勉強、スポーツ、芸術・・・どの分野においても成果を出したり、楽しさを実感できたりするレベルに達するには「継続力」が必要。
練習や勉強、研究などに取り組み続け、一定の能力以上になることで、「努力や、困難を乗り越えること」を苦に感じないようになります。気分に左右されず「何かをやり続ける」ことが継続力を育てます。
著名なスポーツ選手、研究者、小説家、芸術家など、第一線で活躍する成功者の多くは「才能が開花するまで地道な努力を続けてきた」継続力が高い人たち。元々の才能、能力の高さもあるかもしれませんが、スランプの時も練習や勉強、研究に取り組み続ける”継続力”があったからこそ、才能が活きたのでしょう。
お子さまが勉強、習い事、遊びに関して、飽きっぽく長続きしないと感じている親御さんは多いかと思います。前述したスポーツ選手たちと比較して、「うちの子は元々、継続力がないタイプだからと仕方ない」と諦めてしまうこともあるでしょう。
しかし継続力は一部の能力の高い人が持つ才能や、生まれつきの性質ではありません。今現在、飽きっぽい人であっても、継続力を後天的に伸ばすことは可能です。
精神をすり減らして鍛える忍耐力ではなく、できる範囲でコツコツ続ける「継続力トレーニング」をご紹介します。
継続力とは?
「前からやっていることをやり続ける力」です。物事を気分に左右されず、継続して取り組む力とも言えます。
このやり続ける力の原動力となるのが目標や日々の達成感です。
例えば、
「1学期の漢字テストをすべて100点にするために、宿題以外にも漢字練習を毎日する。」
「小学校卒業までに算数検定5級をとるために、毎日30分過去問に取り組む。」
「次のサッカーの試合に出るために、毎日1時間走り込みと基礎練をする。」
「(バレエ)動きの表現力を上げるために毎日ストレッチを15分行う。」
など、目標を決めることが「目標のためにやるべきこと」に取り組むモチベーションとなります。
そして、やるべきこと(任務=mission)を、毎日やり遂げる(完成する=complete)ことで達成感と自己肯定感が得られ、続ける意欲が維持されるのです。
継続力というと、「嫌なことを我慢して頑張る」ストイックなイメージがありますが、実は意識せずに簡単に伸ばせる能力。
特に自己肯定感(自分自身を価値があると認める感情)や自己効力感(自分には能力がある、できると思える感情)を素直に感じやすい子は、継続力が身につきやすいです。
継続力をのばせば未来が拓ける!
子ども(特に小学校低学年まで)に、家庭学習やスポーツ、楽器の基礎練習を継続させることは、その分野での能力を伸ばすだけではなく、やりぬく力・自制心・計画性など、学力では測れない非認知能力を高めます。
非認知能力を高めることで、学校の勉強、行事や習い事などにも意欲的に取り組めるようになるので、成績が良くなり、友達や先生との関係も良好になります。その結果、自己肯定感と自己効力感が高められ、「より高い目標に向かって努力を続けたくなる」好循環が生まれます。
できるだけ早い時期から継続力を養うことが、その子の人生の選択肢を増やし、可能性を広げるでしょう。
やるべきことを習慣にしてしまおう
家庭学習、宿題、スポーツや楽器の基礎練習などを、継続してやり続けるコツは「やるべきこと」を習慣化してしまうことです。
習慣化とは、歯磨きや着替えのように意識せずできてしまう状態にすることです。歯磨きや着替えは気分に左右されず、自動的に身体が動いて行っていますよね。
これは、乳幼児期から繰り返し行うことで習慣化されているからです。
この「やるべきこと」、漢字・計算練習、サッカーのドリブル練習、野球の素振り、ピアノの課題曲の練習・・・などは、日によっては面倒に感じたり、一切やりたくないと感じたりするもの。
習慣化するには、感情に左右されず、何も考えずに、毎日決められた時間に取り組みます。
考える前に先に、動いてしまえば良いのです。
「16時になったらとりあえず、机に座って漢字ドリルを机に出す。」
「17時半になったらボールを持って公園に行く。」
など、取り組むしかない状態にしてしまえば、「何もやらない」わけにはいかなくなります。
そのためには、親子で相談して、やるべきことに取り組む時間を決めておきます。そして、問題集や参考書、サッカーボール、バット、楽譜等、必要なものを子どもがすぐに手に取れる状態にしておきましょう。
達成感が報酬になるまで続けよう
計算ドリルや音読、通信教育、塾の宿題、スポーツや楽器の基礎連、おてつだい等の「やるべきこと」は、歯磨きや着替えのように「毎日決まった時間、回数」取り組むのがおすすめ。
ルーチンワーク(繰り返し日常的に行う動作、業務)にしてしまうことで、意識せず(気分に左右されず)習慣としてできるようになります。
習慣化してくると、感情に惑わされずに、[やるべき事をやり遂げた]ことが自己肯定感や達成感となります。
この自己肯定感や達成感を感じている時、脳内伝達物質ドーパミンが分泌されています。
別名報酬系ホルモンとも呼ばれるドーパミン。繰り返し、自己肯定感や達成感を味わうことで、やらなくてはならない勉強や運動に取り組むこと自体が報酬となっていきます。
そうなるとしめたもの。
「やるべきこと」を成し遂げた時の達成感、自己肯定感が報酬となることで、「やるべきこと」をさぼってしまった時の後悔、自己否定感、無力感はより強くなります。ドーパミンの多く出る「やるべきことをやり遂げる」ことを脳が選ぶようになることで、意欲的に学習や運動などに取り組めます。
勉強を習慣にするコツ
家庭学習習慣、習い事の練習、塾の宿題・・・毎日勉強する習慣を身に付けるにはまずは報酬(ご褒美)を与えると効果的。
はじめのうちは勉強を頑張った対価を目に見える形で、示した方がモチベーションは上がりやすいでしょう。
幼児から小学校低学年であれば、文字練習ドリルや計算ドリルに取り組めたらシールを貼る、通信教育が終わったらママパパと自由遊び、取り組み終わるたびに親が褒める、などが報酬となります。
小学生以降であれば、親の褒め言葉+毎日頑張れている自信が報酬となります。そして日々の勉強によって、テストで100点が取れたり、成績が上がったりすることが、自己肯定感、自己効力感を高め、さらなる報酬となります。
努力を続けてきたことによる成功体験が増えることで、より一層継続力を伸ばしていきます。
東大法学部主席、ハーバード大ロースクール・オールAの”天才”の習慣
法学者、ニューヨーク州弁護士であり、報道番組コメンテーターとしても知られる山口真由氏。東京大学法学部を首席で卒業後、財務省官僚、弁護士として勤務、その後はハーバード大学ロースクールに進学し、オールAで卒業しています。
まさに天才としか言いようがない、華麗過ぎる学歴、職歴の原点は、子どもの頃のある習慣だったそうです。
”ミニマリスト”作家、佐々木 典士氏の著書『ぼくたちは習慣で、できている。』の中で、山口氏が勉強を習慣化するために行っていたことが紹介されています。
山口さんが子どもの頃から習慣にしていることはこうだ。起床すると窓のカーテンを開けて太陽の光を浴びる。次の瞬間、視線を机に移す。椅子に座って、何の本でもいいから読み、母親が「朝ご飯よ」と呼ぶまでの10分程度を机の前で過ごす。これで机に座るということに1日抵抗がなくなるという。学校から帰ってきておやつを食べると、また「机を見る」ことを起点に勉強をはじめる。
引用:佐々木 典士『ぼくたちは習慣で、できている。』株式会社ワニブックス,2018,P88-89
「机を見つめる」ことをきっかけに、読書や勉強を習慣化していくシンプルな方法は、子どもも大人もすぐに始められそうですね。
親の褒め言葉も報酬になる
特に幼児期から小学校低学年までは、親から認められることで承認欲求や自己肯定感が高まります。お金やモノによる報酬よりも、モチベーションを高めるかもしれません。
筑波大学、櫻井茂夫教授による論文『幼児期および児童期における学習意欲の形成』(2011年)では、知的好奇心を育み、学習意欲を伸ばすには親による家庭教育、学習のへの関り方が重要であるとして以下のように述べています。
幼児期には有能さへの欲求に対応する有能感、すなわち自分はよくできるという気持ちの基礎を形成することも大事である。具体的には子どもが成し遂げたこと(お絵かきや工作など)を十分褒めてあげることが大事である。幼児は大切な他者(おもに親)から認めてもらいたいという承認欲求が強いため、何かできると親のもとにやってきて、褒めてもらおうとする。そうしたときには、できたところまで、あるいはよくできたところを褒めてあげたい。
引用:筑波大学教授 櫻井茂夫『幼児期および児童期における学習意欲の形成』2011年,P63
小学校の低・中学年のうちに、毎日ほぼ決まった時間に宿題や復習をする「学習 習慣」を形成しておくことが望ましいといわれる。この時期は学校で教えられる内容もそれほど難しくないため、宿題の点検によって翌日の宿題の提出や答えあわせなどでよい結果が得られれば、子どもは有能感を感じ、家庭での学習習慣が定着しやすい。
引用:筑波大学教授 櫻井茂夫『幼児期および児童期における学習意欲の形成』2011年,P64
継続力を高めるコツは「ゆるめの目標設定」
継続力を育むには、ギリギリ限界まで頑張らないようにして、楽しいな、まだ続けたいな、などと余裕があるレベルの目標を達成し続けることが大切。
例えば、現在小学2年生で「小学6年生までに算数検定5級(中学1年生レベル)を取得する」という目標設定をしたとします。現時点で小学2年生レベルの学力であれば、10級ないし11級レベルから学習をスタートしても良いでしょう。
小学校低学年までであれば集中力持続時間は年齢+1分、高学年でも30分程度と言われています。家庭学習1回あたりの取組時間は長くても30分以内にしておきましょう。
『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』などの作品で知られる世界的なベストセラー作家、村上 春樹氏も毎日の執筆量を定めることで、「書くこと」を習慣化しているそうです。
前述した著書『ぼくたちは習慣で、できている。』で、村上氏の習慣化された執筆活動について触れられています。
4000字、原稿用紙に10枚書いたところで書くのをやめるという。雑誌のロング・インタビューではこう言っている。「8枚でもうこれ以上書けないなと思っても何とか10枚書く。もっと書きたいと思っても書かない。もっと書きたいという気持ちを明日のためにとっておく。」
佐々木 典士『ぼくたちは習慣で、できている。』株式会社ワニブックス,2018,P212-213
幼児〜小学生向け 継続力を高める教材4つ
苦手なこと、面倒なことから、一時的に逃げることは精神的救済にもなりえます。しかし、逃げを繰り返すことで後悔、自己否定感を感じるようになり、新たなストレスとなってしまいます。
幼児期から、「やるべきこと」を面倒と感じてもやり遂げる訓練をすることで、意識せずにルーチンワークとして勉強に取り組めるようになります。
この章では、毎日短時間の取り組みで、継続力を伸ばせる教材をご紹介いたします。
幼児向け『4~6歳 こうさく (学研の幼児ワーク) 』
タイトル:4~6歳こうさく
著者:学研の幼児ワーク編集部 (編集)
出版社:学研プラス
段階的に難易度が上がる工作に取り組むことで、巧緻性・創造性・空間認識力を育てます。「へんそう めがね」、「とびだす カード」、「パノラマ すいぞくかん」など身につけて遊んだり、飾って楽しめたりする工作を収録。
不規則な線に沿って切る、説明通りに折る、指定通りに組み立てる等の幼児にとって集中力が必要な作業が、年齢別で無理なく取り組めるように取り入れられています。
毎日、取り組むのが楽しみになる「学習習慣のきっかけ」にピッタリなワークです。
幼児向け『「読解力」がぐんぐん伸びる 名作おはなしれんしゅうちょう』
タイトル:「読解力」がぐんぐん伸びる 名作おはなしれんしゅうちょう
著者:横山洋子 (監修), 入澤宣幸 (著)
出版社:学研プラス
日本や世界の昔話、世界の名作、イソップ物語、グリム童話を読みながら読解力・学力の土台・教養が身につきます。幼児にも読書の楽しさを感じられる、起承転結のある簡潔な文章です。毎日の読み聞かせにもおすすめ。
クイズ感覚で取り組める、シールを使った問題やイラストつき選択肢問題が、文章の読み取りをサポート。作品ごとに文章の内容、教訓が読み取れているか確認できます。
「1分でわかるあらすじカード」つき。親子でトランプのように遊ぶことができます。
小学生向け『小1国語 文章読解 早ね早おき朝5分ドリル』(小1~小6まで各教科あり)
タイトル:小1国語 文章読解
著者:学研プラス (編集), 陰山英男 (監修)
出版社:学研プラス
朝学習やすきま時間にぴったりの5分間ドリル。毎日取り組むことで継続力・学習習慣・基礎学力が身につきます。短い文章ですが、子どもの興味を引く内容なので、集中して読み取ることができます。
解き終わるごとに達成シートにシールが貼れるので達成感を感じやすい!
問題裏面には生活チェックシート付で生活習慣を見直せます。
「早ね早おき朝5分ドリル」は全学年対応。学年をまたいだ先取り学習も可能です。
【算数】
小学1年生~6年生・・・計算
小学1年生~3年生・・・文章題
小学1年生~2年生・・・計算パズル
【国語】
小学1年生~6年生・・・漢字
小学1年生~6年生・・・文章読解
【中学年~おすすめ】
小学国語・・・ことわざ慣用句、むずかしい言葉、なぞとき文章読解
小学社会・・・都道府県と世界の国、歴史人物とできごと
小学英語・・・アルファベットと英語の発音、はじめての英単語
小学生向け『立体図形が得意になる点描写 【小学校全学年用 算数】』
著者:認知工学 (編集)
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
格子状の点と点を結んで、課題通りの図を描く”点描写”で図形感覚と考える力を伸ばすドリル。
図形を正確に写すワークを繰り返すことで、ワーキングメモリ(短期記憶)と立体図形の感覚を高めます。
集中力と巧緻性を鍛えることで、計算や書き写しのミスを減らす効果も期待できます。
習熟度に合わせて学習が進められる全学年対応。基礎から中学受験レベルまで段階的に無理なくレベルアップできます。
親子で取り組むと身につきやすい
親御さんが一緒に勉強、運動などに取り組むと、お子さまの意欲が高まります。まったく同じことができなくてもOK。寄り添い、サポートすることを継続するだけで、モチベーション維持につながります。
「通信教育教材や学校の宿題の採点を親が行い、できた点を褒める。」
「子どもが計算ドリルをしている横で、読書や仕事をする。」
「週末に一緒にジョギングをする。」
など、親御さんができる範囲で、習慣化させたい取り組みに関わりましょう。親子のコミュニケーションを増やすことで、情緒を安定させ、自信と意欲を伸ばします。