子どもの頃、習字を習っていた方も多いのではないでしょうか。昔ながらの習い事のイメージがありますが、習字は今も人気の習い事のひとつです。
スマートフォンやパソコンの普及により、手で文字を書く機会が減ってきている中、習字を習う子どもは増えてきているそうです。
習字にはどのようなメリットがあるのでしょうか?その効果やかかる費用、教室の選び方などを紹介します。
習字とは
習字とはそもそもどういう意味があるのでしょうか。デジタル大辞泉(小学館)では以下のように定義されています。
文字を正しく、美しく書く練習。もと、小・中学校における国語科の一分野。現在では書写といい、硬筆と毛筆とによって指導される。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
習字は文字の通り「字を習うこと」を指し、正しい書き順や美しい字の書き方を学ぶことができます。
書道との違いは?
正しい書き順や美しい字の書き方を学ぶ「習字」に対して、「書道」は字を通した自己表現、芸術表現です。 流派や会派が多くあり、書く文字、書体の特徴が違います。
習い事においては書道教室と習字教室がありますが、実際に書道と習字をしっかり区別している教室は少ないです。
特に、幼児向けの教室では「書道教室」と謳っていても、内容は「お手本をみて正しく整った字を書く」といったように習字を習うことが一般的です。
「習字」「書道」「書写」の詳しい違いや知育効果については以下の記事で解説しています。
習字で伸びる力とは?習字を習う5つのメリット
習字を習うとどんな力が伸びるのでしょうか。習字を習うメリットを5つ紹介します。
きれいな字を書けるようになる
習字を習う一番のメリットは、きれいな字を書けるようになること。
きれいな字を書く子は学力も伸びやすいという説もあります。フロリダ国際大学のローラ・ダインハート准教授は、文字がうまく書けることと学力が高いことには相関関係があると発表しています。「字がうまい子の提出物は、教師にとって読みやすいからいい点数をもらいやすい」、「まだ字がうまく書けない子は、文字をきちんと書くことに意識が集中してしまい、自分が書く内容に注意が向かない」というのがその理由です。
たしかに字のきれいな人は印象が良いですよね。きれいな字を書けることは、人生のさまざまな場面でメリットを感じられるスキルといえます。
正しい姿勢が身につく
きれいな字を書くためには、正しい姿勢で書くことが必要です。文字を書く間、よい姿勢を保つことで正しい姿勢が自然と身につきます。
正しい姿勢は目にとっても大切なことです。悪い姿勢により本やスクリーンとの距離が近くなることが、近視の原因でもあります。
集中力が身につく
お手本を見ながら一筆ずつ丁寧に書く習字には、集中力が求められます。
シンとした空間でひとつの作品を作り上げるまで、納得できる作品ができるまで、我慢強く書かなければなりません。
集中力は、学校の授業はもちろんのこと、大人になってからも役立つ力です。
脳が活性化する
文字を書くことは、脳のさまざまな箇所を同時に使う行為です。
習字でお手本を真似て美しい字を書こうとすれば、より一層指先を複雑に動かす必要があり、脳が刺激されます。お手本を真似て書く際には左脳を、上達して自分なりの表現を追求するようになると右脳をより鍛えられるそうです。
自信がつく
習字には、級や段といった位があります。昇級・昇段に向けて努力したことが実れば、子どものモチベーションや自信に繋がりますね。
小学校の書写の授業にも自信を持って取り組むことができそうです。
習字を習うデメリットは?
習字を習うデメリットはあるのでしょうか。メリットほど大きなものはないものの、考えられるデメリットを2つ紹介します。
大人になってからでも学べる
習字は大人の習い事としても人気です。誰もが学校で体験する機会があり、大人になってからでも比較的手軽にはじめることができます。
しかし、筆の持ち方を大人になってから直すのは大変ですし、やはり子どもの吸収力にはかないません。
習字で伸ばせる力は子どものうちに身につけ、長くさまざまな場面で生かしていきたいですね。
墨で汚れる
習字をする際に心配なのが、服などを墨で汚す可能性があること。習字をするときの服装には気を付けたほうがよいかもしれません。
たとえ汚れたとしても、ご飯粒や歯磨き粉を使うなど洗濯の技はいろいろとあり、墨汁専用の洗剤やクリーニングという手段もあります。また、洗濯で落ちやすい墨汁もありますし、幼児は水書きからはじめる教室もあります。
いずれにせよ、親が汚れを気にするあまり子どもの意欲を妨げないようにしたいですね。
習字は何歳からはじめる?
習字をはじめるのは何歳からがよいのでしょうか。学校で習う時期も押さえておきましょう。
目安はひらがなが読めるようになったら
習字をはじめるには、文字の読み書きがある程度できていたほうがスムーズです。
ひらがなが読めるようになる4、5歳が習字をはじめるひとつの目安。
教室によっては、3歳からはじめられるところもあるようなので、子どもの興味や性格によってベストなタイミングを決められるとよいですね。
毛筆の授業は小学3年生から
硬筆を使った書写の指導は、小学校6年間を通して行われます。墨を使った毛筆の授業がはじまるのは3年生からです。
ただし、小学校学習指導要領の改定により、2020年からは水を使って書く水書用筆(すいしょようひつ)等を使用した運筆指導が、小学1・2年生の書写の授業で取り入れられています。これにより、とめ・はね・はらいなどの文字を書く過程がより重要視されるようになりました。3年生からの毛筆使用への準備にもなっているようです。
習字教室の選び方とかかる費用は?
習字教室はどのように選べばいいのでしょうか。そこでかかる費用についても解説します。
昇級・昇段は教室によりけり
習字には茶道や華道のように会派・流派があります。子どもの習い事の段階ではそこまで気にしなくても大丈夫です。
会派・流派が関係するとすれば、昇級・昇段の基準が各会派などによって違ってくることでしょう。
10級~1級、その後初段から最高段位まであがるというシステムは共通していますが、そのレベルは異なっており、昇格基準も違うため、級位・段位はその団体の中でしか通用しない民間資格です。
全国共通のものとして、「毛筆書写検定」や「文部大臣認可 全国書道教師資格認定試験」といった公的資格もあります。これらは履歴書に書ける資格です。
オンライン教室という選択もあり
最近は、習字もオンライン教室が開催されています。ほかのオンライン習い事と同様に送り迎えが不要などのメリットがあるのはもちろん、オンラインだからこそ先生の手元が近くでじっくり見られるという利点もあるようです。
リアルでないと難しそうな添削についても、モニターに映して指導したり、画像を送って添削したり、各教室工夫を凝らしています。
教室選びにはオンラインも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
月謝
習字を習うのにかかる費用は、ほかの習い事に比べると手頃な傾向があります。
2019年の子どもの習い事に関する意識調査結果によると、主な習い事の月額費用は水泳¥6,471、ピアノ¥7,200、英会話¥8,761、習字は¥3,451です。およそ3,500円程度と考えると、他の習いごとに比べて金銭面でも始めやすいのではないでしょうか。(参考:くもん書写の場合、子ども月額3,300円)
チャレンジしやすく、長く続けやすい習い事といえますね。
月謝以外にかかる費用
月謝以外にもかかる費用もチェックしておきましょう。
教室や団体によりその金額はいろいろですが、入会金、手本の教材費、級位・段位取得のための検定出品料などがかかります。
また、習字に使う道具をそろえる必要もありますね。筆や墨、すずりなど一式がバッグに入っているセットが定番です。最近はバックのデザインもバラエティに富んでいます。
セットでも2千円台位から買えるので、道具が必要な習い事の初期費用としては安いほうではないでしょうか。
入会前の体験では道具を貸してくれるところが多く、教室によっては入会で道具をプレゼントしてくれるところもあるようです。
習字は多くのメリットがある習い事
「字がもっときれいだったら良いのに」と思ったことは私自身これまでに何度もあります。
子どもには幼いうちから正しくきれいな字を書く力を身につけ、「字がきれいで良かった」と感じてほしいものです。
きれいな字を書けるようになること以外にも多くのメリットがある習字。ぜひ子どもの習い事の選択肢のひとつに入れてみてください。
<参考サイト>
・いこーよ「習い事に関するアンケート」(調査期間:2020年2月3日~2020年3月2日)
・ゼブラ 書字で脳を活性化
・書道入門
・アート&クラフトカンパニー 小学校1・2学年における「水書」を用いた書写指導について
・【国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)