日本では小学校に入学すると宿題が大変!というイメージがありますが、イギリスはどうなのでしょうか?宿題の量や内容にはどのような違いがあるのでしょうか。実際に学校から出た宿題を例に、知識や情報の詰め込みではなく、思考力重視のイギリス宿題事情をレポートします。
気になる【宿題】が今回のテーマ!
イギリスでは、学年の呼び方を「Year+学年」の数字で呼びます。
ちなみに入学1年目はレセプションという学年で、Year Rと呼ぶのもイギリスならでは。在学2年目がYear 1、在学3年目がYear 2となります。
英国に入学式・卒業式はない!いきなりはじまる小学校生活【イギリス学校便り】
どんな宿題が出る??
それでは、実際にどんな宿題があるのか、どんなふうに出るのか?について、学年別にみてみましょう。
まずは、入学1年目の Year R の宿題から……
まだまだ、鉛筆で字や絵を書くのも修行中という子どもが多い4~5歳が在籍するYear Rでは、「宿題」ではありません。子どものペースに合わせて取り組めるプリントや、毎週1冊の音読の本を持ち帰ってきますが、必ずこの期間に読まなければいけないということではなく、あくまでも自主性に任されています。
学校ではフォニックスの授業や音読の練習があるので、その復習と習得になるようにと、画用紙に印刷されたフォニックスや英単語のカードも毎週配られます。ですが、こちらも義務ではありません。
机に向かって勉強や宿題をこなすというよりも、楽しみながらクイズ形式でカードを使ったり、寝る前の本の読み聞かせの時間に合わせて、子どもの音読の本を1冊混ぜたりするなどして、工夫している家庭が多いようです。
宿題が出る教科は、主に国語と算数です。1つ前の学年 Year 1のときは、アートの宿題が頻繁に出ていましたが、Year 2に進級して国語と算数の割合がぐんと増えました。
とはいえ、単語の書き取り(日本でいうところの漢字書き取りのようなもの)や、算数の計算問題のようなものはほとんどなく、多くの宿題が「自分で考えて答えを導き出す」内容が多いことに気づかされます。
また、6~7歳でもすでに掛け算が出てきたり、大きな桁の数字を使った問題が出たりと、筆者が子どもの頃に経験した日本の宿題と比べると、算数の進め方や考え方にも大きな違いがあり驚くことも多いです。
他の学年の宿題事情は?
「自分で考えて答えを導き出す」内容の宿題が出るのは、学年が上がってからも同じ。
たとえば、英単語を学ぶにしても、出された英単語をただ単に練習してくるのではなく、タスクの内容に沿って自分で英単語を調べて考え、それから練習するものが宿題になります。
算数にしても、たとえば「掛け算」の宿題ならば、掛け算の式があり、答えを計算するというスタイルよりも、あるルールに沿った掛け算の式を自分で考えて穴埋めする問題などが出ます。
他にも「1分間スピーチ」をするために、内容を考えて練習する宿題も。スピーチやプレゼンする力を幼いころから身につけておく訓練になりますね。
このように、テーマに沿った宿題がいろいろな形で出るという学校も多くありました。
共通のテーマで、各教科の内容を学習するスタイルは、宿題だけではなく、多くの学校で授業の形式として取り入れられているのが、イギリスの学校教育の特徴といえそうです。
それでも宿題の量に不満がある娘……
宿題は週に1度、国語と算数それぞれの締め切りまでに終わらせて担任の先生へ提出しなければなりません。
宿題とは別に、毎週単語テストもありますが、そのために学校の授業内でみっちりと練習している様子。なので、テストのための単語書き取りの宿題などはありません。それぞれ自分たちで週末に少し復習をするなどして小テストに挑むスタイルです。
長女は「いつも宿題が出るから嫌だな~」と不満のようですが、宿題の提出期限が一週間もあるので、コツコツ取り組めば、時間に余裕があると感じています。
他の学校や他の学年に通う親子にも話を聞かせていただいたところ、学年が上がっても、ほぼこの週一スタイルは変わらないとのこと。ですが、セカンダリースクール(中学高校の学年が通う学校)に進学すると、急に宿題の量が増えて大変になったという情報もありました!
小学生が、宿題に振り回されていないのがイイ!
長期の休み(春・夏・冬休みなど)には、宿題がほぼ出ないことも、イギリスの特徴といえます。休みは思いっきり楽しむ!学期中は学業を頑張る!というメリハリを感じます。
年間通して宿題の量が多すぎないので、子どもたちが宿題に振り回されておらず、習い事や他の活動にそれぞれ時間を使えるのも良いところです。もっと学習したければ、家庭学習に力を入れればよいという考え方がベースにあるようです。
イギリスの学校のすべてが、同じ宿題スタイルではありません。ですが、宿題を通して子どもたちにどんな力をつけさせるかという方向性はハッキリしているように感じるイギリスの教育は、自らの子どもを通わせる親の一人としてみても、とても理想的に感じています。
在英13年目の2時の母、ライター兼イラストレーター。武蔵野美大卒。現在は英国で日本語教育・日本語子ども会活動にも従事。海外生活・育児経験を活かした記事を執筆中。