ストレスの多い現代の子育て。育児疲れを感じてしまうことも多いかもしれません。「一晩寝たら元気になる」程度ならよしとして、回復できないほどの育児疲れには、対処が必要です。特に、「うまく行かないのは自分のせい」等、自分に対するネガティブな気持ちが増してきたときには要注意。自分のためにも、家族のためにも、なにより子どものために、育児疲れへの対処法を身近においておきましょう。誰かに話すことも忘れずに。
育児の疲れは知らずしらずのうちに溜まっていってしまいます。「身体の声」を意識的に聞くことが大切です。育児疲れは誰にでもありうるもの。疲れを感じたら、頑張りすぎずにリセットしてください。
ストレスの多い現代の子育て
「美容院に行く時間さえない」、「昨夜も4度も起こされた」。子どもを持つと、親の日常は一変します。理想の子育て観があっても、現実はなかなか思うようにはなりません。多忙、不安、焦り。経済的困難、相談相手の不在、身体の不調。見通しのたたなさ、仕事との両立の難しさ、パートナーとの価値観のズレ。子どもの気持ちがわからない、人間関係がうまくいかない等々。子どもを育む営みには、その喜びとは裏腹に、大変多くのストレスがあることがわかります。
特に現代社会における子育てには、今まで以上にストレスを感じる場面が多いかもしれません。コロナ禍を経て子育て家庭の交流は激減、子育ての孤立化は、一層深刻化した様子です。少子化時代故に、きょうだいや近所の子どもとの接点なくして親になることも増えました。「小さい子どもを知る」経験なくして親になれば、「子どものことが理解できない」という難しさだってあるでしょう。仕事との両立による「時間的余裕のなさ」も深刻です。現代の子育てには、ストレスがつきものなのかもしれません。
対処の必要がある育児疲れ
もちろん、すべてのストレスが悪いわけではありません。育児に疲れていても、一晩寝たら回復する等、程度によっては、うまく付き合っていくこともできるでしょう。しかし、自分でも気づかないうちに、ストレスが回復しないほどの大きさとなり、深刻な育児疲れとなっていたら。このような場合には、対処の必要性が出てきます。
さらに、「子育てがうまくいかないのは自分のせいだ」、「親になってしまった自分にはもう未来がない」等、ネガティブな思いが自分を支配し始めたら、対処を急いだ方がいいでしょう。
子どもを持つと、突然始まる子育ての日々。初めての育児に疲れを感じるのは当然です。自分のために、家族のために、何より子どものために、疲れた時には、しっかり対処をしていきましょう。
頑張り過ぎの私をリセットするための5つの方法
自分のことより、子どものこと。子育てに夢中になっている時には、自分が不在になってしまいがち。そして、知らずしらずのうちに、疲れが溜まっていってしまいます。自分の「身体の声を聞く」を、意識的に取り入れていきましょう。「疲れている」というサインが見えた時には、意識的に対処をしていきます。5つの対処法をご紹介します。
1.スペースを空ける
引き出しの中がいっぱいになれば、どんなに頑張っても、それ以上モノを入れることはできません。無理やり入れようとすれば、中に入れているものが壊れてしまいます。人間も同様です。やりたいことがどれだけあっても、個人の容量(時間)は決まっていて、頑張りにも限界があります。疲れ過ぎは、心を病む原因にも。
心地よく、やりたいことを進めていくためには、スペースが必要です。スペースを意識的に空けましょう。やる必要がないのに行っていることはありませんか。もしも今やる必要がないなら、潔く手放します。スペースが空き、心が元気になります。
スペースが空くと、新しいことが飛び込んでくることもあります。子育ての喜びを感じたり、子どもの成長が今以上に見えてくるかもしれません。「スペースを空ける」は、自分らしい時間を過ごすために必要なスキルです。
2.自分のタスクを可視化する
慌ただしく過ぎていく日常。家の中でも走りたくなるほど、心が焦っている日はありませんか。子育て中には、本当にやることが多く、次々進めていかなければ、一日を終えることができません。それなのに、子どもがグズグズしていると、イライラはマックスになってしまいます。
何をやらなければいけないのか、頭の中の交通整理をしてみましょう。交通整理の第一歩は、書き出すこと。その日、その週に行う自分のタスクを、書き出してみましょう。ノートでもスマホでも、ホワイトボードにでも…。とにかく書き出して、タスクの総量を可視化することが大切です。
可視化ができたら、次は優先順位をつけましょう。見通しがたてば、焦りは減少するはずです。もしも誰かに任せることができるものがあれば、お願いをすることも大切です。子育ては一人で行う営みではありません。
3.頼れる人、サービス、場所を探す
地縁や血縁、かつての日本社会には、様々な「縁」があり、子育てはその「縁」の中で営まれていました。しかし、時代とともに社会は変化し、今は子育ての責任や役割が、親だけに委ねられている状況です。
頼れる人、サービス、場所を見つけましょう。自分が育ってきた時代と、子育てを取り巻く環境は変わったのです。当たり前のように地域にあったインフォーマルな支援がなくなった今、利用できる支援は、自ら探していかなければなりません。
ベビーシッター、子どもの預かり施設に習い事、子どもを見守る目を増やすことは、子どもにとっても好影響となるでしょう。時短家電を使ったり、家事の代行を利用するのも良いでしょう。一人で全てをやろうとするより、きっといい結果につながります。
自分に少しだけ余裕ができれば、今しか見られない子どもの姿、今しか聞こえない子どもの声に、もっと触れることができるかもしれません。子どもと過ごす時間を確保するためにも、自分の心を元気にするためにも、頼れるサポーターを見つけておくことは、とても重要です。
4.子どもから離れる時間を作る
無気力になった、外出する気分にもなれない、悲しい気持ちから脱却できない等、深刻な育児疲れの可能性があれば、まずは誰かに相談してください。その上で、子どもから離れる時間を作ってみてください。物理的に離れるということです。
感情のコントロールは、「頑張ろう」「落ち込むのはやめよう」等の意識だけでは難しく、行動を変える必要があるのです。短い時間でもいい、「子どもから離れる」という行動を起こしてみましょう。子どもを見てくれる人を見つけて、30分でもいいので、子どもから離れて、自分のために時間を使ってみてください。
もちろん、乳幼児の場合には、子どもを一人にすることはできません。一時保育を利用するのはどうでしょう。少し長い時間が手に入るなら、子どもを預けて美容院に行ってみる、一人でカフェに入ってみる。ささやかなご褒美が、深刻な育児疲れから開放されるために、大いに役立ちます。誰かに話をしてみることが、スタートです。
5.この大変さがいつまで続くのかイメージする
親という役割は、生きている以上永遠に続きます。しかし、子育てに忙しい時期は、思っている以上に短いように思います。特に子どもに手がかかる時期は、子どもの成長とともに、寂しいほどになくなっていきます。
この忙しさはいつまで続くのかを、具体的数字に置き換えてイメージしてみませんか。あと3年、それなら、頑張れる。長くてあと4年、それなら後悔しないように、子どもと十分に向き合っていきたい。終わりが見えれば、今の過ごし方も変わりそうです。
子育てが一段落した以降の自分を想像するのも、おすすめです。いずれ戻ってくる自分時間を、どう過ごしていくか。子育てを経験した自分だからこそできること、やりたいことがあるかもしれません。育児はいつかは終わるものです。しかし、人生100年時代、自分の人生はその後もずっと続いていきます。
育児疲れは誰にでもありうるもの。疲れを感じたらリセットする勇気をもってくださいね。
■ライタープロフィール
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③
■江藤さんの著書紹介