2024年01月15日 公開

子どもの人間関係づくりのために親がしてはいけないこと

親にとって、子どもの人間関係は大きな関心事ですが、親の過度な関与は子どもの成長の可能性を狭める要因にも。『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第30回は、幼少期の人間関係づくりに必要な大人からの適切なサポートとしてはいけないことについてご紹介します。

人が生きるにあたって必要不可欠な人間関係。しっかり自己表現してもらいたい、周囲とうまくやってもらいたい等、親にとっては子どもの人間関係が気になります。
しかし、実際に体験しながらのみ、人と関わる力は育まれます。親の過度な関与は、子どもの成長の可能性を狭める要因にも。子どものことを信じ、自分で何とかやっていくこと見守る心の余裕が必要です。とはいえ、まだ言語発達的にも伝えることが難しく、経験的にもさじ加減がわからない子どもには、大人からの適切な援助も必要です。友だちの気持ちを一緒に考える、子どもが行動できる小さな助言をしてみる等、成長のきっかけとなる援助を行っていきましょう。

気になる子どもの人間関係

人がそこにいる以上、人間関係は誰にでもついてまわるもの。しかし、この人間関係にややこしさを感じたり、億劫さを感じることもよくあります。
子どもにとっては友だちとの人間関係が気になりますし、大人にとっては職場の人間関係等に悩むことも多々あります。人間関係の悪化が離職につながる事例は、どの職業にも多いとか…。人間関係とは、人が生きる上で大切な要因。人生の基盤と言っても過言ではありません。

この世に生を受けたその日から、人間関係は始まります。特に幼少期には、人間関係を育む力が大きく育ちます。親にとっても、子どもの人間関係は最大の関心事。子どもが友だちとうまくやっているか、自己発揮できているか等、気になって仕方がありません。
人間関係が重要であることを大人は実感済ゆえに、あるいは人間関係で苦労をしてきた経験があるがゆえに、過剰に気になってしまうのかもしれません。

子どもの人間関係は子ども自身が体験して学ぶもの

しかし、ここで考えなければならないことがあります。それは、人間関係とは、知ることで育っていくものではないということ。特に子どもの場合、実際に体験をしなければ(実際に関わらなければ)、人と関わる力は身につきません。

友だちと意見が合わずに、悔しい思いをした体験。思いがぶつかり合い、悲しくなった体験。自分だけ仲間に入れずに寂しい思いをした体験。これらの「感情を伴う体験」があってこそ、「じゃあ、どうしたらいいのか」ということを子どもは考え、そして人との関わり方に工夫をしていくようになるのです。

もちろん、友だちと一緒にいることで、楽しさが倍増する体験だってあるでしょう。そんな体験の上には、「どうしたらもっと楽しくなるかな」という思いが育ってくるのだと思います。

ここでは、子どもが自分で人間関係をつくっていく際に、親そして周りの大人がしてはいけないことを3つ例を挙げながらご紹介します。

親がしてはいけないこと① 親が何とかしてあげる

かわいい我が子が傷つかないように、何でもしてあげたいのが親心でしょう。しかし、子どもには育つ力があり、子ども自身が「自分の力で何とかする」ことが、成長のきっかけになります。

子どもを守ってあげたいがために、例えばこんなことをやっていませんか?
・子どもの言いたいことを代わりに言ってあげる
・子どもの代わりに自分が動く
・子どもからの要望を全て受け入れる
・気の合う、仲良しの子どもとばかり遊ばせる
・合わないだろうと思う子がいたら避ける

これらは、子どもを守っているように見えつつも、子どもから成長するチャンスを奪っている行為です。子どもを信じて任せてみる。その上で、子どもが困って頼ってきた時には、温かなサポートをする。親の意識を少し変えるだけで、子どもの経験は豊かになるはずです。

親がしてはいけないこと② ぶつかり合いを回避させる

できれば我が子には悲しい思いをさせたくない。これを理由に、力関係に差がありそうな子どもとの接触を避ける、価値観や考え方が違いそうな子どもは避ける、このような傾向に走っていませんか。
ここで一つお伝えしたいのは、社会は多様性に富んでいるということ。幼少期には、親が友だちを選び、ぶつかりあいを回避させることができたとして、小学校以降、子どもが親の手を離れていった先には、多様な世界が待っています。親がずっと子どもの世界を限定することはできませんし、もちろんそうすべきでもありません。

子どもが複数人いれば、ぶつかりあいは当然のこと。意見が異なるのも当然のこと。その違和感を経験しながら、子どもは人とどう関わっていけばよいかを学んでいきます。

安心安全な心地良い場所だけに子どもを隔離するのではなく、多様な人と関わる経験をさせてあげましょう。

親がしてはいけないこと③ 親の人間関係に持ち込む

親も人間、人に関する好き嫌いもあるはずです。特に大切な我が子が意地悪をされた、悲しい思いをしているような場面があったら、心穏やかではいられません。「あの子は意地悪な子だ。あの家庭とは付きあうのはやめよう」と、子どもの人間関係が親の関係性に発展してしまうことも、あるかもしれません。

しかし、子ども同士の関係を親の関係にまで発展させるのは、できる限り避けましょう。子どもは言葉にはせずとも、親の気持ちを感じ取っているものです。子どもが過度に人間関係を気にしたり、ギクシャクした関係性は自分のせいだとならぬよう、子どもと大人の人間関係には線を引いておきましょう。

子どもの人間関係づくりへの大人ができる適切なサポートとは

それでも、幼少期の人間関係づくりには、大人の援助が必要です。子どもはまだ、十分に言葉で伝えることができないから。そして、程度がわからず手が出てしまったり、相手の気持ちを汲み取ることができなかったりするからです。

人と関わる力を育てるためには、子どもに体験をさせつつ、必要な時には大人が援助するという姿勢が大切です。では、具体的にはどのようなサポートが必要なのでしょう。

まずは子どもが考えるためのきっかけづくりです。本当は何を伝えたかったのか、本当はどうしたかったのか、あるいは友だちの気持ちはどうだったのか、その子はどうしたかったのか。問いを投げかけながら、子どもが考えるための援助をしていくとよいでしょう。

また、子どもが困っている様子が見えた時には、適度な助言も役立ちます。「こう伝えてみたらどうかな?」「こんな風に誘ってみたらどう?」等、子どもがすぐにできる小さな行動を助言してみます。助言通りに友だちに声をかけてみたら、意外と楽しく遊ぶことができた。このような成功体験を積むことができれば、子どもはもっともっと人と関わることが楽しくなるかもしれません。

■ライタープロフィール
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江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
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学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

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この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/