2023年11月14日 公開

子ども同士の喧嘩への対処法・周りの大人や親の関わり方

子どもが集まれば、喧嘩は必ず起きるもの。子どもだけで解決に向かえない場合には周りの大人や親の援助が必要です。『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第28回は、子ども同士の喧嘩への対処法・周りの大人や親の関わり方の工夫をご紹介します。

人間関係が希薄になった今、他者と関わる力を幼少期から育てていくことは重要です。そのためには、子ども同士のぶつかりあいや喧嘩への過度な干渉は避けた方がよさそうです。人間関係は、誰かから教えてもらうことではなく、体験的に学ぶもの。実際にぶつかりあって、思うようにならない体験をして、どうしたら仲良くできるかを考えて…、このプロセスを経て、子どもは他者との関わり方を身に付けていくのです。

子どもが集まれば、喧嘩は必ず起きるもの。子どもの気持ちを聞き、相手の気持ちを推測し、どうしたらいいかを子ども自身が考えられる場作りができるといいですね。

幼児の人間関係の発達

人との関わりが希薄になってきています。近年、リアルに他者とつながる機会が減少しているのは事実であり、「他人とは関わりたくない」を選択する人も増えているとか。旅行も食事も「お一人様」に人気が高まっています。そのことの是非はさておき、やはり人間とは他者と共生していく社会的な生きもの。幼少期には、人と関わる経験をたくさん積ませてあげたいものです。

それでも、人と関わりには難しさもつきものです。幼児はどのようにして、他者との関わり方を身に付けていくのでしょうか。

大人のサポートがなければ、生きていくことすらできない人間の赤ちゃんは、まずは自分の近くで自分を守ってくれる大人との信頼関係を構築していきます。心地よい感覚を得られる相手との愛着を、しっかり築いていくということです。

その後、自我が芽生えてきます。自分で進みたい方向に動いてみたり、自分で触ってみたいものに手を伸ばしたり…。自分と相手との違いを認識し、自分を主張するようにもなってきます。自我の芽生えから自己主張をする時期は、いわゆるイヤイヤ期とも言われる時期。親にとっては、少し子育てを難しいと感じる時期かもしれません。

そして、子どもは徐々に他者(相手)の気持ちを想像できるようになっていきます。自分と相手を区別し、思いを共有しながら遊んだり、思いが伝わらずに悲しい思いをしたりと、人間関係でぐんと成長をしていきます。喧嘩が多くなる時期かもしれません。

さらに、他者と過ごす場においては、ルールがあることも認識していきます。その中で、自己抑制をする方法を覚えたり、仲良くやっていくためにはどうすればいいかを考えたりするようになります。幼児期は、人間関係づくりにおける、大きな成長期と言えるでしょう。

大切にしたい、子どもの「思うようにならない感情」

子どもは遊びの天才です。子どもが集まれば、いろいろな遊びが始まります。そして、幼児の遊びの中で、頻繁に起きるのがぶつかりあいです。他者との関わり合い方が、まだ大人ほど育っていない幼児間では、ものの取り合いから始まり、様々なぶつかりあいが起きるものです。そこで、子どもは「思うようにならない感情」を、沢山経験していきます。

我が子が思うようにならずに泣いている。他の子から玩具を奪われて泣いている。こんなことは日常茶飯事かと思いますが、大切なのはその時の大人の関わり方。「可愛そうだから」と、すぐに願いを叶えてあげる。他人の玩具を奪うような子とは遊ばせない。これでは、子どもの「人と関わる力」は育ちません。

愛してやまない我が子には、いつもご機嫌でいてもらいたいという気持ちは大変よくわかるものの、子ども同士のぶつかりあいは、「思うようにならない感情」を経験するチャンスでもあります。子どもの「人と関わる力」を育むためには、様々な感情体験をすることはとても重要であり、「思うようにならない感情」も、とても大切な感情というわけです。
もちろん、手が出てしまったりと、危険な場面では介入が必要ですが、まだ見守っていられる段階なら、「今、成長しているな」と、子どもを信じて待つ姿勢も大切です。

子どもの喧嘩への大人の関わり方 3つのポイント

それでも、子どもだけで解決に向かえない場合には大人の援助が必要です。子ども同士が喧嘩になってしまった際の、大人の関わり方の工夫を考えてみましょう。

1、子どもの気持ちを聞く

「何が起きているのかな?教えてくれる?」と、まずは子ども本人の気持ちを聞くことがファーストステップです。いきなり「喧嘩はやめなさい!」からは入りません。「貸してあげなきゃだめでしょう!」と、子どもの気持ちを考えずにコントロールすることもやめましょう。

自分はどうしたかったのか、どういう気持ちでいるのかを、優しく聞いてあげることが大切です。子どもと同じ目線の高さになり、あいづち、うなづき、言葉の繰り返しをいれながら、丁寧に聞いてあげれば、子どもは自分の気持ちを表現しやすくなるでしょう。自分の気持ちを聞いてもらうことで、安心感が得られます。

2、「相手の気持ち」になってみる

自分の気持を言語化できたところで、次は「相手の気持ち」にはいっていきます。「〇〇ちゃんはどうしたかったのかな」と、相手の気持ちを想像するための援助です。相手の気持ちを想像しながら、自分の気持ちと相手の気持ちには違いがあったこと、お互い伝えたかったことが伝わっていなかったことに気づいていくことがゴールです。
 
しかし、まだまだ経験も少ない子どもには、相手の気持ちの推測はなかなか難しいもの。大人とは全く異なる「想像」をしてくることもあるかもしれません。「〇〇ちゃんは自分のことが嫌いなんだ。やっつけたかったんだ」などと言ってきた際には、「そう感じるのね」と、子どもの思いは否定せずに、「でもね、お母さんはこう思うよ」と、子どもの捉え方を広げるお手伝いをしてあげてはどうでしょう。子どもの視野が広がることで、相手に対する寛容な気持ちが生まれてくると感じます。

3、どうしたらいいか大人が一緒に考える

本当は仲良く遊びたいのです。しかし、一つしかない玩具に対して、自分も今使いたい。相手も今使いたい。だから、ぶつかり合いが起きるのです。どうすればうまくいくのか…、これは子どもにとってはとてもむずかしい問題です。

「じゃけんにしたら?」「5分交代ってどう?」。大人はかんたんにルールを作ることができるでしょう。しかし、安易に助言をしてしまっては、子どもの「人と関わる力」が育ちません。この難しさを経験し、どうしたらうまくいくかを考えることこそが、とても大きな成長となるのです。

「どうしたら仲良く遊べるのかな」「一緒に考えてみようか」と、考えるためのきっかけづくりを促してみませんか。子どもから出てきたアイディアは、「素敵なアイディアだね」と、受け入れてあげましょう。その上で、そのアイディアは実現不可能だろう、と感じる場合には、「それって本当にできそう?」や「そうしたら、その後どうなるかな?」など、子どもが更に深く考えるためにきっかけを作ってあげるといいかもしれません。
 
「ママ決めて」と助言を求められたら、「お母さんの意見を言ってもいい?」と前置きをしてから、あくまで一つのアイディアとして伝えてあげることがおすすめです。親が決めるのではなく、子どもが考えるための余白を残しておくということです。

人間が有する喜怒哀楽という感情。どれも重要な感情であり、幼少期には様々な感情体験をさせてあげたいものですね。

■ライタープロフィール
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江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/