2019年07月03日 公開

【おうち探究学習】学ぶ意欲を育てる!日常の中で「なぜ?」をさがそう

お店や駅、家の中など、日常のあらゆるところにある「なぜ?」をさがすことで、子どもの学ぶ意欲が育つのだとか。話題の本『AI時代に輝く子ども』の作者で、日本初のSTEM教育スクール「ステモン」を主宰する中村一彰さんによる連載「おうちでできる探究学習」の2回目です。

お店や駅、家の中など、日常のあらゆるところにある「なぜ?」をさがすことで、子どもの学ぶ意欲が育つのだとか。話題の本『AI時代に輝く子ども』の作者で、日本初のSTEM教育スクール「ステモン」を主宰する中村一彰さんによる連載「おうちでできる探究学習」の2回目です。

連載「おうちでできる探究学習」【2回目】

日本ではじめてのSTEM教育スクール「ステモン」主宰の中村一彰です。

この連載1回目では、公園の遊具を通して物理や数学の原理を体験するための言葉がけについてご紹介しました。

遊びながら「何でだろうね?」と声をかけることで、体験していることをよく観察し、その原理について考えるようになります。

これが習慣づけられると、思考力がどんどん鍛えられるのです。

公園の遊具以外にも、いたるところにこういった物理や数学の原理が活かされたものがたくさんあります。
2回目では、日常の中にある「なぜ?」「何でだろうね?」をさがすことについてお話しします。
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日常の中にある「なぜ?」をさがすことが、どうして大切なのでしょうか。

「なぜ自動ドアは勝手に開くの?」
「どうして車は動くの?」
「なんでボールは坂の上には転がらないで下に転がるの?」

など、日常の中で「なぜ?」と疑問に思うとき、人は物事をよく観察します。
それは、さまざまな原理に気づいたり知識を吸収するきっかけになります。

また、日常の中で見つけた「なぜ?」は、原理や知識を生かしたアイデアと結びついています。
学んだ知識や原理が実際に活かされていると知ることで、「学ぶって意味があることなんだ」と子ども自身が感じることができます。

誰かの知識や原理を生かしたアイデアが生活の中で活かされて、自分たちの生活が便利になっている。それに気づくことが、子どもの学ぶ意欲に繋がるのです。

日常の中にある「なぜ?」をさがしてみよう

私は2人の娘たちと、日常の中にある「なぜ?」と結びついた便利なアイデアを「ステモン」と呼んでいます。

お子さまの学ぶ意欲を育てていくために、身近にあるステモンをさがしてみましょう。

次のようなものが、身近にある「ステモン」です。

コンビニのドリンク売り場

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Bohbeh / Shutterstock.com
コンビニのドリンク売り場でドリンクを1本取り出すと、後ろのドリンクが前に出てきます。これは「斜面」の原理を活かした「ステモン」です。
「後ろのドリンクが勝手に前に出てきたね!」「なぜだろうね?」「ドリンクが前に出てきたから次の人も取り出しやすいね!」などと会話してみるといいでしょう。

せんぬき

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ペットボトルやアルミ缶の普及で、せんぬきを使う機会は減っていますが、せんぬきには「てこの原理」が活かされています。あえて瓶のドリンクを選んで買ってみましょう。
「これ、手で開けられる? できないねぇ」「でもこれ、せんぬきを使ったら、こんなに簡単に開けられた!」「何でだろう?」と話してみるといいですね。

階段とスロープ

via photo by author (140079)

via via photo by author
駅などには、「階段」と「スロープ」が併設されているところがあるかと思います。
同じ高さまで登るのに、階段は距離が短く、スロープは長い距離になっているでしょう。ベビーカーや車いすでは階段は登れませんが、スロープなら登ることができます。これも前回の記事でご紹介した「斜面」の特性を生かしたステモンです。

ステモンさがしのヒント1「4つのシンプルマシン」

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それでは実際にどのようにステモンをさがせばいいのでしょうか。
さがす際に、2つのヒンがあります。

1つめは、「てこ」「滑車」「斜面」「車輪と車軸」という「4つのシンプルマシン」を活用したものをさがすこと。

てこ:小さな力で重たいものを動かすことができる
滑車:力の向きと反対にものを動かすことができる
斜面:重いものを楽に上に運ぶ、重力を活かして楽にものをおろす
車輪と車軸:摩擦を減らして重いものを楽に運ぶ

この4つのシンプルマシンの原理が活用されているものがあるか、さがしてみましょう。
そこに、大変なことや難しいことを、楽に、便利にできるためのアイデアが詰まっています。

ヒント2「場所×便利・安全・楽しい」という観点で

ヒント2は、「場所×便利・安全・楽しい」という3つの観点を掛け合わせてさがすこと。

場所は、「お店」「道路」「駅」「家の中」などが身近ですね
それぞれの場所において、「便利になるために」「安全になるために」「楽しくなるために」という工夫がされていることをさがしてみるといいでしょう。

例えば、「駅」を見回してみます。

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すると、駅のホームに傾斜がついていることに気がつきます。
これは、水をはけるための傾斜です。

水平だと雨水がたまって危険なので、雨が降るたびにわざわざ水をかき出さなければなりません。傾斜をつけることで、水をかき出す手間をはぶいているのです。

つまり「ホームの傾斜」「駅×安全」「駅×便利」の組み合わせになります。
そして、「斜面」の原理を活かしたステモンですね。

このように、「便利になるために」「安全になるために」「楽しくなるために」工夫されていることをさがしみてましょう。
なぜこの3つの観点からさがすのかというと、世の中の技術はこの3つをかなえるために使われているからです。
お店、家の中、街の中などいろんな場所で、3つの観点からいろんなものをみてみましょう。
ぜひ、パパママも、お子さまと一緒にステモンさがしをしてみてくださいね。

遊びの延長線上にあるステモンさがし

私自身も2人の子どもを子育て中で、子どもたちと一緒にステモンさがしをしています。
ただ、毎日やると親が大変なので、私は休日など余裕のある日に、「ステモンさがしフェス」の日とイベントのように設けて、特別感を出しています。

フェス日は「ステモンを1個発見したら10円のお小遣いをあげる」といった具合です。子どもたちもびの延長線上として楽しんでいます。

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ステモンさがしをやっていると、子ども自身「これはなぜだろう?」と考える癖が習慣づいてきます。
そうなると、あらゆるものに対して「これって何で?」「どうしてなの?」という質問を頻繁に受けることになるでしょう。
パパ・ママは、「答えてあげなくちゃ!」というプレッシャーから、「なぜ?」の質問が負担に思えてしまうかもしれません。

しかし、「なぜ?」という質問に対して、必ずしも正しい答えや解説をしてあげなければならないわけではありません。
「どうしてだろうねぇ」「何でだと思う?」と逆に質問してみてもいいですし、「今度図鑑で調べてみようっか」と返してもいいでしょう。
「ママもわからないから、わかったら教えてね!」とお願いするのもいいかもしれません。

子どもたちにとって大切なのは答えを知ることではなく、「疑問を持つ」体験をしておくこと
子ども自身が体験し、疑問を抱き、予想をする力をステモンさがしから身に着けることで、子どもの成長に驚かされることがあるでしょう。

【Vol.01のクイズの答え】

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ターザンロープは、「滑車」の原理原則が使われています。
滑車は、重いものを少ない力で持ち上げるときに役に立つシンプルマシンです。
正解しましたか?

次回は、AI時代に活躍できるのは一体どんな人なのか、具体的なタイプを挙げながら検証していきます。次回の更新を、どうぞお楽しみに。

中村一彰先生プロフィール

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-STEM教育スクール「STEMON(ステモン)」代表
-小学校教員免許
-LEGO® SERIOUS PLAY® facilitator
埼玉大学教育学部卒業後、民間企業に就職。大手企業を経てITベンチャー企業に転職。創業期から東証一部上場までの成長期にて新規事業開発や人事責任者を担当した際に、「学び続ける力」や「IT教育の重要性」を感じ、教育事業を行う株式会社ヴィリングを創業し日本初のキッズ向けSTEM教育スクール「ステモン」を主宰。2017年度は小金井市立前原小学校にて5年生の理科講師としても勤務。2児の父親。
著書:「AI時代に輝く子ども」(CCCメディア出版)

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欧米で重視されている「STEM教育」、すなわち 「Science(科学)」「Technology(先端技術)」 「Engineering(工学技術)」「Mathematics(数学)」の 頭文字に、これらをONするという意味で「ステモン」と 名付けた教育を展開している著者による、「AI時代に 輝ける子ども」を育てるための教育論&教育実践。2020年より小学校でのプログラミング教育が必修化されるなか、公立小学校でのプログラミング授業実施実績では日本一という「ステモン」の考え方と、プログラミングやロボット工作を手段として「トライ&エラー」を繰り返す中で学びを深めていく方法論を紹介。
中村一彰さんが主宰するSTEM教育スクール「ステモン」はこちら
プログラミングも学べるSTEM教育スクールSTEMON
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(取材・文/池本エイミー 構成・編集/洪愛舜)

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