていても「今は話したくない」
人間は感情の生き物。「返事をしたくない」気持ちだってあるものです。「ごめん、今は答えたくないんだ」と相手への気遣いがまだできない子どもの場合、「答えない」という行動をとってしまいます。親への甘えもあるかもしれません。「答えたくない」という気持ちを、言語化できていないということです。
理由③ どう返せばいいかわからない
表現力や語彙がまだ乏しい子どもの場合、質問にどう答えていいのかわからないということもあるでしょう。また、考えているうちに忘れてしまったり、親から急かされて頭が真っ白になってしまうことも。「こんなことを言ったら怒られるだろうな」と、親の気持ちを先読みしていることも、きっとあるでしょう。「答えない」は、「困っている」ということです。
理由④ 親の声かけを「圧」に感じる
例えば、「今日はどうだった?」という質問。イントネーションや語尾の上げ下げで、伝わり方は変わります。大人側にはそんな気がなくとも、子ども側には「こう、答えなければいけない」といった、強い圧力として伝わってしまうこともありそうです。親の顔色を見て、答えられなくなっているのかもしれません。
子どもの「質問に答えない」への対応

プライベートでも、仕事においても、たくさんの経験を積んできた大人は、コミュニケーションの重要性を十分に理解しています。「返事=礼儀」、問われたことに答えないのは、大変失礼な行為と捉えていることでしょう。しかし、答えない子どもに怒りを爆発させるのは、得策ではありません。子どもを頑なにさせ、さらに「答える」ことへのハードルを高くしてしまうからです。
子どもに無理やり答えさせるのではなく、思わず答えたくなる環境をつくる。そのためには、子どもの「答えない」を受け入れること、子どもが答えやすい場づくりの工夫が必要です。
対応①「答えない」を受け入れる
1,沈黙を受け入れる
「今から二人組になって話し合いをしてください。話したくない人は、見ているだけという参加もOKです」。筆者は学生に授業を行う際に、このような語りかけをしています。それは、一人ひとり、その時々の思いを大切にしたいから。「見ていたい」という当人の気持ちを大切にしたいから。
子どもが答えない、つまり沈黙することにも意味があると感じます。「考えている時間」かもしれませんし、「どう答えるか迷っている時間」かもしれません。無理に答えさせようとせず、「今は答いたくないんだね」と、答えないという行為を認めてあげることも必要です。沈黙を認めることで、後からポツリと答えが返ってくることもあるように思います。
2,余白をつくる
子どもには子どもの世界があり、子どもには子どものペースがあります。勇気を持って、子どものペースに合わせてみませんか。「後でもいい」と、気持ちに余白をつくります。「今は」をつけると、ラクに余白がつくれるようになります。例えば、「子どもが質問に答えない」は「“今は”答えない」に。自然と「答えが決まったら教えてね」「後で聞かせてね」という言葉が出てきそうです。
すぐに答えが返ってこなくても、「届いていない」「無視している」と決めつけたり、悪く捉えたりせずに…。余白を残して接していけば、子どもは自分のペースで自由に話すことができ、結果「話すこと」が好きになりそうです。
対応②思わず答えたくなる環境をつくる

1,ペーシングで子どもが話しやすい雰囲気をつくる
ペーシングとは、相手のペースや状態に合わせるコミュニケーション技法のこと。話しやすい環境づくりに役立ちます。例えば、落ち込んでいる相手に、いきなり明るく励ますと「うるさい」と感じられてしまいますよね。こういった時には、そっと寄り添い話を聞く姿勢が求められます。
質問に答えない子どもに対しても、ペーシングを意識してみませんか。「早く答えなさい」と急かすのではなく、表情や姿勢、声のトーンを穏やかに保ち、「話したくなったら聞かせてね」など、相手の気持ちを尊重する声かけをします。ペーシングを意識することで、話しやすい雰囲気がつくれるかもしれません。
2,質問のタイミングを意識する
前述の通り、何かに没頭している時には、子どもの耳に周囲の言葉は入りません。子ども相手のコミュニケーションは「こちらを向かせる」のではなく「相手のタイミングに合わせて」が重要です。大きな声を出して、こちらを振り向かせるのではなく、今だったら言葉が届きそうだなというタイミングで、優しい声で質問をしてみるとよいでしょう。
3,必ず答えられる質問から始める
「今日はどうだった?」と聞かれても、子どもはどう答えていいのかわかりません。「楽しかったよ」と無理やり答えるか、黙ってしまうか…となるでしょう。誰でもすぐに答えられる質問から、会話をスタートしてみませんか。例えば、「今日の給食は何だったの?」「おやつはゼリーとアイスクリーム、どちらがいいかな?」等。答える前に考えを要する深い質問は、「質問−答える」というやりとりをスタートさせ、ペースが出てきてから、「そういえば」と切り出すと良いでしょう。
子どもが質問に答えない。もちろん喜ばしい事態ではありませんが、答えを急かして親子関係を悪化させないためにも、深読みしすぎて自分が疲弊しないためにも、子どもの気持ちを察して、できうる工夫をしてみてくださいね。
■ライタープロフィール

江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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