2019年6月26日 公開

【おうち探究学習】公園遊びで思考力を鍛える!声かけポイントは

わが子をAI(人工知能)の時代にも活躍できる人に育てるために、親としてどう関わっていけばいいのでしょうか。話題の書籍『AI時代に輝く子ども』の著者で、日本ではじめてのSTEM教育スクール「ステモン」を主宰する中村一彰さんによる連載「おうちでできる探究学習」の1回目です。

思考力を鍛える!おうちでできる探究学習【全4回連載】

はじめまして、日本ではじめてのSTEM教育スクール「ステモン」を主宰する中村一彰です。

これから訪れるAI時代にわが子をどのような人間に育てたらいいのか、悩む方は多いのではないでしょうか。

AI時代に活躍できる人をひと言で表現すると「広くて深い思考ができる人」です。そのため大切なのが、ただ学ぶだけでなく「探究」すること。

この連載では、幼少期からおうちでできる「探究学習」のコツや、教育現場における最先端の情報を、4回にわたって紹介していきます。

公園の遊具には、思考力を鍛えるヒントがいっぱい!

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公園には、ブランコやシーソー、すべり台など、いろんな遊具があります。いつも何気なく遊んでいるこれらの遊具には、さまざまな物理や数学の原理原則が隠されています。

ただ遊ぶだけではなく、遊びの中でその原理原則の法則性に触れることで、「なぜだろう?」と考える力が養われていきます。

今回は公園の遊具で遊びながら、考える力=思考力を鍛える言葉がけを紹介していきます。

すべり台は「斜面の特徴」と「摩擦」がわかる

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急なすべり台と、なだらかなすべり台。
その角度によって、すべる際のスピードが異なります。角度が急だと勢いよくすべり、すぐに到着する。なだらかだとスピードはゆっくりだけど長くすべれる。
まずはこの違いを体験してみましょう。

遊びながら体験したら、そこに法則があるということに気づけるよう、「このすべり台とあのすべり台、どっちが下りてくるのが早かった?」「何でだろうねえ」などと、声をかけます。

階段も広い意味では斜面と言えるので、スロープと階段を比べてみるのもいいですね。
どちらが登りやすいか、どちらが降りやすいか、荷物を上に運ぶにはどちらが楽か。言葉がけをしながら、親子で考えてみましょう。

これらは「斜面」に関する物理の原理原則です。

古代にピラミッドをつくる際も、高いところに重たいものを小さな力で運ぶためにこの原理が使われました。
現代でも、例えば登山ルートはこの「距離が長いが、なだらかな斜面だと小さな力で進んでいける」という原則を活用して作られています。

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また、すべり台では「摩擦」も体験することができます。
着ている服やすべり台の素材によって、すべる際のスピードや体感が異なります。

同じすべり台でも、つるつるした素材の長ズボンをはいてすべる場合はするすると早くすべれるのに対して、短い半ズボンをはいてすべると素肌の部分が擦れてあまりすべらないでしょう。

これが摩擦力による違いです。

最近はローラータイプのすべり台もありますね。 これは摩擦力がほとんどかからないので、よりすべりやすくなっています。

それぞれについて「何でだろうね?」と問いかけてみることで、子どもは斜面と摩擦の特徴を体験しながら自分で考える力を鍛えることができます。

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すべり台での言葉がけ

「このすべり台とあのすべり台、どっちがスピード早かった?」
「階段とすべるところ、どっちが登りやすい?」
「荷物をロープで引きながら上にあげるなら、どっちが楽ちんかな?」
「昨日のズボンと今日のズボン、どっちが早くすべれた?」
→それぞれについて、「何でだろうねえ」と問いかけ、一緒に考えてみましょう。この時点で、正しい答えを導く必要はありません。普段のちょっとした出来事に疑問を持つことが注意力や思考力を高めるきっかけになります。

シーソーは「てこの原理」がわかる

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てこは、小さな力で重たいものを動かすことができる便利な道具で、日常のあらゆるものに使われています。
てこの原理は、「支える点から遠く離れるほど、かかる力が強くなる」が基本です(下図参照)。


シーソーは、この「てこの原理」を公園で体験できる遊具です。
まずは、ママやパパが子どもと向かい合ってシーソーに座ります。真ん中から同じ距離の位置に座ると、体重が重い方が下になります。

それから少しずつ、お子さんは後ろに、ママ(パパ)は前に進みます。するとどこかの地点で釣り合うでしょう。それからさらに進むと、子どもの方が下に、パパママが上になります。

子どもの方が体重は軽いはずなのに、位置をずらすことで重い大人を持ち上げることができる。これこそが、てこの原理です。

きょうだいで試してみるのもいいですね。

シーソーでの言葉がけ

「◯◯とママ(パパ)だと、どっちが下になると思う?」
「ママ(パパ)の方が体重は重いから、今はママ(パパ)が下だったね。でも、〇〇の体重でもママ(ママ)を持ち上げることができるんだよ」
「ちょっとずつ後ろにさがってみて!」
「ほら、今一緒になった!」
「もうちょっと後ろに下がると、ほら、〇〇がママ(パパ)を持ち上げたよ!」

ジャングルジムは「点と線と立体」「三面図」がわかる

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線が集まると面になり、面が集まると立体になります。
ジャングルジムでこの「点」「線」「立体」を体験してみましょう。

ジャングルジムは、縦の線と横の線が組み合わさって立体になっています。
縦と横の線だけの平面だと登ったり中に入ることはできませんね。

しかし、高さ(または奥行き)も加わると登ったり入ったりすることができる立体になります。

一見当たり前に感じられることかもしれませんが、これも大切な数学的概念で、受験や公務員試験にも空間認識には必ずと言っていいほど出題されています。

このジャングルジムが「いくつの四角」でできているか数えてみるのも面白いですね!
立方体を「サイコロ」と言い換えて、「ここからここまでにはサイコロが何個あるかな?」と問いかけるのもいいでしょう。

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また、ジャングルジムで「三面図」について考えることもできます。
三面図とは、立体物を「前から」「横から」「真上から」という三方向からそれぞれ見たときの図面のことです。

いつも行く公園のジャングルジムは、前から見た形と横から見た形は同じでしょうか?
また、上から見るとどんな形をしているでしょうか?

てっぺんまで登ることができたら、「上から見たらどんな形!?」と聞いてみるのも形を観察、発見するいい声がけですね。

この三面図を考える習慣がつくと、空間認知能力が養われます
空間認知能力は、学習だけではなくスポーツや実生活でも大事な力なので、ぜひ養っておきたいですね。

ジャングルジムでの言葉がけ

「ジャングルジムって、棒がたくさんあるね」「1本の棒だと登れないけど、ジャングルジムは登れるね。何でだろう?」
「このジャングルジムの中に、サイコロが何個あるかな?」
「ジャングルジムを上からみたらどんな形をしている?」

ブランコは「ふりこの原理」と「慣性の法則」がわかる

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ぶらりぶらりと揺れるブランコでは、まずは「ふりこの原理」を体験してみましょう。

「支点」から「重り」までの長さが同じだと、重りの重さは関係なく揺れる周期が同じである――これが、ふりこの原理です。

ブランコに乗って「お兄ちゃんと〇〇が地面からパッと足を離したら、10秒間でどっちが多く揺れると思う?」「パパと〇〇ならどうなるだろう?」と問いかけてみましょう。

答えは同じ回数だけ揺れるのですが、子どもは何と答えるでしょうか?
クイズのようにこうした言葉がけをしてみるといいかもしれません。

また、「動いているものは、止まろうと思っても急に止まれず動き続ける」という「慣性の法則」も体験できます。

ブランコに揺られているときに、急に止まろうとすると体が前に進んでしまいますね。

これが、慣性の法則です。

「止まりたいのに動いちゃう! 何でかな!?」といった問いかけも、思考力を鍛える言葉がけの一つですね。

ブランコでの言葉がけ

「お兄ちゃんと〇〇が地面からパッと足を離したら、10秒間でどっちが多く振れると思う?」
「パパと〇〇ならどうなるだろう?」「お相撲さんと◯◯ならどうなるだろう?」
「3回揺らしたら止まるゲームね!」「止まりたいのに動いちゃう! 何でかな!?」

“本当の学ぶ力”を鍛えよう

理科の授業を思い出してみてください。

学校の授業では、「(1)学ぶテーマが用意されている→(2)体験をする」という順番の学び方になっています。

しかし、今回解説した公園での言葉がけは、遊びを通じてたくさんの体験をし、その実体験を通して物理の法則性にまず気づき、理解し、知識として深めていきます
学校の授業とは順番が逆になっているのです。

わからないことを始めて学ぶとき、まず体験をしてから法則性に気づく方が、より忘れにくく記憶にとどまり、自分のものになっていきます。

また、答えが決まっていない未知の領域の問題について自ら切り開いていく力を養う上で、体験して法則性に気づくことは、とても重要になります。それを日常での遊びでトレーニングすることができます。

公園は学びの宝庫なので、思考力を鍛える言葉掛けをパパママ自身も心掛けてみてくださいね。
決して、正しい答えを説明する必要はありません。

「なぜだろう?」をお子さまと一緒に楽しんでみてください。

いつも遊びにいく公園と別の公園に行ったときは、いつもの公園の遊具との違いを考えているのもいいですね。

最後に……クイズです

最近公園でよく見かけるターザンロープ。これも、ある物理の原理を活用した道具が使われています。一体何でしょうか? 

答えは7/3(水)に更新する、連載第二回でご紹介します。

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中村一彰先生プロフィール

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-STEM教育スクール「STEMON(ステモン)」代表
-小学校教員免許
-LEGO® SERIOUS PLAY® facilitator
埼玉大学教育学部卒業後、民間企業に就職。大手企業を経てITベンチャー企業に転職。創業期から東証一部上場までの成長期にて新規事業開発や人事責任者を担当した際に、「学び続ける力」や「IT教育の重要性」を感じ、教育事業を行う株式会社ヴィリングを創業し日本初のキッズ向けSTEM教育スクール「ステモン」を主宰。
2017年度は小金井市立前原小学校にて5年生の理科講師としても勤務。
2児の父親。
著書:「AI時代に輝く子ども」(CCCメディア出版)

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欧米で重視されている「STEM教育」、すなわち 「Science(科学)」「Technology(先端技術)」 「Engineering(工学技術)」「Mathematics(数学)」の 頭文字に、これらをONするという意味で「ステモン」と 名付けた教育を展開している著者による、「AI時代に 輝ける子ども」を育てるための教育論&教育実践。2020年より小学校でのプログラミング教育が必修化されるなか、公立小学校でのプログラミング授業実施実績では日本一という「ステモン」の考え方と、プログラミングやロボット工作を手段として「トライ&エラー」を繰り返す中で学びを深めていく方法論を紹介。
中村一彰さんが主宰するSTEM教育スクール「ステモン」はこちら
プログラミングも学べるSTEM教育スクールSTEMON

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(取材・文/池本エイミー 構成・編集/洪愛舜)
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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