2020年から始まる小学生の英語教育改革。現在5、6年生が「外国語活動」として学んでいる英語ですが、早期化・教科化が進められます。外国語活動は3年生から始まり、5年生から教科として必修化が決まりました。具体的な変更点と小学生のうちに行いたい対策をご紹介します。
2020年度からはじまる「英語教育改革」とは?
改革の目的と背景
急速に進むグローバル化に対応するため、国際共通語である英語の教育目標・内容が改訂され「コミュニケーション能力の強化」を目指しています。国民の英語力アップさせることは「国力維持・向上」に直結し、アジア諸国のなかでトップクラスの英語力を身につけることで国際競争力強化を狙う考えです。
小学校~高校までの英語教育をより実践的な内容に見直す
3年生から外国語活動が始まります。3、4年生は年齢でいうと8歳~10歳。この時期の子どもの聴力は「周波数の高い英語の子音」を聞きとることが可能です。英語特有の発音・発声を学ぶため、英語の音声に慣れ親しませる授業内容となります。英語を話すことへの抵抗をなくし、コミュニケーション能力の素地を養うことを目指すのが大きな目的です。
高学年となる5年生からは、日常生活をテーマに基礎的な英語表現を使って「聞く、話す」技能を磨きます。加えて英文を「読む、書く」練習もスタート。英語の語彙力・文章力を培います。6年生では「自己紹介文を自分で書き、発表し質疑応答を受ける」という一連の流れを英語でできるレベルを目指します。
【中学校】
小学校で身につけた英語4技能「聞く、話す、読む、書く」を使い、身近な話題について友だち・先生と意見を交わします。「自分の意見を伝える、相手の意見を理解する、簡単な情報交換ができる」レベルのコミュニケーション能力が目標です。英単語の暗記量・文法訳読の正しさに重きを置き過ぎない、コミュニケーションを楽しむカリキュラムが増えます。
【高等学校】
政治・経済・文化など、幅広い分野からテーマを決めて自分の意見を発表する、グループディスカッションによって英語による論理的思考力・表現力を高めていきます。英語を使って「自分の意思を的確に伝える」「相手の意見を理解したうえで交渉する」など高度な言語活動を行うことで、総合的に英語力を強化します。
「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能の力を積み上げる
しかし経済・文化の急激なグローバル化によって、国際共通語である英語を使いこなせないことは国としても個人としてもデメリットが大きくなってきました。国際社会で自分の意見を主張し、理解を得るには「聞く、話す、読む、書く」の4技能を総合的に高める必要があるでしょう。
語彙力・文法力・正しい発音などの個別な能力に偏らず、4技能を積み上げることで「世界に通用する英語力」が育まれていきます。
大学入試も4技能の力が試される
英語は「読む(Reading)、聞く(Listening)、話す(Speaking)、書く(Writing)」の4技能を測る民間資格・検定試験が入学テスト。語彙力・文法力はもちろん、読解力・論理的思考力・表現力も試されます。大学入学共通テストとして採用された英語資格・検定試験は以下の8つです。
・ケンブリッジ英語検定
・TOEFL iBTテスト
・IELTS
・TOEIC Listening & Reading TestおよびTOEIC Speaking & Writing Tests
・GTEC
・TEAP
・TEAP CBT
・英検
なお2023年度までは、民間資格・検定試験と大学入試センターが出題する問題が併用されます。2024年度より民間資格・検定試験の一本化となる予定です。
2020年度、小学生の英語教育は具体的にどう変わる?
英語学習が小学3~4年生からスタート
そして5年生から「外国語」として教科となり(通知表に成績がつく)、コミュニケーション能力を高めたり、語彙力・文法力を伸ばす指導が行われます。
2018年度4月からすでに移行措置期間
年間35単位時間(週1コマ程度)の「外国語活動」
小学5~6年生は「外国語(=教科としての英語)」として年70コマに増加
2020年度の英語教育改革で重要視されることは?
これまでインプット「読む(reading)、書く(writing)」中心だった英語教育が、「聞く(Listening)、話す(Speaking)」力の育成にも力を入れ始めています。
「聞く」「話す」力のレベルの向上
新学習指導要綱では「語彙・文法の知識を身につける」ことに偏らず「聞く、話す」能力の育成に力を入れる指導を促しています。アルファベットの識別と発音、簡単な挨拶を覚える、自己紹介文を書いて発表する……。段階的に英語力を高めていくことで、「英語でコミュニケーションをとる能力」が習得できるカリキュラムです。
「聞く」「話す」力の向上のため家庭でできることは?
間違ってもいいので、英語をたくさん話す機会を作る
文法・単語が間違っていても良いので、家庭で英語を使ってコミュニケーションをとりましょう。まずは親御さんが率先して英語を使ってみてください。挨拶や天気、食事などの身近な話題を英語で話し合ってはいかがでしょうか。
仕事などで時間がとれない場合は、放課後の保育・預かりを英語で行う英語学童・アフタースクールもおすすめです。
英語アプリを活用し、楽しく学ぶ
楽しみながら4技能を伸ばせる英語アプリはたくさんあります。「ゲーム感覚で単語が覚えられる」「クイズ形式で文法が理解できる」「キャラと会話をしながらストーリーを進めていく」「予約不要でネイティブとの会話ができる」……。お子さまの興味を引く、続けられる英語アプリがきっと見つかるはずです。
シャドーイングを取り入れて英語耳を養う
話し手の音声に「影(shadow)のようにぴったりくっついて発音する」このトレーニングは、翻訳・同時通訳者が取り入れているもの。英語の発音を聞き分け、言語として認識する能力をつけるなら「耳の発達の臨界期とされる8歳~12歳」までに行うと良いでしょう。
英語アプリ・youtube・海外アニメ・シャドーイング教材などを使って「真似っこ遊び」感覚で挑戦してみてはいかがでしょうか。
オンライン英会話を活用する
お子さまが恥ずかしがって、黙り込んでしまっても大丈夫。先生が優しく話しかけて、緊張をほぐしてくれるでしょう。会話ができなくても、生の英語を聞くだけでリスニング能力のトレーニングになります。
気の合う先生が見つかれば英語で話すことが楽しくなるはず。お友だちとおしゃべりする感覚で英語力アップが目指せるでしょう。
家族で日常的に英会話レッスンを
正しい発音・文法で話せなくても構いません。臆せず英語を使ってコミュニケーションをとる姿を見せることがポイントです。挨拶やちょっとした会話を英語で行うことから始めてはいかがでしょうか。
「Where are you going?」(どこへ行くの?)