大曽根 桃子 
私立中学校への進学率が上昇傾向にある中で、GIGAスクール構想始め子どもたちを取り巻く学習環境のデジタルT化が進む一方、アナログの代表格でもあるそろばん学習がそろばん学習が中学受験対策として役立つ習い事として支持を集めています。計算力と集中力の向上に加え、非認知能力の育成効果も期待されています。
私立中学校への進学率が年々上昇している中、GIGAスクール構想始め子どもたちを取り巻く学習環境のデジタルT化が進む一方、そろばん学習が算数の基礎力を養う手段として再評価されています。公益社団法人 全国珠算連盟の「令和のそろばん事情」の発表会では、中学私立受験準備としてそろばんの習い事をしている家庭が多いことがわかりました。なぜ、そろばんが中学受験に差をつけるのでしょうか？
【追いつめられない中学受験】入塾前に家庭でしておきたい対策・準備
習い事ランキングの上位に入るそろばん学習
東京大学とベネッセ教育総合研究所が2023年に行った調査によると、そろばんは運動系を除いた習い事の中で「習い事ランキング」の第4位（9％）に入っており、高い支持を受けています。また、「習わせてよかった」ランキングでは2位にランクインし、その学習効果の高さがうかがえます。
全国珠算教育連盟に所属するそろばん教室は約3,600にものぼり、文部科学省後援の検定試験も実施されているなど体系的な学習が可能です。子どもをそろばん教室に通わせている82.8%の親が、子どもの計算能力向上を実感し、さらに39.1%が集中力がアップしたと評価をしています。珠算検定や暗算検定などの資格取得は子どもたちの学習意欲を高める良い動機づけとなっていることがわかります。
中学受験において、算数は合否を分ける重要科目です。現在、私立中学への進学率は約2割（19.8%）で、この10年間で上昇傾向にあります。多くの親が子どもにそろばんを習わせる理由として、中学受験における算数の重要性を挙げています。特に「暗算力が求められる問題の増加に対応する力を養える」と考えられているのです。
そろばんは中学受験に必要なの？
中学受験においてそろばんは必須ではないものの、算数は合否を左右する重要な科目です。入試問題では、一次関数や連立方程式、図形の角度計算など、多様な分野で計算のスピードと正確さが求められます。現役中学生からは「そろばんで鍛えた計算力が数学の基本となっている」という声が聞かれ、競争が激しい中学受験において、高い計算力は大きな武器となっています。
「計算力」と「集中力」がそろばんで身に付く
全珠連東京都支部に所属するそろばん教室の協力を得た、東京23区内のそろばん教室に通う小学生以下の子どもを持つ親348人を対象とした調査によれば、そろばん学習者の82.8%が計算能力の向上を実感しています。
さらに39.1%の家庭では子どもの集中力が増したと感じ、算数が苦手だった子どもの56.9%で成績アップが見られました。日常生活への好影響も80.6%の家庭が実感しており、学習効果は数字にも表れています。そろばんを通じて得られるスキルは、受験だけでなく、その後の学習においても大きな財産となっていることが見て取れます。
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そろばんをならわせる親の56%が子どもの中学受験意向あり
民間企業の調査によると、そろばんを習わせる親の55.7%が中学受験を検討していることがわかります。これは都内の私立中学進学率19.8%と比較して、かなり高い数値です。また、そろばんを学ぶ子どもの親には理系志向が強く、文系志向の6.2倍という結果も出ています。将来を見据えた教育選択として、そろばん学習が積極的に取り入れられている実態が浮かび上がってきます。
中学受験を意識した家庭はいつからそろばんを始めると良いか
東京23区のそろばん教室に通う小学生以下の子を持つ親348人に調査を行ったところ、75.3%の子どもが小学1年生までにそろばん学習を始めています。特に中学受験予定者では、その割合が88.3%まで上昇します。ただし、これは一般的な傾向であり、開始時期に絶対的な基準はありません。子どもの興味や発達段階に応じて柔軟に検討することが大切です。早期開始による継続的な学習が力の積み重ねとなり、将来へとつながっていきます。
デジタル化が進む現代において、従来の手や紙を使った学習の重要性が見直されています。教育先進国スウェーデンでは、2023年にデジタル教育からアナログ教育への一部転換を図り、そろばんのような学習の価値が再評価されているのです。
教育先進国スウェーデンでもアナログ学習が再注目
教育先進国スウェーデンは2023年、就学前教育においてデジタル機器使用を見直す政策転換を行いました。紙の本を読む時間や手書きの練習時間を重視する方針へと舵を切ったのです。これは、デジタルツールへの過度な依存が子どもの発達に与える影響を考慮した結果といえます。こうした動きは、そろばんのような手と頭を同時に使う学習法の重要性を裏付けていると言えるでしょう。そろばんといったアナログ教育への見直しは、世界的な教育のトレンドとなりつつあります。
非認知能力と認知能力の関係性とは
非認知能力とは、忍耐力や協調性、集中力など、数値化しにくいスキルを指し、これらは学校の成績だけでなく、人生全般にわたる成功に影響を及ぼします。近年の研究では、非認知能力が認知能力と相互に作用し合い、学習成果を高める要因となることが分かってきました。そろばん学習は、こうした非認知能力を育む手段として注目されているのです。例えば、複雑な計算を行う過程で必要とされる集中力や粘り強さは、そろばんを通じて自然に身につき、他の学問や活動にも良い影響を与えるでしょう。
そろばんで身につけられる非認知能力とは？
そろばん学習では、目標に向かって地道に取り組む忍耐力や集中力が培われます。手を動かし、頭で考え、目で確認するという多感覚を使った学習方法は、脳の発達に良い影響を与えます。これらの能力は、学業成績には直接表れにくいものもありますが、生涯にわたって活きる力となり、将来の成功や幸福に大きく影響するでしょう。
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中学受験だけではなくその後の人生にもそろばん学習は役立つ
そろばん学習は、中学受験に向けた算数力の向上にとどまらず、将来必要となるさまざまな能力の基礎を築く学習です。デジタル全盛の時代だからこそ、アナログ学習の価値が見直されている今、子どもの可能性を広げる選択肢として、そろばん学習は非常に有効な手段と言えるでしょう。中学受験対策だけではなく、その先の人生を豊かにする可能性を持ったそろばん学習から今後も目が離せません。
