2019年1月29日 公開

「おもちゃ病院」はおもちゃを大切に扱う心と修理の感動を教えてくれました

壊れたおもちゃを無料で修理してくれる「おもちゃ病院」の活動をご存知ですか?日本おもちゃ病院協会の会長・三浦康夫さんに、おもちゃ病院の活動内容や、おもちゃドクターとしての修理のこだわり、おもちゃが蘇る喜びについてなど、さまざまなお話を伺いました。

「おもちゃ病院」「おもちゃドクター」とは?

日本おもちゃ病院協会会長の三浦康夫さん。
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「おもちゃは壊れたらおしまい。また新しく買えばいい」と思っている子どもたちは、意外に多いのではないでしょうか。でも簡単には諦めないでください。親がすぐに直してあげられない故障や、動かなくなったおもちゃの修理を依頼できる場所があります。

「おもちゃ病院」とは、壊れたおもちゃを無料で修理するボランティアグループです。修理を担当するスタッフは、「おもちゃドクター」と呼ばれ、全国で約1,500名が活動しています。

日本で最初のおもちゃ病院が開院された記録は不明ですが、1977年開院した記録を持つ病院があります。1996年には「日本おもちゃ病院協会」の前身である「おもちゃ病院連絡協議会」が設立、2008年に「日本おもちゃ病院協会」に改称しています。今では、子育て支援センターや児童館、公民館など地域に密着した場所を中心に、全国800カ所ほどで活動を展開されています。

今回、お話を伺ったのは、日本おもちゃ病院協会会長の三浦康夫さん。会社員時代から、週末におもちゃドクターとして活動し、退職後、同協会の会長に就任。おもちゃの診察・治療をはじめて21年というベテランドクターです。

生き生きとしたやさしい笑顔が印象的な三浦さん。「おもちゃの修理は、私の趣味ではじめましたが、おもちゃ病院は、人の幸せに関わることができる活動です。お子さんたちに、お気に入りのおもちゃがよみがえった時の感動を伝えたいですね」と詳しい内容について話してくれました。

修理は無料!作業の様子を間近で見られるメリットも

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おもちゃ病院の本拠地は、東京おもちゃ美術館の3階にある一室です。毎月第1、第3土曜日に開院しています。

取材に伺った日は、約20名のおもちゃドクターが活動されていました。年齢層はさまざまで、多くは退職された60歳以上の男性ですが、最近では若者や女性も増加。なかにはボランティアにもかかわらず、月20日以上も活動されている方もいるとか。

持ち込まれるおもちゃの多くは外国製で、部品が手に入らないことも多いそうです。その場合は、他の部品を使って工夫しながら、修理にあたります。その場合も作業は無料ですが、備品交換が必要な場合は、別途材料費(実費)がかかることもあります。

「壊れたおもちゃが、よみがえったときの感動がたまらない」。笑顔でそう語りながら、壊れたおもちゃに新しい命を吹き込む作業を続けている、おもちゃドクターさんたちの、やる気に満ちあふれた様子も、とても感銘を受けました。

どのようなおもちゃ修理が多い?

持ち込まれるおもちゃのジャンルは、多岐にわたります。取材に訪れたときは、音の出るぬいぐるみや乗り物を多く見かけましたが、ミニカーやプラレールも年間を通してよく持ち込まれるおもちゃだそうです。

また、取材日はクリスマス前だったこともあり、サンタのぬいぐるみを2つほど見かけました。1年間使用せず、スイッチを入れたら動かなくなっていた、と持ち込まれたそうです。こちらは電池を新品に取り替えて解決。

三浦さんによると、「壊れた」と思われているおもちゃは、単に「電池の残量が少なくて動かない・動きが悪い」からというケースも多いそうです。電池の入れっぱなしによる液漏れが原因のことも。

「おもちゃを長い間使わないときは、電池を抜いておいてくださいね」と教えていただきました。

修理を依頼するのはどんな人?

修理を依頼するのは、主に小さいお子さま連れの方が中心。ただし、なかには、懐かしい昔のおもちゃを持ってくる年配の方もいるそうです。

修理する作業も見所がいっぱい!

こちらのおもちゃ病院では、受付を済ませたら、依頼者の方もいますが、修理が終わるまでその場で修理を見届けることもできます。「お客さんとコミュニケーションを取りながら作業することもありますよ」と三浦さんは言います。

おもちゃの中身がどうなっているのか、どのように修理するのかという光景を間近で見られるのは、お子さまにとても良い学びの機会になるのでしょうか。こういった体験ができるのも、おもちゃ病院の魅力ですね。

完治率は90%以上、重症おもちゃは入院も!

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修理に必要な時間は、おもちゃの症状によってさまざまですが、ひとつのおもちゃに対して約30分が目安。治療に時間がかかる場合は、担当するおもちゃドクターが自宅に持ち帰って治療にあたる「入院」が必要となります。

三浦さんは、「おもちゃを引き取ってから、家で何日もかけて、アイデアを練りながら修理にあたる時間はたまらなく楽しいものです。おもちゃが重症であればあるほど、おもちゃドクターの修理魂が刺激されるのですよ」と、嬉しそうに教えてくれました。

おもちゃ病院における、おもちゃの完治率は、全国平均で約90%ですが、今回取材に訪れたおもちゃ美術館のおもちゃ病院は、95%を超える、より高い完治率を誇ります。

「残りの5%は、電子部品であるICが壊れていた、または破損が激しく元の状態が不明な場合など、どうしても修理できないケースです。そんな場合は残念ですが、断念せざるを得ません」と、悔しさをにじませながら語るおもちゃドクターさんも。

しかし、そういった場合も簡単に諦めている訳ではなく、時間をかけてさまざまなアプローチを行っているそうです。仲間たちとアイデアを出し合い、ネットでも情報収集を行うとか。

おもちゃドクターさんたちの「あきらめたくない」という強い思いが、この高い完治率を支えているのですね。

驚きの修理のこだわりとは……

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こちらはよく見かける、電池で動く犬のぬいぐるみの修理見本です。折れた足の修理について、三浦さんは興味深い話をしてくれました。

「折れた足を単に接着剤で補強するだけでは、またすぐに折れてしまいます。この場合は、細いステンレス線で縫い合わせをして補強し、しっかり固定してから接着剤を付けるんですよ」。接着剤にもこだわりがあるそう。「接着剤によっては、素材との相性が悪いこともあるため、使用されている素材に応じて使い分けています」と何種類もの接着剤を常備されています。

単なる応急処置ではなく、長く遊べるように考えられている、修理のクオリティーの高さとこだわりにも驚かされました。

三浦さんが、新人のおもちゃドクターさんに「目的は、おもちゃを元通りに修理することではなく、もう一度安全に遊べるようにすることだよ」と言葉をかけていたのも印象的でした。

「幸せのおすそ分け」おもちゃドクターたちを支える原動力に

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修理したおもちゃを渡した際の、おもちゃの持ち主の“笑顔”と“ありがとう”の言葉が、おもちゃドクターの活動の原動力になるという三浦さん。

「80代のご婦人に、結婚前にご主人からもらった思い出のオルゴールの修理を依頼されて直したところ、涙を流されて喜ばれたことも忘れられないですね。私もつい涙ぐんでしまいました。自分が好きなことをやって感謝されるなんて、うれしいことですよ」と語ってくれました。

他のおもちゃドクターの皆さんも同様に、「お金にはかえられないものがある」「いつも幸せのおすそ分けをもらっている」と、おもちゃ修理への喜びを口々に語り、大切な時間を過ごされてきた様子が伝わってきました。

修理を通して、おもちゃを大切に思う気持ちも育む

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「おもちゃは大切に使ってね。もし壊れちゃったら、おもちゃ病院へ持ってきてね。また遊べるように直してあげるよー」最後に、読者の皆さんのお子さまたちに、三浦さんからいただいたメッセージです。

現代は、おもちゃをはじめ、なんでも豊富にある時代。壊れたらまた新しいモノを買えばいいと思ってしまいがちです。そんな中で、一つのおもちゃを長く使い続ける大切さを子どもに教えるのは難しいことも。

でも、もし、お気に入りのおもちゃが壊れてしまったときは、ぜひおもちゃ病院を訪れてみてくださいね。おもちゃドクターのあきらめない、真心のこもった修理の姿に触れることで、一つ一つのものを大切に扱う気持ちも育まれるかもしれません。

すぐに諦めず、試行錯誤し、創意工夫を凝らして修理するおもちゃドクターさんたちの姿勢や、動くおもちゃの仕組みが見られるので、好奇心を育む学びのチャンスでもあります。

「おもちゃ病院」が、子どものモノを大切にする気持ちを育むきっかけにも繋がることを願います。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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Kayoko* Kayoko*  千葉県在住。9歳と6歳の男児を持つママライター。得意ジャンルは育児、料理、ディズニー、ときどきお酒。大学では心理学を専攻。ただいま、スムージーダイエットに奮闘中!