2024年11月20日 公開

学校の選び方 ー「いい学校」の基準から考える

受験をする!と決めたあと、始まる学校選び。星の数ほどある学校の中からなかなか決められない、なんて声も。『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』第39回では子どもの受験する学校選びについて意識したいポイントをまとめました。

教育が多様化する中、学校を選ぶ尺度も複雑化してきています。今や、自分達が持っていたイメージとは様変わりしている学校も多く、なかなか決められないという声も…。また、進路やカリキュラム等、言うなら「良い点」については、各学校のホームページ等でも確認できるものの、例えば問題が起きたときの対応など、親が本当に知りたい情報は、なかなか手にすることができません。SNSには興味深い内容が示されていることもありますが、それらの情報に引っ張られるのは要注意。あくまで、どなたか個人の主観であり、参考程度にしかなりません。

3年、6年と過ごす、「子どもに合った学校」をどう選ぶか。まずは、候補となりうる学校を見つけ、その後受験する学校を選んでいく。各々の段階で意識したいポイントをまとめました。

学校選びは誰がするの?

「受験をする!」たくさん悩み、何日も考え、さんざん議論を交わしてこの決定に至った後に始まるのが、学校選びです。「受験をする!」の背景には、ぼんやりと「この学校に子どもを通わせたい」という願いがあるのは皆共通。しかし、いざ受験をするとなると、単なる憧れだけで進むことはできず、親にとっては悩ましい「学校選び」始まります。

学校は誰が選ぶのか。この問いへの答えは、校種によって異なります。例えば小学校受験なら、ほぼ100%親が決めるでしょう。中学校受験の場合、最終的には子ども本人が選ぶにせよ、親が選んだ複数校の中から、子どもが選択するというのがほとんどかと。家庭によって状況は異なるものの、高校受験、大学受験と、徐々に本人が選ぶ受験へと移行していきます。

「いい学校」の基準

「いい学校」とは、どのような学校でしょう。偏差値という数字は、確かに一つの基準になるでしょう。しかし、教育が大きく変わる中、学校の取り組みは実に多様になり、重点を置いているカリキュラムや方針にも、学校のカラーが色濃く出てきています。

そもそも、大学入試自体が圧倒的に推薦入試へと移行する中、進路実績等の見方にも、新しい観点が必要です。偏差値という数値化された基準だけで「学校」の価値を測ることはできません。

「いい学校」の定義は「子どもにとってのいい学校」です。子どもが過ごす6年、3年間に目を向けて、「この子」にとっての「いい学校」を見極めていく。「受験をする!」と決めたのなら、全力で子どもにとっての「いい学校」を探していく。親の関与が大きい受験であるなら、このような心持ちが必要です。

学校の選び方① 候補となりうる学校を見つける

星の数ほどある学校です。新設校もたくさん出てきていますし、学校の特色も、過去とは様変わりしています。学校を選ぶ際には、自分の持っているイメージを横におき、先入観なく、一つひとつの学校に目を向けていくことが大切です。伝統校であっても、進学校であっても、自分たちが見てきた学校とは異なる学校になっていることを、くれぐれも意識していきましょう。
その上で、複数の学校の中から「子どもにあっているかもしれない学校」を「見つける」ポイントをまとめます。

教育方針・理念

言うまでもなく、学校の方針や理念はとても重要です。ここが合っていないと、入学した後、親も子も困ることに。学校のHPやパンフレットに書かれている文章を深く読み取り、家庭の教育方針と合っているか、確認をしましょう。

カリキュラムと学習環境

教科学習に留まらず、今や学校はさまざまな学習機会を提供しています。学校が提供しているカリキュラムや特別プログラムは、是非チェックしましょう。学校が、どういった生徒を育てたいのか、卒業後にはどうなってもらいたいのかが見えてくるはずです。
また、学習環境として、どのような環境を整えているのかも参考に。理想だけを追求しているのか、実際に取り組んでいるかがわかります。

校風・文化

ここは、実際に足を運ばないとわからない部分ですが、生徒の雰囲気や学校の文化が、子どもに合っているかどうかも大切なポイント。数値化も言語化もできませんが、その環境に身を置けば、何かを感じるかもしれません。

アクセス

もちろん、学校までのアクセスも重要です。時間帯によって、電車やバスの所要時間、混雑具合は異なります。放課後の塾や習い事、部活動との兼ね合いも鑑み、通えるかどうかは、しっかりチェックしておきましょう。

保護者の関わり

小学校の場合、学校によっては保護者の力が大きく期待されていることも。それをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは、家庭によって異なります。また、何かあった時に、保護者へのサポート体制ができているかどうかも要チェックです。

学校の選び方② 受験する学校を選ぶ

さて、上記のようなプロセスを経て、「いいな」と思う学校が複数見つかったとしましょう。難しいのは、その先です。志望校となる学校を「選ぶ」という段階です。入学してから「あっちの学校の方がよかった」と思うことがなきよう、納得することがとても重要。そのための視点を3点紹介します。

学校側の姿勢をみる

学校説明会には、当然足を運ぶ必要がありますが、その際に「いい話を聞けた」で終わってしまっては、学校選びにはつながりません。説明会は学校側の姿勢をみるための、絶好の機会です。

例えば、良い点ばかりをアピールしているのか、難しい点もきちん伝え、その上で、どのような対処をしているかまで語ってくれているのか。子どもが集団で過ごす場には、いろいろあって当然です。学校がその問題をどう捉え、どう対応しているか。そこにはどのような体制が整っているか。そんなことまで聞いてみることができれば、選ぶための判断材料になりそうです。

ハード部分にも目を向ける

説明会では、学校内を見学できます。特別教室を始めとした新しい学習環境や広い講堂、体育館など、魅力的な部分に目が向くことでしょうが、あえて言葉が添えられていない部分にも、目を向けてみてください。

例えばトイレの清潔さや、飾られている草花。生徒の作品の展示の仕方や、下駄箱の様子など。子どもが育つ場としての違和感はないか、先に聞いた学校側の説明とにギャップがないかなど、細かく見てみると良いでしょう。

日常の学校を見る

説明会は特別な場。生徒もよそ行きの顔をしていることが、多々あります。説明会以外の「日常の学校」も、余裕があれば是非見てみましょう。最寄り駅から学校までの道のりでは、いつもの生徒の様子がつかめます。

ご自分の好き、嫌いではなく、生徒達が醸し出す雰囲気が、子どもに合っているかどうか、楽しく前向きに伸びていきそうかなど、想像力を働かせてみてください。

子どもも学校選びの参加者にする

小学校、中学校の場合は、学校選びに親の関与、判断は不可欠です。しかし、子ども不在で学校を決めてしまうのは考えもの。たとえ、「この学校がいい」という意見がまだ子どもになくても、そもそも学校という概念がなくとも、「どの学校に行くのか知らなかった」というのは避けたいものです。

一緒に学校に足を運んでみる。そして、その日が楽しかったか、その学校が素敵だと思えたか、そんな質問を、子どもにも投げかけてみてはいかがでしょう。それは、決して「あなたが決めたのよ」と、責任を子どもに追わせるという意味ではありません。学校に入ってからの日々を楽しく過ごすためにも、受験という営みを楽しみに感じ取ってもらうためにも、子どもも参加者にすることは大切だと感じます。

■ライタープロフィール
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江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。一般社団法人 小学校受験協会理事。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/