日本で生まれ育った筆者がイギリスへ移住して子育てをするなか、日本との違いに驚くことが多いのが主に「学校」のことです。連載【イギリス学校便り】では毎月、現地の学校のびっくりエピソードをお届けしています。今回は、小学校の入学・進学・卒業事情について紹介します。
学校のためなら引越しまで!?
イギリスの小学校は、公立であっても申し込みをしなければ通うことができません。
入学予定の前年に、候補の学校を見学して(見学可能日が設けられています)、第1希望から第3希望まで候補を絞っておきます。そして入学年度の1月の指定日までに、オンラインで希望校に申請。入学年度の4月に、どこの学校へ通えるのかが発表になります。ですから、強い希望がある場合、4月までずっとドキドキ……なんてことも。
学校選びは、各家庭の教育方針や希望する内容によってそれぞれ違いますが、校風や学校方針などはもちろんのこと、Ofsted(オフステッド)と呼ばれる学校の質を監査する公的機関のレポートも重視されます。閲覧したいレポートは、オンラインで誰でも読めます。
公立の希望校へ入るための試験は、ありません。ではどうやって決まるのかというと、いくつかの条件で優先順位がつけられています。たとえば、その学校の校区(キャッチメントエリア)に住んでいること、その学校にすでに兄弟姉妹が通っていることなどに当てはまると、通える確率が上がります。
校区の学校以外を候補に入れることも可能ですから、人気校には校区外からも応募が集まります。しかし、校区外に住んでいると優先順位が低くなるので、なんとイギリスでは、学校のためにわざわざ家を引っ越すということも珍しくありません!日本でも都心では「公立小移民」なんて言葉があるほどですが、とても一般的とはいえないですよね。
入学式はありませーん!アッサリはじまる登校初日
学校の初日、入学式はありません。「間違いなく今日から学校だよね……?」と一抹の不安を抱きながら、緊張の面持ちで登校。各自の教室へ子どもを送り届けます。そして、「楽しんできてね~!」と声をかけて、保護者は家に帰ります。なんともアッサリじゃありませんか!?
なんだか、忘れ物をしたような、このまま帰って良いんだろうか?というソワソワした気持ちのまま家路についたことも、今となっては良い思い出です……。
学校へ着いてから、子どもが自分の教室に入る前に各自で記念撮影をする、お迎えの時間に幼稚園から一緒だった仲良しのお友だちと一緒に写真を撮るなど、登校初日の特別感を残せるようにしておくと良いですね。
ちなみに、「日本では、桜の時期に入学式というセレモニーがあって……」という話を、知り合いのイギリスママたちにしたところ、とてもびっくりした様子。「記念になって、いいわね~。チェリー・ブロッサム(桜の花)大好き!」と、日本の文化を褒めてもらえました。
入学・卒業の年齢や時期も、こんなに違います。
イギリスの小学校は、9月入学です。4歳になった年度の9月からはじまるので、わが家の次女のように8月生まれは、4歳になったかと思ったらもう小学校!日本でいう早生まれともいえますね。
学年の呼び方は「Year +数字」で、例えば3年生はYear 3となります。さて、イギリスの小学校の最初の1年目ですが、なんとYear 1(1年生)ではなく、Year Rという呼びます(このRはReceprion/レセプションの略)。
なお、この最初の1年目は、学校に通うこと、集団生活に慣れることを目的としています。教室にはおもちゃやお絵かきの道具などがいっぱい!娘の学校では、この学年用にペットもいます。英語の基本となるフォニックスなどを歌で覚えたり、工作をたくさん作ったりと、毎日がとても楽しいようです。
そして、小学校2年目はYear 1、おもちゃがあった教室に別れを告げ、本格的に勉強の学年のはじまりです。小学校はYear 6で卒業となり、この時点で子どもたちは10~11歳です。そして、次の学校セカンダリースクール(日本の中学・高校のようなもの)に進学します。
卒業は、7月と夏真っ盛り。卒業したら夏休みでたっぷりリラックスして、9月から全く新しい新生活のはじまり……というのは、日本の学校と比べたら不思議な感覚ですね。
卒業式なし!でもその代わりに……
小学校には入学式もありませんし、同じく卒業式もありません。それじゃあ、これまたアッサリ卒業!?と思いきや、卒業の時期にはイベントをします。
筆者の子どもの学校では、卒業するYear 6の生徒が座る椅子を囲んで、全校生徒、Year 6の保護者が学校へ集まり、各科目や分野で頑張った子どもたちの表彰がありました。表彰科目・分野の内容は、科学、数学、国語(英語)、スポーツ、音楽などです。
他にも、学校の庭の手入れを手伝ったボランティアクラブの子ども、図書室での活動をサポートした子どもなど、在校中(特にYear 6のとき)に頑張ったことをみんなの前で評価してもらえるチャンスとなり、自信と達成感につながるようです。
何年も毎日通う学校だから
入学前から卒業までの流れが、日本と大きく違うイギリスの小学校バナシに、驚くことも多かったのではないでしょうか。とはいえ、毎日親元を離れて集団の中で一生懸命頑張っている子どもたちの姿は、日本の小学生の姿と重なります。
7年間という長い間、毎日通う小学校。選ぶときから卒業まで、親子力を合わせてベストな時間を過ごそうとする思いも共通点があるように感じました。
取材・文・イラスト:いしこがわ理恵
在英13年目の2時の母、ライター兼イラストレーター。武蔵野美大卒。現在は英国で日本語教育・日本語子ども会活動にも従事。海外生活・育児経験を活かした記事を執筆中。
※いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの過去記事はこちら↓↓↓