2017年11月12日 公開

熱心すぎる?シンガポールの教育事情の詳細とは……

「シンガポールに比べれば日本の子どもはよくも悪くものんき」といわれるほど、シンガポールでは幼少期から熾烈な教育競争がはじまります。なぜそれほど競争が激化してしまうのか、どれほど厳しい競争社会なのか、その効果は出ているのか、などについて現地の教育事情をご紹介します。

シンガポールの教育政策とは……

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教育熱心な国として有名なシンガポール。熾烈な教育競争を生みだしている要因はどこにあるのでしょうか。それは【シンガポールの教育政策】そのものといっても過言ではありません。

【シンガポールの教育政策】の柱は大きふたつ。

①初等教育からの英語と母語によるバイリンガル教育政策
すべての生徒は第一言語を英語、第二言語を母語として学ぶことを義務化。

②試験の成績によってコースが決まる選抜主義的制度 
初等教育修了試験の成績により、各生徒が選択できる中学校コースが決定。
義務教育は小学校まで、中学校からは学力別に振り分け。
 
シンガポールが独立した52年前は、国民の識字率は60%、大学進学者はたったの3%でした。国土が東京23区ほどの大きさしかないシンガポールは、資源が乏しいため、政府は経済競争力を高めるために、“国の成長には人材こそが資源”と考え、エリート育成に力を入れたわけです。

初等教育修了試験とはどんなもの?

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【初等教育修了試験】とはどんなものなのでしょうか。

この試験の重要科目は英語、第二言語、数学、理科の4科目。試験の結果は、合格と不合格に判定されます。

合格者の中でも、成績優秀な生徒は“エリート”に認定され【エクスプレスコース】の中学校へ進学できます。4年後に中学卒業時試験を受験し、ジュニアカレッジ(日本の高校)へ進学、大学受験への階段を上っていく道が開けます。

次のレベルである【ノーマルコース(アカデミック)】は、中学卒業試験を受験できるのは5年後となりますが、成績が良ければ、かろうじて大学受験も可能です。

その次のレベルである【ノーマルコース(技術)】は、大学受験の道はほぼ途絶え、技術職への就職、高専といった進路にしか進めません。

つまり、小学校卒業時点で既に大学・就職の進路が確定してしまうのです。

この試験には不合格もあり、その場合、小学校を留年して再度翌年に試験を受けるか、特別教育校へ進むしかありません。小学生の半分が眼鏡をかけていることからも、子どもたちの勉強量がうかがえます。まだ幼い子どもたちにはかなり厳しい現実ですよね。

実際に学力は高いの?

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実際にシンガポールの子どもたちの学力はどれほどなのでしょうか?

2000年からスタートし、3年ごとに実施されている「国際学習到達度調査(PISA)」というものがあります。世界中の15歳の子を対象に【読解力】【数学的リテラシー】【科学的リテラシー】の三分野について学力レベルを調査しています。

年々、順位を上げているシンガポール。72カ国、約54万人を対象に実施された2015年の結果では、全分野において平均得点で世界1位でした。

また、イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE) が発表しているアジア大学ランキング、3年連続1位を維持してきた東京大学が2016年のランキングでは7位に転落し、代わってシンガポール国立大学 (NUS) が1位になりました。

このように、激しい教育競争の成果は、着実に実際の数字に表れているようです。

生涯の給与レベルも決まってしまう!?

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Antonio Guillem / Shutterstock.com
【エクスプレスコース】に進んだ生徒には、最高の教育環境で、最高の英才教育が施されます。それでも、国立大学進学はかなりの狭き門。限られた大学進学枠は学業に特に秀でた生徒に充て、そうでない生徒には職業訓練を受けさせて国に貢献させる、という国の明確な方針が見えてきます。

さらには、就職後も学歴による明確な収入格差があります。学歴と給与水準にはっきりとした相関関係が存在し、収入の最下位20%と最上位20%の格差は、なんと10倍ともいわれています。

起業して事業に成功しない限り、学歴がなければ、自ら努力してもステップアップするのは難しい国。教育競争が過熱してしまうのも、仕方がないかもしれません。

小学校前教育は当たり前!

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人生に大きな影響を与える【初等教育修了試験】。

この試験で少しでもよい成績を取ることが人生の選択肢を広げるわけです。そのためにシンガポールでの小学校前教育は当たり前のこと。

1歳を過ぎた頃から入園できるプレスクールでは、英語と中国語による多種多様なプログラムが用意されています。幼児クラスになると、外遊びはほぼなくなり、英語・中国語の読み書き、足し算・引き算、宇宙や人体などの科学をテーマにしたプログラムが増え、重要科目の4科目を学びはじめます。毎週テストがあったり、毎日宿題が出るほど。塾に通わせている家庭も多いそうです。

シンガポールの高レベルの小学校前教育。それを目当てに近隣諸国から親子で留学、移住してくる家族が増えているほど、世界中から注目されています。

家庭全体でバックアップ

Photo by author (66319)

ローカルの英語塾。送り迎えは祖父母が来ている姿をよく見かけます。
via Photo by author
シンガポールは女性が働きやすい国。母親になっても、祖父母が近くに住み世話をしたり、ナニーやメイド文化により、母親が1人で頑張らなくてよい環境が揃うので、産後4カ月で復帰する女性も多いといいます。

それほど恵まれた状況にもかかわらず、子どもの激しい教育競争に勝ち残るため「教育に専念したい」という理由で、退職をしてしまうシンガポール女性が多いというのは大変残念な話なように感じます。

多くの母親は子どもが小学校に入学する前か小学校高学年になると仕事を辞めて、子どもの勉強の世話につきっきりに。子どもの塾や家庭教師代に巨額の費用をかける家庭も珍しくありません。

英金融大手HSBCが発表した子どもの教育費の調査報告では、シンガポール市民が子どもの小学校入学から大学卒業までに費やす教育費は平均7万0.939米ドル(世界平均の1.5倍超)、調査対象国地域中3番目に高いことがわかりました。

詰め込み教育への警鐘も……

シンガポール政府は、現行の教育制度では、共通学力がなくても、芸術、数学、企業能力のような特別の才能がある子はふるい落とされてしまうということを問題視しています。多様な能力の評価は現在の優秀さの物差しでは測れないという認識を持ち、検討を進めていくようです。

また、体の基礎をつくり、体力をつけるべき幼少期に、外遊びをせず、詰め込み教育をすることへの警鐘も鳴らされています。小学生の肥満がまた、問題となっているのです。

それでも、世界で戦える学力を身に付けたエリートの国。見習うことが多い教育先進国であることは間違いありません。ご興味のある方は、夏・冬休みなどを利用して、短期間でもローカルの幼稚園へ体験入学させることも可能ですよ。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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nana nana  2人姉妹のママ。大学卒業後IT企業に勤務しながら2人姉妹を出産。バタバタのワーママ生活をから一転、夫の海外赴任に帯同するために退職。シンガポールで子育てしながら、皆さんのお役に立てる情報を紹介していきます。