2024年03月06日 公開

「子どもが嘘をつく」親や周囲の大人はどう対応したらいい?

子どもは時に、明らかに嘘とわかるような嘘をつきます。親や周囲の大人はどう対応すればいいのでしょう。子どもの嘘には、何らかの理由があるもの。『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第31回は「子どもの嘘」への対応についてご紹介します。

子どもが嘘をつく時には、何らかの理由があるものです。「嘘はいけない」と叱る前に、嘘をついてしまう理由を探る、子どもの気持ちになってみることが必要です。子どもの気持ちに寄り添うことで、子どもが嘘をつかなくてもすむ環境を整えていきましょう。
道徳感や規範意識の芽生え段階にある幼児には、「嘘はいけないこと」を他律的に教えるよりも、その行動がなぜよくないかを、理由とともに伝えてあげます。自律的に、よい行動に向かっていくことができるようになるかもしれません。

確かに「嘘」はよくない行為ですが、幼児が事実ではないことを言う行為は、必ずしも「嘘」とは言えない場合も多くあることも理解しておきましょう。

大人の嘘と区別したい子どもの嘘

我が子が見かけないおもちゃを、保育園から持ちかえってきました。「これ、どうしたの?」「もらった」「誰に?」「先生から。先生がおうちに持っていって良いって言ったの」。子どもは時に、明らかに嘘とわかるような嘘をつきます。こんな時、子どもにはどう対応すればいいのでしょう。園のおもちゃを持ち帰ってきたことを叱るのか、嘘をついたことを叱るのか。はたまた、叱らずに子どもの話を聴くべきなのか。

大人は嘘に敏感です。社会生活を送る上で、「嘘はいけない」ことなど、十分に承知しているから。ですから、子どもが嘘をついた時には、とても気になってしまいます。

しかし、幼児期の子どもの「嘘」を叱りすぎてしまうと、二次的な弊害につながってしまう可能性も。確かに嘘はいけないことではありますが、幼児にとっての嘘、つまり「事実でないことを言う」は、大人にとっての嘘とは、少し意味が異なることも、理解しておく必要がありそうです。

ちょっと気になる嘘への対応策 3つ

しかし、少しだけ気になる嘘もあったりします。例えば、弟のことを叩いて泣かせてしまったのに、「絶対に叩いていない」と言い張る姉。叱られるのが嫌だからと、嘘をついてしまった様子です。近くにいた親が、「叩いていたところを見たよ」と事実を突きつけても、一向に自分の非を認めません。叱られることを恐れているのでしょう。

ご飯を食べてからデザートというルール。まだ食べ終わっていないのに、デザートを欲しがる子どもを相手に、「ご飯食べてからね」「早く欲しい」のやり取りが続きます。その後、デザート欲しさにゴミ箱にこっそりご飯を捨てていたとしたなら、その行為はやはり看過できません。ちょっと気になる嘘への対応を考えてみましょう。

1、嘘をつく理由を推測する

子どもが嘘をつく時には、何らかの理由があるものです。先の事例の場合には、「叱られるのが嫌」「どうしても欲しいものがある」が嘘をつく理由です。「嘘はいけない」と叱る前に、なぜ嘘をついてしまったのか、嘘をつく理由を推測することが必要です。

幼少期は、道徳観や規範意識の芽生えの時期。まだ完成されているわけではありませんので、「嘘はいけない」と教えたところで、子どもが自律的に「嘘はいけない」と思うことは、まだ難しい時期だからです。

なぜ嘘をつくのか、その理由を探った上で、その理由の部分に対処していきます。「叱られるのが嫌」という理由があるなら、「絶対に叱らないから本当のことを話して」と伝えるのがよいでしょう。本当のことを話してくれるかもしれません。「どうしても欲しいものがある」のなら、「その気持ちはよくわかったよ」と伝えた上で、どうすれば願いが叶うか一緒に考えてみるのがよいでしょう。

2、子どもの気持ちになってみる

子どもの気持ちになってみることも大切です。各家庭には、様々な約束事があるでしょうが、その時のその子の気持ちによっては、その約束事を守ることが難しい場合もあったりします。

必ず歩いて帰る、抱っこはしない、という約束ででかけた公園。しかし、公園で大遊びした子どもは、眠たさも相まって、どうしても帰り道に歩くことができなくなってしまいました。「歩くって言ったのに、本当に嘘つきなんだから」と指摘したくなる気持ちもわかりますが、子どもの世界には「今日だけ特別」も必要だったりします。「今日は疲れちゃったからね」と言ってあげることで、子どもは安心することができるでしょう。

子どもが言ったことを守らない、嘘をつく頻度が高い場合、子どもの気持ちになって考えてみることをおすすめします。そもそも、その約束は子どもの「今」に適切なのか、見直してみることが必要かもしれません。

3、よくない「行動」を理由とともに伝える

子どもの嘘を指摘する場合には、「嘘はいけない」と伝えるよりも、どの行動がよくなかったのかを、理由とともに伝えることが大切です。

たとえば、先程の食べ物を捨ててしまった場面。親を騙そうとしたことを叱るのか、食べ物を捨てたことを叱るのかで、子どもが受け取る内容には大きな違いが出てきます。「よくない行動」を理由とともに伝えましょう。そうすることで、子どもは自ら考え、自分なりに正しい行動をとれるようになるからです。美味しい食事がテーブルに乗るまでには、たくさんの人々の努力があること、世界には、食べたくても食べられない子どもが大勢いること、食べられるということがどれだけ有り難いことで、だから無駄にしてはいけないことを、子どもにもわかるように伝えます。

弟を叩いたのに、叩いていないという嘘に対しても、「嘘はダメ」の前に、叩いた行動が悪かったと伝えましょう。叩かれることで弟はどのような気持ちになったのかを共に考え、だから叩くことはいけないと伝えてあげましょう。そうすることで、嘘をつく必要はなかったということを、子ども自身がつかみとっていくはずです。

幼児の嘘への対応は、嘘がいけないと指摘する前に、嘘をつかなくてもよい環境、心の状態を整えていくことがポイントです。嘘をつくには何らかの理由がある。その理由を見つけて、取り除いてあげられるといいですね。

■ライタープロフィール
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江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
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■江藤さんの著書紹介

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この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/