ママ絵本作家のほんえすんです。今回は「寝かしつけに役立つ絵本」をご紹介します。ライター、編集者、絵本作家として活動しながら2人の子どもを育てている私自身が、寝かしつけで悩む日々を助けてくれたと感謝している絵本ばかりです。連載『絵本はお友だち』Vol.05です。
寝かしつけを助けてくれる絵本
わが家には2人の子どもがいます。2人とも、「添い寝してしっかり寝かしつけ」をしないと寝ないタイプ。上の子が7歳になった今でも、まだ添い寝生活です(そして自分も一緒に寝落ちしてしまう日の連続)。
そんなわが家では、寝る前に1人1冊ずつ絵本を選び、読み聞かせするのが習慣になっています。7年におよぶ私の「寝かしつけ生活」で、いったい何冊の絵本を読んできたことでしょうか……。
寝かしつけの絵本を選ぶとき、悩ましい「永遠の課題」があります。それは、「絵本は楽しい」ということ。「さぁ、寝ようね」と絵本を読んでいると、絵本が面白くて子どもはどんどん楽しくなってきて、頭は冴えて目もぱっちり。読み終わっていざ寝ようと思っても全然寝ない!
そうならないために「楽しくない絵本」がいいのかというと、それだと子どもは興味を持ってくれなくて、「つまらない」と言わんばかりにベッドで遊びはじめることも。
理想は、「楽しく読めて眠くなる絵本」ですよね。あるんです、そんな理想的な絵本が!
今までの「寝かしつけ生活」の中で、特に私自身が「寝かしつけを助けてくれた!」と実感する絵本をご紹介します。
「楽しく読めて眠くなる絵本」の決定版
「おふとん かけたら」
著者:かがくい ひろし
出版社:ブロンズ新社
作者は「だるまさんシリーズ」などが大人気の、かがくい ひろしさんです。子どもにとってもなじみのある絵柄なので、世界にすっと入っていけるのではないでしょうか。
「たこさん たこさん おふとんかけたら」
「くーるくる」
「ソフトさん ソフトさん おふとんかけたら」
「とーろとろ」
2見開きずつ同じ展開の繰り返しというシンプルな絵本なのですが、ありはとっても小さく、トイレットペーパーはながーく伸びる、豆はたくさん並んでいて……という変化が面白くて、子どもは「次は?次は?」と夢中になってくれます。
しかし、楽しくて興奮してくるかというと、反応が少し違います。優しいタッチで描かれた絵と、今にも寝そうな表情を見ていると、読んでいるうちに不思議と眠くなってくる……。
そして、最後のページを読み終わったころには、子どもの目もとろーんとしてきて……。
「楽しく読めて眠くなる絵本」の決定版です。
パパの寝かしつけにもオススメ!
「パパとニルス おやすみなさいのそのまえに」
著者:マーカス・フィスター(作)、那須田 淳(訳)
出版社:講談社
※品切れ・重版未定
うちの息子がまさにこんな感じなのです。
そのたびに寝かしつけは中断され、また目が冴えて寝る時間がどんどん遅くなって……と焦ります。この絵本の主人公であるカバの子ども・ニルスも、このタイプ。寝かせようとするとお話を読んでほしいだの喉が渇いただの、次々とリクエストを飛ばすニルス。
「抱っこして踊って!」とまで要求するのだから、うちの息子より上手ですね。
この絵本を読んだとき、「わ、ニルスって〇〇(息子の名前)にそっくりだね!」と言ったら、息子はバツが悪そうな顔をしていました。どうやら、本人にも自覚があったようです。
それ以来、あれこれ要求しようとしたら「ニルスみたいだね~」とぷぷっと笑いながら言うと、スッと取り下げることも。ありがとうニルス……!
作者は、キラキラ光る魚の絵本『にじいろのさかな』が有名な、マーカス・フィスターさん。マーカスさんは、4人のお子さんを持つお父さんです。
この絵本を読んでいると、マーカスさんもこんな風にお子さまを寝かしつけしていたのかな?と共感してしまって、なんだか嬉しい気持ちになります。
そう、この絵本では、ニルスを寝かしつけするのはママではなくパパなのです(タイトルを見るとわかりますね)。ですので、パパが寝かしつけする際に読むのにもオススメします!
読んでいると不思議と眠くなってくる絵本
わたし、お月さま
著者:青山七恵(文)、 刀根里衣(絵)
出版社:NHK出版
それなのに、寝る前にこの絵本を読むと、必ずと言っていいほど娘は途中で寝るのです。その確率、ほぼ100%!つまり、娘はまだ一度も起きたままこの絵本を最後まで読めていないのです。「寝かしつけの絵本」や「眠りを誘う絵本」として作られたわけじゃないのに、なぜなのでしょうか?
理由のひとつは、優しく語りかけるように書かれた文章にあるように思います。この絵本の作者は、芥川賞や川端康成文学賞などを受賞されている小説家の青山七恵さん。本作がはじめてのオリジナル絵本です。
ストーリーは、宇宙に1人でぽっかりと浮かんでいるのがさみしくなったお月さまが、ぽーんと小さくなって地球に飛んでいき、地球のさまざまなものと触れ合っていくというもの。ぽそりぽそりとつぶやくように語るお月さまの口調がどこかセンチメンタルなのですが、読んでいると心がじんわりと温まってくるような感覚になります。
そして、刀根里衣さんが描く絵が、また素晴らしいのです。刀根里衣さんは、日本の美術大学を卒業後、作品がイタリア人編集者の目に留まってイタリアで絵本を出版、それが日本に「翻訳絵本」として「逆輸入」されたという、異色の実力派絵本作家。本作にも刀根さんの絵の魅力がぎっしりと詰まっています。
お月さまのお話なので全体的に夜っぽい雰囲気の絵が多いのですが、「暗い」という印象は全然なくて、それぞれのページがどこかぼんやりと輝いている印象。それが、光に包まれているような気持ちになって、とても心地いいのです!
この「読むと100%寝てしまう現象」がうちの娘だけなのか、それともこの絵本に不思議な効力があるのか、ぜひ一度、お試しいただければと思います。
【番外編】実は意外と寝かしつけには向いていない!?
ねないこだれだ
著者:せな けいこ(作・絵)
出版社:福音館書店
しかし、実は「寝る前に読む本」としては、あまり適していないのでは?と私は感じています。以前何かの記事で読んだことがあるのですが、幼い子にとって「寝る」というのは「恐怖が伴うこと」なのだそうです。目を閉じると独りぼっちでママもパパもいない、真っ暗な闇の中に1人で吸い込まれていく……そんな感覚なのだとか。
このように、寝ることはただでさえ「恐怖」なのに、この絵本によって「おばけに連れていかれちゃう!」とさらなる恐怖に追い込まれると、子どもは寝るどころか眠れなくなってしまうかもしれません。それは困りますよね。
しかし、寝る直前以外のときに読むのはおすすめです。
この絵本を読み終わったあと、「ねぇ、遅くまで起きてると、こんな風におばけの国に連れていかれちゃうんだって」「どうしようか?」など、子どもと話してみてください。お子さまは自分から「はやく、寝る!」と言い出してくれるはず。これはわが子でも実証済みで、こちらのインタビューでもそのお話をさせていただきました。
右から日本語×左から英語のDual絵本「すき!I like it!」 – Chiik! – 3分で読める知育マガジン –
(作者のせなけいこさんによると「しつけのつもりでつくったわけではない」とのことなのですが、この絵本が育児を助けてくださったことに違いはありません……!)
絵本の力を借りて、楽しい寝かしつけライフを!
でも、こうやって子どもたちの体温や息遣づかいを感じながら寝かしつけするのは、本当に限られた時期だけのことです。私はあと何年かな……?
いつかこの「寝かしつけライフ」を思い出したとき、「大変だったけど、楽しかったな」と思えたらいいな、と思っています。
「大変なことを楽しくする」、これ、絵本の得意技なのです。
だから、大変な寝かしつけを助けてくれる絵本が、いつもあなたと共にありますように。