2022年06月23日 公開
新・家庭教育論しつけ

家庭でできる5つの工夫で子どもを怒らずにしつけよう

『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』連載第12回は、怒らずに躾ける方法をお伝えします。しつけの仕方には成績向上にも関係するとも。今回は怒らずに躾ける5つの工夫をお届けます。

新・家庭教育論しつけ

親に任された子どものしつけ、その内容は家庭に応じて様々です。子ども自身に考えられる余地を残した、共感的で援助的なサポートを伴うしつけが良いでしょう。しつけで、人としての基盤ができるのはもちろんのこと、どうしつけられるかは、その後の子どもの行動、成績にも影響を与えるという調査結果も出ています。

しかし、怒らずにしつけるのは根気がいり、難しいもの。意識と工夫が必要です。しつけの前提を整えること、子どもがとった行為に焦点を当てること、ほめてしつけること、双方向を意識すること、基準を明確にすることを意識してみましょう。

子どもは日々成長しています。子どもの気持ちを尊重し、子どもの力を信じた上で、丁寧に、成長を楽しみながらしつけに向かっていけるといいですね。

親に任される子どものしつけ

しつけとは、日常生活での行儀作法や基本的な生活習慣を身に着けさせること。子どもを社会の中で、他者とともに生きていけるように育てることがしつけの目的です。幼少期は人としての基盤ができる時期ですので、この時期のしつけは非常に重要です。

歴史を遡れば、日中は父母が農作業に忙しいため、子どもは家庭内で祖父母にしつけられることが多かった時代もありますが、高度経済成長期以降は、地縁、血縁も希薄になり、親がしつけを一手に引き受けるようになりました。

子どもの教育も、各家庭に任されるようになり、親の負担は相当なものです。そのような中、近年はフルタイムで働く母親も増加、限られた時間内でどのようにしつければいいのかと、新たな課題も出てきている様子です。家庭に応じたしつけを展開していくには、意識と工夫が必要です。

時代とともに変化するしつけ

しつけのポイントは、どう決められているのでしょうか。「子育ては再生産される」とも言われますが、しつけに関しても、自分がしつけられたように展開することが一般的には多いかもしれません。しかし最近は、社会の劇的な変化に伴い、しつけに求められる内容にも変化が表れていると感じます。

例えば筆者は子どものころ「他人から見られた自分」を意識するよう、しつけられました。決して我が家が特別だったわけではなく、かつての日本の子育てでは、従順であること、責任を持つこと、他者との協調、他者への思いやり等が大切にされていました。

今はどうでしょうか。見通しの立たない未来社会をAIと共に生きていく子どもたちには、「他者からの目」以上に、「自らが捉える世界」が大切であり、自らの発想力や独創性、自立等がしつけにおいても大切にされているように感じます。

家族に応じたしつけが、家族に応じたスタイルで展開される時代においては、やはりしつけには意識と工夫が必要です。

しつけの型と子どもの行動

しつけとその成果に関して深めていきましょう。ここでは、お茶の水女子大学名誉教授、内田伸子氏の調査結果に基づき、説明をしてまいります。内田氏によれば、しつけには「共有型しつけ」と「強制型しつけ」があるとのこと、調査では両しつけの成果が比較検討されています。

共有型しつけとは、親子のふれあいを大切に、子どもと楽しい経験を共有したいというしつけの型を指しています。子ども自身に考える余地を与えるような、共感的で援助的なサポートをするしつけです。

他方、強制型のしつけとは、親は子どもに考える余地を与えず、指示的、トップダウン的な介入をしばしば与えるしつけのことを指しています。子どものことに過度に介入し、情緒的なサポートが低く、勝ち負けの言葉が多いしつけです。

共有型しつけのもとでは、子どもは主体的に探索し、自立的・自律的に考えて行動することが多く、強制型しつけのもとでは、子どもは親の指示を待ち、顔色を見ながら行動している様子だったと示されています。

しつけと成績との関係

この考え方を知っただけでも、これからの社会を生き抜く子どもを育てるには、共有型のしつけが良いことは推測がつきますが、面白いのは、幼少期のしつけが、その後の子どもの成績にも影響を与えているということです。

本調査によれば、幼少期に共有型のしつけを受けていた子どもは、読み書き、語彙得点が共に高く、小学校になってから国語の成績が高いとのこと。逆に、幼少期に強制型しつけを受けていた子どもは、国語の成績が低下するという結果が示されたそうです。

共有型しつけでは、子どもを尊重し、子どもの自発性、内発性を大事にしています。
「子どもの主体性を大事にする大人の関わり方が子どもを伸ばす」ということが明らかとなったということです。共有型のしつけに向かっていくことが、特にこれからの時代には重要であることが分かります。

怒らないでしつける工夫

新・家庭教育論しつけ

それでも、しつけは理想どおりにはいきません。根気よく共有型でいこうと思っていても、言った通りに動かない子どもを前に、怒ってしまったり、強制してしまったり 。それでは、しつけの意味が伝わらないとはわかっていても感情調整は難しく、怒りのスパイラルに巻き込まれてしまいます。

ここでは、怒らないでしつける5つの工夫をご紹介しましょう。

1、しつけの前提を整える

同じことを言われたとして、「そうだな」と納得できる人と、「そんなことない」と反発してしまう人がいますよね。この人は自分のことをわかってくれているという関係性が、しつけの前提として必要です。

子どもの気持ちをまずは一旦受け止めましょう。子どもがおもちゃを投げたとして、「投げてはいけません」「ものは大事にしましょう」と伝える前に、「おもちゃを投げちゃったのね、投げたかったのはどうしてかな」と寄り添ってあげる姿勢が大切です。その上で、丁寧に伝えたいことを伝えてみる…。

しつけには丁寧さが必要です。

2、子ども自身ではなく、子どもがとった行為に焦点を当てる

しつける際には、人(子ども)ではなく、行為に焦点を当てることがおすすめです。例えば、子どもが約束を破ってしまったとしましょう。「どうして嘘をついちゃったの」と、子どもに焦点を当てるのではなく、「約束を破ることは良くないことだよ」と行為に焦点を当てて伝ええます。「嘘をつくと自分も相手も傷つけてしまう」等、なぜよくないのかの理由を伝えることも大切です。理由をわかってこそ自分ごととなり、その先の判断ができるようになるはずです。

3、ほめてしつける

怒らずしつけるには、「ほめてしつける」を意識するのが良いでしょう。できないところを正すばかりでなく、「こんなことができるようになったね」「次はこんなこともできるかな」できている部分を拡げていく発想です。

子どもにとって、できることが膨らむのはとても嬉しいこと。「正す」という発想を、「できることを広げる」に変えてみるだけでも、怒りは軽減されそうです。

4、双方向の関係性を意識する

「しつけ」と「怒る」は、枠組みが異なります。しつけは、相手のことを思い、相手が身につけられるようにとサポートすることです。相手との関係は「双方向」、相手の気持ちも聴くし、対話を通して伝えていくという姿勢です。他方、怒るとは、感情をあらわにし、イラ立ちをぶつけること。相手との関係は「一方向」、相手の言い分は聞きません。怒る際には「つべこべ言わずに」「黙っていなさい」等、よく言ってしまいますよね。

「双方向にしよう」「子どもの意見も聞いてみよう」とご自分に言い聞かせてみてください。きっと何かが変わると思います。

5、しつけの基準を明確にする

親の機嫌で良いと言ったり、駄目といったり…、これでは、子どもはどうしたらよいのかが分からなくなってしまいます。外と家で親のしつけの基準が違のも、混乱を招いてしまいます。

しつけとは、伝えること。親の基準がぶれてしまうと、子どもは自分の行為を改めるのではなく、表面的に親の機嫌をとるようになってしまいます。子どもが自分ごととし自立していけるよう、しつけの基準をはっきりさせておくことが大切です。

しつけで家族の一体感を作る

新・家庭教育論しつけ

しつけの際には、時として子どもの気持ちの尊重との線引きに悩むこともあるかもしれません。また、今の子どもには無理だと思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、安心、安全な居場所にいる子どもは、新しい考えも柔軟に受け入れられるものです。そして、子どもは日々豊かに成長しています。
「無理」という考えを外して、子どもの気持ちを尊重した上で、丁寧に、成長を楽しみながらしつけていきましょう。

しつけという行為は、家族の一体感をつくるいとなみかもしれません。急がず焦らず丁寧に、そして、ご自分だけが頑張りすぎないようにすることも大切です。子どもの力を信じることで、きっと未来の子どもにふさわしいしつけが展開できることでしょう。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。一般社団法人 小学校受験協会理事。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/