2024年05月05日 公開

進級・進学は成長のチャンス !わくわく感を行動へ繋げる3つの工夫

新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第33回は進級・進学の際の子どもを成長させる3つ工夫についてご紹介します。「学年が上がる」というわくわく感を上手に成長につなげるために、家庭でできることをしてあげましょう。

子どもの成長は、なだらかではありません。何かのきっかけで、別人になるほどぐんと成長します。進級・進学という節目は、子どもが大きく変化するチャンスです。そして、変化は「行動」から始まります。

「学年が上がる」というわくわく感を、「行動」につなげるためのお手伝いをしてあげましょう。特に憧れの気持ちは「行動」を加速させ、子どもの成長を後押しします。進級・進学という節目を利用して新しいことを始めてみる。可視化することで、自分の成長を客観視する。スタート時は完璧を目指さない。日常に工夫を取り入れて、「わくわく感」を飛躍的な成長につなげましょう。
日々成長している子ども。1年前と比べれば、その成長ぶりに圧倒されます。しかし成長と共に、できていないことや望ましくない行動等、気になる部分も増えてきます。「このままでいいのかしら」と、悩むこともあったりします。

進級・進学という環境が大きく変わる節目は、子どもの成長のチャンスです。とはいえ、親の期待値が高まり過ぎると、かえって逆効果になってしまうことも。子どもの憧れの気持ちやワクワク感を上手に成長につなげるために、家庭でできることを考えていきましょう。

子どもを成長させる「憧れ」の気持ち

子どもは好奇心の塊です。生まれて数ヶ月の赤ちゃんであっても、自分の手を見つめたり、音がするものを追ったり、「これ、なんだろう?」と、発見することが大好きです。「知りたい」、「やってみたい」という思いが、子どもの成長を後押しします。

 もう一つ、子どもの成長を大きく後押しするのが、「憧れ」です。「あんなお姉ちゃんみたいになりたいな」、「あのお兄ちゃん、かっこいいな」という憧れの気持ちが、子どもの成長を加速させます。例えば、運動会や生活発表会の場で、上の学年の子ども達の様子を見たり、困っている時に優しくしてもらったり。そういった経験が、「5歳になったら、あんなふうになりたいな」という、憧れの気持ちを高めます。

進級・進学の時期は特に子どものペースを大切にする

楽しみでもあり不安でもあり、進級・進学の時期は、子どもの感情がいつも以上に複雑化します。そんな子どもの心をよそに、親心は期待でいっぱいになります。
「年長さんになったんだから、ちゃんとするのよ」
「もう小学生なんだから頑張って勉強するのよ」
子どもに発破をかけたくて、ついついこんな言葉も言ってしまいます。しかし、これらの言葉に、子どもはどのような感情を抱くのでしょう。「怖いな」、「大変そうだな」、「まだ無理…」と、不安な気持ちが膨らんでしまうかもしれません。

大切にしてきた「憧れ」の気持ちが、親の何気ない一言で、しぼんでしまっては大変です。不安を肥大化させるのではなく、期待が膨らむように関わります。
「〇〇ちゃんも年長さんだね。やっぱり年長さんはかっこいいね」
「小学生になったら、どんなことができるようになるんだろうね」
子どもは、自分の力で不安や難しさを超え、新しきを日常としていきます。そのプロセスこそが、子どもの成長です。新しい環境に慣れ、自己発揮できるまでの時間は、一人ひとり異なります。進級・進学の時期は、子どものペースを大切にしましょう。子どもには成長する力があります。

「わくわく感」を「行動」につなげるため家庭でできる3つの工夫

進級・進学のタイミングは一年に一度きり。新しい環境を成長のチャンスとし、好スタートを切るために、「わくわく感」を「行動」につなげましょう。「さあ、年長だ」「さあ、○年生だ」と、気持ちが高まっているのは、もしかもしたらほんの一瞬。すぐに「今まで通り」の習慣に引き戻されていきます。家庭でできる工夫を3つご紹介しましょう。

1.新しいことを始めてみる

いつかはやろうと思っているが、なかなか始めることができない。
時間がないから今は無理、と思うことが多い。
人は、できない理由を考える天才です。やってみたいことがあっても、いつも「できない理由」が頭をよぎり、行動が始まりません。ゼロを1にするには、相当なエネルギーがかかるのです。

環境が変わるタイミングには、大きなエネルギーがあるはずです。新しいことを始める格好のチャンスと捉えましょう。「年長さんになるから、何か新しいこと始めてみようか」と誘ってみるもよし。「朝は一人で起きるようにしてみようか」、と提案するもよし。もちろん、最終的に決めるのは子どもです。習い事でも塾でも、趣味でもお手伝いでも。節目は新しいことを始めるチャンスです。

そして、新しいことを成功させるためには、ちょっとした工夫も必要です。「工夫しているね」「努力しているね」と、プロセスに焦点を当てて伝えます。できた、できないという成果ではなく、取り組み自体を認められることで、前向きな気持ちが湧きおこってきます。

2.可視化して本人に納得させる

せっかく始めたのに、三日坊主で終わってしまう。
途中から面倒になり、手放してしまう。
こんな経験はありませんか。新しい習慣を作るのは、大人にとっても大変なこと。子どもだって同じです。しかし、もしも到達したいゴールがあったり、目に見える成果が出ていたとしたら、流れは変わっていきそうです。

頑張り続けるためには、努力や成果の可視化が役立ちます。進んでいる自分を客観視できるからです。昨日より進んでいる今日が見えれば気分が高まります。また、明確なゴールがあれば、更に意欲が湧いてくるでしょう。どこに向っているのか見通しが立ち、あそこまで頑張ろうと思えるからです。
新しい学年になってスタートしたことがあれば、可視化をしてみてください。できたらシールやマグネットを貼る。ポイント制にしてみたり、グラフを作ってみたり。到達できたらご褒美というのも、動機づけになりそうです。

3.完璧を目指さない

ちゃんとやりなさい、という声かけが多い。
できていないことの方が気になる。

このような傾向がある方は、新しい学年が始まる等、子どもの環境が一気に変わる時には、「完璧を目指さない」を意識するとよいかもしれません。わくわく感を潰さないためです。
進学・進級には段差があります。社会的課題とも言われる「小1プロブレム」は、まさに小学校進学という段差についていけない子どもが、難しさを感じてしまう現象です。小学校に上がるとなれば、親は小学生としての期待をしてしまいますが、小学生になったばかりの子どもは、まだ小学生になりきっていません。当初はまだまだ幼稚園の気分です。ですから、徐々に慣らしていく配慮が必要なのです。

大きな環境変化がある時に、完璧を求められすぎてしまうと、行動自体が嫌になってしまうことも。新学年がスタートしたばかりの子どもには、完璧を求めすぎず、「楽しい」を基軸に、ちょっといい気分になってもらいましょう。

「小学生になったら表情が変わってきたね」、「さすが小学生は違うね」等、できている部分に焦点を当てます。自ら前進することが楽しくなり、いつの日にか、環境変化という段差を、軽やかに超えていることでしょう。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/