「脳と体」の発育促進に欠かせない幼児期の外遊び。小学校入学前の外遊びは、未来の運動能力・学力の伸びを左右する重要なものであり、精神安定・自己肯定感アップ効果も期待できます。外遊びで得られる効果・能力を伸ばす遊び方・おすすめの外遊びおもちゃなどのご紹介です。
幼児期の外遊びで得られる5つの効果
就学前の6歳には、脳の成長が90%完成します。脳の神経細胞の増殖のピークは0歳~3歳。その後4歳~7歳で神経細胞が整理されて、情報伝達回路が作られていきます。つまり幼児期は脳の急成長期であり、この時期にどう過ごすかで今後の「脳力」の伸びを大きく左右するのです。
脳の発達を促進するには「五感への刺激」が効果的。外遊びには視覚・聴覚・触角・嗅覚を刺激する機会がたくさんあります。思いっきり体を動かす外遊びこそ、育脳には欠かせません。
幼児期~12歳までは身体能力・運動能力の発達も著しい時期です。幼いころから外遊びで全身運動を行うことで筋力・持久力・反射神経などが育まれ、体の効率的な動かし方ができるようになります。
外遊びをすることで得られる具体的な効果は、大きく次の5つです。
体力・運動能力が向上する
神経機能の発達が著しい幼児期に外遊びを行うことは「体の動きを調節する力」を育てます。飛び跳ねる、ボールを投げる、起伏のある道を走る……。さまざまな運動を繰り返すことで筋肉の使い方を習得し、平衡感覚を鍛えます。外遊びで全身を使うことが走力・跳躍力・投力など運動能力全般を向上させるでしょう。
また適度な有酸素運動によって心肺機能が向上し、持久力もアップ。さまざまな環境に適応した動作を繰り返すことで、危険回避能力・空間認識力・推理力が高まります。体力・運動能力に優れた体は幼児期に外遊びによって作られるのです。
体調不良を防ぎ、疲れにくい体になる
頻繁に体調不良に陥りがちな幼児期こそ、積極的に外遊びを行い免疫機能・持久力を向上させましょう。自然のなかで有酸素運動を行うことで、筋肉が刺激され心肺機能が向上。疲れにくく、病気にかかりづらい丈夫な体を目指せます。
幼児期に外遊びの習慣のあった人は、大人になってからも活動的で健康的な生活を送る傾向があり、生活習慣病のリスクも低いことがわかりました。
健やかな心が育つ
外でかけ回ることは子どもの精神安定には欠かせません。自由に動くことでストレスを発散させ、自律神経を整えます。「ボールを上手に投げられた」「速く走ったらパパママに褒められた」などの成功体験を繰り返すことで、自己肯定感が育つでしょう。
結果、何事にも意欲的に取り組む「プラス思考」ができるようになります。プラス思考の人ほど、困難や逆境にもめげない高いストレス耐性を持っているものです。
友だちとの遊びを通じて協調性が育つ
脳が発達し、豊かな想像力が育つ
肌に心地良い風・まぶしい日の光・花や植物のさまざまな手触りと匂い・思いっきり遊んだあとのおいしい水……。外には脳の発達に有効な「五感への刺激」が溢れています。
「砂利道を滑らず走るためにはどう足を運べば良いか?」「どの高さで自分は恐怖を感じるのか?」「泥で作ったケーキの飾り付けは、どの花を選べばおいしそうに見えるか?」と、外遊びをするなかで子どもは、さまざまな興味・疑問を持ち「自分で体験しながら」答えを見つけていくのです。
外には家の中と比べるとおもちゃ・道具がありません。道具やおもちゃを何かで代用したり、あるつもりで遊ぶことで想像力が豊かになるでしょう。また、かくれんぼ・缶蹴りなど勝敗のある遊びは「考える力」とされる論理的思考力を培います。
幼児期の外遊びが多い子どもは、その後も運動が得意に
0歳~6歳に十分な外遊びを行うことは、その子の運動能力・運動習慣に好影響を与えます。脳の神経回路が爆発的に増える幼児期に「さまざまな動きを伴う外遊び」を行うことで、効率の良い体の使い方がわかるようになるためです。小学校以降の体育・遊びでも、大きなケガなく力を発揮できるでしょう。
・ドッジボール
しっかりボールを受けたあと、瞬時に敵の場所を察知し相手が取りづらい位置にボールを投げる。
・縄跳び二重飛び
手首を柔かく使って素早く縄跳びを回しつつ、軽い跳躍で縄を飛び越える(筋力を無駄に使わず長く飛べる)。
このように状況判断をしながら、最適な動きができるようになります。
小学生になってから運動習慣が続くというデータも
小学校入学前までの外遊びの頻度によって「小学生以降の運動習慣」と「体力・運動能力」に大きな差が生まれることが明らかになっています。スポーツ庁が平成29年に発表した「平成28年度体力・運動能力調査の結果」によると、小学校入学前の外遊びの頻度が高いほど子どもほど、入学後も引き続き運動・スポーツを行っていました。
また週6日以上の外遊びをしていた子と週1日以下の子では、体力・運動能力ともに「男子で約5点、女子で約8点」の点差が開いています。小学生の テスト項目は以下の8つです。
・握力
・上体起こし
・長座体前屈
・20mシャトルラン(往復持久走)
・立ち幅とび
・ソフトボール投げ
平成29年10月8日にスポーツ庁が発表した「平成28年度体力・運動能力調査について調査報告書」。幼児期の外遊びが小学校での運動習慣継続・体力向上につながることを調査・グラフ化したものです。
外遊びをする子どもは年々減少している
「良い大学を出て、良い会社に入ること=高学歴・高収入」を、子育ての成功例のひとつと考えるパパママも多いかもしれません。世の幼児教育・英才教育の大半は「脳を発達させる」ことが目的であり、親御さんも小学校以降の学力の伸び、成績の良さを期待して習わせているのでなないでしょうか。
我が子の学力が高くあって欲しいと願うことは親であれば当然です。確かに習い事・お勉強は脳の発達に有効ですが、「考える力=地頭の良さ」を育むには外遊びが一番とも考えられます。
外で自由にかけ回り、泥だらけになって遊ぶよりも、月謝を払って先生から何かを習ったり、決められた動きを行うほうが「お勉強」感はあるでしょう。お金・時間をかけて教育している安心感もあるので、外遊びは習い事に比べて軽視されがちです。
学習教室・リトミック・ピアノ・水泳・英会話などは0歳から学べるものも多く、赤ちゃんのころから複数の習い事をしている子も少なくありません。「習い事・お勉強>外遊び」の考えの親御さんが増えているのも現実です。その結果、習い事の「わずかな隙間時間」に外遊びを行う子が多くなっています。
意識・環境の変化によって子どもたちの外遊び時間は減少し、体力も低下傾向にあります。
外遊びは毎日おこなうべき?
子どもの脳と心身の健全な発育に必須である外遊び。いったいどのくらいの頻度・時間で行うのが良いのでしょうか。
文部科学省は、6歳までの未就学児なら「毎日60分以上」の外遊びが望ましいとしました。ただし環境・天候の状況も考えて「屋内外含めて60分以上」の体を動かす時間を推奨しています。
室内も含め、体を動かす1日の合計時間は60分以上
幼稚園・保育園等のない日も「毎日60分以上」、楽しく体を動かす時間を作りましょう。荒天・諸事情で外遊びが難しい日は、屋内で全身を使った遊びを行います。60分以上の時間を確保すれば、走る・跳ぶ・投げるなどさまざま動きを自発的に十分に行えるでしょう。
地面の起伏・空間の広さ・他者との位置関係などを認知しながら運動することで、脳・神経系統・筋肉の連携が滑らかになっていきます。無理にたくさん走ったり、難しいゲームを行う必要はありません。その子の発達に合わせた、楽しめる遊びを行えばOKです。
歩き始めたばかりのお子さまでしたら、パパママとのんびりお散歩・芝生の上にシートを敷き転がって遊ぶなど、できることから始めてみてください。
夏の猛暑は午前9時まで、もしくは午後3時以降
幼児の体温調節機能は未熟なため、気温に合わせて体温も変化してしまいます。特に自律神経が整い始める2歳くらいまでは、高温・低温の環境下で過ごす際に注意が必要です。近年7~9月に35度以上の猛暑日が続くことも珍しくなくなりました。朝から30度を超える日もあるので、夏の外遊びは時間帯に気をつけて行いましょう。
【午前中】
朝食後から遊び始めて、午前9時頃には遊びを切り上げましょう。午前9時以降からグングン気温が上がります。
【午後】
気温が下がり始める午後3時以降から遊びます。ただし午後3時を過ぎても気温が下がり始めないような日は、午後4時以降から外出するのが望ましいです。
これらの時間帯に遊ぶ場合も水分補給はこまめに行い、子どもの様子を観察するようにしましょう。あまりにも気温が高い日は、子どもが遊びたがっても短時間で遊びを切り上げてください。
冬は防寒対策をしっかり!でも着せすぎるのもNG
気温が10度以下の寒い日。大人は寒くて動きたくないけれど、子どもは外遊びをしたがりますよね。寒い日の外遊びは皮膚を鍛え、免疫力を高めるとされています。また日照時間・紫外線量の少ない冬こそ、外遊びで日光に当り、骨の成長に必要なビタミンDを生成させましょう。
ただし先にも述べたとおり、幼児は体温調節機能が未発達です。気温が低いと体温も下がり体調を崩します。かと言って着せすぎるのはNG。体温が上がりすぎて、汗をかいてしまいます。動きづらくもなるので、着膨れするほど着込ませるのは避けてあげてください。
薄いインナーの重ね着、ダウン・中綿ジャンパーなどの保温性のある軽いアウターでしっかり防寒しましょう。ときどき子どもの背中・首に手を入れて汗ばんでいないか確認し、必要であれば脱ぎ着して体温調節します。
文部科学省「幼児期運動指針策定委員会」が平成24年3月に発表した幼児期運動指針。幼児期の運動の意義・行い方をまとめたものです。
赤ちゃんの外遊びは6カ月ごろ、つかまり立ちを目安に
早い子では生後6カ月くらいから、つかまり立ちを始めます。手足腰の筋肉の発達が進む生後9カ月前後には、多くの子がつかまり立ちをするでしょう。ソファやベビーベッド、パパママにつかまりながら腹筋・背筋を使って、両足で立てるようになります。
視野が広くなり、より多くのものが目に入って好奇心が刺激される時期。いろいろなものに興味を持ち、五感から情報を吸収するこの時期に、外遊びを始めるのもおすすめです。
もちろんつかまり立ち以前でも、外遊びはできます。公園にレジャーシートを敷いてパパママと座ったままボール投げをしたり、寝転んで軽い運動を楽しむのも立派な外遊びです。
つなぎ(プレイウエア・お砂場着)は必要?
赤ちゃんが外遊びを始めると、洗濯物の量が格段に増えます。乳幼児は砂・泥んこ遊びが大好き。砂場で座り込んだり、寝転んだり、じょうろ・バケツに泥水を入れたり……。あっという間に服はまっ黒・ドロドロになります。後々のことを考えずに思いっきり遊ばせたいけれど、汚しまくる様子にハラハラしてしまうパパママも多いのではないでしょうか。
そんなとき、プレイウェア(お砂場着)があると親子ともにストレスフリーで外遊びできます。プレイウェアとは、防水加工されている素材で作られたつなぎ型・サロペット型の洋服カバーです。自由な動きを妨げずに、砂・水をシャットアウト。裾がゴムで絞られている形のものが多く見られます。
価格は2,000円前後~5,000円前後。子どもが嫌がらないようであれば1着あると便利かもしれません。
年齢別!おすすめの外遊び
【0~1歳】
空・風・植物・動物など、外の環境は赤ちゃんの五感にたくさんの刺激を与えます。まずはベビーカー・抱っこひもでパパママと散歩を楽しみましょう。お座りができるようになったら、パパママのお膝の上で景色を眺めたり、レジャーシートの上でボール投げをしたりするのもおすすめです。
つかまり立ち・よちよち歩きができるようなら、砂場遊び・至近距離でのキャッチボールが楽しめます。大切なのは、自分の意思で体を動かす楽しさを実感すること。立つ・歩く・回る・つかむ・投げるなど、体の動かし方を学ぶ時期なので、安全を確保しながら自由にさせましょう。
【2~3歳】
走ることも上手になり、周りの状況を見ながら動けるようになります。パパママの言うことも理解できるので、遊具を使って安全に遊べるようになるでしょう。シーソー・滑り台・ブランコなど体の平衡感覚を養う遊具がおすすめです。
自分の体の傾き、移動速度を実感することで、体重移動・握力の使い方を習得します。ただし子どもの成長には個人差があるので、3歳であっても怖がるようであればパパママが付き添ってあげてください。
また、この時期にほかのお友だちとふれあうことは、協調性・忍耐力を伸ばすトレーニングとなります。自我が強い時期なので、子ども同士もめることも多いかもしれません。親御さん同士が声掛けし合って、「みんなで遊ぶように調整する」ことで社会性を高めていけます。
【4~5歳】
関節・筋肉を微調整しながら、意図したとおりの動きができるようになります。なわとび・ボール・フラフープ・一輪車・自転車など、用具を操作する遊びがおすすめ。なかなか上手にできないようであれば、パパママが褒め、励まし「練習を続ける」ように促すと良いでしょう。自分の力でできたとき、達成感・自己肯定感を強く感じられます。
また高鬼・色鬼・缶蹴りなど、ルールのある遊びもお友だちと楽しめるような時期です。集中力・論理的思考力・協調性・コミュニケーション能力を高める、脳と体を使った勝敗のある遊びをたくさん取り入れてみてください。
年齢別!外遊びで楽しめるおもちゃ【プレゼントにも】
【0~1歳】
オーボール
商品名:オーボール ベーシック
販売元:ラングスジャパン
接着剤を使っていない、ポリウレタン100%の柔かいボールです。投げる・転がす・つかむ・つぶす、自由自在に触って遊べます。紐を通したり、中に小さいボールを入れたりして遊ぶのもおすすめ。投げてもスピードが出ないので、0歳から安全に楽しめるでしょう。
お風呂に入れて遊ぶことも可能です。ボディーソープなどで石鹸水を作って、シャボン玉を作ることもできます。
NewSoul ベビー用ボール
商品名:NewSoul ベビー用ボール
販売元:NewSoul
6種類10個の音の出るカラフルボールのセットです。素材はABA安全ゴムで、塗料は食品衛生法に準じた安全なものを使用。視覚・聴覚で赤ちゃんの興味を強く引きます。しっかり握ることで「ビー」という音が出るので握力強化にもぴったりです。
色・形の識別の学習・キャッチボールの練習・砂場での宝探しなど遊び方は工夫次第。汚れてしまったら丸洗いでき、持ち運び用のメッシュバッグ付きです。
【2~3歳】
ビリボ
商品名:billibo ビリボ
販売元:パパジーノ(Papa Gino)
子どもの発想次第で遊び方は幾通りにもあります。座ってバランス遊び・そり遊び・水を入れる・砂を入れて型抜き・電車のトンネルとして……。想像力・想像力を活かして自由に遊ばせてあげましょう。ヨーロッパの保育園や幼稚園などでは遊具として、小学校では体育の授業教材として採用されたこともある知育玩具です。
STRIDER ( ストライダー )12インチ
商品名:STRIDER ( ストライダー ) 本体 12インチ スポーツモデル
販売元:ストライダー (Strider)
平衡感覚・全身の筋肉を鍛えるペダルなし自転車。プレ自転車として有名です。足をつかない時間が長くなって、坂道・カーブにも対応できるようになったら自転車に乗れる日も近いはず。高いクッション性のサドル・足つきの良さが子どもの挑戦する心を後押しします。
慣れてくるとスピードを出しがちです。必ずヘルメットを着用し、保護者監督のもと遊びましょう。
【4歳~6歳】
オゴスポーツ オゴディスク ミニ
商品名:オゴスポーツ (OGOSPORT) オゴディスク ミニ
販売元:OGOSPORT(オゴスポーツ)
フリスビー・ラケットとして使える、1台2役のフライングディスクです。柔かい素材なのでドッジボールのように遊ぶことも可能。付属のボールでテニスのように打ち合って遊べば、敏捷性・瞬発力が高められます。ボールを水風船に変えれば、ハラハラドキドキで大盛り上がりしそうです。
ラングスジャパン ゾインゴボインゴ
商品名:ラングスジャパン(RANGS) ゾインゴボインゴ
販売元:ラングスジャパン
反発力の強いボールに乗って飛び跳ねるゾインゴボインゴは、バランスボールとホッピングの機能を組み合わせたおもちゃ。平衡感覚・腹筋・背筋・瞬発力・持久力が鍛えられるスポーツトイです。支柱部分がゴムで伸び縮みするので、自由にジャンプできる半面バランスを絶えずとらなくてはなりません。
耐荷重量80kgなのでパパママも一緒に遊べます。親子で跳躍回数を競ってみてはいかがでしょうか。
外遊びのおもちゃ・道具はどう収納する?
メッシュバッグ
100均でも売っているメッシュバッグは、お砂場遊びセット・水遊びセットなどを砂・泥・水気を気にせず入れられます。入れるだけなので1歳からおかたづけができるでしょう。「使ったら元の場所に戻す、整理整頓の習慣」を乳幼児期につけるのにぴったりです。
洗って濡れたおもちゃを入れ、そのままベランダに吊るすなどして乾かすこともできます。
ポリプロピレン収納ケース
幼児期の外遊びは最も効果的な知育・体育である
読み書き計算・英会話・水泳・ピアノなど、「幼児期にやっておくと脳と体に良い」とされるお勉強はいろいろあります。しかし習い事には費用がかかると同時に、子どもの特性に合っているかどうかの見極めも必要です。発達・特性・家庭の経済状況・環境などによっては、習わせたいことができない場合もあります。
習い事を始める、増やすにあたって迷いがあるようであれば、毎日の外遊びを充実させてみてはいかがでしょうか。外遊びをするなかで、得意な運動・興味を持つものが見つかるかもしれません。何より子どもが楽しく外遊びをすることこそ「バランスの良い知育・体育」につながります。