2023年04月12日 公開

過干渉な親のやめ方 – 過干渉から離れる6つのコツ

『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第22回は、過干渉から離れるための6つのコツをご紹介します。これまでの成長を振り返り子どもの育つ力を信じていきましょう。

ついつい気になってしまう我が子の様子。何かと口出しをし、気づけば過干渉になっていることもあるのではないでしょうか。過干渉と躾の線引きは難しく、また子どもへの干渉は無意識領域で行われることから、過干渉はやめにくく、そして知らず知らずのうちに広がってしまいます。

習慣化さえしてしまう、子どもへの過干渉ですが、いくら子どもを思っての行為であっても、過干渉は子どもの成長の阻害要因に…。子どもには、適切なサポートをしたいものです。ここでは過干渉から離れるための6つのコツをご紹介します。「このサポートは子どものためになっているか」という視点を持ち、子どもの育つ力を信じていきましょう。

子どものことが気になる

子育てをしながら、先回りをしすぎてしまうこと、ありませんか?子どもに代わって自分がなんとかしてあげようと思いすぎていませんか?もしかすると、子どもの好き嫌いは自分と同じと勘違いをしたり、子どもの興味を決めつけたり、子どもに行動の押し付けをしたり、つまり子どものことをわかったつもりになりすぎていませんか?

子どもの成長を考えれば、もっと子どもの主体性を大切にし、子どもに任せていった方が良いとは思うものの、子どものことが気になり、ついつい自分が動いてしまうことをやめられない…。
命を守る行為から始まる子育てだからなのか、親になると、とかく〇〇ちゃんの親という見方をされるからなのか、子どもには幸せになってもらいたいと願うからなのか…、理由はなんであれ、自分同様に、あるいは自分以上に、子どものことが気になってしまうというのが、親心なのだと思います。

無意識に広がる過干渉

行き過ぎた親心は、時として子どもの育つ力の阻害要因となってしまいます。子どものすることに一々口うるさく言う、子どもの行動をコントロールする、子どもの世界に入り込み細かな指示を出す、更には子どもの進む道を決めてしまうなど…。これらは、子どもから「経験」を奪う、過干渉と言われる行為です。子どもは親の管理下に置かれ、子どもの行動は親によってコントロールされていきます。子どもは考えることをやめ、自分の欲求や意見さえ表出しなくなっていくでしょう。当然、「子どものため」にはなっていない行為です。

そして厄介なのは、過干渉なる行為は、親の無意識領域で行われているということです。子どもへの過干渉は、無意識に、気づかぬうちに始まっており、本人には全く自覚がありません。それどころか、「子どものため」と思い込んでいるため、更にエスカレートしていく可能性さえあるのです。

過干渉と躾の線引きが難しいことも、過干渉が広がる要因となっています。子どもの躾は家庭でなされるもの。子どもが困らないようにと、子どもの行為を正していく場面も、躾においては当然必要です。しかし、その躾と思っての行為が、実は過干渉になってしまうことも…。両者の線引きはとても難しく、ここまでは躾だけど、この先は過干渉など、明確な区分けはできないのです。

子どもには育つ力があり、その育ちを保障するのが家庭の役割です。自分が子どもに与えている影響をまずは客観視し、過干渉となっている場合には、関わり方を改めていく姿勢が必要です。

過干渉から離れる6つのコツ

ここでは、子どもを思っての行為が過干渉とならぬよう、過干渉から離れる方法をみていきましょう。

1.そのサポートは子どものためになっているか

過干渉から離れるためには、「そのサポートは子どものためになっているかどうか」を、まずは冷静に考えてみましょう。幼少期の子どもの日常には、大人のサポートは欠かせません。基本的な生活を営むにも、他者との関わり方等の社会性を身につけるにも、気持ちの調整等の情緒的な安定にも、大人のサポートが必要です。
 
しかしそのサポートが、「子どもの成長」に見合ったものでなければ、それは正しいサポートとは言えません。大人の側が「このサポートは子どものためになっているかどうか」という軸で、自らを客観視していく姿勢が重要です。とてもシンプルですが、無意識な過干渉から離れるためには効果的です。

2.相手目線になって考える

コミュニケーションは、自分が伝えたことではなく、相手が受け取ったことがゴールです。「相手のため」と思っての行為であっても、相手には「私の考えを全て否定する」と映っているなら、それが相手に伝わったことなのです。ですから、伝えたいメッセージを相手に届けるためには、「相手はどう受け取るだろう」と、相手目線になって考えることが大切です。

子どもとの関わりにおいても、同様のことが言えます。親側は子どもを思っての行為であっても、子どもに恐怖心や不安感、未熟感を与えるような行為であっては、子どものためとは言えません。
また、「お母さんが全て行ってくれるから、自分は何もしなくてもいいんだ」と感じさせてしまう行為も、子どものためではありません。子ども目線になって考えることが、過干渉から離れる一歩となります。

3.理由を共有しよう

躾をする際に大切なのが、なぜそうすることが大切なのか、その理由を子どもと共有することです。意味も伝えず、「とにかくこうしなさい」と強制をするのではなく、たとえ時間がかかっても、子どもにそう伝える理由を説明しまよう。

子どものやっていることをやめさせる場合にも、助言や提案をする場合にも、理由を共有しながら伝えてみてください。もちろん「嫌だ」という返事しか返ってこないこともあるでしょう。しかし、たとえ今はわからなくても、伝え続けることで、いつかきっと理解ができる日がくるはずです。諦めずに伝えていきましょう。親が先回りをして代わりに行ってあげる過干渉から離れることができます。

4.子どもの気持ちを知る、尊重する

「つべこべ言わない!」子どもによく放ってしまう言葉ですが、この言葉の意味するところは、「あなたの意見など無意味だから言う必要がない」ということ。これでは、子どもは自分を大切にすることができなくなってしまいますし、前向きな気持ちも薄れてしまいます。

子どもの気持ちを聴いてみましょう。子どもの気持ちを聴き、そう感じる背景を推測し、それでも親の考えを伝えた方が良い場合には、しっかりとわかりやすく伝えます。子どもの気持ちを知ることは、自分の思いを伝えるための一丁目一番地と言えるでしょう。

また、とかく大人は「子どもにはまだわからない」と思ってしまいがちですが、必ずしも、大人の方が優れた考えをもっているとは限りません。「この子はどんな気持ちなんだろう」と、子どもの気持ちに耳を傾けてみましょう。過干渉から離れることに加え、子ども理解にも繋がります。

5.子どもが行う部分を残しておく

ちょっとした工夫で、過干渉から離れることができるようになります。それは「子どもが行う部分を残しておく」こと。全てを親がやってあげる、最後まで親がやってしまうのではなく、最後の部分、最初の部分、真ん中の部分、どこでもよいので、子どもが行う部分を残しておきます。

それを子どもに示す際には、「ここならできるからやってごらん」ではなく、「ここをお願いね」と、子どもにお願いをするのがおすすめです。頼まれごとはとても嬉しいですし、親御さんとの協働作業を楽しむこともできるでしょう。そして、任せた部分は、たとえ上手にできていなくても、親は手出しをしないこと。大切なのは、上手にできあがった成果ではなく、ゴールに向かうプロセスです。

6.子どもの成長を振り返る

子育てをしていると、とかく先のことばかりが気になってしまいます。積み上げてきたことは見ずに、まだ出来ていないことを見つけては、「ここがだめだ」となってしまうのです。

だからこそ、意識的にこれまでの成長を振り返りましょう。これまでにできたこと、頑張ったことを思い出してみてください。この1年でどれほど大きな成長があったことでしょう。その成長を見つけることが、過干渉から離れるきかっけとなるはずです。「こんなに成長したのだから、子どもに任せても大丈夫」という具合です。立ち止まり、振り返る習慣ができれば、過干渉から離れることができそうです。
振り返りの大切さに関する記事はこちら↓

過干渉をやめるとは、子どもに関わらないということではありません。まだ、小さな子どもには、大人のサポートは必要です。子どもに寄り添い、真に子どもの成長を促す環境を整えるためには、自分の行為を客観視しつつ、「子どもの育つ力」を引き出す環境を整えるよう、工夫をしていきましょう。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/