2024年06月10日 公開
ICT教育

ICTを活用した日本の学校教育について考える

「上松恵理子が語る!これからの子どもたちに必須なスキル」連載第4回は、ICTと日本の学校教育について取り上げます。日本におけるICT教育の流れと取り組み方についてお伝えします。

ICT教育

GIGAスクール構想の元、コロナ禍を経て、ようやく日本の学校教育現場にも個々に最適化した学習環境が整えられました。
「上松恵理子が語る!これからの子どもたちに必須なスキル」第4回では、日本のICT教育についてのこれまでの流れとどう取り組むべきかをご紹介します。

日本の学校教育にICTがやってきた

コロナ禍を経て、小中学校に1人1台の端末が入りました。これによってようやく個人個人に合わせられる学習環境が日本の学校教育にも実現しました。実際に使った学校では子ども達のモチベーションが高まり、学習プロジェクトのプロセスを他の人とシェアすることが可能になり、それによって学習経験や機会を可視化、協働できるようになりました。

暗記力、計算力に関してはコンピュータの圧倒的な力を借りることで、よりスピーディに多くの協働作業ができるようになりました。デジタルシフトやビックデータの出現でAI(人工知能)も大きく発展し、デジタルリテラシーとデータリテラシーは教育においてもますます重要となってきました。人間とAIは相互作用的で相互支援的な関係へと繋がっていきます。“ 1人1AI ”で、AIは優秀な友人、コンシェルジュあるいは秘書ともなり得ます。

これからは生涯を通じて「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」、つまり、リカレント教育の時代となり、学生だけでなく、教員、学校管理者、親やコミュニティの全てのステイクホルダーが学びのグランドデザインに関わる学習者とみなすべき時代です。こんなに多くの関係者がダイナミックにデジタル化へ向かうというICTシフトは教育の歴史にとっても大きな出来事です。

ICTへのデジタルシフトは教育にとって大改革

タブレット教育

ここ数年の日本のICT教育の流れは次のようなものです。

2019年 GIGAスクール構想が始まる
2020年 小学校からプログラミング教育が必修
2021年 中学校でプログラミング教育が全面実施
ネットワークを利用した双方向のプログラミング教育がスタート
2022年 高等学校にて情報Ⅰが必修化
2024年度の大学入学共通試験に教科「情報」が入る

このように、ここ数年でかなりの大きな変化が起こっていると言えます。今後、試験がCBT(Computer Based Testing:コンピュータを使った試験方式)に変わるのでそのスキル習得のために準備が必要です。高校では「情報1」が必修となりました。その目的は、

情報に関する科学的な見方・考え方を働かせ,情報技術を活用して問題の発見・解決を行う学習活動を通して,問題の発見・解決に向けて情報と情報技術を適切かつ効果的に活用し,情報社会に主体的に参画するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

GIGAスクール構想のもとでの情報科の指導について(統合版)

とのこと。つまり、「情報社会に主体的に参画し、ICTを有効活用しながら問題発見・解決をする力」を育成することが必要となるでしょう。

ICT教育へどう取り組むべきか

情報

試験に「情報」という教科が入る事への批判的な声も飛び交います。学校教育とはそもそも予備校ではなく、試験のために「情報」の授業を実施するわけではありません。入試対策ばかりして「体験的な学びのない授業」ばかりおこなっていたら、教科の求めるところの思考力、判断力、表現力はつかないでしょう。
「新しいことに興味を持つ、挑戦する、ともに学びを楽しむ」、このような思いが教育を取り巻くステイクホルダーに無いと新しい入試への対応はできないし、教科主体の高校では入試対応は生徒の指導の1つでしかないのです。まずは保護者や教師が新しい事にチャレンジすることが大事です。

ICT教育は諸刃の剣です。プログラミングがとても好きになる例が多く出てくるかもしれませんし、逆にやり方によってはコンピュータ嫌いが出てくるもしれません。そのようなことが無いようにしなければなりません。AI教育プログラムを小学校のカリキュラムにどういった形で取り込むのか確定はしていませんが、いずれにしろAIに関わるリテラシーが喫緊の課題となることは遠くありません。社会の変化をむしろ楽しむという子どもたちを育成することも大事でしょう。

これからはICTを使いこなすことが子どもたちの未来に繋がるような教育にしていかなくてはなりません。具体例はまた次回の寄稿の機会にお伝えいたしますのでお楽しみにしてください。

▪️ライタープロフィール
上松恵理子

上松恵理子
プロフィール& 略歴
博士(教育学) 早稲田大学ビジネススクールEMBA(Executive MBA )コース修了
東京大学先端科学技術研究センター客員上席研究員(現任)
早稲田大学情報教育研究所招聘研究員(現任)
新潟リハビリテーション大学特任教授(現任)
<アドバイザー、理事、顧問>
教育における情報通信(ICT)の利用活用促進をめざす議員連盟有識者アドバイザー(2016~現任)
総務省プログラミング教育会議委員
文部科学省委託事業欧州調査主査 和歌山県ICT教育アドバイザー(きのくにICT教育アドバイザー:現任) 魚津市ICT教育アドバイザー(現任)
Asuka Academy 理事(2014~現任)
情報通信政策フォーラムICPF理事(2020~現任)
株式会社スノーピーク社外取締役(2022~現任)
COCOAS株式会社(2023~現任)

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この記事のライター

上松恵理子
上松恵理子

博士(教育学)の知見から、ICT教育に新リテラシーを取り入れることの研究と実践に取り組む。アジア各国より招待講演を受け、多くの海外で研究発表を行う。上松恵理子オフィシャルサイト