2018年01月28日 公開

旅は最高の学びの場!家族4人でカナダ横断1,500km自転車の旅

2017年夏。カナダ東部のモントリオールの4人家族(両親と長女9歳、長男7歳)が8週間で1,500kmのカナダ横断自転車の旅をしました。この旅の発案者はママ・ジョアンさん。小学校の先生でもあるジョアンさんに、そもそものきっかけや旅で学んだことなどをインタビュー!そこには子育てのヒントが盛りだくさんでした。

2017年夏。カナダ東部のモントリオールの4人家族(両親と長女9歳、長男7歳)が8週間で1,500kmのカナダ横断自転車の旅をしました。この旅の発案者はママ・ジョアンさん。小学校の先生でもあるジョアンさんに、そもそものきっかけや旅で学んだことなどをインタビュー!そこには子育てのヒントが盛りだくさんでした。

【旅のきっかけ】すべては母の冗談からはじまった

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via photo by Joanne Bonnici

ーー自転車でカナダを横断することになったきっかけは?

2016年の夏、家族でよく自転車で出かけたんです。そのときに、基本的には運動があまり好きではない息子(当時6歳)がとても楽しんでくれ、出かけるたびに自転車での走行距離を伸ばしていきました。それで息子に、「今度は自転車でカナダを横断してみる?」と冗談で言ってみたんです。すると「休憩しながらならやってみたい!」という答えが返ってきて……!

わたしもまさかほんとに自転車横断することになんて思ってなかったんですけど、やってみたいと笑顔で即答した息子がかわいくて、これはやるしかないな、と。

ーー自転車でカナダを横断したいと話したときの周りの反応は?

まず、夫に話してみたのですが「何をおかしなことを言っているんだ。絶対に無理」という反応でした。父や母も「絶対にありえない」という感じでしたね。

ーーご主人をどのように説得したのですか?

昨年のクリスマスに、10年ほど前に自転車でカナダを横断した家族と会う機会がありました。その家族は、なんと子どもが9人。家族での自転車の旅は、本当に素晴らしい経験だったと話してくれました。9人の子どもたちとできたのだったら、2人の子どもとできないわけがない……と夫の考えが変わっていきました。

【旅の準備】夢が現実になってからが不安だった

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ーー実際に旅の計画が動き出したのはいつごろでしたか?

2017年の1月に、夫が上司から夏に8週間の休暇をとる許可をもらいました。カナダ西部のバンクーバーを出発地に決め、2月には、モントリオールからバンクーバーまでの片道の航空券を手配。

自転車でのカナダ横断を夢見ているときは、ただただ楽しかったです。けれども、そうやって準備をすすめていくうち、夢が現実になるのだと思うと、急に不安が押し寄せてきました。

【旅のエピソード】とにかく人々が優しく、あたたかい

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Serban Bogdan / Shutterstock.com

ーー旅の行程を教えてください。

まず、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバーからカンループまで自転車で旅をしました。そこから山火事を避けるために電車でアルバータ州のジャスパーへ移動。ジャスパーからキャンモアまでのカナディアン・ロッキーは自転車です。

そして、キャンモアからエドモントンまで電車で移動。そこからサスカチュワンまでが自転車です。その後、オンタリオ州のナイアガラまでは電車で移動しました。最後は、自転車でナイアガラからモントリオールまで。

自転車での移動距離は、合計1,500kmでした。子どもたちと一緒なので走行距離は1日平均50km、カナディアン・ロッキーでは1日平均30kmほどに調整。カナダの西から東まで全てを自転車で横断するには8週間は短すぎるので、電車移動も組み合わせての行程を計画しました。

※ちなみに、東京駅から鹿児島県の佐多岬まで(九州最南端)が約1,460kmです。

ーー旅の間、気をつけていたことはありますか?

とにかく、子どもたちの体力に合わせるようにしていました。長い距離を走ることがゴールではなく、家族で楽しむこと、カナダについて学ぶことが目的だったので。4日に1度ぐらいは、まったく自転車には乗らずに、観光を楽しむ日やホストファミリーと過ごす日を作りました。

ーーホストファミリーとは?

Warm Showersという自転車で旅をする人たちをサポートする国際的な団体があります。ホストは無料で宿泊させてくれて、食事も出してくれます。彼らは本当に優しくて、オープンでした。この旅で10ぐらいのホストファミリーにお世話になりました。子どもたちも「何の見返りもないのに、どうしてこんなに親切なの?」と驚いていました。

実は、モントリオールに戻ってきてからすぐに、私たちもバンクーバーでお世話になった人たちを迎え入れたんですよ。

ーー旅の間、印象に残っていることを教えてください。

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1日1日を生きているという実感が強くありました。天気や体調、人との出会いでその日の予定が決まっていきました。行く先々で出会った人たちが、おすすめのルートや観光地を教えてくれたので、当初の計画とは、かなり行程は変わりました。けれども、それがこの旅をさらに豊かにしてくれました。

そして、とにかく人が優しかったです。ホストファミリーはもちろんのこと、自転車に乗っていると、たくさんの人が手伝いはいらないかを尋ねてくれました。いつでも、助けてくれる人たちがいたので、私の心配は吹き飛びました。

ーー大変なことはありませんでしたか?

カナディアン・ロッキーの40kmの上り坂は大変でした。子どもたちに「自転車を押して歩いてもいいんだよ」と言ったのですが、子どもたちは「頑張る!」と。本当は、私のほうが自転車を押したかったのですが……。結局、休憩をしながら、最後まで自転車で登りました。そのあとの20kmの下り坂は爽快でした。息子が一番気に入った場所で、旅が終わってからも度々この話をしています。

それから、カナディアン・ロッキーを走り抜ける350kmほどの区間には、簡易キャンプ場が30kmに1カ所あるだけなんです。レストランなんて100kmに1カ所。ロッキーでは吹雪の日が1日あったので、仕方がなく1軒だけあったホテルに泊まりました。それ以外の10日間はキャンプ。2,3日ぐらいならいいんですけどね。シャワーはないし、朝食は毎日オートミールだけだし。さすがに子どもたちも「いつになったらホストファミリーの家に行けるの?」と嘆いていました。

【旅を終えて】子どもたちが心身ともに大きく成長

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ーー家族で大きなことを達成して変化はありましたか?

出発前は「夫婦や親子の喧嘩が増えて険悪になるのでは?」と心配していましたが、家族のきずながすごく深まりました。無理をせず、楽しく過ごすことを優先したのが良かったのだと思います。最初は反対していた夫が、最終日には「次はどこに行こうか?」と言っていたのは嬉しかったですね。

ーー子どもたちの成長は感じましたか?

たくさんの人たちと出会って、シャイだった子どもたちが積極的になりました。もちろん、体力もついて、大きなことをやり遂げたことが自信になっています。

また、カナダの地理や歴史に触れ、街では見ることのない熊やピューマなどの野生動物を目にしました。実際に体験することで、子どもたちは本では知ることができない多くのことを学べたと実感しています。娘は、たくさんの野生の動植物に出会えたことが、この旅で一番良かったことだと言っています。

そして、すごく興味深かったのは、おもちゃがない生活で、自分たちでいろいろな遊びを作り出していたことです。たとえば、木の枝と石でゴルフをするとか。

子どもたちに寄り添って「とにかくやってみよう!」

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ーー子育て中のパパやママにアドバイスをお願いします。

自分たちで制限してしまっていることが多いけれども「とにかくやってみる」ことが大切だと思います。子どものペースに合わせて、家族で楽しく過ごしてほしいです。ぜひ、子どもと外に出るようにしてください。

最後に

豊かで厳しい自然の中を自転車で走り抜けた経験は、子どもたちにとっても、ジョアンさんたち夫婦にとっても、かげがえのないものになったようです。ジョアンさんたちは、今度は他の国を自転車で旅したい、ともおっしゃっていました。旅の候補には日本も入っています。もし、大きな荷物を抱えて自転車で旅をする4人を見かけたら、ぜひ声をかけてくださいね!

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この記事のライター

LOA
LOA

カナダ在住の英日翻訳者・フリーライター。Web媒体で子育てや語学学習についての記事を多数執筆。8歳の息子が0歳のときからはじめた絵本の読み聞かせは、今では私たちの生活になくてはならないものになっています。これまでに息子と読んだ絵本や児童書は、日本語、英語、フランス語を合わせて数千冊。息子が笑顔になる絵本を見つけるのが喜びです。